「●仕事術・整理術」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●文章技術・コミュニケーション」 【156】 山崎 浩一 『危険な文章講座』
「●キャリア行動」の インデックッスへ 「●新潮新書」の インデックッスへ
幸福な退職」ができるよう、その日に向けて「MMK」を実践するという発想。

スージー鈴木氏(音楽評論家)
『幸福な退職 「その日」に向けた気持ちいい仕事術 (新潮新書) 』['23年]
55歳で博報堂を退職し、音楽評論家として活躍している著者による本書は、「無駄なく・無理なく・機嫌よく」働くことが会社員生活を楽しいものとし、それによっていい仕事ができ、さらに「幸福な退職」につながるとして、そのための仕事術やキャリア論を9章にわたって展開したものです。
第1章は「精神論」です。ここでは、「2枚目の名刺」を持つこと、「定時に帰る」こと、「65点主義」でいくことなどを推奨しています。「2枚目の名刺」を持つとは、本業に身も心も捧げてしまってはならないということです。「定時に帰る」とは、ダラダラ仕事しないということです。絶対に定時に帰ると心に誓い、「明日できることは今日しない」ことだとしています。
「65点主義」とは、仕事において1時間で65点までアウトプットできても、100点満点を目指すと4時間かかるので、「仕事なんて65点でいいんだ」と考えて、4時間あるなら65点の仕事を4つこなした方が、65点×4時間=260点で、100点の2.6倍の仕事量になるという考え方です(分かりやすい!)。
第2章は「時間論」です。定時に退社するには時間を「濃縮」する必要があり、その最大の敵は、会議であるとしています。会議参加者が5人いたとして、その中の1人が10分遅刻すれば、5人×10分=50分の損失になり、逆に、たった10分でも時間をかけてアイデアを考えてくれば、5人×10分=50分の事前アイデア群から会議が始められるという、「5×10の法則」などが紹介されています(「定時からビールを飲むための戦い」という表現が面白い)。
第3章は「後輩論」です。先輩・後輩関係をプレイとして捉え、生き抜くための「後輩プレイ」を身に付けるとともに、1つの仕事に「スプーン1杯の自己顕示欲」をまぶせとしています。また、上司に悩まされた時は、仲間と「被害」を共有し、相対化(パロディ化)することだとも述べています。
第4章は「管理職論」です。これからの管理職には、部下においても「MMK」(無駄なく・無理なく・機嫌よく)を実現する、クリエイティブなマネジメントが求められるのではないかとしています。
第5章は「連絡論」で、正しく、わかりやすく、「大人っぽく」伝えるコミュニケーション方法や、具体的なメール作法を説いています。第6章は「企画書論」で、わかりやすい企画書の書き方、作り方を指南しています。第7章は「会議論」で、会議でどのような会話が有効かを論じています(「ですよね力」という表現がシンプル)。第8章は「プレゼン論」で、プレゼンを成功させるコツを解説しています。
第9章は「退職論」です。自身の経験を振り返りながら、「幸福な退職」をするにはどうすればよいか考察し、やはり、そのためには「無駄なく・無理なく・機嫌よく」(MMK)を、会社での日々の仕事で実践し続けるべきであるとしています。終章として、かつての電通の「鬼十訓」をもじった「カニ十足」として、これまで述べてきたことのポイントがキャッチコピー的に10個にまとめられており、本書の理解・整理の助けになります。
実体験に基づいて書かれれていて、幅広い層にとって面白く読めるのではないでしょうか。タイトルからキャリア論が主要テーマかと思いましたが、読んでみると、その要素もあったものの、「MMK」をベースとした仕事術の話(テクニカル要素)の方が多かったように思います。ただし、「幸福な退職」ができるよう、その日に向けて「MMK」を実践するという発想であるため、枠組み自体が1つのキャリア論になっているようにも思います。
個人的には、自分が広告代理店の出身であるためか、1つ1つの話は腑に落ちる点が多かったです(笑)。
《読書MEMO》
●目次
はじめに
序章 スージーという名の会社員
スージー鈴木少年、博報堂に入る/スージー鈴木局長、評論家になる/「会社員って、気持ちいい。」
第一章 精神論――無駄なく・無理なく・機嫌よく働くために
仕事なんかで死んでたまるか/「2枚目の名刺」を持つ/定時に帰る確実な方法/「65点主義」という考え方/「無駄なく・無理なく・機嫌よく」(MMK)
第二章 時間論――定時に退社するための時間「濃縮」法
時間を動かす。自分から/2つの「5×10の法則」/午前中は機械的作業から/「毒見」と「突然仕事」/抜け道を探し続ける午後/午後に見定めるふたつの抜け道/定時から飲むための地道な戦い
第三章 後輩論――生き抜くためのプレイと自己顕示欲とパロディ化
「後輩プレイ」を身に付ける/スプーン1杯の自己顕示欲/先輩は使うもの/「着おくれ」しない服装を/面倒くさい上司への接し方
第四章 管理職論――マネジメントこそクリエイティブに「MMK」で
クリエイティブ・マネジメント/部下の「MMK」の実現/先出しジャンケン/メンタルダウンについて/聞く力と聞かない力
第五章 連絡論――正しく、分かりやすく、そして大人っぽく伝える方法
固定電話が鍛えた「大人力」/大人メール力/読ませる長文メール/即レス原理主義/連絡無視論
第六章 企画書論――日本語と数字をとにかく分かりやすく
企画書作りは文字要素が7割/アイデアは質より量/「ひろげ」と「ぶつけ」の鈴木メソッド/企画書の日本語論(1)――熟語と体言止め/企画書の日本語論(2)――分かりやすさが正義/企画書の日本語論(3)――語順に気を付けろ/企画書のグラフ論
第七章 会議論――「男性性」「概念のオバケ」「ですよねー」
会議の男性性/「概念のオバケ」との戦い方/ハッキリと発言するために/ですよね力/打合せの神様
第八章 プレゼン論――業務の中でいちばん人間臭い行いとして
うまいプレゼンとは/プレゼンはリズムだ/プレゼンは休み休み言う/すべては「納得」のために/「ステレオ・プレゼン」/緊張をどうクリアするか/AIはプレゼンが出来るか
第九章 退職論――「何度でも退職したい!」と思うために
幸福な退職/3つのとっかかり/退職の決断法/「時代遅れ」という自己認識を持つ/公人と私人/得意先絶対主義?/「何度でも退職したい!」/腕っぷしで稼ぐ快感/会社員以外の自我を持つ/だから「MMK」を
終章 スージー鈴木の「カニ十足」
おわりに









人生で訪れる転機をどのように乗り越え、変化に適応していくか―本書では、キャリアや生涯での節目をトランジションと呼び、キャリアや生涯での節目にあたるトランジションには、何かが終わるとき(終わり)、混乱や苦悩のとき(ニュートラルゾーン)、新しい何かが始まるとき(始まり)の3つの段階があるとし、人生で訪れる転機をどのように乗り越えるかを説いています。第Ⅰ部(第1章~第4章)では、人生の発達過程としてのトランジションが、人間関係や職業生活にどう影響するかを考察し、第Ⅱ部(第5章~第7章)では、トランジションの3つ段階についてそれぞれ解説しています。
J.D.クランボルツ(1928-2019)



『







大卒3年以内の離職率が3割であることを表す「3年3割」という言葉がありますが、厚労省の調査結果を見ると、実ははじめの3年間で最も離職率が高いのは1年目であるとのことです。本書は、ゆとり世代と呼ばれる若者たちが歩むキャリアの実態を明らかにし、若者の転職が多くなった社会的背景を考察した本であり、著者は元リクルート社員で、大学院に籍を置く教育社会学者です。本書は、著者が、すでに転職をした20代へのインタビューなどを通して修士論文として書き上げ、担当教官である本田由紀・東京大学教授に提出したものに加筆修正したものです。


2025年、われわれはどんなふうに働いているのか? ロンドンビジネススクール教授であり、経営組織論の世界的権威で働くことについて研究し続けてきた著者(英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりでもある)が、「働き方に大きく影響する『五つの要因(32の要素)』」を基に、2025年を想定した働き方の未来を予測した本です。
リンダ・グラットン 2016年10月来日『LIFE SHIFT』発売記念講演「100年時代の人生戦略」

イギリスの心理学者リンダ・グラットン(前著『
エドガー・H・シャイン(マサチューセッツ工科大学スローンスクール名誉教授) 『
分かり易く言えば、


第1部で紹介されているのは、「テラモーターズ」(電動バイク、社員数20人)、「Sansan」(名刺管理サービス、社員数100人)、「ネットプロテクションズ」(後払い決済サービス、社員数50人)、「フォルシア」(商品検索エンジン開発、社員数53人)、「クラウドワークス」(クラウドソーシング、社員数20人)の5社で、いずれもベンチャーで従業員数は20人から最大100人までと、一般の人には殆ど知られていない比較的小さな会社ばかりです。



本書の著者シェリル・サンドバーグは、財務省で首席補佐官を務め、その後グーグルで6年半働いてグローバル・オンライン・セールスおよびオペレーション担当副社長を歴任した後、あのマーク・ザッカーバーグによりフェイスブックにスカウトされ、今現在はフェイスブックのCOO(最高執行責任者)の地位にある人であり、2011年8月のフォーブズ誌「World's 100 Most Powerful Women」で5位になった人でもあり(ミッシェル・オバマ大統領夫人よりも上に位置していた)、2013年には「経営思想家トップ50(Thinkers50)」にランクインしています。
プレゼンテーション・カンファレンスとして知られる「TED」で著者が講演した際の話がでてきますが、著者が本書を著すきっかけとなったのは、TEDでの著者の「なぜ女性のリーダーは少ないのか?」と題された(周囲はなぜ彼女は成功したのかを聞きたがっていたが、彼女は敢えてこのテーマを演題に選んだ)トークの反響が大きかったためで(トークの模様はインターネットで視聴できる)、本書もアメリカでベストセラーとなり、女性のキャリアについて大きな論争が起きているとのことです。
それにしてもこの人、TEDのプレゼンもNHKの「クローズアップ現代」でのインタビューも見ましたが、コミュニケーション能力がやはり抜群に長けているのではないでしょうか、「1対多」でも「1対1」でも。その年俸22億円はカルロス・ゴーンの倍以上ですが、確かにハーバードを首席で卒業した秀才ではあるし、おそらくマーケティングなどの知識も豊富だとは思われるのですが、やはりこの人をこうした地位まで押し上げたのは、リーダーシップとコミュニケーション能力だろうなあと思います。


そのうえで、モチベーションをタイプ分けするために、まず「やる気のエンジン」がどこにあるか、つまり、内発的動機づけによるもの(目的的)か外発的動機づけによるもの(手段的)かで区分し、それぞれに、自己決定が可能な自律的ケースと、他からの支援など関係性に依存する他律的ケースがあるとしています。

(●その後、著者が「山口周」のペンネームのもと著した『天職は寝て待て―新しい転職・就活・キャリア論』('12年/光文社新書)を読み、なかなか示唆的で興味深かった。タイトルから窺えるように、クランボルツのキャリア論「計画された偶発性」などをベースとしているが、キャリア行動に関する多くの理論を紹介しつつ著者自身の経験も織り込み、さらに、人文科学系の知見を豊富に織り交ぜながら自分なりの論を進めるので、読んでいて知的好奇心が刺激される本だった。
さらにその後、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?― 経営における「アート」と「サイエンス」』('17年/光文社新書
)でブレイクし、『劣化するオッサン社会の処方箋―なぜ一流は三流に牛耳られるのか』('18年/光文社新書)などの著書もあった(共にミンツバーグのマネジャー論などをベースにしながらも、自身の論を幅広く展開している)。さらには『ニュータイプの時代―新時代を生き抜く24の思考・行動様式』('19年/ダイヤモンド社)などを著し、学部と大学院で哲学・美術史を学んだという経歴を活かし「人文科学と経営科学の交差点」をテーマに活動を行っている。)


金井壽宏 氏 

著者の提唱する"スローキャリア"というのは、"上昇志向でない動機によってドライブされる"キャリアのことを指すらしいのですが、この定義がわかりにくい。
佐々木直彦 氏(略歴下記)
本論では、エンプロイアビリティ向上のために実践し(フィールドワーク)考え(コンセプトワーク)人とつながる(ネットワーク)ことの重要性を、図解やケーススタディと併せ、またキャリア行動に関する理論を引きながら、わかりやすく具体的に説いていています。
サブタイトルからは窺えますが、"会社側は"何をすべきなのかという本で、そのあたりが「キャリア論」というタイトルからは少しわかりにくく、それでも個人として買っても役に立ったという人も少なからずいるらしいのは、本書が〈自律的キャリア(CSR=Career Self Reliance)〉を形成・促進することを説いているためだろうと思われます。
ただし、そのことを説明するためにクラスター分析の手法を使って多くのページを割いていますが、学術論文か、その手前のゼミ論文のような生硬さで、一般読者はもちろん企業の担当者にとっても、読んでいて何故こんなゼミの講義みたいな話に付き合わさればならないのかという気分になってきます。
金井教授の「一皮むける」という表現は、その仕事上の経験を通して、ひと回り大きな人間になり、自分らしいキャリア形成につながった経験のことを指し、ニコルソンのトランジッション論などのキャリア理論がその裏づけ理論としてあるようです。直接的には南カリフォルニア大の経営・組織学教授モーガン・マッコールが著書『ハイ・フライヤー』('02年/プレジデント社)の中で述べている"クォンタム・リープ(量子的跳躍)"という概念と同じようですが、"クォンタム・リープ"といった言葉よりは"一皮むける"の方がずっとわかりやすいかと思います(一方で、"ターニング・ポイント"という言葉でもいいのではないかとも思うが、ここでは"キャリア"ということを敢えて意識したうえでの用語選びなのだろう)。その言葉のわかりやすさと、金井氏の思い入れが、本書を単なる報告書レベルを超えたまとまりのあるものにしています。
小杉俊哉 氏 (略歴下記)
キャリア理論を学ぶうえでも、シャインの何が得意か、何がやりたいか、何をやっているときに意味を感じ社会に役立っていると実感できるかという〈3つの問い〉や、ブリッジスの、キャリアにおける危機の一つとしての転機は、一方で躍進・前進に繋がる可能性もあるという〈トランジッション論〉、クランボルツの、キャリアの節目さえデザインしていれば、それ以外はドリフトしていいとして、偶然性や不確実性の効用を説いた〈キャリア・ドリフト〉といったキャリア行動や意思決定に関する理論や概念が、最近のものまでバランス良くカバーされており、役に立つのではないでしょうか。
またそれらの解説が大変わかりやすいうえに、著者の「この理論を自分のキャリアを決める際に生かしてほしい」という熱意が伝わってきます。
自分の思い描いていたキャリアの将来像が予期しない環境変化により崩壊してしまうことを「キャリアショック」とし、そうしたことが起こりうる現代において自分のキャリアをどう捉え、どう開発していくかを説いています。
高橋 俊介 氏 (略歴下記)


全米キャリア開発協会(NCDA)の会長などを務めた著者による本書は、人が人生の転機やキャリアの節目にぶつかったとき、それをどう乗り越え、どうすれば豊かな人生が送れるかということをテーマとしています。
Nancy Schlossberg
岡本義幸 氏(略歴下記)
本書は'87(昭和62)年の出版であり、人材会社(人材斡旋会社)の社長が書いた「転職」のためのガイドブックです。