【3335】 ○ 中田 亨 『「マニュアル」をナメるな!―職場のミスの本当の原因』 (2019/09 光文社新書) ★★★★

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テクニックを具体的に説くだけでなく、作成の際の心構えや仕事の意義にも言及。

「マニュアル」をナメるな!.jpg 『「マニュアル」をナメるな! 職場のミスの本当の原因 (光文社新書) 』['19年]

 工学博士であり、人間のミスと安全に関する研究を様々な業種との共同研究において現場主義で進めてきたという著者が、マニュアルの本質とあるべき姿を語った本です。マニュアル作りに悩んでいる読者に向けて、使えるテクニックを具体的に説くことを基本とする一方、それらを通じて「仕事とはどうあるべきか」という根源的な問いに答えようとしたものです。

 まえがきで、マニュアル作成の原則を示したうえで、本章へ入っていきます。その原則とは、マニュアルは全てを1ページ以内に収める、ルール風には書かない、見本で示す、絵・図・写真のビジュアルを使う、指示を断言する、単文・肯定形・大和言葉で書く、工程の途中に"味見"のタイミングを入れる、マニュアルの原稿を部外者や家族に下読みさせる、執筆者の氏名や更新履歴を明記する、の9つです。

 第1部「マニュアルの文章術」では、第1章で、なぜマニュアルを作るのか、その目的を再整理しています。第2章では、マニュアルの文章作法について、冒頭に掲げたマニュアル作成の原則に沿って解説しています。断言する、単文で書く、大和言葉で書く、肯定形で書く、といった原則は、具体例によって、そうあるべき理由が明快に示されていたように思いました。第3章では、マニュアルはどうあるべきか、その本質を探っていて、マニュアル作成の際の心構えを説いた章とも言えるものでした。

 第2部「正しい作業手順の作り方」では、第4章で、作業手順の全体構造をどのように作るかを説き、作業ループ型ではループは一本道にするのが最良であり、対処マニュアル型では、正常状態に戻す復旧作業を明示することがポイントであるとしています。第5章では、作業は「型から型へ」で組んで、途中までの成果が積み立てられていくのが望ましいとしています。第6章では、チェックは、行為の有無よりも、結果を検証する(味見する)方が確実であるとし、第7章では、作業の意味は、時代の変化によって変わり得るとしています。

 第3部「練習問題」では、ルールブック調のマニュアルを示して、それを手順主義に書き直すとどうなるかといった例題が3題と、それらの解答例が示されています。

 まさに、マニュアルを作るためのマニュアルのような本であり、マニュアルを作成したり見直したりするうえでの、テクニカルな面での気づきを指摘してくれる本でした。ただし、そうした実務書的な要素もありながら、一方で、マニュアル作りに際しての心構えを説いた啓発書でもあり、さらに言えば、最初に述べたように、「仕事とはどうあるべきか」という問いに答えようとした意欲作でもあるように思いました。

 本来、マニュアルは作業ミスを失くすための重要なものであり、作業時間や教育時間を短縮できるメリットもあるはずですが、実際にはマニュアルが活用されず、社内で浮いた存在となってるケースも少なからずあるように思われます(それでいて、マニュアルがあるという事実に安心してしまっていたりもする)。また、定型作業を機械化(AI化)する上で、その作業がすでにマニュアル化されていること(加えてそれが機械に置き換え可能であること)が、前提条件の1つになるかもしれません。本書を読んで、自社に今あるマニュアルを、今一度見直してみるきっかけとするのも良いかもしれないと思った次第です。

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This page contains a single entry by wada published on 2024年1月18日 17:53.

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