【3340】 ○ 前川 孝雄 『50歳からの逆転キャリア戦略―「定年=リタイア」ではない時代の一番いい働き方、辞め方』 (2019/11 PHPビジネス新書) ★★★★

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会社を辞めるのに慎重になり過ぎるのもどうかと思うが、その辺りの見極めを説いた本か。

50歳からの逆転キャリア戦略.jpg 『50歳からの逆転キャリア戦略 「定年=リタイア」ではない時代の一番いい働き方、辞め方 (PHPビジネス新書) 』['19年]

 「会社員人生もいよいよ最終コーナー」と思いきや、「定年後も働き続ける人生100年時代」と言われガックリといったミドルも少なくからずいると思われる一方、これは見方を変えれば、「本当にやりたい仕事に挑戦する時間ができた」とも言えるとし、では、充実したセカンドキャリアのためには何が必要で、会社員のうちにやっておくべきことは何か、そのポイントを説いた本です。

 第1章では、もしいま早期退職したらどうなるか分からない(=危うい)「まだ辞めてはいけない人たち」とはどのような人かを挙げ、第2章では、人生後半戦のキャリアの考え方を「お金、肩書き」から「働きがい」へ転換することを説いています。第3章では、会社は「学び直しの機会」に溢れていて、辞める前に出来ることはまだ多くあるとしてそれらを列挙し、第4章では、 50歳からの働き方を変える「7つの質問」を通して、著者の" 七転八倒体験"から人生後半戦の働き方を考え、最後に、「人生後半戦の使命を考えるキャリアプランニングシート」など3つのワーク素材を付しています。

 各章とも列挙型で分かりやすく纏まっていて、個人的には第1章、第3章、第4章がすんなり腑に落ちた印象です。特に、第1章の「まだ辞めてはいけない人たち」については納得度が高かったですが、慎重になりすぎるのもどうかなと。第4章の「50歳からの働き方を変える「7つの質問」」も、著者は自身の経験に照らして照らしてとのことですが、一般論として参考になるように思われました。第1章、第4章の各項は以下の通り。

■第1章 まだ辞めてはいけない人たち
 【1】やりたいことがない人―転職の条件が年収しか言えない人は危険
 【2】変化に対応できない人―自分の専門以外に関心を持とうとしない人は危険
 【3】根拠なく楽観する人―リサーチ不足の「なんとかなるさ」は危険
 【4】自分を客観視できない人―「上司が評価してくれないから辞める」は危険
 【5】経営の視点や知識に欠ける人―会社経営を甘く考えている人の独立・転職は危険
 【6】自分のことしか考えていない人―周囲に貢献する意識に欠けているミドルは危険
 【7】社名や肩書きにこだわる人―昭和・平成型のプライドを捨てられないミドルは危険

■第4章 50歳からの働き方を変える「7つの質問」
 Q1 自分の人生があと1年だとしたら、何をやりたいですか?
 Q2 なぜ、その「やりたいこと」に挑戦しないのですか?
 Q3 やりたいことができない本当の理由は何ですか?
 Q4 名刺がなくても付き合える社外の知人は何人いますか?
 Q5 会社の外でも通用する「自分の強み」は何ですか?
 Q6 その強みを磨き、不動のものにするためには何が必要ですか?
 Q7 今のうちに何から始めますか?
 
 いつか自分のやりたいことをやってみたいと思いつつも、いつ会社を辞めるかというのは難しい問題だと思います。本書は、準備ができていないうちに辞めることの危うさを説いた本とも言えますが、意外と、すぐにでも独立できるような人が慎重になって定年まで(場合によっては再雇用されても)会社にとどまっているというのが、平成不況以降続いている傾向ではないかと、個人的には感じています。

 自分に辞める準備ができているかセルフチェックするにはいい本だと思いますが、あまりに慎重になり過ぎるのもどうかと思いました(誰でも慎重にはなると思うが)。まあ、その辺りの見極めを説いた本だと思います。実際、辞める準備ができていないのに辞めて失敗している人もいれば、辞める準備ができないまま定年再雇用期間も終わってしまい、結局、今いる会社がラストキャリアになる人もいて、そうした人が途中で辞めていればやっぱり上手くいかなかったかもしれず、うかつに他人に対してこうした方がいいああした方がいいとは言えない、本当に難しい問題だと思います。

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