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アニメ映画化のメリットが大きい。監督は長崎に住む親戚を原爆で亡くしている日系アメリカ人。

「風が吹くとき デジタルリマスター版 [DVD]」/『風が吹くとき』['98年](さくま ゆみこ:訳)(上)/『風が吹くとき』['82年](小林忠夫:訳)(下右)

イギリスの片田舎で平穏に暮らすジムとヒルダの夫婦は、二度の世界大戦をくぐり抜け、子どもも育て上げ、いまは老境に差し掛かっている。そんなある日、2人は近く新たな世界大戦が起こり、核爆弾が落ちてくるという知らせを聞く。ジムは政府が配ったパンフレットに従ってシェルターを作り備えるが、ほどなくして凄まじい爆風に襲われる。周囲が瓦礫になった中で生き延びた2人は、政府の教えに従ってシェルターでの生活を始めるが―。
ジェームズ・T・ムラカミ

1986年のジェームズ・T・ムラカミ監督作。原作は、「スノーマン」「さむがりやのサンタ」で知られるイギリスの作家・イラストレーターのレイモンド・ブリッグズが1982年に発表した、核戦争に際した初老の夫婦ブロッグス夫妻を主人公にした絵本で(原題:When the Wind Blows)、彼らが参考にする政府が発行したパンフレットは、イギリス政府が実際に刊行した手引書 "Protect and Survive" (『防護と生存(英語版)』)の内容を踏まえているとのことです。日本語版は1982年に小林忠夫の訳で篠崎書林から出版され、1998年にはさくまゆみこの訳であすなろ書房から出版されています(小林忠夫はあとがきで、作者は本書を現代のエリートたちへの警告の書として描いたとしている)。
イギリス映画ですが、監督のジェームズ・T・ムラカミは、長崎に住む親戚を原爆で亡くしているという日系アメリカ人。音楽はロジャー・ウォーターズで、主題歌はデビッド・ボウイの英国人コンビ。日本語吹替え版は大島渚が監修し、ジムとヒルダの声を森繁久彌と加藤治子が担当。1987年7月に日本初公開。2008年7月、デジタルリマスター版が公開。2024年8月にも吹き替え版でリバイバル公開されましたが、個人的には字幕版で観ました。
夫婦が孤立の中、マニュアルを参照しながらも、時に無知や思い込みからくる誤った行動をとってしまうことなどから(日光浴をしたり、雨水を飲んだり...)、次第に"被曝死"への道を辿っていく様は恐ろしいものであり、夫婦が最後まで政府の助けが来ることを信じているのも、それが心情的には"救い"であると言うよりは、むしろ見ていて歯がゆくなる思いがします。でも、実際に身近に核爆弾が落ちたら、中途半端な知識なんか役に立たないんだろなあ。政府も何かしてくれるわけでもないし、そもそも何もできないでしょう。
ペーパーバック(1986)/ハードカバー(1987)

原作の絵本は、そうした会話部分は細かく区切られたコマ漫画になっていて、それがほとんどを占め、それだけ夫婦間で交わされる会話が重要であるということでしょう。ただし、必ずしも読みやすいというものではありません(小林忠夫は「大人が子どもに読んで聞かせる絵本」としている)。それをアニメ映画にすることで、会話と情景描写を同時に味わえるため、誰もが鑑賞しやすくなっており、映画化のメリットは大きいと思いました(原作者レイモンド・ブリッグズが脚本を担当))。
因みに、核戦争が起きたと想定した映画では、この映画と同じ年に公開されたアンドレイ・タルコフスキー監督の「サクリファイス」('86年/スウェーデン・英・仏)があります。ハンガリーのタル・ベーラ監督の「ニーチェの馬」('11年ハンガリー・仏・スイス・独)もそうでした。ただ、いずれも、この「風が吹くとき」と同じく、核爆発や核攻撃の直接的な場面はありません(ただし、この「風が吹くとき」では、タイトル通り夫婦の家を凄まじい爆風が襲う場面はある)。
「サクリファイス」では、世界の終りの危機が核戦争勃発によってもたらされたことが、登場人物がテレビでそのニュースを聴く場面があることから具体的に示されているのに対し(したがって「風が吹くとき」に近い形)、「ニーチェの馬」では、風吹きすさぶ中、父と娘が暮らす一軒家に立ち寄った男が、町は風で駄目になった」と言うだけです。ただし、2人きりで孤立して死を待つほかないとう状況は、「風が吹くとき」に似ているとも言えます。これらを見比べてみるのもよいかと思います。

「風が吹くとき」●原題:WHEN THE WIND BLOWS●制作年:1986年●制作国:イギリス●監督:ジェームズ・T・ムラカミ(日本語吹き替え版監督:大島渚)●製作:ジョン・コーツ●脚本:レイモンド・ブリッグズ●絵コンテ:ジミー・T・ムラカミ●音楽:ロジャー・ウォーターズ(主題歌:デビッド・ボウイ)●原作:レイモンド・ブリッグズ●時間:85分●出演:ジョン・ミルズ/ペギー・アシュクロフト/(日本語版)森繁久彌/加藤治子/田中秀幸●日本公開:1987/07●配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画(評価:★★★★)


宇宙のどこかにある惑星イガムには、ドラーグ族とオム族が暮らしている。ドラーグ族は、オム族の十倍以上の身長、青い皮膚、魚のヒレの様な耳、真っ赤な目を持ち、その惑星の生態系の頂点に立つ存在である。一方のオム族は原始的な生活を営んでおり、ドラーグ族はオム族をペット、おもちゃ、そして奴隷にしてその命を弄んでいた。また、ドラーグ族は、オム族が高度な知能を持っている可能性を懸念しており、自分たちの優位を守るために、「害虫駆除」感覚で定期的にオム族大量虐殺していた。そんな中、オム族のテールという少年は、母を殺されたのちに、ドラーグ族の少女ティバに拾われてペットになるが、ある日、彼らが知能を高めるために用いている「学習器」を持って逃亡する。この「学習器」によって、オム族はこれまで持っていなかった知能を手にすることになり、そうして生き残りをかけたドラーグ族とオム族の闘いが始まる―。
シネマブルースタジオの2022年「異世界へようこそ vol.2」特集のテリー・ギリアム監督の「
本作は第26回カンヌ国際映画祭で特別賞を受賞し(アニメ作品としては初)、「ハリウッド・リポーター」誌の映画批評家ジョン・デフォー選出の「大人向けアニメ映画ベスト10」(2016年)において10位にランクイン、日本でも1985年の劇場初公開以来カルト的な人気を誇り、『
ネタバレになりますが、イガムの近くには「野性の惑星」と呼ばれる未開の惑星があり、オム族の隠れ都市はドラーグ族の偵察機械に発見され、自動駆除装置の襲撃を受けますが、テールたちは「学習器」により開発したロケットで脱出に成功し、「野性の惑星」に到達、そこは、男女一対の首のない巨大な像が無数にあるだけの荒野で、像の首の上に、瞑想したドラーグ族の「意識」が頭部があり、これこそがドラーグ族にとっての生命維持活動であり、生殖でもあったため、ロケットからビームを発射して像を破壊すると、惑星イガムにいるドラーグ族本体が次々と死ぬことに。ドラーグ族の議会は紛糾し、知事が「このままでは二つの種族はお互いを破壊し尽くし全滅する。和平を結び、ドラーグ族とオム族が共存する方法を見つけよう」と提案、戦いは終結し、オム族はドラーグ族が用意した新しい人工衛星に移住することに。その星は「テール(地球)」と名づけられた―。
「猿の惑星」のラストと似た印象もあるストーリーもなかなかですが、アニメーションも今まで見たことのないようなそれで、奇妙な巨大生物やマシーンの描写などは、宮崎駿の漫画・アニメ『風の谷のナウシカ』に影響を与えたと指摘されているようです。当人は、本作を鑑賞した際「ヒエロニムス・ボッシュの絵みたいな」「美しくもおぞましい」キリスト教ベースの美術に辟易しつつも「面白い」と思い、翻って風土を念頭におかない作品を描く通俗的な日本のアニメの現状を、「美術が不在」という表現で反省したとのこと(風土を反映させたのが「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」ということか)。個人的にも、正直、地球人に相当するオム族も含め、そのタッチに"気色悪さ"を覚えたのは確かです(確かにヒエロニムス・ボスに代表されるルネサンス期風の描画とも言える)。
たまたま「学習器」の恩恵を受けたオム族のテールが、支配者であるドラーグ族のティバより早く学習器によって惑星イガムの地理や文化を吸収することができたのは、ドラーグ族の1週間はオム族の1年に相当するためであり、テールに感化され、「墓場」にあった学習器で学習したオム族が、ドラーグ族時間で僅か3季でドラーグ族に劣らない高い科学技術を有するに文明都市を築けたのは、ドラーグ族の3季がオム族時間で15年にあたるためです。このあたりは一応チェックしておいた方がいいかも。
「ファンタスティック・プラネット」●原題:LA PLANETE SAUVAGE●制作年: 1973年●制作国:フランス・チェコスロバキア●監督:ルネ・ラルー●製作:サイモン・ダミアーニ/アンドレ・ヴァロ=カヴァグリオーネ●脚本:ローラン・トポール/ルネ・ラルー/スティーヴ・ヘイズ●撮影:ハポミル・レイタール/ボリス・パロミキン●音楽:アラン・ゴラゲール●原作:ステファン・ウル「オム族がいっぱい」●時間:72分●日本公開:1985/06●配給:ケイブルホーグ●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(22-11-23)(評価:★★★☆)




![動物農場 [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E5%8B%95%E7%89%A9%E8%BE%B2%E5%A0%B4%20%5BDVD%5D.jpg)






反共キャンペーンに利用された一例として、ジョン・ハラス(1912-1995)&ジョイ・バチュラー(1914-1991)監督により1954年にアニメ映画化されていますが(「ハラス&バチュラー」は1940~70年代にかけて、ヨーロッパで最大、かつ最も影響力のあるアニメーションスタジオだった)、この製作をCIAが支援していたことが後に明らかになっています。アニメ「動物農場」は結末が原作と異なっていて、原作では最後まで「非政治的」な「静観主義者」だったロバのベンジャミンが、ここでは親友のウマのボクサーがブタのナポレオンの陰謀によって悲惨な最期を遂げたのを契機に目覚め、リーダーとなって、外部の動物たちの援軍を得て反乱を起こし、ブタたちを退治するというハッピーエンドになっています。
ハッピーエンドにするのはいいのですが、やや全体的に粗かったかなあという印象で、明らかに大人向けの内容なのに、子どもに受けようとしたのか、動物たちが愛らしい動きを描いた場面がしばしば挿入されていて、そのわざとさしさから逆にCIAが背後にいるのを意識したりしてしまいます(笑)。ただし、宮崎駿監督などはその技術を高く評価していて、'08年、日本でのDVDの発売に先行して「三鷹ジブリ美術館」として配給し、全国各地で上映しています。また、ジョン・ハラスにはアニメーション技法についての多くの著作があり、宮崎駿監督もそれを参考書として読んだとのことです。
また、漫画家の石ノ森章太郎(1938-1998)がこれを漫画化していて(『アニマル・ファーム』(「週刊少年マガジン」1970年8月23日第35号~9月13日第38号)、'70年初刊)、'18年にちくま文庫に収められています。文庫版は字が小さくて読みにくいとの声もありますが、原作の登場人物のセリフをそのまま引いてきているため、文字数が多くなってしまうことによるもので、原作へのリスペクトが感じられ、また、原作の雰囲気を掴む上でもこのセリフの活かし方は良いと思いました。
最後の方だけ、ちょっと端折った感があったでしょうか。ちくま文庫同録の短編2編(「くだんのはは」「カラーン・コローン」)は要らなかったです。「アニマル・ファーム」のみ最後までしっかり描き切ってほしかったけれど、売れっ子漫画家がいくつか抱えている連載のうちの1つとして描いているので、なかなかそうはいかなかった事情があったのかもしれません。5回の連載でここまで盛り込めれば上出来とみなすべきなのかもしれません(アニメより密度が濃い)。
「動物農場」●原題:ANIMAL FARM●制作年:1954年●制作国:イギリス●監督・製作:ジョン・ハラス/ジョイ・バチュラー●製作製作プロデューサー:ルイ・ド・ロシュモン●脚本:ジョン・ハラス/ジョイ・バチュラー/フィリップ・スタップ/ロサー・ウォルフ●撮影:ディーン・カンディ●音楽:マティアス・サイバー●アニメーション:ジョン・F・リード●原作:ジョージ・オーウェル●時間:74分●日本公開:2008/12●配給:三鷹の森ジブリ美術館(評価:★★★)



ミシシッピー川で操業する蒸気船ストーンウォール・ジャクソン号のオーナー、ウィリアム・キンフィールド(アーネスト・トーレンス)は"スチームボート(蒸気船)ビル"と呼ばれる町の人気者。一人息子のスチームボート・ビル・ジュニア(バスター・キートン)は故郷を離れてボストンに遊学中だった。副船長のトム・カーター(トム・ルイス)と長閑な日々を送るビルだったが、強力なライバルが現われる。金持ちのジョン・ジェイムズ・キング(トム・マクガイアー)が新造船キング号で事業に乗りだしたのだ。そんな時、ボストンから息子が帰ってくる。都会風に妙に洗練された息子を見て、父は落胆。おまけに息子と、商売仇の娘メアリー(マリオン・バイロン)が恋仲になり、ますます面白くない。更ににジャクソン号が老朽化のため使用停止勧告を出されてしまう。警察にはむ
かったためビルは拘置所に入れられる。ジュニアは父親を助けようとするが、そこへ巨大な暴風雨がやってきて猛威を奮う。ミシシッピーの河川地帯は大パニックとなり、吹きすさぶ風の中、ジュニアは父親と恋人メアリー、そして命を落としかけたキングも救い出す―。
前半部分はマッチョ志向の父親が、赤ん坊の時以来久しぶりに会った息子の思いもよらなかった脆弱ぶりに幻滅しつつも、何とか一人前の蒸気船乗りに仕立て上げようと躍起になるも、なかなかそうはいかず、そのう
ち息子はライバルの蒸気船会社のオーナーの娘と恋仲になるは、自身は拘置所に入れられてしまうはの踏んだり蹴ったりというドラマ的な展開が主となりますが、父親役のアーネスト・トーレンスの演技がなかなかいいです(帽子を使ったギャグは、「荒武者キートン」「海底王キートン」にもあったことを思い出させる)。それと、キートンのことを慕って何かと面倒を見るヒロインの娘もなかなかきびきびしていて良かったですが、演じているマリオン・バイロン(1911-1985)は当時16歳であったとのこと。可愛らしいながらにも(キートン作品のヒロインの中では今風にカワイイ)、役柄のせいで随分しっかりして見えます。
物語が終盤に入って、残り15分のところで町は暴雨風に見舞われ、一気に映画はスぺクタルの様相を呈します。暴雨風の中、斜めになったまあ動けなかったり木に掴まって風に靡いたりするキートンの姿や、家屋が倒れてきて偶然にも窓枠の位置にいて奇跡的に助かるといったキートンの躰を張ったアクション・シークエンスは、キートン作品の中でもよく知られている場面です。
そして、ラスト5分、キートンが演じるビル・ジュニアは、これまでと打って変わって獅子奮迅の働きを見せることになりますが、ラスト15分に「起承転結」のうちの暴風雨による「転」とジュニアの活躍という「結」を集約させた作りが、前半から中盤にかけてその脆弱ぶりが繰り返し描かれていただけに効いています。暴風雨で危険な状態に晒された娘を救い、拘置所ごと漂流していた父親を救い、そして父親のライバルである彼女の父親キングをも救う―これらの神業を表情も変えず黙々とこなしていくのが小気味良く、ラストも両家の父親の和解という"感動的"な場面でありながら当人は感傷に浸ることなく、今度は漂流していた牧師を引っぱってきて、そこで"ジ・エンド"となる終わり方がいです。このラストは、同じく恋人の親同士が対立しているという「ロミオとジュリエット」風の状況設定であった「
この作品の「暴雨風」というモチーフは当初「大洪水」というモチーフだったそうで、「大洪水」で亡くなる人が多くいるのでコメディに相応しくないとの意見で「暴雨風」に変更されたそうですが、後で統計を調べてみたら「暴雨風」で亡くなる人の方が「大洪水」で亡くなる人より何倍も多いことが判ったとのことです。
この作品にヒントを得て作られたと言われているのが、同じ年に公開された世界初のトーキー・アニメ「蒸気船ウィリー(Steamboat Willie)」('28年)で、正しくは世界初の「サウンドトラック方式」のトーキー・アニメ。それまでのBGMとして音楽が流れるだけの方式ではなく、登場人物(ミッキー)が台詞を喋ります。ミッキー・マウス作品としては3作目ですが、ミッキーの初主演作であるため、1928(昭和3)年ニューヨークのコロニーシアターで初公開された、その11月18日という日
が「ミッキー・マウスの誕生日」とされています。但し、ディズニーがこの日をミッキーの誕生日として公式に定めたのは、生誕50周年を記念して大々的な回顧展が行われるのを機にしてのことでした(日本公開は1929年で、どの会社がいつ輸入し、どの映画館で最初に上映したのか明確ではないが、9月に新宿にあった武蔵野館でミッキー・マウス映画が公開された記録があり、この時が本邦初公開だったのではないか。因みに本国では大手配給会社に配給を断られ、セレブリティ・プロダクションという制作会社が配給した)。
東京ディズニーリゾートの「ミート・ザ・ミッキー」で順番待ちの間にこの作品が流れていますが、基本的にはウォルト・ディズニーのオリジナルという感じでした。但し、原題(Steamboat Willie)などは確かに「キートンの蒸気船」(Steamboat Bill Jr.)のバロディっぽく、ミッキー・マウスの実質デビュー作がキートン作品から何らかの影響を受けているというのが興味深いです。因みに、1928年公開のこの作品から1947年までの約20年間、ミッキーの声優を務めたのはウォルト・ディズニー自身であり、自分の声を入れたのは予算の都合だったそうで、実は1作目からミニーの声も担当していたそうです(ミニーは4作目からディズニー社の女性社員に変更されたという)。
「キートンの蒸気船(船長)」●原題:STEAMBOAT BILL JR.●制作年:1928年●制作国:アメリカ●監督:チャールズ・F・ライスナー/バスター・キートン(ノンクレジット)●製作:バスター・キートン●脚本:カール・ハルボー●撮影:デヴ・ジェニングズ/バート・ヘインズ●時間:59分●出演:バスター・キートン/アーネスト・トレンス/マリオン・バイロン/トム・ルイス/トム・マクガイア●日本公開:1928/08●配給:ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所:渋谷ユーロスペース(84-01-16)(評価:★★★★)●併映:「キートンのセブンチャンス(栃面棒)」(バスター・キートン)
「蒸気船ウィリー」●原題:STEAMBOAT WILLIE●制作年:1928年●制作国:アメリカ●監督・製作:ウォルト・ディズニー●作画:アブ・アイワークス/レス・クラーク/ジョニー・キャノン/ウィルフレッド・ジャクソン●(声の)出演:ウォルト・ディズニー●時間:7分●日本公開:1929/09●配給:ユナイテッド・アーチスツ(評価:★★★☆)
「ファンタジア」('41年、日本公開'55年)の見開き4ページにわたる紹介を筆頭に(これ、確かに名作ではある。本書にも紹介されている「ネオ・ファンタジア」('76年/伊)の方が大人向きの芸術アニメで、「ファンタジア」
がレオポルド・ストコフスキーならば「ネオ・ファンタジア」の方はヘルベルト・フォン・カラヤンで迫るが、「ネオ・ファンタジア」は「ファンタジア」より35年も後に作られた作品にしては残念ながらはアニメーション部分がイマイチ)、本書全体としてかなりディズニー偏重ではないかと思われ、イギリス映画である「イエロー・サブマリン」('68年/英)なども制作の経緯が結構詳しく記されているけれども、それらも含め米国においてメジャーであるかどうかという視座が色濃いとも言えます。
個人的には「イエロー・サブマリンン」は、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」('64年/英)、「ヘルプ!4人はアイドル」('65年/英)などとの併映で名画座で観ましたが、いつごろのことか記憶にありません。劇場(ロードショー)公開当初はそれほど話題にならなかったといいますが、今思えば、日本の70年代ポップカルチャーに与えた影響は大きかったかも。イラストレーターの
芸術アニメに関して言えば、アレクサンドル・ペドロフの「
ロバート・ゼメキス監督の「ロジャー・ラビット」('88年)のような「実写+アニメーション合成作品」も取り上げられていますが、確かにアカデミー視覚効果賞などを受賞していて、合成技術はなかなかののものと当時は思われたものの、合成を見せるためだけの映画になっている印象もあり、キャラクターが飛び跳ねてばかりいて観ていて落ち着かない...まあ、アメリカのトゥーン(アニメーションキャラクター)の典型的な動きなのだろうけれど、これもまたディズニー作品。但し、この作品以降、「リジー・マグワイア・ムービー」('03年)まで15年間、ディズニーは実写+アニメーション合成作品を作らなかったことになります(最も最近の実写+アニメーション合成作は「魔法にかけられて」('07年))。まあ、実写とアニメの合成は、作品全体のごく一部分としてならば、ジーン・ケリーがアニメ合成でトム&ジェリーと踊る「


「白雪姫」●原題:SNOW WHITE AND THE SEVEN DWARFS●制作年:1937年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・ハンド●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:テッド・シアーズ/オットー・イングランダー/ アール・ハード/ドロシー・アン・ブランク/ リチャード・クリードン/メリル・デ・マリス/ディック・リカード/ウェッブ・スミス●撮影:ボブ・ブロートン●音楽:フランク・チャーチル/レイ・ハーライン/ポール・J・スミス●原作:グリム兄弟●時間:83分●声の出演:アドリアナ・カセロッティハリー・ストックウェル/ルシール・ラ・バーン/ロイ・アトウェル/ピント・コルヴィグ/ビリー・ギルバート/スコッティ・マットロー/オーティス・ハーラン/エディ・コリンズ●日本公開:1950/09●配給:RKO(評価:★★★★)「


「イエロー・サブマリン」●原題:YELLOW SUBMARINE●制作年:1968年●制作国:イギリス●監督:ジョージ・ダニング/ジャック・ストークス●製作:アル・ブロダックス●撮影:ジョン・ウィリアムズ●編集:ブライアン・J・ビショップ●時間:90分●出演:(アニメ画像として)ザ・ビートルズ(ジョン・レノン/ポール・マッカートニー/ジョージ・ハリスン/リンゴ・スター)●日本公開:1969/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(07-08-28)(評価:★★★☆)

「錨を上げて」●原題:ANCHORS AWEIGH●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・シド
ニー●製作:ジョー・パスターナク●脚本:イソベル・レナート●撮影:ロバート・プランク/チャールズ・P・ボイル●音楽監督:ジョージー・ストール●原作:ナタリー・マーシン●時間:140分●出演:フランク・シナトラ/キャスリン・グレイソン/ジーン・ケリー/ホセ・イタービ /ディーン・ストックウェル●日本公開:1953/07●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19).jpg)
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「霧の中のハリネズミ(霧につつまれた



因みに、「ファインディング・ニモ」('03年)の制作の際に、ピクサーの美術部門のメンバーは、クジラの中にニモが呑みこまれるシーンを描くために、海岸に打ち上げられたクジラの死体を見に出かけたとのこと、ピクサーのデザイナー達は、アニメの映像世界の細部にジョブズ以上のこだわりを持っていたわけです。
更に、ジョブズとビル・ゲイツの間の様々な交渉についても、ジョブズが犯した過ちを鋭く検証していて、いかにジョブズが失ったものが大きかったかということが理解でき、Windowsのユーザーインターフェイスがその典型ですが、ある意味オリジナルはMacであり、普通ならばマイクロソフトではなくアップルがコンピュータ産業の覇者となり、ジョブズが世界一の億万長者の地位にいてもおかしくなかったことを示唆しているのも頷けました。
「ファインディング・ニモ」●原題:FINDING NEMO●制作年:2003年●制作国:アメリカ●監督:アンドリュー・スタントン/リー・アンクリッチ●製作:グラハム・ウォルターズ(製作総指揮:ジョン・ラセター)●脚本:アンドリュー・スタントン/ボブ・ピーターソン/デヴィッド・レイノルズ● 音楽:トーマス・ニューマン/ロビー・ウィリアムズ●時間:100分●出演:アルバート・ブルックス/エレン・デジェネレス/アレクサンダー・グールド/ウィレム・デフォー/オースティン・ペンドルトン/ブラッド・ギャレット/アリソン・ジャニー●日本公開:2003/12●配

渋谷東急 2003年7月12日、同年6月の渋谷東急文化会館の閉館に伴い、直営映画館(「渋谷パンテオン」「渋谷東急」「渋谷東急2」「渋谷東急3」)の代替館として渋谷クロスタワー2Fにオープン。2013年5月23日閉館。


個人的には、ちょうどNHKスペシャルで「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズ」('11年12月24日放送)を見たところでしたが、それと照らしても、偏りの少ない伝記と言えるのではないでしょうか。元々が毀誉褒貶の激しいジョブズですが、そのスゴイ面、人を強烈に引きつける面と、ヒドイ面、友人や上司にはしたくないなあと思わせる面の両方が書かれていて、それでいて、ジョブズに対する畏敬と愛着が感じられました。
アップルの共同創業者や自らが引き抜いた経営陣との確執のほかに、同年代のライバルであるビル・ゲイツとの出会いや彼との交渉、Windowsの牙城を切り崩そうするジョブズの攻勢なども描かれていますが、ピクサーでの仕事におけるディズニー・アイズナー会長との様々な権利を巡るビジネス面での交渉が特に詳しく描かれており、アメリカのコンピュータ業界の内幕を描いた本であると同時に、映画ビジネス界を内側から描いたドキュメントにもなっています。
NHKスペシャルの「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズ」を見て、彼の人生には幾つかの印象的な場面が印象的な映像と共にあったように思われ、とりわけ、'84年のマッキントッシュ発売の際のジョージ・オーエルの『1984』をモチーフとしたコマーシャル(CM監督は「ブレードランナー」('82年)のリドリー・スコット)や、'86年のCGの可能性を如実に示した"電気ランプ"の親子が主人公の短篇映画「ルクソーJr.」(Luxo Jr.)、'95年の「世界初のフル3DCGによる長編アニメーション映画「トイ・ストーリー」などが個人的には脳裡に残りました。
「トイ・ストーリー」以外は番組で初めて見ましたが、そうした映像のイメージもあって本書を比較的身近に感じながら読むことができ、「トイ・ストーリー」も、初めて観た時はCGが進化したなあと思っただけでしたが、ジョブズが買収も含め個人資産を10数年も注ぎこむも全く利益を生まなかったピクサーが、土壇場で放った"大逆転ホームラン"だったと思うと、また違った感慨も湧きます(この作品だけでも公開までの4年間の投資額は5千万ドルに及び、「こんなに金がかかるなら投資しなかった」とジョブズは語っているが、本作のヒットでピクサー株は高騰し、結果的にジョブスの資産は4億ドル増えた)。
人々を惹き付ける素晴らしいプレゼンテーションをする一方で、傲慢な人柄で平気で人を傷つけ、また、類まれなイノベーターとして製品のデザインや性能への完璧主義的なこだわりを持つ一方で、相手の弱みに付け込む政治的画策も厭わない冷酷な経営者という一面も持つ―こうしたジョブズの多面性が、本書では充分に描かれているように思いました。
「トイ・ストーリー」●原題:TOY STORY●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ラセター●製作:ラルフ・グッジェンハイム/ボニー・アーノルドズ●脚本:ジョス・ウィードン/アンドリュー・スタントン/ジョエル・コーエン/アレック・ソコロウ●撮影:スティーヴン・H・ブラム●音楽:ランディ・ニューマン●時間:81分●出演:トム・ハンクス/ティム・アレン/ドン・リックルズ/ジョン・モリス/ウォーレス・ショーン/ジョン・ラッツェンバーガー/ジム・バーニー●日本公開:1996/03●配給/ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン(評価★★★☆)
●NHKのドキュメンタリー番組「映像の世紀バタフライエフェクト」で2022年12月19日、スティーブ・ジョブズを、彼が影響を受けたバックミンスター・フラーと併せて取り上げていた。「宇宙船地球号」という概念を唱え、人類と地球との調和を説いた思想家バックミンスター・フラー。「現代のレオナルド・ダビンチ」とも「狂人」とも称されたフラーの思想が多くの若者たちを突き動かし、その中に若き日のスティーブ・ジョブズもいたとのこと。フラーの思想は、時空を超え、ジョブズに受け継がれ、世界を変えていき、そして伝説のスピーチが生まれたのだとしている。


世界も、外套と同様にきらきら輝いたものに見えてきたのだった。ところがその矢先―。
「外套」の方は、本国で何度か映画化されていて、「小犬を連れた貴婦人」('59年/ソ連)に俳優として出演していたアレクセイ・バターロフ(1928年生まれ)監督の作品('60年/ソ連)を観ましたが、原作に沿ってきっちり作られていて、作品全体としては悪くない出来だと思いました。但し、一方で、バシマチキン(アカーキイ)の人物造型はやや"戯画的"に描かれ過ぎていてるようにも思いました(一番劇画チックなのは、彼が幽霊になってからだが)。
まあ、原作がそもそも"戯画的"な性格を持っているというのはあるのですが、ペーソスより滑稽と怪奇の方が勝ち過ぎている気もしました。主演のロラン・ブイコフの演技の評価は高
いですが、「名演技」であることには違いないですが、個人的印象としては「怪演」であるとも言えるように思います。ベタなウェット感を拭い去ることによって、最終的には逆にペーソスを引き出そうというのが狙いだったのかもしれませんが。

この作品はまた、「
ユーリー・ノルシュテインは「
「鼻」の方は、「禿山の一夜」「展覧会の絵」で知られるアニメーション界の巨人アレクサンドル・アレクセイエフ(Alexandre Alexeieff、1901-1982)が短編アニメ映画化していて(「鼻」(1963))、この人の作品はピンスクリーンという手法で知られています(これまた、ボードに立てた「25万本の針」を出したり引っ込めたりして光を当てながら1コマ1コマ撮っていくという、気の遠くなるような時間のかかかる技法)。このアレクセイエフの「鼻」もウェブで視聴可能、音楽のみでセリフは無く、最後はややブラックなオチになっています。

「鼻」(アニメ版)●原題:Le Nez (The Nose)●制作年:1963年●制作国:フランス●監督:アレクサンドル・アレクセイエフ●共同監督:クレア・パーカー●原作:ニコライ・ゴーゴリ「鼻」●時間:11分●DVD発売:2006/03●発売元:ジェネオン エンタテインメント(評価:★★★★)






ヘミングウェイの代表作、且つ、生前に発表された最後の作品。最初に読んだのは中学生の時で、多少気負って読み始めたら、最初の老人と少年との会話の部分でいきなり野球の話などが出てきて、文学全集に収まるような作品にプロ野球(正確にはメジャーリーグだが)の話があるのがちょっと意外な印象を受け、結局今でもそのことが一番印象に残っていたりもします(川上弘美氏だったかな?小学5年生の時に読んだという作家は)。
ヘミングウェイは1952年にこの作品を書き上げ、1954年にノーベル文学賞を受賞しており、ノーベル文学賞は個別の作品ではなく作家の功績および作品全体に与えられるものですが、一方で、この「老人と海」が受賞に寄与したとされていて、これを"受賞対象作"とすれば、書かれてから受賞まで僅か2年しかないことになります(まあ、それまでの実績が評価されたのだろうけれど)。ヘミングウェイはこの作品でピュ-リッツア-賞(文学部門)も受賞しています。
「ハードボイルド・リアリズム」と呼ぶに相応しい福田訳(経年疲労しない名訳)から、センチメンタリズムを排した男性原理、ギリシャ悲劇的なヒロイズム(或いはハリウッド映画に受け継がれるようなヒロイズム)が浮き彫りにされているように思えます(実際、このサンチャゴ老人のストイシズムはカッコいい)。ヘミングウェイは母グレイスに女の子のように育てられたとのこと、幼少の頃の女装させられた写真は有名で(後のハンティングなどに興じる数ある"逞しい"写真と対比すると興味深い)、彼のマッチョ願望をそうした幼児体験の反動であると見る心理学者もいます。
この作品については、ジョン・スタージェスが監督し(「OK牧場の決斗」('57年)と「荒野の七人」('60年)の間の作品になる)、スペンサー・トレーシーが主演した映画化作品「老人と海」('58年)が
あり、個人的にはビデオで観ました。2度アカデミー主演男優賞を受賞しているスペンサー・トレーシーは、「山」('56年)などを観ても名優だと思いますが、この映画でも十分名優ぶりを発揮していたと思います。ただ、独白とナレーション(本人)の組み合わせが多く続くため、さすがの彼も「山」よりは結構きつそうに演技している印象も受けました。この映画の当初製作費は200万ドルであったのが、「適
切な魚の映像を探す」ために500万ドルにまで上昇したそうで、そのため水中でカジキをつつくサメたちのシーンなどもあったりして緊迫感は大いにありますが、その緊迫感は動物パニック映画風のものでした。そうした状況の中で、原作の文学性はスペンサー・トレーシー一人の演技にすべて負わせているという感じで、その辺が「結構きつそうに演技している印象」に繋がるのかもしれません。でも、スペンサー・トレーシーという人はものすごい自信家だったそうで、まさに自分の力の見せ所と思って演技していたとも考えられます。
コンピュータ制御により動画構成されている。これは最近のアニメ芸術に共通して見られる傾向)だと、海が本当に綺麗に描かれて、実際、この人の作品は水をモチーフにしたものが多いようですが、これはまさに「動く巨大絵本」だなあと感心させられました。ただ、時間が23分と短いため(この23分に4年もかけたそうだが)、アイマックスで観た時はスゴイと思ったけれど、後で振り返ると文学的なエッセンスはかなり抜け落ちた感じも拭えませんでした(星3つ半はやや辛目の評価か)。

「老人と海」●原題:THE OLD MAN AND THE SEA●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・スタージェス●製作:リーランド・ヘイワード●脚本:ピーター・ヴィアテル●撮影::ジェームズ・ウォン・ハウ/フロイド・クロスビー/トム・タットウィラー/ラマー・ボーレン(水中撮影)●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原作:アーネスト・ヘミングウェイ●時間:86分●出演:スペンサー・トレイシー(老人&ナレーション)/フェリッペ・パゾス(少年)/ハリー・ビレーヴァー/ドン・ダイアモンド●日本公開:1958/10●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★☆)
「老人と海」●原題:THE OLD MAN AND THE SEA●制作年:1999年●制作国:ロシア/カナダ/日本●監督・脚本:アレクサンドル・ペドロフ/和田敏克●製作:ベルナード・ラジョア/島村達夫●撮影:セルゲイ・レシェトニコフ●音楽:ノーマンド・ロジャー●原作:アーネスト・ヘミングウェイ●時間:23分●日本公開:1999/06●配給:IMAGICA●最初に観た場所:東京アイマックス・シアター 



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ケチな男が拾ったサクランボを種ごと食べてしまったため、種が男の頭から芽を出して大きな桜の木になる。近所の人たちは大喜びで男の頭に上って、その頭を「頭山」と名づけて花見で大騒ぎ、男は頭の上がうるさくて苛立ちのあまり桜の木を引き抜き、頭に大穴が開く。この穴に雨水がたまって大きな池になり、近所の人たちが船で魚釣りを始め出し、釣り針をまぶたや鼻の穴に引っ掛けられた男は怒り心頭に発し、自分で自分の頭の穴に身を投げて死んでしまう―。
江戸落語「頭山」(上方落語では「さくらんぼ」)を基にした短編アニメ「頭山」('02年)、シュールな展開が面白かったです。このタイプのナンセンスは個人的好みでもありました。徒然草の「堀池の僧正」が元ネタであるという説があるそうですが、西洋でも、ビュルガー原作の小説「ほら吹き男爵の冒険」の中に、男爵が大鹿めがけて撃ったサクランボの種が鹿の額に命中し、後日、男爵は
頭からサクランボの木を生やしたその鹿と遭遇してこれを射止め、シカ肉とサクランボソースの両方を堪能する―という話があり、サクランボという点で符合しているのが興味深いです。ユーリー・ノルシュテインなどの影響も感じられ、一方で語りは浪曲師の国本武春が弁士を務めているジャパネスク風というこのアニメ作品、世界4大アニメーション映画祭(アヌシー・ザグレブ・オタワ・広島)のうちアヌシー、ザグレブ、広島でグランプリを獲得し、第75回アカデミー賞短編アニメーション部門にもノミネートされ、内外23の映画祭で受賞・入賞を果たしたそうです。
アニメーションの誕生から現代に至るまでの歴史を辿り、「頭山」のメーキングから、アニメーションの作り方までを、編集・録音、発表・公開まで含めて(この辺りは職業ガイド的)紹介しています。
本書はカラー版なので写真が美しく、カレル・ゼマン(或いはカレル・ゼーマン)(KAREL ZEMAN 1910-1989/チェコ)の「水玉の幻想」(Inspiration 1948年)などは、動いているところをまた見たくなります(これも手づくり作品の極致)。物語は、ガラス細工職人が、創作にちょっと行き詰ったある日、窓の外の雨の中に見た幻想という形をとっており、木の葉を伝う雨の一雫の中に幻想の世界が広がり、踊り子とピエロの儚い愛の物語が展開するガラス人形アニメーションで、人や動物、草や木、湖や海まで全てガラスで作られており、それらをコマ撮りしてここまでの高度な芸術世界を創り上げているのは、ボヘミアンガラスのお膝元とは言え、驚嘆させられるものがあります。長さ10分強の短編ですが、ゼマンにはこの他に、ジュール・ヴェルヌの小説などを映像化した長編作品もあります(代表作は「盗まれた飛行船(Ukradená vzducholoď)」(原作『十五少年漂流記』 88分、1966年))。
「頭山」●英題:MT. HEAD●制作年:2002年●監督・演出・アニメーション・編集・製作:山村浩二●脚本:米村正二 ●原作:落語「頭山」●時間:10分●声の出演:国本武春/ブルーノ・メッカー●公開:2003/04●配給:スローラーナー=ヤマムラアニメーション(評価:★★★★)
「雪の女王」●原題:Снежная королев(スニェージナヤ・カラリェバ)●制作年:1957年●制作国:ソ連●監督:レフ・アタマノフ●脚本:レフ・アタマノフ/G・グレブネル/N・エルドマン●音楽:A.アイヴァジャン●原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン●時間:63分●声の出演:Y.ジェイモー/A.カマローワ/M.ババノーワ/G.コナーヒナ/V.グリプコーフ●公開:1960/01/1993/08 ●配給:NHK/日本海映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(84-01-14)(評価:★★★★)●併映:「せむしの仔馬」(イワノフ・ワーノ)

「水玉の幻想」●原題:INSPIRACE●制作年:1948年●制作国:チェコスロバキア●監督:カレル・ゼマン(ゼーマン)●時間:12分●公開:1955/06●配給:独立映画(評価:★★★★)

本書によれば、「アラジンと魔法のランプ」は、元々は中国の話だそうですが、語源である「ジン」(一種の妖怪)というのが、イスラームが宗教的版図を拡げていく過程で土着信仰を融合する際に生まれたものだというのは興味深いです。土着信仰のネガティブな部分を"怪物"的なものに封じ込めたという説は面白いと思いました(土着の悪神をリストラして「ジン」という概念に一本化したとも言える)。
ディズニーアニメの「アラジン」が登場した際に日本のアニメ「ハクション大魔王」(1969-1970)を想起した人も多かったようですが、個人的にはアメリカのアニメ「大魔王シャザーン」(CBS1967年、NET(現テレビ朝日)1968年)を思い出しました。このシャザーンは「大魔王」と称されていますが、これも本来は精霊とも悪霊とも扱われるジンであり、双子の主人公チャックとナンシーの庇護者として召使い的に活躍するものの、本当は双子よりも上の位にいて、ちょうどリモコンを持った者が善であろうと悪であろうとリモコンの指示通りに動く「鉄人28号」と同じように、魔法の指輪を行使する者に服従する「使い魔」であるとのこと、ただしアニメでは、作中で悪人に指輪が奪われた際も、命令に反し「本当はいけないんですが、まあいいでしょう」とあっさり二人を助けたりしていたようです。