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今やB級カルトムービー? "男装の麗人" 水の江滝子より、キャットウーマン風の京マチ子か。


「花くらべ狸御殿」VHS 喜多川千鶴/京マチ子
喜多川千鶴/水の江滝子
狸御殿の城下町「狸夢(リム)の町」のクラブ「ポン」のマスター・ポン(柳家金語楼)の店に、黒太郎(水の江滝子)と名乗る美青年が現われる。狸御殿の女王は、生まれてこの方一度も笑ったことがないので、彼女を笑わせた者には褒美が出るという御触書が店に貼ってある。怪しい一味が店に乱入し、黒太郎を捕まえようとするが、黒太郎は姿を消し、後に風船が一つ残る。ホステスのお露(大美照子)が風船にキスをすると、黒太郎は元の姿に戻り、頬にはキスマークがついている。店の給仕となった黒太郎は歌も踊りも上手く人気者になる。翌日、今日は、女王様が門前道をお通りになる日なのだと、黒太郎はホステスたちから教えられる。そんな中、無気味な老婆が悪態を付きながら通り過ぎて行き、ホステスらは、森の魔女の手下の泥々(常盤操子)だと言う。その時、御殿から、女王様が出発するのを知らせる大太鼓が響き、泥々は箒に跨がって逃げ帰る。森の魔女の家では、魔女・愛々(京マチ子)が、魔法の鏡にこの世で一番綺麗な者は誰かと問いかけ、それは愛々様だと答えられて満足している。女王一行がポンの店で休憩することになり、女王のおぼろ姫(喜多川千鶴)、左大臣(藤井貢)、右大臣(杉狂児)、司法大臣(渡辺篤)などが来店、それを楽団が歓迎し、ギターを弾く黒太郎が歌う。ホステスの一人が黒太郎にウィンクを投げ、黒太郎が返礼のつもりで胸のバラの花を投げかけると、飲みかけていた女王のコーヒーカップに花びらが落ちてしまう。おぼろ姫は憤然と席を立ち、黒太郎は司法大臣に命じられて御殿に出頭する。左大臣が黒太郎を死刑にするように進言していたが、女王が直々に裁くことに。そのおぼろ姫は、黒太郎を待つ間に卓上の帽子を被ると、アゴ紐の部分が鼻の下にかかり、自ら姿を鏡で見ておかしくなって吹き出す。そこへ現れた黒太郎は、御褒美には何を頂けますかと言い寄り、おぼろ姫に抱きついてキスをする。姫がはじめて笑ったと言う知らせは町中に流れ、人々は祝福の祭りを始める。その頃、愛々は鏡に、世界で一番美しい者は誰かと尋ねていたが、鏡が映し出したのがおぼろ姫の姿だったため逆上する。狸御殿だは初笑い祝賀会が催され、殊勲者として給仕として働いていた黒太郎が紹介され、黒太郎は紹介を受けて歌い始める。そんな中、左大臣はこの国を手中にする野心を持っていた―。
1949(昭和24)年4月公開の木村恵吾(1903-1986)監督、喜多川千鶴(おぼろ姫)、水の江滝子(黒太郎)、京マチ子(魔女・愛々)主演の大映のオペレッタ喜劇「狸御殿」シリーズの1作。因みに、木村恵吾監督はこの作品の前に、「狸御殿」('39年)、「歌う狸御殿」('42年)、「春爛漫狸祭」('48年)を撮っており、この作品の10年後に、市川雷蔵、若尾文子主演の「初春狸御殿」('59年)を監督しています(木村恵吾監督はこの年(1949年)10 月公開の宇野重吉、京マチ子主演のも監督している)。
映画評論家の山根貞男氏によれば、この作品の一番の話題は、大映の"狸御殿"映画に、SKDのスターである水の江滝子(1915-2009/享年94)が出演したことで、松竹少女歌劇の"男装の麗人"として"ターキー"の愛称で親しまれ人気を誇った水の江滝子ですが、映画への出演は戦後になってからで、この作品が映画出演第3作だそうです。

共演の魔女役の京マチ子は、大阪松竹少女歌劇の人気スターで、言わば水の江滝子の後輩にあたり、映画出演は第2作目。この年(1949年)10 月公開の木村恵吾監督の「痴人の愛」('49年/大映)にも主演し、大女優への道を歩み始めることになります。
京マチ子・宇野重吉「痴人の愛」('49年/大映)
水の江滝子が服部良一の軽快なリズムに乗せて歌に踊りに得意の芸を次々に披露する作品で、一方で、「春爛漫狸祭」では男役(狸吉郎)だった喜多川千鶴(「二十一の指紋」('48年)、「三十三の足跡」('48年))演じるおぼろ姫と恋をする男役(黒太郎)ということで、何だか宝塚歌劇みたいですが、藤井貢や杉狂児といった男優も出て歌ったりもしている分、2人の関係はレズビアンっぽい雰囲気も醸しているように感じました。更に、京マチ子のアメコミの「キャットウーマン」(1940~)みたいなコスチュームも怪しく、その京マチ子の愛々も水の江滝子の黒太郎を無理やり踊り相手にして、これまたレズビアンっぽく、こうなってくるともう豪華なのかB級なのかよく分からないといった感じ。
ストーリーも、黒太郎や愛々に、更に別の森の魔女の恋々(暁テル子)や喃々(大友千春)も絡んで意味なく混み入っていて、終盤は「インディー・ジョーンズ」風でもあります。当時の謳い文句は「裸女乱舞するロマンとエロチシズムの大オペレッタ映画!」ということでしたが、もう何だかよく分からない。オールセット撮影で、円谷英二が特撮担当ということですが、二重露光などごく基本的な技術しか用いておらず、イマイチ力を発揮していない感じです。
もちろん今観るとエロチックでも何でもないし(京マチ子はパワフルだが)、「初春狸御殿」の時も評価を「?」にしましたが、この作品も今やある意味カルトムービー化している
ように思われ、ストレートに評価しにくい作品です。水の江滝子のファンには必見の作品だと思いますが(後のNHK番組「ジェスチャー」(1953-1968)の紅組キャプテン(水の江滝子)と白組キャプテン(柳家金語楼)が共演しているという意味での珍しさもあるかも)、個人的注目は、ターキーの男装の麗人ぶりよりも、キャットウーマンっぽいコスチュームで負けじと踊る京マチ子だったかもしれません。

「花くらべ狸御殿」●制作年:1949年●監督・脚本:木村恵吾●撮影:牧田行正●音楽:服部良一●特技:円谷英二●時間:89分●出演:水の江滝子/喜多川千鶴/柳家金語楼/京マチ子/暁テル子/大伴千春/常盤操/藤井貢/杉狂児/竹山逸郎/渡辺篤/武田徳倫/寺島貢/村田宏寿/藤代鮎子/大美照子/灰田勝彦/野々宮由紀●公開:1949/04●配給:大映(評価:★★★?)


京マチ子
若尾文子/市川雷蔵 in「初春狸御殿」(木村恵吾監督)

「初春狸御殿」●制作年:1959年●監督・脚本:木村恵吾●製作:三浦信夫●撮影:今井ひろし●音楽:吉田正●時間:95分●出演:市川雷蔵/若尾文子/勝新太郎/中村玉緒/金田一敦子/仁木多鶴子/水谷良重/中村雁治郎/真城千都世/近藤美恵子/楠トシエ/トニー・谷/菅井一郎/江戸屋猫八/三遊

亭小金馬/左卜全/藤本二三代/神楽坂浮子/松尾和子/小浜奈々子/岸正子/美川純子/大和七海路/小町瑠美子/毛利郁子/嵐三右衛門●公開:1959/12●配給:大映●最初に観た場所:大井武蔵野館 (86-11-15)(評価:★★★?)●併映:「真田風雲録」(加藤泰)


阪東 妻三郎
世界史上最大の帝国・元は支那・満州・朝鮮を攻略、元主・忽必烈(クビライ)はついに日本征服を企てた。文永11年秋、壱岐・對馬に上陸した元軍は九州博多に来襲するが、「神州男児」の勇戦によって撃退される。しかし、元の野望はなおも衰えず、再度大軍を送り込み、日本に降伏を迫ろうとしていた。これに対し、時の執権・北条時宗(片岡千恵蔵)は、元の使者を一人残らず斬首してしまう。弘安4年春、ついに元軍は再来した。瀬戸内海を治める武将・河野通有(阪東妻三郎)と忽那重義(嵐寛寿郎)はかねてより犬猿の仲であったが、この国難に際して共に力を合わせて元軍と闘うこととなる。元軍は壱岐・對馬を攻略するが、その勢いで攻め入った博多湾で奇跡の神風が吹き荒れ、艦隊ごと全滅する―。
1944(昭和19)年11月公開の丸根賛太郎(1914-1994/享年80)監督作。情報局国民映画で、陸軍省、海軍省などが後援していることからも窺えるように、"元寇"を素材とした完全な戦意高揚映画です(原作は菊池寛)。但し、戦意高揚と言っても、1944年と言えば日本の敗戦がほぼ決定的になった年であり、当時の国民はこの映画でどれくらい"戦意高揚"させられたのでしょうか。この映画が封切られた11月23日の翌日には、アメリカ軍のB29による東京爆撃が始まっています(12月には東京爆撃本格化のため、映画館は日没後閉鎖されることになった)。
特殊撮影は東宝特撮部(円谷英二)が担当しており(撮影は宮川一夫)、迫力ある仕上がりになっていて、ラストの大暴雨風シーンなどはなかなかの出来だと思います(「ゴジラ」('54年/東宝)ではないが、モノクロ映画であるために逆に迫力が増すということもあるかと思う)。その部分においては今観ても結構楽しめるし、当時としても興行的にはヒットしたようですが、「戦意高揚」よりも「海戦スぺクタル劇」としての方のインパクトが大きかったのではないでしょうか。

「かくて神風は吹く」●制作年:1944年●監督:丸根賛太郎●製作:大日本映画製作株式会社●企画:情報局●後援:陸軍省/海軍省●脚本:松田伊之助/館岡謙之助●撮影:宮川一夫/松井鴻●音楽:宮原偵次/深井史郎●特撮 東宝特撮部・円谷英二●原作:菊池寛●時間:94分●出演:嵐寛寿郎/阪東妻三郎/片岡千恵蔵/市川右太衛門/月形龍之介/羅門光三郎/光岡龍三郎/原健作/嵐徳三郎/四元百々生/荒木忍/常盤操子/香川良介/津島慶一郎/山口勇/多岐征二/葛木香一/井原史郎/原聖四/高山徳右衛門/嵐徳三郎/大井正夫●公開:1944/11●配給:大映京都(評価:★★★) 
「日蓮と蒙古大襲来」('58年/大映)監督:渡辺邦男、主演:長谷川一夫

アメリカとソ連の宇宙船が謎の飛行物体に捉えられるという事件が起こり、米ソ間が一触即発の状態になるものの、英国の情報機関である MI6はその宇宙船が日本周辺から飛び立っているという情報を掴み、その真偽を確かめるために、ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)が日本に派遣されることになる。ボンドは敵の目を欺くため、英国の植民地の香港の売春宿で、情報部により用意された現地の女性リン(ツァイ・チン)の手引きによって、寝室になだれ込んだ殺し屋にマシンガンで銃撃され死んだことに。その後ビクトリア・ハーバー内に
停泊するイギリス海軍の巡洋艦上で水葬され、その遺体を回収したイギリス海軍の潜水艦で隠密裏に日本へ。日本上陸後は、蔵前国技館で謎の女アキ(若林映(あき)子)と会い、彼女を通じて日本の公
安のトップ・タイガー田中(丹波哲郎)に会うが、在日オーストラリア人の捜査協力者のヘンダーソンは直後に殺されてしまう。その殺し屋は大里化学工業の本社から送られた者だと知ったボンドは、化学薬品を取り扱うビジネスマンを装って大里化学工業の東京本社に赴き、大里社長とその秘書ヘルガ・ブラント(カリン・ドール)と接触する―。 (右:サンヨー・テレビ「日本」の梱包)
事件の背後にはスペクターの影があり、ボンドはタイガー田中の助けを得てスペクターの秘密基地に潜入、宿敵ブロフェルド(「大脱走」('63年)、「
Mie Hama as Kissy Suzuki in "You Only Live Twice"(1967)
最初は日本に潜入したボンドをリードする公安エージェントの女性役が浜美枝で、ボンドが地方に行って出会う海女のキッシー鈴木の役が若林映子だったそうで、この配役は「キングコング対ゴジラ」('62年/東宝)を観て浜を知ったスタッフからの若林映子と併せての指名だったとのことです(若林映子は個人的
には「
ということで、若林映子がエージェント(アキという役名になった)を演じ、浜美枝の方がキッシー鈴木役になったとのこと。但し、海女役になった浜美枝は、ロケ地に来て潜れないということが判明し、ショーン・コネリーに同伴していた妻の
キッシーが潜るシーンはスタントするなどしたとのことで、撮影に際しては結構ドタバタだった面もあったようです。
点では、昭和40年代前半の日本の風景を映し出していて貴重かも。都内では、旧蔵前国技館、銀座四丁目交差点、ホテルニューオータニなどで、地方では富士スピードウェイ、神戸港、 姫路城、鹿児島県坊津町などでロケをしています。日本的なものを都会と地方、現代と伝統の両面からピックアップしている意欲は買えますが、一方で、姫路城で手裏剣で塀を傷つけたりするなどのトラブルも生じさせています。
オープニングの影絵は浮世絵のイメージ? イアン・フレミングは親日家ではあったものの、日本文化に対する外国人特有の偏見や誤解もあり、あまりに奇異な見方であると思われる部分は丹波哲郎が撮影陣に進言して直させたりもしたようですが、ボンドと若林演じるアキや丹波演じるタイガーなど日本の公安との橋渡し役が横綱・佐田の山(!)だったり、タイガーの移動手段が地下鉄「丸ノ内線」の深夜の
専用車両(!)だったり(中野坂上駅でロケ。タイガーのオフィスは地下鉄の駅の「地下」にある。公安は顔を知られてはならず、そのため下手に地上を歩けないからというその理由がこじつけ気味)、さらに公安所属の特殊部隊が全員忍者装束(!)で日本刀を背負っていたりと、ち
ょっ
と飛躍し過ぎていて、さすがの丹波哲郎でも口を挟みにくかった部分もあったのか(まあ、いいかみたいな感じもあったのか)、結果として「!」連続の珍品で、ボンドが日本人に変装することなども含
め、現実味という観点からするとどうかなあと思わざるを得ません(非現実性はロアルド・ダールらしく、また007らしくもあるのだが。因みに丹波哲郎は、英語が不得手な浜美枝の降板を要請する英国側スタッフに対し、ここまできたらそれは難しいと交渉するくらいの英語力はあったが、発音は日本語訛りであったため、作中での本人の英語の台詞は吹き替えられている)。
まあ、かなりの部分を日本で撮影しているということで、映像的価値並びに珍品的価値(?)を加味して星半個オマケといったところでしょうか。アジア人が最初にボンド・ガ
ールになった作品であり、この次にアジア人ボンド・ガールが誕生したのは「
若林映子は、
ホテルのパーティに招かれた6人の男女客たちが、霧深い夜道を車を連ねて帰路に着く途中、竹原(鶴賀二郎)が誤って沼に落ちる。助けようとした
一平(西條康彦)も深みにはまり、後続車の万城目淳(佐原健二)と江戸川由利子(桜井浩子)、葉山(滝田裕介)と今日子(若林映子)が辛じて救出。霧が深くこれ以上車で先へ進めないので、淳たちはずぶ濡れの北原と一平をかかえて途方に暮れるが、沼の向う側に灯のついた洋館を発見、そちらに向かう。洋館の中は何十年も放置され荒れていたが、階上の方へ淳が行ってみると、そこで巨大なクモに突然襲われる。驚いて階投を転がり降りた淳は、九十年前いたという蜘蛛男爵の館みたいだと言う。その頃、地下のワイン倉庫にいっていた葉山は、例の巨大なクモに襲われ傷つく。淳たちは、はじめてここがまさに蜘蛛男爵の館であることに気づき、館から逃げ出そうとするが―。
洋館は、コラムニストの泉麻人氏も言っていましたが、アルフレッド・ヒッチコックの映画「レベッカ」('40年/米)に出てくる邸宅みたいな雰
囲気があって良かったですが、男爵の死んだ娘がクモになり、娘の死を悲しんだ男爵自身もクモになっていまったという話はやや強引か(まあ、「ウルトラQ」は"強引"なスト-リーが多いのだが)。この回の視聴率は35.7%と(「ウルトラQ伝説」等による)シリーズ全27話の中では上位にくる数字を出しています。このシリーズ、総天然色版でDVDが出ているので、それでもう一度作品を鑑賞するとともに、若林映子や桜井浩子のファッションを見直してみるのもいいかも。

「ウルトラQ(第9話)/クモ男爵」●制作年:1965年●監督:円谷一●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクション●脚本:金城哲夫●撮影:内海正治●音楽:宮内国郎●特技監督:小泉一●出演:佐原健二/西條
康彦/桜井浩子/若林映子/滝田裕介/鶴賀二郎/永井柳太郎/岩本弘司/石坂浩二(ナレーター)●放送:1966/02/17●放送局:TBS(評価:★★★) 
作:ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:

●原作:イアン・フレミング●時間:117分●出演:ショーン・コネリー/丹波哲郎/若林映子/浜美枝/ドナルド・プレザンス/島田テル/カリン・ドール/チャールズ・グレイ/ツァイ・チン/ロイス・マクスウェル/デスモンド・リュウェリン/バーナード・リー●公開:1967/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ (評価:★★★☆)




「キングコング対ゴジラ」('62年/東宝) 若林映子/浜 美枝(共演:高島忠夫)




この作品は1940(昭和15)年が神武天皇の即位から2600年に当たるとされる「皇紀二千六百年」であることの記念として、陸軍航空本部の全面協力のもとに制作されたもので(因みに零式艦上戦闘機、通称「ゼロ戦」などの命名由来も、採用年次の皇紀年代(下2桁)による)、日中戦争において活躍した戦闘機乗り達を描いています。ドラマ部分と飛行・戦闘シーンが交互に現れ、ドラマ部分は、この作品が戦闘において犠牲となった戦闘機乗り達「陸の荒鷲の英霊」への弔意を込めて作られていることから、(コミカルな場面もあるが)全体の色合いとしてははっきり言って暗めでしょうか。
一方、戦闘シーンは、日中戦争時に活躍した当時最新鋭の九七式戦闘機や九七式重爆撃機などの実機が大量に使用されており(この部分では国威発揚映画と言える)、スケールも大きく、迫力のあるものとなっており、円谷英二が特撮を担当していますが(本名・圓谷英一でクレジット)、特撮場面は少なく殆どが実写映像となっています。
冒頭は昭和11年(1936年)の陸軍航空飛行学校が舞台で、少年飛行兵の行本(月田一郎)、山村(大川平八郎)、佐藤(灰田勝彦)、田中(伊東薫)の仲の良い4人組を中心とする飛行兵達の日常から始まり、教官・山本大尉(大日方傳)と彼らの遣り取りなどが描かれますが、訓練シーンなどでは実際に飛行学校で起床している生徒達が大勢出演していると思われることから、戦争映画として、戦闘シーンなどとはまた異なる記録的価値があるように思いました。
話は昭和13年(1938年)に飛び、主人公の4人組は北支戦線の飛行戦隊仁禮(高田稔)部隊に配されおり、そこへ飛行学校時代の元教官・山本大尉が飛行中隊長として赴任してきて、ここでも教官と彼らの交流などが描かれます。
一方の戦闘シーンは、九七式戦闘機など実機を使って操縦席に撮影カメラを設置し、戦闘機操縦者目線で撮影しているためリアルそのもので、敵軍の中国空軍機にも、九七式より旧式の九五式戦闘機を使っています。
山村は敵機に撃墜され不時着するも(不時着シーンは、さすがにここは円谷特撮)やっとのことで行本に救出され、皆で生還を祝います。しかし今度は佐藤の乗る九七式重爆撃機(乗員7名)が撃墜されて佐藤以外は全員死亡、佐藤も腕を骨折しますが、片手で土を掘って死亡した機長・奈良大尉(佐伯秀男)を埋葬し、その後、拳銃で頭を撃ち抜いて自決したことが山本大尉から行本、山村に伝えられます。
4人組の内、田中は既に名誉の戦死を遂げており、佐藤に続き、今度は行本が敵機の攻撃を受けて行方不明になって、結局何とか帰還するも、滑走路に激突するようなかたちで着陸、瀕死の重傷を負って彼自身が既に死を覚悟している―山村らが行本を看取る場面が作品のクライマックスとなっており、こうなると、戦意高揚映画と言うよりは、戦争の悲劇を主題に据えた作品に思えなくもありません(実際、あまりに悲惨なため、佐藤が撃墜された場面は生かしたものの、その最期はリアルタイムの話として撮ったものをカットし、山本大尉の口伝に置き換えられたらしい)。
乗り越えようとしているように思われましたが、それは容易ならざることであったことが窺えます。時代とリアルタイムでこうした作品が作られていることに意義を感じました。
実機を使って撮影しているということで、戦闘機ファンの間でも高い評価を得ている作品ですが、この映画で活躍する九七式戦闘機(右)は、2年後に
作られた山本薩夫監督の「翼の凱歌」('42年/東宝)では、一式戦闘機「隼」にあっさり追い抜かれてしまいます(当時を知る人の中には、よく九七式戦闘機のようなもので戦ったものだと述懐する人もいるくらい)。それでも、固定脚ながら見事にアクロバティックな飛行をこなす九七式戦闘機を(加えてより旧式の九五式戦闘機(左)も)じっくり見ることが出来るという意味では稀有な作品であり、確かに戦闘
シーンの迫力も素晴らしいものです。しかしながら、やはりそれを操縦しているのも生身の人間であることを思うと、個人的には人間ドラマの方にウェイトを置いて観てしまいます(女性が一人も登場しない作品なのだが)。
山村を演じた大川平八郎(ヘンリー大川、1905-1971、当時35歳)は、埼玉・草加出身で、実業家になる修行ために1923年に18歳で渡米して、コロンビア大学で経済学を勉強したという人。それまでの間に皿洗いをしながら好奇心からコロンビア大学の劇科にも学び、同大学に併設された俳優養成学校の一期生となって、ハワード・ホークス監督の「空中サーカス」('28年)などに出演しました(俳
優学校の同期にゲーリー・クーパーらがいる)。日本国軍人としてフィリピン駐留中に終戦を迎えた彼は、語学堪能ということもあって降伏の際に山下奉文司令官の通訳を務め、戦後は「
更に、監督の阿部豊(1895-1977)も、1912年に17歳でロサンゼルス在住の叔父をたよって渡米した人で、演劇学校を経てハリウッドに渡り、ハリウッド無声映画期の俳優としてジャック・アベ(Jack Abbe)の芸名で活躍していて、俳優としても大川平八郎より先輩になるわけですが、フランク・ボーゼージ監督などに演出術を学び、映画監督になるべく帰国して1925(大正15)年に日活に入社、翌年には「足にさはった女」というハリウッド風のソフィスティケート・コメディを撮っています(彼自身がアメリカで「Mystic Faces」(1918)などのコメディ映画に出演していた)。
ゆる大空」でも、少年飛行兵生徒らの訓練や生活の様んでいくわけであって...)。一方、長谷川一夫が飛行部隊附軍医の役で出演しているのは、女性が全く登場しない映画であるため、女性客の集客を考慮したのだとも言われています。音楽は早坂文雄が担当、主題歌「燃ゆる大空」の作曲者は山田耕筰となっています。
「燃ゆる大空」●制作年:1940年●監督・製作:阿部豊●監修:陸軍航空本部●脚本:八木保太郎●撮影:宮島義勇●特殊技術撮影:円谷英二/奥野文四郎●音楽:早坂文雄●主題歌「燃ゆる大空」作詞:佐藤惣之助/作曲:山田耕筰●原作:北村/高田稔/龍崎
小松●時間:102分●出演:大日方傳/月田一郎/大川平八郎/灰田勝彦/伊東薫/長谷川一夫一郎/藤田進/柳谷寛/佐伯秀男/清川荘司/三木利夫/真木順/深見泰三/原聖四郎/中村彰/社栄一/沢村昌之助/沼田春雄/島壮児/谷三平●公開:1940/09●配給:東宝東京(評価:★★★★)


三沢(勝呂誉)は久しぶりに会った友人・鬼島明(山中紘)の家でくつろいでいたが、家の前で偶然見かけた鬼島の父・竹彦(浜村純)の話をした際の鬼島夫妻の様子から、鬼島と竹彦の間に確執があることが窺えた。急にテレビの映りが変になったところで話にキリをつけ、三沢は鬼島の誘いで一泊することに。その夜、三沢は就寝中に何者に襲われ、手に傷を負う。同じ頃、帰宅途中のサラリーマンが刃物で殺害され、三沢は手の傷から事件の容疑者となってしまう。証拠不十分で釈放された三沢だが、その帰り道にまたも何者かに襲われる。三沢の事件を知った鬼島は一人暮らしの父の家を訪ねるが、竹彦は会おうともせず、一人"子供部屋"に戻り、ベビーベッドに横たわる何かに向かって話しかけるのだった。翌晩、竹彦の家を見張っていた三沢は、酒に酔った竹彦をタクシーで家まで送り届けた女性に会うが、女性を自分の車内に残して竹彦を自宅に送る間に、女性は何者かに襲われ、三沢は自宅に逃げ帰った彼女の後を追うが、女性の部屋に着くと女は既に息絶えていた。三沢はまたも容疑者にされるが、これも証拠不十分で釈放に。自分が襲われた晩に鬼島宅でテレビ画像が乱れたことを警察の町田警部(小林昭二)に告げ、それが警察の今回の事件の聞き込みと一致したことから、犯行時にテレビ画面を乱すほどの強力な電波が出ていることが判明、調べてみると、その電波の発信源は竹彦の家だった―。
「怪奇大作戦」は円谷プロダクションが制作し、TBS系で1968(昭和43)年9月から1969(昭和44)年3月まで毎週日曜日19:00-19:30に全26話が放送された、SRI(科学捜査研究所)の活躍を描いた特撮テレビドラマ。2007年にNHKデジタル衛星ハイビジョンで「怪奇大作戦 セカンドファイル」(全3回)、2013年にNHK-BS2で「怪奇大作戦 ミステリー・ファイル」(全4回)としてリメイク放映されて、この間BS-2などでオリジナルの再放映もされています。オリジナルは最初の方、回が浅い間はやや方向性がバラバラだったような感じでしたが、この第7話「青い血の女」辺りになると、大体定まってきたかなという感じでした。
サラリーマン、三沢、女性を襲ったのは《殺人人形》で、早くから画面に登場しますが、これは完全に機械仕掛けのからくり人形。その殺人人形を操っているのは誰なのか。ラストで警察が竹彦の部屋に踏み込む際に、竹彦は、ここには4歳の女の子がいるだけだと拒みますが、そこで彼らが見たものは―。
う~ん。竹彦は、自分を見捨てていく子どもたちの代わりに《女の子》を作って(高額の特許料で生活しているようだから発明家なのだろう)これを偏愛していたけれど、その《女の子》が老人である竹彦に代わって老人を見捨てる者を襲っているうちに"彼女"も自我を持つようになるとともに成熟し、竹彦から自由になりたいと考え、「あたしも老人を捨てて独立するの。だから、あたしも殺さなきゃ...」ということで"自殺"することになるわけか。なかなか凝ったレトリックだったなと思います。
「青い血の女」というタイトルから成熟した女性が出てくると思われがちですが、結局"自我を持った人形"だったわけで(老人の少女愛、人形愛というのは川端康成っぽい?)、但し、自殺して「血を流した」という意味においては半ば"人間"であり、しかしながら「血が青かった」という意味では"人間"ではなかったという、こうしたレトリックにおいても、シリーズの中では佳作とされるべきものではないかと思います。
この「青い血の女」は大井武蔵野館で観ましたが、併映作品の1つに「恐怖劇場アンバランス(第9話)死体置場(モルグ)の殺人者」('73年/フジテレビ、長谷部安春監督)がありました。「恐怖劇場アンバランス」は円谷プロが「怪奇大作戦」に続いて制作した本格オムニバスホラーの1時間ドラマで、「ウルトラQ」の企画時のタイトルだった「ア
ンバランス」を冠しており、「怪奇大作戦」のSRIのようなレギュラーメンバーがおらず「ウルトラQ」のようなスタイルで、内容的には「怪奇大作戦」にも増して大人向けの色合いが濃くなっています。内容が過激で、台本の段階かそれ以前でストップし放映されなかったものが幾つかあり、おおよそ3年のお蔵入り期間を経て放映された13話のうち、制作No.7まではオリジナル脚本によるホラー路線で、制作No.8以降は原作付きのサスペンスに路線変更しています(放映順は制作順と異なる)。その原作者というのが、円地文子、西村京太郎、松本清張、山田風太郎、仁木悦子、樹下太郎といった錚々たるメンバーで、監督も、まだ巨匠扱いされる以前の鈴木清順、藤田敏八、神代辰巳、黒木和雄あたりだったりします。また、作り手として知られる人たち(大和屋竺、蜷川幸雄、唐十郎)が主演俳優として出演しているのも、今観ればレア感があります。
この第9話「死体置場(モルグ)の殺人者」(制作No.3)のあらすじは―
というもので、背景が「白い巨塔」('66年/大映)みたいで、水上と涼子(演じるのは元「プレーガール」メンバーの西尾三枝子)のベッドシーンもあったりして、完全に大人向けになっています。ゾンビなった村田が脱がされた背広をまた着直しているし(結局、水上の妄想か。但し、ゾンビ村田は涼子の前にも現れるし、更には自宅にも)、包帯ぐるぐる巻きになって家に帰ったのに、村田の妻が「あなたどうしたの?」程度にしか驚かないし(これは人が死ぬ前に近しい者の前に現れるという超常現象か)、野坂昭如(特別出演)演じる、水上の教授昇進祝いに水上宅に来ていた友人「
坂野」が、唐突に死体が甦る話をし始める(しかもセリフ棒読み)違和感など、突っ込みどこ
ろは多いですが、怪奇モノ(怪談×モダンホラー)としてはオーソドックスだったでしょうか、いや、オーソドックスと言うより"ベタ"と言うべきか。あくまで今観て思うことで、リアルタイムで見ていた頃は結構怖がって観ていたかもしれません(そのことを加味して、星半分オマケ)。

![怪奇大作戦2 [VHS].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E6%80%AA%E5%A5%87%E5%A4%A7%E4%BD%9C%E6%88%A62%20%5BVHS%5D.jpg)
「怪奇大作戦(第7話)/青い血の女」●制作年:1968年●監督:鈴木俊継●監修:円谷英二●制作:円谷英二●脚本:若槻文三●特技:高野宏一●音楽監督:山本直純●音楽:玉木宏樹●出演:勝呂誉/原保美/岸田森/松山省二/小橋玲子/小林昭二/山中紘/浜村純●放送:1968/10/27●放送局:TBS●最初に観た場所(再見):大井武蔵野館(83-03-24)(評価:★★★☆)●併映:「恐怖劇場アンバランス(第9話)死体置場(モルグ)の殺人者」(長谷部安春)/「ウルトラQ/東京氷河期」(野長瀬三摩地)/「怪奇大作戦/死神の子守歌」(実相寺昭雄)
「恐怖劇場アンバランス(第9話)/死体置場(モルグ)の殺人者」●制作
年:1969年(制作№3)●監督:長谷部安春●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクシ
ョン/フジテレビ●脚本:山浦弘靖●音楽:冨田勲●出演:久富惟靖/西尾三枝子/向精七/渥美国泰/柳川慶子/高杉哲平/熊倉重之/鈴木勇作/小池泰光/酒井郷博/宮島邦継/斉藤リカ/倉石和
旺/野坂昭如(特別出演)/中原早苗/高橋幸雄●放送:1973/03/05●放送局:フジテレビ●最初に観た場所(再見):大井武蔵野館(83-03-24)(評価:★★★☆)●併映:「怪奇大作戦(第7話)/青い血の女」(鈴木俊継)/「ウルトラQ/東京氷河期」(野長瀬三摩地)/「怪奇大作戦/死神の子守歌」(実相寺昭雄)


矢)/松山省二(野村)/小橋玲子(小川)/小林昭二(町田)●放映:1968/09~1969/03(全26回)●放送局:TBS




「
'60(昭和35)年の東宝作品で、「透明人間」('54年)から「美女と液体人間」('58年)へと続いた東宝「変身人間シリーズ」の集大成とも言える作品であり、円谷英二が特撮監督を務めていますが、特撮部分は水野がガス人間化するところしかなく(ガス人間の鉄格子すり抜けは「ターミネーター2」('84年/米)でジェームズ・キャメロンがパクったという話もあるが)、特撮映画には違いないものの、「特撮」乃至は「スリラー」と言うよりもむしろ「異形の愛」を描いた人間ドラマに比重が置かれています。
八千草薫(1931-2019)が凛とした舞踏の家元を演じて美しく、水野との愛に殉ずる覚悟で踊り続ける"道行き"的なラストは、哀切感溢れるものとなっていますが、ガス人間を演じた土屋嘉男(1927-2017)の演技も、傲岸且つニヒルな中にも、自らが得体の知れないガス人間であるということからくる翳を秘めていて、しかも一女性に愛を捧げるという、なかなか味のあるものとなっています(どちらかと言うと、ガス人間を愛する藤千代の方が愛の「異形」度が高いかも)。
土屋嘉男は、黒澤明監督に目をかけられて「七人の侍」('54年)に出演して以来、黒澤作品に出続けた一方で、
本多猪四郎監督の「ゴジラ」('54年)の撮影現場を個人的興味から見学に行って、やがて東宝特撮映画の常連にもなったという変わり種であり、同じ「東宝」ではありますが、「黒澤組」と「本多組」の両方に属していたような人です(志村喬、藤田進などもそうと言えるが)。
出演した東宝特撮映画の数はかなり多く、中でも「ガス人間第一号」の3年前の'57(昭和32)年の「
因みにこの「ガス人間第一号」には今でも根強いファンがいて、土屋嘉男がガス人間に変身するところのフィギアなども商品化されています。
「ガス人間第一号」●制作年:1960年●製作:田中友幸●監督:本多猪四郎●特技監督:円谷英二●脚本:木村武●撮影:高橋通夫●音楽:宮内国郎●時間:91分●出演:三橋達也/佐多契子/八千草薫/左ト全/土屋嘉男/伊藤久哉/田島義文/小杉義男/三島耕/松村達雄/村上冬樹/佐々木孝丸/山田巳之助/松村達雄/宮田羊容/野村浩三/山本廉/松本染升/堤康久/山田彰/広瀬正一/中村哲/塩沢とき●公開:1960/12●配給:東宝(評価:★★★☆)

地球軌道上の宇宙ステーションが謎の円盤の攻撃を受けて破壊され、地球上でも世界中で鉄橋や汽船が宙に浮き、凍結した海水が舞い上がるなどの怪奇現象が発生、急遽、国際会議が開かれて調査が行われ、それらは無重力状態を生み出す冷却光線を操るナタール人の仕業であり、ナタール人は既に月面に基地を建設し地球侵略の準備をしていることが判明する。ナタール人基地を破壊するため、勝宮一郎博士(池部良)ら科学者によって編成された攻撃隊が原子力ロケット2機で月へ。ナタール人の基地を発見し、攻撃して打撃を与えるが、ナタール人に操られた岩村(土屋嘉男)が味方ロケット1機を爆破し、残る1機にも危機が迫る。しかし、ナタール人の洗脳が解けた岩村が追撃を食い止め、月からの脱出に成功、地球へ帰還する。迫り来る決戦の時に向け、地球では大気圏外でナタールの円盤を迎撃する戦闘ロケットが建造され、やがてナタール円盤群が地球へ向かって来襲、壮絶な戦いが始まる―。
日本初の宇宙人の侵略をテーマにした特撮SF作品「
「絶対零度近くにまで冷却された物体は無重量となる」とか「月面の一部に希薄な大気が存在する」といった、当時の段階で既に科学的には誤りであると
判明していたり、当時から曖昧だった学説を援用したりするなどの乱暴な点はありますが(ホバークラフトで月面を移動する場面がある!)、ナタール人の基地があるという想定の月の裏側の様子を、ソ連の無人探査機「ルナ3号」が当時世界で初めて撮影に成功した月面裏側の写真に基づき描くなど、科学性へのこだわりは随所に見られ、月に人類が到達する10年も前にしては、月面やそこを歩行する隊員の様子をよく描いていると思います。
三原山で撮影されたという月面歩行する隊員の無重力状態でのふわっとした跳ね方は、出演者の一人・土屋嘉男の発案によるもので、土屋嘉男は10年後にアポロ11号の月面着陸の様子をテレビの衛星中継で観て「間違ってなかった」と思ったそうな。因みに土屋嘉男は、前作「地球防衛軍」で日本映画で初めて宇宙人を演じた俳優になりましたが、今回はまともに"人間の役"でした。

当時"文芸路線"俳優だった池部良(1918-2010/享年92)がSF映画に出ているのが珍しく、その池部良とのしっとりしたラブシーンもある安西郷子(1934‐2002/享年68)は、エキゾチックな面立ちの美人女
優でしたが、この作品の2年後、「ガス人間第1号」('60年/東宝)で主演した三橋達也(1923-2004/享年80)と結婚して芸能界を引退しています。


「宇宙大戦争」●制作年:1959年●製作:田中友幸●監督:本多猪四郎●特技監督:円谷英二●脚本:関沢新一●音楽:伊福部昭●原作:丘美丈二郎●時間:91分●出演:池部良/安西郷子/千田是也/土屋嘉男/伊藤久哉/
村上冬樹/ジョージ・ワイマン/レオナルド・スタンフォード/ハロルド・コンウェイ/エリス・リクター/桐野洋雄/野村浩三/エド・キーン/堤康久/加藤茂雄/沢村いき雄/旗持貴佐夫/上村幸之/高田稔/熊谷二良/手塚勝巳/津田光男/岡部正/レオナルド・ウェルチ/緒方燐作●公開:1959/12●配給:東宝(評価:★★★☆) 


天体物理学者の白石亮一(平田昭彦)が村祭りの日に謎の山火事とともに姿を消した数日後、白石の妹・江津子(白川由美)の恋人である渥美譲治(佐原健二)は白石から託されたレポート「遊星ミステロイドの研究」を中央天文台・安達博士(志村喬)に届ける。そこへ、白石が住んでいた村で山崩れが起きたとの連絡が入り、渥美は調査団の一員として村に向かうが、村からは放射能が検出される。村の異常現象を調査中に、山から金色の巨大ロボット怪獣(モゲラ)が出現し、村落を破壊しながら侵攻を開始したため、対策本部が設置され、自衛隊の攻撃部隊はモゲラに総攻撃をかける。そして、モゲラ侵攻中に謎の円盤が―。
遊星人が最初に地球侵略のために送りこんだのがモグラ型ロボット「モゲラ」で(そもそも戦闘用ではなく土木用ロボット。元々は平和な星だった)、重装備が昂じてちょっと滑稽なヒヨコ体型になっているのがご愛嬌。白川由美(1936-2016)が入浴中のところへモゲラが迫るというのは、お父さん向けのサービス?
昭和32年制作という古さをあまり感じさせないのは、全体のモダンなトーンもさることながら、この戦闘シーンのレベルの高さによるもので、戦争中に作られた戦意昂揚映画での戦闘機の空中戦シーンなどの際に円谷英二自身が駆使した技術や創意工夫の蓄積が、ここに開花したという感じでしょうか。






白川由美 in「美女と液体人間」(1958年)


太平洋戦争初期に南方戦線で活躍した陸軍飛行第64戦隊(通称「加藤隼戦闘隊」)を率いた加藤健夫中佐の活躍と人柄を描いた伝記映画であるとともに、軍部の協力の下、実戦機による空中戦など迫力のある映像で描いた戦争アクション映画であり、1944(昭和19)年の年間観客動員数1位となった作品。
冒頭の1941(昭和16)年4月の広東に、第64戦隊の戦隊長として加藤建夫少佐(当時)(藤田進)が九七式戦闘機を駆って着任するところからカッコ良く、数ヶ月後、部隊には一式戦闘機(隼)が配備され(国内初の車輪が機体に格納できる「引込脚」の戦闘機だった)、加藤は隼の特性把握も兼ねて、単機南シナの偵察に出向いたりして、その大胆さで隊員らを驚かせます。
1941(昭和16)年12月初旬には部隊はフコク島へ転進、マレー半島攻略戦を実施する山下奉文の部隊の哨戒任務を与えられ、帰路の夜間飛行で仲間を失った加藤は大いに悔みますが、直後に海軍が真珠湾攻撃に成功、悲しみに浸る間もなく加藤の戦隊はコタバルへ転進し、クアラルンプール爆撃の軽爆隊の援護任務にあたり、そこで隼戦闘機での初の空戦を行って戦果を上げます。以降、加藤隼戦闘隊は目覚ましい戦果を上げ続けますが、映画ではそうした部分はニュース映像的に簡潔に伝えるだけで、前半部分のかなりは、加藤の豪放磊落で、かつ部下想いの人間味溢れる人柄の描写に割かれています。
隼戦隊というスペシャリスト軍団の中でも、隊長自身が更に一段と秀でた技術を備えているということは、スペシャリスト軍団を率いるうえで大きなリーダーシップ要因となったと思われますが、「撃墜王」「空の軍神」と呼ばれながらも、すでに40歳近かった加藤自身がどれだけ最前線で戦ったのかはよく分かっていません(映画では、敵機に囲まれ窮地にある味方軍を、加藤が単機で援護する場面などがある)。
但し、加藤の人間性の部分は、映画に描かれている通りの責任感が強い温かな人柄であったようで、20歳前後の若者が多く配属されていた部隊で、部下を自分の息子たちのように大事にし、敵機の攻撃により被弾し帰還できない者が出ると、号泣して兵舎の外に立って帰らぬ部下をいつまでも待ち続けていたとのことで、部下からの信頼や慕われ方は相当のものだったようです。
「戦意昂揚」映画の外形をとりながらも、山本嘉次郎監督はそうした加藤の人柄にスポットを当てることで、巧みにヒューマンな作品に仕上げており、また、藤田進演じる加藤が、時に剽軽なオッサンぶりを見せたり、時に博識ぶりや洒落たセンスを見せたりと、なかなか多彩な味があって良く、少なくともこの映画での加藤の描かれ方は「軍神」という近寄り難い雰囲気ではありません(山本嘉次郎自身が撮りたかった映画を撮ったという感じ)。
この映画の後半の見所は戦闘シーンで、殆どがオリジナルフィルムであり、本物のパイロットが本物の戦闘機を駆ってい編隊飛行などを見せるほか、1942(昭和17)年2月の陸軍落下傘部隊のパレンバン攻略戦を、実戦さながらのスケールで再現してみせています(これは軍の協力がなければ出来ないことだが)。
年代設定は1941(昭和16)年から1942(昭和17)年にかけてであり、同じく「隼」を中心に据えた山本薩夫監督の「翼の凱歌」('42年/東宝)と比べてみると興味深いかもしれません(リアルタイムでみれば共に胴体に日ノ丸のない「一式戦一型」のはずだが、「翼の凱歌」の2年後に作られたこの作品では、年代設定は「翼の凱歌」より少し前でありながら、胴体に日ノ丸のある「一式戦二型」が登場して編隊飛行などを行っている)。
更に戦闘機同士の空中戦や空爆シーンは、円谷英二特技監督による精巧な特殊撮影が織り込まれていて、どこまでが実写でどこまでが模型なのか見た目では分からないぐらいリアル。戦後の怪獣映画の特撮シーンの基礎は、こうした作品で培われたことを窺わせるとともに、円谷英二もまた、自分がやってみたかったことを映画作りの中でやったという側面もあるのではと思ったりもしました。
1942(昭和17)年5月、出先基地から出撃した味方機が途中で不時着し、部下の身を案じて基地からの引き揚げを躊躇っていた矢先に基地は敵の爆撃を受け、急遽追撃した加藤は敵機を撃墜するも敵弾を受け、反転して海中に自爆(多分、帰還が不可能であることを悟ったのだろう。これは部下に普段から話していた「確実に死ねる」方法だった)、38歳で戦死しました(彼の最期の場面は映画には無い)。
加藤はすでに生前から「空の軍神」と呼ばれていたぐらいで、死後ますます「軍神」として祭り上げられることになりますが、彼自身はそんな類の名誉を望んでいなかっただろうし、こんないい人でも死ななければならない、という「戦争というのはやっぱり嫌だなあ」という気持ちの方が見終わった後に残る、ある意味アイロニカルな「戦意昂揚」映画のように思えました。
一方、優秀な戦闘機パイロットに対する憧憬は戦後も長くあったようで、「隼」と並ぶ日本の戦闘機「0戦」「紫電改」をそれぞれ素材とした、辻なおきの「0戦はやと」(「週刊少年キング」(1963(昭和38)年7月8日創刊号から1964(昭和39)年第52号まで掲載)、ちばてつやの「紫電改のタカ」(1963(昭和38)年から1965(昭和40)年まで「週刊少年マガジン」に連載)といったマンガがありました。
この内「0戦はやと」は、TVアニメとして、1964(昭和39)年1月21日から10月27日までフジテレビ系で放送され、脚本には倉本聡氏などが携わっています(「見よ、あの空に 遠く光るもの あれはゼロ戦 ぼくらのはやと 機体に輝く 金色(こんじき)の鷲 平和守って 今日も飛ぶ ゼロ戦 ゼロ戦 今日も飛ぶ」というテーマソングの作詞も倉本聡氏)。
![0戦はやと [VHS].jpg](http://hurec.bz/book-movie/0%E6%88%A6%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%A8%20%5BVHS%5D.jpg)

「0戦はやと」(テレビアニメ版)●演出:星野和夫●製作:鷺巣富雄●脚本:倉本聡/鷺巣富雄/河野詮●音楽:渡辺岳夫●原作:辻なおき●出演(声):北条美智留/朝倉宏二/大塚周夫/田の中勇/家弓家正/大山豊/河野彰●放映:1964/01~10(全38回)●放送局:フジテレビ



1940(昭和15)年11月公開の山本嘉次郎(1902-1974)監督作。ベース・ストーリーはオリジナル通りですが、登場人物全員が歌いながら芝居をするオペレッタ形式であ
り、戦時色の濃い中で制作された戦前最後にして最大規模のドタバタ・ミュージカル・コメディと言えるものです。'36年1月に日本劇場でデビューした「日劇ダンシングチーム」総動員のレビュー風の踊りがオープニングから見られ(まるで「
中国ロケを敢行していて中国人俳優も出演していますが、ハリウッド映画のパロディなどもあり、バタ臭い印象が強いのはそのためでしょうか。それでいて、悟空を演じるエノケンの喋りがもろ江戸弁で、エノケン自身がこれまで演じてきた「鞍馬天狗」や「近藤勇」のパロディもあったりするため、もはや国籍不詳という感じ。しかも、最後はSF風になって「未来国」へ行くという、もう何でもありの世界です(そもそも、悟空の移動手段であるキン斗雲がプロペラ戦闘機に置き換わっており、特殊撮影はあの

犬に姿を変えられてしまった少女に、当時人気絶頂の国民的アイドル・高峰秀子(当時16歳)、その国の案内役の少女・袖珍に天才子役として人気のあった中村メイコ(当時6歳)といった具合です。
中村メイコの袖珍(いつも小脇に百科辞典を抱えている)は、金角・銀角らの頭脳交換機で記憶を奪われ虚脱状態になった孫悟空らに、ホウレン草の缶詰を与えて元気を回復させるという、これもまた日米開戦直前の作品であるにも関わらず「ポパイ」のパロディで(実際ポパイのテーマ曲が流れる)、「ポパイ」は、'59年から'65年までTBS「不二家の時間」でテレビ放映されたアニメですが(後番組は「オバケのQ太郎」)、ポパイというキャラクター自体は日本でも戦前からよく知られていたようです。



「エノケンの孫悟空」●制作年:1940年●監督・脚本:山本嘉次郎●製作:東宝東京●制作:滝村和男●撮影:三村明●特殊技術撮影:円谷英二●音楽:鈴木静一●原作:山形雄策●時間:135分●出演:榎本健一/岸井明/金井俊夫/柳田貞一/北村武夫/高勢実乗/土方健二/中村是好/如月寛多/三益愛子/高峰秀子/中村メイ子/徳川夢声/服部富子/渡辺はま子/李香蘭(山口淑子)/伊達里子/千川照美/藤山一郎●公開:1940/11●配給:東宝映画(評価:★★★☆)



山水建設設計部勤務の田丸圭太郎(谷啓)は母・久子(京塚昌子)との母ひとり子ひとりの暮らし。溺愛する「ガマラ」人形を見ていると、いつの間にかガマラが巨大化して動き出し、その背中に乗って空を飛ぶ白日夢を見るほどの空想家だった。空想の中ではいつも大活躍するが、現実の仕事は失敗ばかりで、同じ設計部の二枚目・前野(宝田
明)にいつも先を越され、いいところがない。その挙句、守衛に格下げされ、更には機密書類を盗まれために産業スパイの疑いを掛けられてしまう―。
昨年('10年)9月に亡くなった谷啓(1932-2010/享年78、自宅階段から転落して脳挫傷により急逝。認知症を患っていた)の主演映画で、12月の「銀座シネパトス」での追悼上映ラインナップにもあった作品ですが、ほぼ同時期に日本映画専門チャンネルでも放映されました。クレージー・キャッツ(故人はハナ肇、植木等、安田伸、石橋エータロー、そして谷啓。存命は2011年4月現在、犬塚弘、桜井センリの2人)らが総出演するシリーズ映画は、60年代を中心に撮られたものだけで25,6本ありますが、一方で、こうした谷啓主演の番外編的な映画も何本かあったのだなあと。アメリカのボードビリアンであるダニー・ケイの映画「虹を掴む男」('47年)を下敷きにしているとのことで、ダニー・ケイから芸名をとった谷啓の意向がかなり反映されているのではないかと思われます。
監督は「
早稲田大学で心理学を教えていた
その慎太郎氏は、'69年に『スパルタ教育―強い子どもに育てる本』(カッパ・ホームズ)を著していて、その中には「ヌード画を隠すな」「いじめっ子に育てよ」「子どもに酒を禁じるな」「子どもの不良性の芽をつむな」とかいろいろ激しいフレーズがありますけれど、これで「強い子ども」が育つのかなあ。実際に育った3人の息子達は、そんな図太い感じはしないけど、この偽悪的とも思えるポーズは、弟の裕次郎を意識したのではないかと(実際、裕次郎主演で映画化されている―と言っても、元が小説ではないので、脚本は書き下ろしだが)。
「空想天国」●制作年:1968年●監督:松森健●製作:渡辺晋●脚本:田波靖男●撮影:西垣六郎●音楽:萩原哲晶●時間:84分●出演:谷啓/京塚昌子/奈加英夫/酒井和歌子/宝田明/北あけみ/藤岡琢也/佐田豊/藤
木悠/権藤幸彦/田中浩/木村博人/西岡慶子/中川さかゆ/矢野陽子/矢野間啓治/沢村いき雄/藤田まこと/頭師孝雄/中山豊/ハナ肇/桜井センリ/田崎潤/荒木保夫/ハンス・ホルネフ/小松政夫/豊浦美子/田辺和佳子●日本公開:1968/08●配給:東宝(評価:★★★)●併映:「連合艦隊司令長官 山本五十六」(丸山誠治) 

「連合艦隊司令長官 山本五十六」●制作年:1968年●監督:丸山誠治●特技監督:円谷英二●製作:田中友幸●脚本:須崎勝彌/丸山誠治●撮影:山田一夫●音楽:佐藤勝●時間:128分●出演:山本五十六(連合艦隊司令長官):三船敏郎/辰巳柳太郎/荒木保夫/堤康久/佐田豊/若宮忠三郎/豊浦美子/中谷一郎/伊吹徹/黒部進/黒沢年男/八世松本幸四郎/平田昭彦/土屋嘉男/藤木悠/佐原健二/田島義文/坂本晴哉/今福正雄/柳
山健二郎/佐々木孝丸/清水将夫/宇留木康二/江原達怡/船戸順/(ナレーター)仲代達矢●日本公開:1968/08●配給:東宝(評価:★★★)●併映:「空想天国」(松森健) 






山に住む優しいフランケンシュタイン「サンダ」と、海に住む凶暴なフランケンシュタイン「ガイラ」の兄弟対決で(実際には"兄弟"ではなく同じ遺伝子を持つ"分身"。今で言うところの「クローン」)、古事記の海幸彦・山幸彦神話がベースになっていることはすぐに分かるのですが、それでも観ていてぐっとのめり込むぐらいストーリーはよく出来ています。
兄サンダが弟ガイラを"叱る"(?)のは、ガイラが人間を喰ってしまったからで、小さい頃に人間に育てられたサンダには(この作品は、前年に公開された「フランケンシュタイン対地底怪獣」('65年)のの姉妹編となっている)、人間への恩義があるのか。とは言え、兄弟の情もあったりして...不肖の弟を持ったサンダは悩ましいところです。
個人的には、田舎の小学校に転校した頃、学校の体育館で(所謂"体育座り"して)観せられたのが「フランケンシュタイン対地底怪獣」で、その姉妹編であるこの作品はちゃんと(?)劇場でを観た記憶がありますが(「

今顧みても、特撮の水準は歴代怪獣映画の中ではなかなかのものではなかった思われ、この日米合作映画はアメリカでは今でもカルト的な人気があるそうです(ブラッド・ピットが、2012年2月26日に行われた第84回アカデミー賞
の授賞式で、生まれて初めて観た映画で感動したと本作への愛を語り話題となった。後出のクエンティン・タランティーノ監督も「キル・ビル Vol.2」のブライドとエルの格闘シーンに本作を参考するなど、この作品のファンである)。古事記神話のことは彼らはおそらく知らないと思いますが、水野久美についてはアメリカにも熱烈なファンがいると聞きます。
「ウエスト・サイド物語」('61年)でジェット団の首領リフを演じたラス・タンブリンが科学者ポール役で出ていたりしますが、タンブリンはいつも定時の撮影後は共に来日した妻とホテルへ直帰し、食事の交歓の誘いも一切断るなど、「

同じ頃に、 「海底大戦争」('66年)と
いうのも"観せられ"、これは東宝ではなく東映映画で、原案はSF作家の福島正実(1929-1976/享年47)、監督は佐藤肇(1929-1995)。これも日米合作映画であり、出演者は外国人の方が多いのですが、主演は千葉真一でした。
これはマジ恐かったあ。特にマッドサイエンティストに捕まったペギー・ニール演じるヒロインの外国人女性記者が半魚人にされかけるところ。皮膚が半分ウロコ状になってもうだめかと...。
徒もいたみたいで、自分自身もその後大人になって「大井武蔵野館」あたりでだと思いますが観る機会はあったものの、あまり再見する気にならなかったのは、当時その1人だったからかもしれません(今、予告編などを見るとそれほどでもなく、正直、ちょっと評価不能という感じか)。これもまた、クエンティン・タランティーノ監督など海外にも熱烈なファンが多い作品なのですが...。
因みに、千葉真一は、この「海底大戦争」に出ていた頃まではアクション映画やヤクザ映画への出演が主で、出演本数の割には一般にはそれほど知名度の高い俳優ではありませんでしたが、「海底大戦争」出演の2年後の'68(昭和43)年からスタートしたテレビドラマ「キイハンター」に主演、一躍人気スター俳優となり、番組自体も視聴率は30パーセントを超え、当初1年の放送予定だったのが5年も続き、放映回数は262回にまで達しました(これ、丹波哲郎の代表的な作品でもあると思うのだが)。
一田舎に限ったものではなく、ある種の"世界標準"だったのでしょうか(「ミツバチのささや

(●「ミツバチのささやき」は、スペイン内戦がフランコの勝利に終結した直後、1940年の中部カスティーリャ高地の小さな村を舞台に6歳の少女アナと彼女の家族たちの日常を描いたビクトル・エリセでエリセのデビュー作で、2024年6月23日、新文芸坐にて約40年ぶりに鑑賞した。一人の少女が体験する現実と空想の交錯した世界を繊細に描き出した作品であるが、同時に反戦映画(政府批判映画)でもある。父親がミツバチの研究に夢中で、母親はいつも誰かに手紙を書いているが、その相手が内戦で離れ離れになった愛人だったことに改めて気づいた。
評論家の弁を借りれば、廃墟の周りの荒涼とした風景はフランコ政権成立当初のスペインの孤立感を示しているとも言われ、無口な父親は、フランコ独裁政権下で沈黙してしまったインテリ層、手紙を書き続ける母親は、過去を懐かしむだけの層を表し、炎(=暴力)と戯れることも厭わない姉イザベルは、現政権を甘受している若者層を、或いは(彼女は1つ嘘をつくため)金と権力に取り憑かれた国粋主義者を、そして、アナこそが、原題「El espíritu de la colmena(英題:The Spirit of the Beehive(蜂の巣のスピリット))」、つまり「スペインの(現政権に闘争する)精神」の象徴なのだそうだ。個人的には、映画を観ただけでそこまで読み込めなかったが、改めて映像が奇麗だと思った。4人の主な登場人物の名は役者の実名と同じである。これは、主人公のアナは撮影当時5歳であったため、役名と実名で混乱するのを避けるためだったそうだ。)
「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」 ●制作年:1966年●制作国:日本・アメリカ●監督:本多猪四郎●特撮監督:円谷英二●製作:田中友幸/角田
健一郎●脚本:馬淵薫/本多猪四郎●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●時間:88分●出演:ラス・タンブリン(スチュワート博士)/
男(記者)/橘正晃(記者)/関田裕(サンダ)/中島春雄(ガイラ)/小宮康弘(子供のフランケンシュタイン)/森今日子(看護婦)/沢村いき雄(年配の漁夫)/広瀬正一(山のガイド)/伊原徳(潜水夫)/堤康久(士官)●公開:1966/07●配給:東宝 (評価:★★★☆)
「海底大戦争」 ●制作年:1966年●制作国:日本・アメリカ●監督:佐藤肇●企画:亀田耕司/吉野誠一●脚本:大津皓一●撮影:下村
和夫●音楽:菊池俊輔 ●原案:福島正実●時間:84分●出演:千葉真一/ペギー・ニール/フランツ・グルーバー/アンドリュー・ヒューズ/エリック・ニールセン/マイク・ダーニン/ビバリー・ケラー/ブラウン・ガン/三重街恒二/室田日出男/菅沼正●公開:1966/07●配給:東映 (評価:★★★?)




照男●脚本:深作欣二/池内金男/小山内美江子ほか●音楽:菊池俊輔(主題歌:野際陽子「キイハンター 非情のライセンス」●原作:都筑道夫●出演:千葉真一/野際陽子/丹波哲郎/谷隼人/大川栄子/川口浩/安岡力也/松岡きっこ/川地民夫/野添ひとみ●放映:1968/04~1973/04(全262回)●放送局:TBS
「ミツバチのささやき」●原題:EL ESPIRITU DE LA COLMA●制作年:1973年●制作国:スペイン●監督:ビクトル・エリセ●製作:エリアス・ケレヘタ●脚本:ビクトル・エ
リセ/アンヘル・フェルナンデス・サントス●撮影:ルイス・カドラード●音楽:ルイス・デ・パブロ●時間:99分●出演:フェルナンド・フェルナン・ゴメス/テレサ・ヒンペラ/アナ・トレント/イサベル・テリェリア/ケティ・デ・ラ・カマラ/エスタニス・ゴンサレス/ホセ・ビリャサンテ/ジュアン・マルガロ/ラリー・ソルデビラ/ミゲル・ピカソ●日本公開:1985/02●配給:フランス映画社●最初に観た場所:有楽町スバル座(85-10-27)●2回目:池袋・新文芸坐(24-07-04)(評価:★★★★)●併映(1回目):「路〈みち〉」(ユルマズ・ギュネイ)


日本上空を周回中のテレビ中継衛星が突然消え、時を同じくして世界各国の宝石店が襲われて多量のダイヤモンドが盗まれる事件が頻発し、警視庁は宝石強盗団一味の仕業として捜査を開始、警視庁の駒井刑事(夏木陽介)は、ダイヤの研究を行なっている宗方博士(中村伸郎)のもとを訪れるが、マークという謎の外国人(ダン・ユマ)に襲撃されてダイヤを奪われ、そのマークも強盗団にダイヤを奪われる。一方の強盗団も、盗んだダイヤを積んだトラックが突如浮遊して落下するという異常事態に見舞われる―。
1960年代半ばの東宝映画は、「ゴジラ」シリーズの全盛期で
したが、この頃東宝はゴジラを主役にした映画ばかりではなく、こんなのも撮っていました。こんなのと言ってもどう言えば良いのか。クラゲのお化けみたいな巨大宇宙生物が出てくる作品です。
クラゲの全体像がなかなか見えないのもイマジネーションを駆りたてるし、実はこのクラゲ、ビニール製だそうですが、CGの無い時代にジェームズ・キャメロンの「アビス」('89年/米)顔負けの映像作りをしているなあと感心しました(「ドゴラ」の原案イメージは小松崎茂)。
映画の大部分は、地上で繰り広げられる警察と強盗団のダイヤ争奪・奪回戦に費やされ、盗んだのがダイヤだと思ったら氷砂糖だったとか、ドタバタ喜劇調でもあります。主演の夏木陽介や、3年後に「
今観ると、ストーリー映画としては星3つに届くか届かないですが、ドゴラだけはなかなかいいと思います。この作品を最初に観たのは学校の「課外授業」としてで、併映は家城巳代治監督、池田秀一主演の「路傍の石」('64年/東映)でしたが、その後の授業で感想文を書けと言われて「路傍の石」ではなく「ドゴラ」の方の感想文を書きました。



「宇宙大怪獣ドゴラ」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●特撮監督:円谷英二●製作:田中友幸/田実泰
良●脚本:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●時間:81分●出演:夏木陽介/ダン・ユマ/小泉博/藤山陽子/若林映子/藤田進/中村伸郎/河津清三郎/田島義文/天本英世/田崎潤/加藤春哉/桐野洋雄/若松明/篠原正記/堤康久/岩本弘司/津田光男/熊谷卓三/当銀長太郎/広瀬正一/中山豊/上村幸之●公開:1964/08●配給:東宝 (評価:★★★☆)●併映:「路傍の石」(家城巳代治)



寛永18年、肥後熊本の城主・細川忠利が逝去し、生前より主の許しを受け殉死した者が18名に及んだが、殉死を許されなかった阿部弥一右衛門(市川笑太郎)に対しては、家中の者の見る眼が変わり、結局彼は息子達の目の前で切腹して果て、更に先君の一周忌には、長男・権兵衛(橘小三郎)がこれに抗議する行動を起こし非礼として縛り首となり、次男・弥五兵衛(中村翫右衛門)以下阿部一族は、主君への謀反人として討たれることになる―。
熊谷久虎(1904‐1986)監督により1938年に映画化されていますが(このほかに深作欣二(1930‐2003)監督も1995年にテレビ映画化している)、黒
澤明監督が演出の手本にしたという熊谷久虎作品はたいへん判り易いもので、但し、判り易すぎると言うか、弥一右衛門のことを噂する家中の者の口ぶりは、サラリーマンの職場でのヒソヒソ話と変わらなかったりして(親近感は覚えるけれど)、小説の中でも触れられている犬飼いの五助の殉死や、小心者の畑十太夫などについても、コミカルで現代的なタッチで描かれています(この辺りで残酷な場面はない)。
一方、登場人物中で殉死に唯一懐疑的な隣家の女中・お咲(堤真佐子)と、彼女と親しい仲間多助(市川莚司)は映画オリジナルのキャラであり、市川莚司(後の加東大介)の主君の追い腹を切ろうとしてもいざとなるとビビって切れないという演技もまたコミカルでした。


「阿部一族」●制作年:1938年●監督:熊谷久虎●製作:東宝/前進座●脚本:熊谷久虎/安達伸男●撮影:鈴木博●音楽:深井史郎/P・C・L管絃楽団●原作:森鷗外「阿部一族」●時間:106分●出演:中村翫右衛門/河原崎長十郎/市川笑太郎/橘小三郎/山岸しづ江/堤真
佐子/市川莚司(加東大介)/市川進三郎/山崎島二郎/市川扇升/山崎進蔵/中村鶴蔵/嵐芳三郎/坂東調右衛門/市川楽三郎/瀬川菊之丞/市川菊之助/中村進五郎/助高屋助蔵/市川章次/中村公三郎●公開:1938/03●配給:東宝映画●最初に観た場所:神保町シアター(09-05-09)(評価:★★★☆) 神保町シアター 2007(平成19)年7月14日オープン
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怪獣映画ファンサークル代表の竹内博氏が、仕事関係で怪獣映画の写真が手元に来る度に自費でデュープして保存しておいたもので(元の写真は出版社や配給会社に返却)、当時の出版・映画会社の資料保管体制はいい加減だから(そのことを氏はよく知っていた)、結局今や出版社にも東宝にもない貴重な写真を竹内氏だけが所持していて、こうした集大成が完成した、まさに生活費を切り詰め集めた"執念のコレクション"です(星半個マイナスは価格面だけ)。





自分が生まれる前の作品であり(モノクロ)、かなり後になって劇場で観ましたが、バックに反核実験のメッセージが窺えたものの、怪獣映画ファンの多くが過去最高の怪獣映画と称賛するわりには、自分自身の中では"最高傑作"とするまでには、今ひとつノリ切れなかったような面もあります。やはりこういうのは、子供の時にリアルタイムで観ないとダメなのかなあ。
初めて「怪獣映画」というものを観た人たちにとっては、強烈なインパクトはあったと思うけれど。昭和20年代終わり頃に作られ、自分がリアルタイムで観ていない作品を、ついつい現代の技術水準や演出などとの比較で観てしまっている傾向があるかもしれません。但し、制作年('54年)の3月にビキニ環礁で米国による水爆実験があり、その年の9月に「第五福竜丸」の乗組員が亡くなったことを考えると、その年の12月に公開されたということは、やはり、すごく時代に敏感に呼応した作品ではあったかと
思います。
中から上がらずゴジラともに最期を迎えたのは、最強兵器オキシジェン・デストロイヤーの知識を自ら封印したというのが一般的解釈だが、そこまでする必要があったのかという思いがあった。今回観直してみて、山根恵美子(河内桃子)が尾形(宝田明)に秘密を漏らしたことで、芹沢は彼女が自分より尾形を選んだことを改めて認識し、恋に破れたと言うか、前向きに捉えれば恵美子の幸せは尾形に託したという意識も根底にあったのではないかと思った。ある意味「三角関係」映画だった。)

「ゴジラ」●制作年:1954年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本:村田武雄/本多猪四郎●撮
影:玉井正夫●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二ほか●原作:香山滋●時間:97分●出演:宝田明/河内桃子/平田昭彦/志村喬/堺左千夫/村上冬樹/山本廉/榊田敬二/鈴木豊明 /馬野都留子/菅井きん/笈川武夫/林幹/恩田清二郎/高堂国典/小川虎之助/手塚克巳/橘正晃/帯一郎/中島春雄/川合玉江/東静子/岡部正/鴨田清/今泉康/橘正晃/帯一郎●公開:1954/11●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿名画座ミラノ(83-08-06)●2回目:TOHOシネマズ 日比谷 (24-07-17)(評価:★★★☆→★★★★(緊迫感はシリーズ随一ではないかと思われ、評価を修正した。))●併映(1回目):「怪獣大戦争」(本多猪四郎)
作品区分としてはゴジラ・シリーズではないですが、中村真一郎、福永武彦、堀田善衛の3人の純文学者を原作者とする「モスラ」('61年)の方が、今観ると笑えるところも多いのですが、全体としてはむしろ大人の鑑賞にも堪えうるのではないかと...。まあ、「ゴジラ」と「モスラ」の間には7年もの間隔があるわけで、その間に進歩があって当然なわけだけれど。
ザ・ピーナッツ(伊藤エミ(1941-2012)、伊藤ユミ(1941-2016))のインドネシア風の歌も悪くないし、東京タワー('58年完成、「ゴジラ」の時
はまだこの世に無かった)に繭を作るなど絵的にもいいです。原作「発光妖精とモスラ」では繭を作るのは東京タワーではなく国会議事堂でしたが、60
年安保の時節柄、政治性が強いという理由で変更されたとのこと、これにより、モスラは東京タワーを最初に破壊した怪獣となり、東京タワーは完成後僅か3年で破壊の憂き目(?)に。繭から出てきたのは例の幼虫で、これが意外と頑張った? 宮崎駿監督の「
「モスラ」●制作年:1961年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚色:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:
善衛「発光妖精とモスラ」●時間:101分●出演:
フランキー堺/小泉博/香川京子/ジェリー伊藤/ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)/上原謙/志村喬/平田昭彦/佐原健二/河津清三郎/小杉義男/高木弘/田島義文/山本廉/加藤春哉/三島耕/中村哲/広
瀬正一/桜井巨郎
/堤康久●公開:1961/07●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿シアターアプル (83-09-04)(評価:★★★☆)●併映:「三大怪獣 地球最大の決戦」(本多猪四郎) 
「ゴジラシリーズ」の第1作「ゴジラ」を観ると、ゴジラが最初は純粋に"凶悪怪獣"であったというのがよくわかりますが、「ゴジラシリーズ」の第4作「モスラ対ゴジラ」('64年)(下写真)の時もまだモスラの敵役
でした。この作品はゴジラにとって怪獣同士の闘いにおける初黒星で、昭和のシリーズでは唯一の敗戦を喫した作品でもあります。因みに、「ゴジラシリーズ」の第3作「キングコング対ゴジラ」('62年)は両者引き分け(相撃ち)とされているようです。それが、'64年12月に公開された('64年12月公開予定だった黒澤明監督「赤ひげ」の撮影が長引いたため、正月興行用に急遽制作された)「ゴジラシリーズ」の第5作「三大怪獣 地球最大の決戦」('64年)(下写真)
になると、宇宙怪獣キングギド

を力を合わせて宇宙怪獣キングギドラ戦に挑むことから、「地球の三大怪獣」にとっての最大の決戦という意味らしいです。

「モスラ対ゴジラ」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚色:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:89分●出演:宝田明/星由里子/小泉博/ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)/藤木悠/田島義文/佐原健二/谷晃/木村千吉/中山豊/田武謙三/藤田進/八代美紀/小杉義男/田崎潤/沢村いき雄/佐田豊/山本廉/佐田豊/野村浩三/堤康久/津田光男/大友伸/大村千吉/岩本弘司/丘照美/大前亘●公開:1964/04●配給:東宝(評価:★★★☆)



「三大怪獣 地球最大の決戦」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:97分●出演:夏木陽介/小泉博/星由里子/若林映子/
ザ・ピーナッツ/志村喬/伊藤久哉/平田昭彦/佐原健二/沢村いき雄/伊吹徹/野村浩三/田島義文/天本英世/小杉義男/高田稔/英百合子/
加藤春哉●時間:93分●公開:1964/12●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿シアターアプル (83-09-04)(評価:★★☆)●併映:「モスラ」(本多猪四郎)
更に、ゴジラシリーズ第6作「怪獣大戦争」('65年)は、地球侵略をたくらむX星人がキングギ
ドラ、ゴジラ、ラドンの3大怪獣を操り総攻撃をかけてくるというもので、X星人の統制官(土屋嘉男)がキングギドラを撃退するためゴジラとラドンを貸して欲しいと地球人に依頼してきて(土屋嘉男は「
本書にはない裏話になりますが、この作品に準主役で出演した米俳優のニック・アダムスは、ラス・タンブリンなど同列のSF映画で日本に招かれたハリウッド俳優達が日本人スタッフと交わろうとせずに反発を受けたのに対し、積極的に打ち解け馴染もうとし、共演者らにも人気があったそうで、土屋嘉男とは特に息が合い、土屋にからかわれて女性への挨拶に「もうかりまっか?」と言っていたそうで、仕舞には、自らが妻帯者であるのに、水野久美に映画の役柄そのままに「妻とは離婚するから結婚しよう」と迫っていたそうです(ニック・アダムスは当時、私生活では離婚協議中だったため、冗談ではなく本気だった可能性がある。但し、彼自身は、'68年に錠剤の過量摂取によって死亡している(36歳))。
「怪獣大戦争」●制作年:1965年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本: 関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:94分●出演:宝田明/ニック・アダムス/久保明/水野久美/沢井桂子/土屋嘉男/田崎潤/田島義文/田武謙三/村上冬樹/清水元/千石規子/佐々
木孝丸●公開:1965/12●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿名画座ミラノ (83-08-06)(評価:★★☆)●併映:「ゴジラ」(本多猪四郎)
怪獣の複数登場が常となったのか、「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」('66年)などというのもあって(「ゴジラ」シリーズとしては第7作)、監督は本多猪四郎ではなく福田純で、音楽は伊福部昭ではなく佐藤勝ですが、これはなかなかの迫力だった印象があります(後に観直してみると、人間ドラマの方はかなりいい加減と言うか、ヒドいのだが)。

シリーズ第6作「怪獣大戦争」に"X星人"役で出ていた水野久美が今度は"原住民"の娘役で出ていて、キャスティングの変更による急遽の出演で、当時29歳にして19歳の役をやることになったのですが、今スチール等で見ても、妖艶過ぎる"19歳"、映画「
督:福田純●製作:田中友幸●脚本:関沢新一●撮影:山田一
夫●音楽:
木和夫/本間文子/中北千枝子/池田生二/岡部正/大前亘/丸山謙一郎/緒方燐作/勝部義夫/渋谷英男●時間:87分●公開:1966/12●配給:東宝(評価:★★★☆)●併映:「
この辺りまで怪獣映画は東映の独壇場ともいえる状況でしたが、'65年に大映が「大怪獣ガメラ」、'67年に日活が「大巨獣ガッパ」でこの市場に参入します(本書には出てこないが)。このうち、「大怪獣ガメラ」('65年/大映)は、社長の永田雅一の声がかりで製作されることとなり(永田雅一の「カメ」で行けという"鶴の一声"で決まったようで、湯浅憲明(1933-2004)監督はじめスタッフは苦労したのではないか)、これがヒットして、ガメラ・シリーズは'71年に大映が倒産するまでに7作撮影されましたが、本作はシリーズ唯一のモノクロ作品です(「ゴジラ」の第1作を意識したのかと思ったが、予算と技術面の都合だったらしい)。
あらすじは、砕氷調査船・ちどり丸で北極にやってきた東京大学動物学教室・日高教授(船越英二)らの研究チームが、国
籍不明機を目撃、その国籍不明機には核爆弾が搭載されており、その機体爆発の影響で、アトランティスの伝説の怪獣ガメラが甦るというもの。「ガメラ」の命名者でもある永田雅一の「子供たちが観て『怪獣がかわいそうだ』とか哀愁を感じないといけない。子供たちの共感を得ないとヒットしない」との考えの

健/森一夫/佐山真次/喜多大八/大庭健二/荒木康夫/井上大吾/三夏伸/清水昭/松山新一/岡郁二/藤井竜史/山根圭一郎/村松若代/沖良子/加川東一郎/伊勢一郎/佐原新治/宗近一/青木英行/萩原茂雄/古谷徹/中条静夫(ナレーション)●時間:87分●公開:1965/11●配給:大映(評価:★★★)
「ガメラ」のヒットを受け、翌年「ガメラシリーズ」の第2作として総天然色による「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」('66年/大映)が作られましたが、併映の「大魔神」('66年/大映)の
方が"初物"としてインパクトがあったかも。ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の「巨人ゴーレム」('36
年/チェコスロバキア)で描かれたゴーレム伝説に材を得たそうですが、戦国時代に悪人が陰謀を巡らせて民衆が虐げられると、穏やかな表情の石像だった大魔神が復活して動き出し、破壊的な力を発揮して悪人を倒すというストーリーは分かりやすいカタルシスがありました。大映映画ですが、音楽は東宝ゴジラ映画の

「大魔神怒る」('66年/大映)は、1作目が大ヒットしたため、お盆興行作品として製作されたもので、監督は三隅研次(1921-1975)で、これも伊福部昭が音楽を担当。千草家とその分家・名越家が領主の平和な国が隣国か
ら侵略され、領主は滅ぶもお家再興と平和を望んで千草家の本郷功次郎の許嫁である名越家の藤村志保が魔人に願掛けするというもの。今回は魔人は「水の神」という設定になっていて、藤村志保
が悪人たちより
焚刑に処せられることになって、今まさに火に焼かれようとする時、この身を神に捧げますと涙を流すと大魔神が現れ(出現シーンはハリウッド映画「
「大魔神怒る」藤村志保(当時27歳)
「大魔神逆襲」('66年/大映)の監督は森一生監督(1911-1989)で、これもまた音楽は伊福部昭が担当。森一生監督は「女と男はつまらない。子供好きだから
子供でやりたい」と子
供たちが主役に据え、少年の純真な信仰心が大魔神を動かすという設定で、今回は大魔神「雪の魔神」として雪の中から現れ、最後には粉雪となって消えていきます。子供たちを主役に据えるのも悪いとは言いませんが、やは
り当時19歳の高田美和、27歳の藤村志保と続いた後だと、完全にお子様向けに路線変更してしまったなあという印象は拭えません。製作費は1億円弱、興行では併映なしの2番館上映となり、配給収入(興行収入から映画館の取り分を差し引いた配給会社の収入)も赤字で、4作目の企画もあったものの、これで打ち止めになっています。結局、わずか1年の間の3作で終わってしまったわけですが、その分、大魔神の重厚感は印象に残るものでした。ゴジラが「怪獣大戦争」('65年)で「シェー」をするなど、シリーズが永らえたゆえに"堕落"してしまったのとは対照的と言えるでしょうか。
「大魔神」●制作年:1966年●監督:安田公義●製作総指揮:永田雅一●脚本:吉田哲郎●撮影:森田富士郎●音楽:

「大魔神怒る」●制作年:1966年●監督:三隅研次●製作:永田雅一●脚本:吉田哲郎●撮影:今井ひろし/森田富士郎●音楽:

「大魔神逆襲」●制作年:1966年●監督:森一生●製作総指揮:永田雅一●脚本:吉田哲郎●撮影:森田富士郎●音楽:




第17作「ゴジラ vs ビオランテ」('89年)(「平成ゴジラシリーズ」第2作)は、バイオテクノロジーによってゴジラとバラの細胞を掛け合わせて造られた超獣ビオランテが登場し、一般公募ストーリー5千本から選ばれたものだそうですが(選ばれたのは「帰ってきたウルトラマン」第34話「許されざるいのち」の原案者である小林晋一郎の作品。一般公募と言ってもプロではないか)、確かに植物組織を持った怪獣は、「
第18作「ゴジラ vs キングギドラ」('91年)(「平成ゴジラシリーズ」第3作)は、南洋の孤島に生息していた恐竜が核実験でゴジラに変身したという新解釈まで採り入れており(ここに来てゴジラの出自を変えるなんて)、ゴジラが涙ぐんでいるような場面もあって、また同じ道を辿っているなあと(この映画、敵役の未来人のUFOが日本だけを攻撃対象とするのも腑に落ちないし、タイム・パラドックスも破綻気味)。
第17、第18作は大森一樹監督で、いくらか期待したのですが、かなり脱力させられました(第18作「ゴジラ vs キングギドラ」で怪獣映画の中での土屋嘉男を見たのがちょっと懐かしかったくら
いか。山村聰も内閣総理大臣役で出ていたけれど)。この監督は商業映画色の強い作品を撮るようになって、はっきり言ってダメになった気がします。大森一樹監督の最高傑作は自主映画作品「暗くなるまで待てない!」('75年/大森プロ)ではないでしょうか。神戸を舞台に大学生の若者たちが「暗くなるのを待てないで昼間から出てくるドラキュラの話」の映画を撮る話で、モノクロで制作費の全くかかっていない作品ですが、むしろ新鮮味がありました(今年['08年]3月に、大森監督によってリメイクされた)。
駄作の多かった「平成ゴジラシリーズ」(第16作~第22作)に対し、第23作「ゴジラ2000 ミレニアム」('99年)から始まる「ミレニアムシリーズ」(第23作~第28作)でやや盛り返した感もありますが、その中でいちばんの傑作とする人もいる第26作「ゴジラ×メカゴジラ(ゴジラたいメカゴジラ)」('02年)(先行作品に第14作「ゴジラ対メカゴジラ」('74年)、第20作「ゴジラvsメカゴジラ(ゴジラたいメカゴジラ)」('93年)がある)さえ、個人
的にはイマイチでした。何よりも、主演の釈由美子(当時24歳)のセリフ棒読みが結構キツイ...。ゴジラは絶対悪として描かれ、ゴジラに対抗するために作られたメカゴジラのメインパイロットが彼女の役なので、あまりに下手だとちょっと作品に入り込めない...(「ゴジラ vs ビオランテ」の沢口靖子(当時24歳)も当時はあまり上手くなかったが、主役ではなかったのがまだ許せるか(主役は田中好子(当時33歳))。
「ゴジラ vs ビオランテ」●制作年:1989年●監督・脚本:大森一樹●製作:田中友幸●音楽:すぎやまこういち(ゴジラテーマ曲:伊福部昭)●時間:97分●出演:三田村邦彦/田中好子/小高恵美/峰岸徹/高嶋政伸/高橋幸治/沢口靖子(特別出演)/永島敏行(友情出演)/久我美子(友情出演)●公開:1989/12●配給:東宝(評価:★☆)「

久我美子(大和田圭子官房長官 ※友情出演)/
「ゴジラ vs キングギドラ」●制作年:1991年●監督・脚本:大森一樹●製作:田中友幸●音楽:伊福部昭●特技監督:川北紘一●時間:103分●出演:中川安奈/豊原功補/小高恵美/西岡徳馬/土屋嘉男/山村聰/佐原健二/時任三郎/原田貴和子/小林昭二/佐々木勝彦/上田耕一/チャック・ウィルソン/ケント・ギルバート/ダニエル・カール/リチャード・バーガー/ロバート・スコットフィールド●公開:1991/12●配給:東宝 (評価:★☆)
「暗くなるまで待てない!」●制作年:1975年●監督:大森一樹●脚本:大森一樹/村上知彦●音楽:吉田健志/岡田勉/吉田峰子●時間:30分●出演:稲田夏子/栃岡章/南浮泰造/村上知彦/森岡富子/磯本治昭/塚脇小由美/大森一樹/鈴木清順●公開:1975/04●配給:大森プロ●最初に観た場所:高田馬場パール座 (80-12-25) (評価:★★★★)●併映:「星空のマリオネット」(橋浦方人)/「青春散歌 置けない日々」(橋浦方人)
「ゴジラ×メカゴジラ(ゴジラたいメカゴジラ)」●制作年:2002年●監督:手塚昌明●脚本:三村渉●音楽:大島ミチル●特撮監督:菊地雄一●時間:88分●出演:釈由美子/宅麻伸/小野寺華那/高杉亘/友井雄亮/水野純一/水野久美/上田耕一/森末慎二/萩尾みどり/江藤潤/北原佐和子/柳沢慎吾/藤山直美/中村嘉葎雄/田中美里/永島敏行/村田雄浩/中尾彬/松井秀喜(本人役)●公開:2002/12●配給:東宝 (評価:★★☆)

ゴジラ・シリーズ以外で、役者だけで見れば何と言っても凄いのが「日本誕生」('59年)で、ヤマタノオロチが出てくるため確かに"怪獣映画"でもあるのですが、三船敏郎、乙羽信子、司葉子、鶴田浩二、東野英治郎、杉村春子、田中絹代、原節子など錚々たる面々、果ては、柳家金語楼から朝汐太郎(当時の現役横綱)まで出てくるけれど、「大作」転じて「カルト・ムービー」となるといった感じでしょうか(観ていないけれど、間違いなくズッコケそうで観るのが怖いといった感じ)。 


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