【718】 ○ 藤田 晋 『渋谷ではたらく社長の告白 (2005/06 アメーバブックス) ★★★☆

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経営書というよりビジネス・ドラマ。人材採用に関わる話などが面白く読めた。

渋谷ではたらく社長の告白.jpg 『渋谷ではたらく社長の告白』 (2005/06 アメーバブックス)    logoca.gif

 サイバーエージェントの藤田晋氏が自ら綴った半生記で、とりわけ'98年、24歳で起業して '02年、26歳で自分の会社を東証マザーズ上場にさせるまでの色々な出来事が書かれていて、起業物語として面白く読め、さらに上場とほぼ同時期にネットバブルが崩壊し、株価が低迷して株主からの批判も強まり、会社の売却を考えるまでに追い詰められるという、ちゃんと山と谷がある話で、書店で経営書のコーナーにありましたが、内容はビジネス・ドラマといった感じ。

 若手起業家にはメンターとして仰ぐ人がいる場合が多いですが、人材会社インテリジェンス勤務時代(1年未満だが)に同社の社長だった宇野康秀氏(現USEN社長)から在職中も独立後も多くの薫陶を受けたようで、まだ社員がいないのに新卒を何人も採ったり、社員数の何倍ものキャパのあるオフィスを借りたりと、かなり思い切りがいい。
 ジャック・ウェルチは、楽天性や行動力を経営者の条件としているし、ドラッカーも先ず実践することを説いていますが、この人の楽天性や行動実践力は資質的なものだろうという印象を持ちました。

 経営戦略的な話はあまり出てこず、むしろ「世界一の会社をつくる」という漠然としたビジョンしか見えてきませんが、とりあえず起業時においては戦略よりビジョンなのか(内容的には漠然としているけれども、信念としてはやたら強い)。
 ドラッカーはアップルの創業者たちがやがて失墜することを予言し的中させましたが、それは彼らが経営知識を身につけないうちに、あまりにも早く成功しすぎてしまったためだとしていて、藤田氏の場合も、たまたま時流に乗った面もあり、本書を読んでもサイバーエージェントという会社がどのように社会に貢献しようとしているのか見えてこず、スティーブ・ジョブズらの轍を踏む可能性も無いとは言えません。
 しかし本書を読む限り、堀江貴文氏や村上世彰氏よりは自律的な内省型の人物に思え、"アロガント"(傲慢)にならずにすんでいるのではないかなあと(本書に出てくる昔の堀江氏はカッコいいが)。

 もともと採用マネジメントに携わっていた人(堀江氏などと異なりITは素人だった)ですが、人材採用に関わる話などが面白く読めたこともあり、個人的には多少オマケして"○"。

 【2007年文庫化[幻冬舎文庫]】

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