【181】 △ 横山 哲夫/他 『事例キャリア・カウンセリング―個の人材開発実践ガイド』 (1999/08 生産性出版) ★★★

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事例は参考になるが、レベル的には勉強会の意見交換のレベル。

事例キャリア・カウンセリング.jpg 『事例 キャリア・カウンセリング―「個」の人材開発実践ガイド』 キャリア開発/キャリア・カウンセリング.jpg 『キャリア開発/キャリア・カウンセリング―実践個人と組織の共生を目指して

 前半でキャリア・カウンセリングに対する著者ら(企業出身者で現在、キャリア・カウンセリングの研究及び実施機関を運営している人たちが主)の視点が述べられ、後半3分の2がキャリア・カウンセリングの事例研究となっています。

 前半部分の、社内委員会などによる面接とキャリア・カウンセラーによるカウンセリング、さらには治癒的なカウンセリングを"面接の三様態"として整理した部分はわかりやすいものでした。
 後半部分の10の事例も、こうした具体例が本書刊行当時('99年)一般書の中で出てくることはあまりなかったので、ある程度は参考になりました。

 ただし、何れも著者らが主催したキャリア開発のワークショップに参加した人たちの事例であることを考慮しなければならないし、参加者の意識にかなりバラツキがあるのも気になりました。
 「妻から呑気を責められる」などという家庭内の悩みも、ライフキャリアという観点に立てばキャリア・カウンセリングの範疇に入るのかも知れませんが、「生きている実感が持てない」「自然体で生きられない」などという悩みは、本書内でも指摘されているように、来談者がカウンセリングを通じてのセラピューティクな関係を求めているのであって、こういう人に向き合うには、セラピスト(心理療法家)としての高度な経験と技法が必要になってくるのではないでしょうか。
 あるいは著者の1人が告白しているように、つい寝てしまったカウンセリングが、来談者に「今回の面接が一番良かった」と言われたように、何もしないでいるか...。
 
 また、事例研究そのものが著者グループの勉強会の意見交換記録のレベルに留まっていて、課題の取り上げ方が恣意的で、内容も充分に総括されているようには思えませんでした(事例討議まで、カウンセリング記録の手法を準用してそのままベタで載せているのが、果たしていいのかどうか)。
 著者グループの次著『キャリア開発/キャリア・カウンセリング』('04年/生産性出版)へのステップ段階における本(または記録)だったと言えるのではないでしょうか。

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