【3339】 ○ 北野 唯我 『OPENNESS(オープネス) 職場の「空気」が結果を決める (2019/11 ダイヤモンド社) ★★★★

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「職場の空気」を改善するオープネスとは何か、オープネスを使った組織戦略とは―。

OPENNESS(オープネス).jpgOPENNESS(オープネス) 職場の「空気」が結果を決める』['19年]

本書では、わが国の職場でいま最も期待値を下回り、業績にマイナスの影響を及ぼしているのは「オープネス(開放性)」の低さであるとしています。これまで、会社の評価をするときには「財務データ」「経営者の情報」がその根拠として使われてきた一方、社員の士気を左右する「職場の空気」については、定量化が難しく、可視化されてこなかったと。しかし、著者が戦略担当ディレクターを務めるオープンワークにためられた述べ840万人の現役・OB社員のクチコミから、V字回復した企業、好調を維持する企業に共通の傾向をまとめたところ、オープネス(OPENNESS、風通しの良さ)が重要であることが分かってきたとのことです。本書は、グローバル企業から日系大手、ベンチャーまで企業の事例を豊富に使いながら、オープネスとは何か、そしてオープネスを使った組織戦略について説明しています。

 第1章では、「職場の空気」と「企業の業績」には強い関係があるとし、職場の満足度を高めようとすたとき。最も改善の余地があるのは「風通しの良さ」(≒オープネス)と「社員の士気」であるとしています。

 第2章では、オープネスは、①経営開放性(経営と現場の関係がオープンになっているか)、②情報開放性(社内情報にアクセスしやすいか)、③自己開示性(自分の才能を表現しても攻撃対象にならないか)の3つの要素から成るとし、風通しが悪いのに社員の士気が高い会社というのはほとんど存在しないとしています。また、オープネスは衛生要因であり、高ければ高いほどいいというものでもなく、さらに、組織の規模とオープネスは関係がなく、「オープネスが高い=フラットな組織」ということでもないとしています。

 第3章では、オープネスを高める方法を説いています。オープネスを阻む壁として、①ダブルバインド(人の心を蝕む「言行不一致」)、②トーション・オブ・ストラテジー(組織を壊す「戦略わかったふりおじさん」)、③オーバーサクセスシェア(成功例しかシェアしようとしないリーダー)の3つがあるとしています。その上で、経営開放性を高めるには、①失敗が起きたときにどのような解決策をとるか(自らの失敗を開示できるか)、②なぜ経営者をやっているのか、をしっかり伝えることが求められ、情報開放性を高めるには、①印象性、②アクセス性、③質疑性の3つを高めることが鍵となり、自己開示性を高めるには、一人ひとりが持つ才能を仕事において発揮させることが重要となるため、創造性、再現性、共感性を発揮しやすい環境づくりが必要となるとしています(章末に「リーダーができるオープネスを高めるアクション12選」あり)。

第4章では、オープネスをどう使うかを説いています。利益が出なくなった組織はまずオープネスが悪化し、リーダーの心の弱さによって事業と組織は負のスパイラルに嵌っていくとしています。そうしたことを「予防」するための"打ち手"として、①勝ちグセの強化戦略(勝っているときも自分たちの「機会損失」を発見できる)、②ロードウェイ改善戦略(従業員の働き方や仕事の進め方を改善)を挙げ、さらに、「早期治療」のための"打ち手"として、業績が悪いのに真実を伝えないといった「白い嘘」をつかないことを、「手術」の"打ち手"として、アロケート戦略(士気がダウントレンドに入る前に人を異動させ、活気のあるトップを新しい事業部、地域、部署に配属させる)と撤退生存戦略(所謂「損切り」をする。事業撤退と退職マネジメントを行い、「存続させる事業と組織」にフォーカスする)を挙げています。

 社員の士気を左右する「職場の空気」について、これまで定量化が難しいいとされてきたものを、クチコミデータなどを駆使して可視化している点が一つ、本書の特徴です。かっちり纏まった構成で、読みやすかったです。基本的にコンセプチュアルな内容であり、実務家の視点からすれば、すでに分かり切っている点もあれば、「そうは言っても」という点もあるかと思いますが、それでも十分、組織の在り方についての気づきを促す啓発書として読めるように思いました。

1《読書MEMO》
●目次
第1章 オープネスの発見
「株価当てゲーム」に私が猛烈にハマったワケ
見えなかった「職場の空気」が可視化されつつある
「職場環境のデータ」が株価へ及ぼす影響度
データが示す事実「職場の空気が企業の結果を決める」
社員の士気が高い企業は事業のピボットもうまくいく
「改善できる余地」はどこにあるのか

第2章 オープネスとは何か
なぜ人は社員のクチコミをのぞきたがるのか
「経営開放性」「情報開放性」「自己開示性」とは何か
「変われた企業」と「変われなかった企業」を分けたもの
「大企業は変化が苦手」は真実か
「社長の名前がバイネームで書かれる」となぜよいのか
「顔をオープンにする」ことはコミットする姿勢の表れ
風通しの悪い組織は「グレートカンパニー」にはなれない
「給与は低いが満足度が高い企業」は存在するか
【オープネスの誤解1】「高ければ高いほどいい」わけではない
【オープネスの誤解2】「大きい組織だと高められない」はウソ
【オープネスの誤解3】「オープネスが高い組織=フラットな組織」ではない
「オープネス」と「戦略」は対の関係にある

第3章 オープネスをどう高めるか
オープネスを「邪魔しているもの」は何か
【オープネスを阻む罠1】ダブルバインド:「言行不一致」が人の心を蝕む
【オープネスを阻む罠2】トーション・オブ・ストラテジー:「戦略わかったふりおじさん」が組織を壊す
【オープネスを阻む罠3】オーバーサクセスシェア:リーダーは失敗例こそシェアせよ
経営開放性を高める 失敗への対応、経営者をやっている理由を伝える
情報開放性を高める 印象性、アクセス性、質疑性を高める
自己開示性を高める 一人ひとりがもつ才能を仕事にクロスさせる
リーダーができる「オープネスを高めるアクション12選」

第4章 オープネスをどう使うか
ウサギの生存戦略に学べ
オープネスは「組織のカナリア」
事業と組織には、モメンタむがある
【「予防」の打ち手1】勝ちグセの強化戦略
【「予防」の打ち手2】ロードウェイ改善戦略
【「早期治療」の打ち手】「白い嘘」をついてはいけない
【「手術」の打ち手】アロケート戦略と撤退生存戦略
組織にも「ライフサイクル」が存在する
「組織の力」は採用や資本市場にダイレクトにヒットする

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