【146】 × 堀江 貴文 『儲け方入門〜100億稼ぐ思考法』 (2005/03 PHP研究所) ★★

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自分の "粗製濫造"商品(いわゆる「堀江本」)が自分の首を絞める...。

儲け方入門.jpg 『儲け方入門〜100億稼ぐ思考法』 (2005/03 PHP研究所) 100億稼ぐ仕事術.jpg 『100億稼ぐ仕事術 (SB文庫)

 本書は、'04年のライブドアによる球団買収騒動と'05年のテレビ局買収騒動の間に書かれたもので、'03年11月に『100億稼ぐ仕事術』(ソフトバンククリエイティブ)を出して以来9冊目の「堀江本」、既にやや粗製濫造気味ではありました。
 著者はその後も衆院選に立候補するなどし、経済や社会、政治の既成の概念や風潮に風穴を開けた面はあるかと思いますが、ライブドア事件を経て、かつて書店に平積みされた「堀江本」もその面影は無く、図書館にでも行かないと見つからないないとか...。

 著者の経営、ビジネス、ファイナンスなどについての考え方自体はそれなりに筋が通っている部分もあったと思い、"事件"を起こしたから書いてあることも全部ダメというのもどうかなあと。
 ただし特別に斬新なわけでもなく、また、成功したから言える面もあるし、(後日明らかになりますが)人に言えないこともいっぱいやっているだろうし、ベンチャーにはいいが、既存の企業にはどうかというものもあります。 

 でも当時のホリエモンの"固定客"にはそれで充分だったのかもしれませず、同時に彼らがライブドアの個人株主にもなっていたわけですが、企業にはびこる老害や無意味なヒエラルキーを小気味よく斬っていく様は心地よく感じられるでしょう。
 ファンには、本書が最も言いたいことがよく語られていると好評だったようです。

 ただ、知名度が上がって「ホリエモンってどんな人」と思って読む読者が増えると、「お金で買えないものはない。(中略)女心だって買える」というような表現は、社会的責任のある企業経営者としてどうなのという反発も出て当然で、選挙に出てこの点を突っ込まれ、「部分をとりあげての批判をしないで、ちゃんと僕の本を読んでください」と言ってましたが―。

 しかしこの本には、稼げない人は元々その能力が無いのだから、最初から高望みするなというようなことも書いてあり、まさに「勝ち組」支配の論理で貫かれていて、「能力の無い人は天才に食わせてもらえばいい」と書いてあっても、それについての具体的施策を述べている箇所はなく、これでよく選挙に立候補したなあと。

 結局、選挙戦の途中で、「本の内容についてはコメントしない」という方針へ方向転換しています。
 そうせざるを得なかったのでしょうが、こうした細かい"変節"も、その後の証券取引法違反による逮捕事件などの衝撃が大きかったために、やがて忘れ去られてしまうでしょう。

 自分自身の存在までもが忘れられないためにも、今後も世間に対して発信は続けると思われますが、ビジネスの世界への完全復帰は難しいのではないかな。 

 彼は、著書(=自分)に対する固定的なファンの反応が、世の中の大方の反応ではないかと勘違いしていた面があったのかも。 

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