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突っ込みどころはあるけれど、格差社会の問題を扱った先駆と取れなくもない。
第16話「かまいたち」
住宅街で夜間に一人で歩いていたらしい女性のバラバラ惨殺死体が発見されるが、町田警部(小林昭二)と牧(岸田森)で怨恨説と流し説で意見が分かれる。警察は切断面から日本刀による犯行と推定。悲鳴を聞いた者がいないことから、どこか別の場所で殺害されて、ここに遺棄されたと考えた。それに対し牧は、流しの犯行であり、第二、第三の事件も起こり得ると助言するが、警察は聞き流す。そして、同じ現場で第二のバラバラ殺人が起きるが、的矢(原保美)には、現場の状況と死体の状態から「かまいたち」のような現象が起こったとしか思えなかった。そこで、現場近くの工場で働く、集団就職で地方から出てきた一人の青年(加藤修)が容疑者に浮かぶが、あくまでも牧の直観によるもので、野村(松山省二)の目には彼は犯人には見えなかった―。
監督は長野卓で、脚本は上原正三。牧の推理もかなり直感頼みでしたが、最後、SRIが勝負を賭けたのが、SRI紅一点のさおり(小橋玲子)を囮りにして犯人をおびき出すことだったとは! 彼女が犯人に殺られてしまったかと思って、野村などは滅茶苦茶興奮して、彼女への想いが迸っていましたが(笑)、事前に作戦のネタを知らされてなかったのかなあ。まあ、身内も勘違いするぐらい精巧なダミーだったと言いたいのでしょう(その割には、どう見てもぎこぎこと動くマネキンにしか見えなかったが)。
結局、捕まった犯人は取り調べに対して黙秘を続け、自分の世界に閉じこもってしまい、犯行動機は明かされないまま終わってしまいます。しかるに、それまでの流れで、この犯人は優秀だったけれど経済的に恵まれなくて、集団就職で東京へ出てきてブルーカラーとして働いている(だが通信教育で勉強は続けている)、そうした境遇から、職場でも寡黙で、かつての仲間と一緒の時も打ち解けず、常に鬱屈とした何かを抱えている―といったその背景が見えてくるように思います。そうして見ると、彼の黙秘には、かなり重いものがあるように思いました(因みに、この年の10月-11月に「永山則夫連続射殺事件」が起きており、それをモデルにしたのではないかとも言われている)。
ただ、彼が優秀なのは分かりますが、「真空状態を人工的に作り出す」と言っても、屋外でどうやってそれをやったのでしょうか。SRIが検証したというのはあくまで実験装置の中での検証で、外での検証ってやっていないわけで、この辺りの"緩さ"は相変わらずだなあ(笑)。でも、そうした突っ込みどころはあるけれど、今で言うところの格差社会の問題を扱った先駆と取れなくもないエピソードでした。
「怪奇大作戦(第16話)/かまいたち」●制作年:1968年(制作№18)●監督:長野卓(たかし)●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクション/TBS●脚本:上原正三●音楽:玉木宏樹●出演:勝呂誉/岸田森/松山省二/小橋玲子/原保美/小林昭二/加藤修/浅野進治郎/池田駿介/若山真樹/波多野克典/寺田柾/星重則/外波山文明/松尾文人/藤代裕士/中島恵美子/亀島笙子/右田洋子●放送:1968/12/29●放送局:TBS(評価:★★★☆)