「●TV-M (クリスティ原作)」の インデックッスへ Prev|NEXT⇒ 【2020】 「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第7話)/親指のうずき」
「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●く アガサ・クリスティ」の インデックッスへ
ジェリーの自信回復及び新たな恋愛物語の色彩が濃くなっている。女優にばかり目がいった。



"The Moving Finger"輸入盤DVD/「アガサ・クリスティーのミス・マープル DVD-BOX 2」
元軍人で、無気力な日々に嫌気がさしてバイクで自滅事故を起こして脚を負傷したジェリー・バートン(ジェームズ・ダーシー)は、妹ジョアナ(エミリア・フォックス)と一緒に静養のためリムストック村に来たが、村では村人を中傷する匿名の手紙、所謂ブラックレターが出回っていて、そんな折にアップルトン大佐が拳銃自殺を遂げる。ジェリーはシミントン弁護士(ハリー・エンフィールド)の家の2人の息子の家庭教師エルシー・ホランド(ケリー・ブルック)に心を奪われ、シミントン家には夫人(イモジェン・スタッブス)の連れ子で変わり者の二十歳の娘ミーガン(タルラ・ライリー)がいた。ジェリーとジョアナは、招かれたお茶会で村人たちの噂話を聞くが、シミントン夫妻の夕食会には、ジェリーの主治医グリフィス(ジョーン・パートウィー)と妹のエメ(ジェシカ・スティーブンソン)、オルガン奏者パイ(ジョン・セッションズ)、大佐の葬儀のために村に来ていたミス・マープル(ジェラルディン・マクイーワン)が集っていた。やがて、中傷の手紙を受け取った毒舌家のシミントン夫人(イモジェン・スタッブス)が、「もうダメ」というメモを遺して青酸カリで自殺し、検死審問では、大佐の死も夫人の死もブラックメールを苦にした自殺とされる。ジェリーはミーガンを自分の家に預かり、不安に怯えていたミーガンは生気を取り戻すが、エメが意見したために再び自宅に戻ったミーガンは、階段下で召使アグネス(エレン・カプロン)の死体を発見する―。

2006年に本国イギリスで放映されたジェラルディン・マクイーワン主演の英国グラナダ版で、この年に作られたシーズン2全4話の内の第2話(通算第6話)であり、日本ではNHK‐BS2で2008年6月25日に初放映。原作『動く指』はアガサ・クリスティ(1890‐1976)が1943年に発表した、ミス・マープルシリーズの長編第3作(原題:The Moving Finger)で、『牧師館の殺人』(1930)、『書斎の死体』(1942)に続くものであり、クリスティが自作の自選ベストテンに入れている作品でもあります。
原作ではミス・マープルは安楽椅子探偵を決め込んでか、前半から中盤位かけては殆ど登場せず、最後に犯人に罠を仕掛けた後で、読者向けにばたばたと謎解きをしてしまうという印象ですが、先行するジョーン・ヒクソン主演のBBC版('85年/英)では、最初からちょくちょく出てきて謎解きに積極的に関与し、個人的には結構それが良かったように思われました。
このグラナダ版におけるミス・マープルの事件関与度は、原作とBBC版を足して二で割った感じでしょうか。第3の事件が起きてから警察がより本格的に動き始めますが、一旦は"探偵ごっこ"はやめるように警部から諭されたジェリーに警部が自らの推理を展開している横で、更にマープルまでもが一人編み物をしていたりする場面は、やや不自然な印象を受けなくもないものの、マープルの推理のプロセスを窺わせるものとしてはむしろアリかなあと(但し、途中のプロセスにおいては自らの推理をなかなか明かさないという点では原作に近いか)。
エルシー・ホランド(ケリー・ブルック)/ミーガン(タルラ・ライリー)

綺麗どころの女優が複数出ていて、家庭教師エルシー・ホランド(ケリー・ブルック)は、ジェリーがあれで子供たちは勉強に集中できるのかと冗談めかすほどの美人で、爽やかなセクシーさを醸しています。でもそのジェリーは、自分がエルシーではなく実はミーガン(タルラ・ライリー)に魅かれていることに気がつく―。子供っぽかった野生児ミーガンを、「マイ・フェア・レディ」の如く淑女に大変身させたのは、原作ではジェリー自身でしたが、この映像化作品では妹のジョアナ(エミリア・フォックス)になっていて、その変身後のミーガンの登場シーンは、すでに美形としてエルシーが登場しているだけに、ハレーションを施して、それを超えるものにしたという印象。まあ、同じ美人でも、タイプは異なるけれど(女優ばっかり観ているね)。

妹ジョアナとグリフィス医師の接近も原作通りですが、男優は、ジェームズ・ダーシーの男前ぶりを除いてはやや格落ち? 原作もそうですが、この映像化作品は、ジェリーの自信回復及び新たな恋愛を基調とした青春物語の色彩がより濃くなっているため(原作では自滅事故で負傷したのではなく、戦争中の飛行機事故によるいわば名誉の負傷のはずだった)、主人公とも言えるジェリー役はやはり二枚目であることが必須条件だったのか(一応、その点は満たしている)。
ストーリーや人間関係は結構複雑で、犯人もなかなか判らず、マープルが最後に犯人に大胆な罠を仕掛けるのも原作と同じ。但し、犯人が判ってしまえば、動機は意外と単純です。シミントンが妻の葬儀の際に、エルシー・ホランドの胸元を見ている場面があったけれど、男性ならどうしても目がいってしまうかも(それをまたしっかり観察しているマープル-という構図が凄いけれど)。個人的には、妹ジョアナの胸元も気になったけれど...(胸ばっかり観ているね)。

ラテン語の説教を皆に披露したがる「頭が良すぎて偉くなれなかったという」司祭役を演じているのは、映画監督のケン・ラッセル、死体でしか出てこないアップルトン大佐を演じているのは、このシリーズで前作「スリーピング・マーダー」など幾つかの作品の脚本を手掛けているスティーヴン・チャーチェット。モデル出身のケリー・ブルックをはじめキレイどころを揃えて、結構、仲間内で楽しみながら作った印象もありますが、映像化作品としての一定の質は保っているように思いました。
ケリー・ブルック
「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第6話)/動く指」●原題:THE MOVING FINGER, AGATHA CHRISTIE`S MARPLE SEASON 2●制作年:2006年●制作国:イギリス●演出:トム・シャンクランド●脚本:ケヴィン・エリオット●原作:アガサ・クリスティ「動く指」●時間:93分●出演:ジェラルディン・マクイーワン/キース・アレン/セルマ・バーロウ/ケリー・ブルック/ジェームズ・ダーシー/フランシス・デ・ラ・トゥーア
/ハリー・エンフィールド/エミリア・フォックス/ショーン・パートウィー/タルラ・ライリー/ジョン・セッションズ/ジェシカ・スティーブンソン/イモジェン・スタッブズ/ケン・ラッセル●日本放送:2008/06/25●放送局:NHK‐BS2(評価:★★★☆)
Kelly Brook
Talulah Riley




インド滞在中に交通事故で妻クレアを亡くしていたケルヴィン・ハリデイ(ジュリアン・ウォダム)の娘で、幼い頃からインドで育ったグエンダ(ソフィア・マイルズ)は、婚約者の会社の部下ヒュー・ホーンビーム(エイダン・マクアードル)とイギリスで新居探しする中、ディルマスのヒルサイド荘に一目惚れして早速契約しリフォームにかかるが、不思議なことにグエンダにはこの邸に既視感があり、更にホールで絞殺される女性の幻影を見る。ホーンビームは知り合いのミス・マープル(ジェラルディン・マクイーワン)に電話し、グエンダを喜劇の観劇に連れ出すが、公
演中の演劇は喜劇ではなくウェブスター原作『マルフィ公爵夫人』に変わっていて、復讐劇の絞殺シーンに女性の幻影が重なったグエンダは思わず「ヘレン!」と叫ぶ。マープルは,グエンダが幼いころ殺人事件を目撃したと考え、家を手配した弁護士ウォルター・フェーン(ピーター・セラフィノウィッツ)の事務所で邸の1934年当時の持主がグエンダの父親ケルヴィンだったことを突き止めるが、フェーンはそれ以上その事に触れたがらない。マープルは町で探し出した邸の元召使ミセス・パジェット(ウーナ・スタッブス)から、当時、毎夏来ていた旅回りの一座「ファニーボンズ」のことを聞く。クレアの兄で精神分析医のジェイムズ・ケネディ(フィル・デービス)の話から、ケルヴィンは幼いグエンダを連れてイギリスに戻りヒルサイド荘に住んでいたことが分かる。妻
クレアを亡くしていたケルヴィンは、一座の看板歌手ヘレン(アナ・ルイーズ・プロウマン)と婚約したが、ヘレンは結婚式前日に姿を消していた。看板歌手が抜けてファニーボンズが解散した夜のことを次第に関係者は想い出す。一座のメンバーは、ジャッキー・アフリック(マーティン・ケンプ)を中心に、手品師のライオネル(ニコラス・グレイス)、そしてディッキー・アースキン(ポール・マッギャン)とジャネット(ドーン・フレンチ)(2人はその後結婚していた)、更に、当時は垢抜けず誰からも愛されなかったが今や独立して大スターのイーヴィ(サラ・パリッシュ)ら。フェーンの母(ジェラルディン・チャップリン)はヘレン失踪事件に息子が関係していたのではないかと疑っている。定年間近のプライマー警部(ラス・アボット)がマープルに調査の協力をする―。
2006年に本国イギリスで放映されたジェラルディン・マクイーワン主演の英国グラナダ版で、この年に作られたシーズン2全4話の内の第1話(通算第5話)。2008年6月から日本で放映されたこの第2シーズンでは、それまでマープルの吹き替えをしていた
グエンダを演じるソフィア・マイルズ(英国の女優だが、この年3本のアメリカ映画に出演している)の魅力で見せる部分が大きい作品でしょうか。その分、そのお嬢様ぶりに対する好悪で、作品に対する好き嫌いも決まってしまうかも(こんな女優中心の見方をしている人ばかりではないと思うが)。
考えてみれば、原作で若い新婚の2人を暖かく見守っているマープルが、ここでは、ホーンビームを後押しすることで相手の女性の婚約を破棄させる(寝取られ男を一人生み出す)手助けをしているとも言えるけれど、女性を大事にしない男は、たとえ婚約者であろうと女性から見捨てられても当然、という意味では、より現代的な展開を示して見せたと言えるかも。
「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第5話)/スリーピング・マーダー」●原題:SLEEPING MURDER, AGATHA CHRISTIE`S MARPLE SEASON 2●制作年:2006年●制作国:イギリス●演出:エドワード・ホール●脚本:スティーブン・チャーチェット●原作:アガサ・クリスティ「スリーピング・マーダー」●時間:93分●出演:ジェラルディン・マクイーワン/ラス・アボット/ジェラルディン・チャプリン/フィル・デービス/ドーン・フレンチ/マーティン・ケンプ/エイダン・マクアードル/ポー
ル・マッギャン/ソフィア・マイルズ/アナ・ルイーズ・プロウマン/ピーター・セラフィノウィッツ/ウーナ・スタッブズ/ジュリアン・ウォダム/サラ・パリッシュ●日本放送:2008/06/23●放送局:NHK‐BS2(評価:★★★☆)


1995 (平成7) 年度「週刊文春ミステリー ベスト10」(海外部門)第1位。1996(平成8) 年「このミステリーがすごい!」(海外編)第1位。
1993年に原著刊行の、英国の女流推理作家ミネット・ウォルターズ(Minette Walters、1949- )の長編第2作(原題:The Sculptress)で、アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)長編賞受賞作でもある作品(原題"sculptress"は"sculptor"の女性形)。
1996年にイギリスでTVドラマ化され、日本でもビデオがリリースされていますが、個人的には未見です。
サラ・ウォーターズ (1966- )
2008年にイギリスでTVドラマ化されているので、その内、AXNミステリーあたりで放映されるかも。


ジョージ・ポロックが監督し、マーガレット・ラザフォード(Margaret Rutherford, 1892-1972)がミス・マープルを演じたこの「ミス・マープル/夜行特急の殺人」('61年/英、Murder She Said)は、『パディントン発4時50分』の初映画化作品であり、以降、「ミス・マープル/寄宿舎の殺人」('63年、Murder at the Gallop/原作『葬儀を終えて』(ポワロ物))、「ミス・マープル/船上の殺人」('64年、Murder Ahoy/「マープル」シリーズのキャラクター設定に基づくオリジナル)、「ミス・マープル/最も卑劣な殺人」('64年、Murder Most Foul/原作『マギンティ夫人は死んだ』(ポワロ物))と全4作作られていますが、日本では何れも劇場公開されておらず、2006年にDVDとしてリリースされました。
生前のクリスティ自身は、ラザフォードのミス・マープルを気に入ってはいなかったとのことですが、アメリカでは、英国BBC版のジョーン・ヒクソンよりも、このマーガレット・ラザフォードの方が"ミス・マープル"像としては定着しているとの話もあるようです(この「夜行特急の殺人」には、後にクリスティのお気に入りの"ミス・マープル"を演じたと言われるジョーン・ヒクソンもちょっとだけ出演している)。
演じるミス・マープル自身が家政婦として"アッケンソープ"家に乗り込んでいくという何でも彼女が一人でやってしまう作りになっています(ミス・マープルが雇われたのでこれ幸いとばかりに辞めていく無愛想な家政婦キッダー夫人を演じているのが、その後にTVドラマシリーズ「ミス・マープル」(1984~1992)でミス・マープルを演じることになるジョーン・ヒクソン)。
1957年の原作発表から4年後に作られた作品で、そのためかパディントン駅をはじめその時代の雰囲気をよく伝えていて、(邸への潜入捜査をしたのが誰かは別として)邸に住まう長女エマ(ミュリエル・パヴロー)、次男ハロルド(コンラッド・フィリップス)、三男の画家セドリック(ソーリィ・ウォルターズ)、義弟アルバート(ジェラルド・クロス)、四男イーストリ(ロナルド・ハワード)といった兄弟構成も若干兄弟の順番を変えたりしているものの一応はほぼ原作に沿っていて(侍医クインパーを演じているのはアー
サー・ケネディ)、謎解きの部分に関しても比較的原作に忠実、コメディ部分もそれなりに楽しめました。窓越しに殺人を目撃したミス・マープルが、その時たまたま『窓越しの殺人』という推理小説を読んでいたために、車掌からもクラドック警部補(チャールズ・ティングウェル)からも「殺人を見た」という証言を信じてもらえないというのはややベタなユーモアですが(因みに、『窓越しの殺人』という本はこのドラマのために作られた"架空の本"である)。
但し、ミス・マープルの人物造型が、押し出しの強いオバサンという感じで、ラザフォードのどっしりした体型と相俟ってその存在が前面に出すぎていて、その分、原作の一見地味で目立たないミス・マープルのイメージとは乖離しているように思えました。潜入した邸の気難しい当主を口と態度でやり込めるなんて、マープルっぽくないし、容貌や動作は、動物に喩えれば、犀か雄牛のような感じです。
最後、その邸の当主からプロポーズされるのも、原作でルーシー・アイレスバロウが当主の息子兄弟たちに言い寄られるのを捻ったのでしょうが、それまでの喧嘩腰だった二人の関係からするとやや唐突。ミス・マープルの人物像を変えてしまったことで、全てが《改変》と言うより《パロディ》に近いものになっていると言えるかも。原作者であるクリスティが気に入らなかったのが理解できる気がします。


ベルトラン・タヴェルニエ(Bertrand Tavernier、1941- )監督の初期作品で、第37回カンヌ国際映画祭監督賞作(原作は脚本家ピエール・ボストの遺作『ラドミラル氏はもうすぐ死んでしまう』)。ストーリー的にはただこれだけの話ですが、パリ郊外の田舎の風景の映像も美しく、何となくじわーっとくる作品です。こうした作品を飽きずに最後まで見せるのは、相当な力量ではないかと最初に観た当時思いましたが(途中で退屈になってしまう人もいておかしくない作品でもあるが)、この監督はその後も佳作を世に送り続けています。でも、自分が観たベルトラン・タヴェルニエの作品ではこれが一番かと。娘イレーヌ役のサビーヌ・アゼマは、1985年(第10回)セザール賞(フランスにおける映画賞で、同国における米アカデミー賞にあたる)の最優秀女優賞を受賞しています。
邸での些細な出来事の殆どが、老境の画家ラドミラル氏の視点から描かれているように思えますが、彼が数年前までは風景画を描いていたのが、最近はアトリエの中の椅子等のオブジェを描くように変わっているのが興味深いです。更に、娘イレーヌは、父のアトリエの屋根裏部屋で、美しいレースのショールと情熱的な画を見つけて感動しますが、これらも、老画家のこれまでの内面の精神的歩みを物語っているように思えました。
妻に先立たれたとはいえ、美しい田舎の邸に住まい、訪ねてきてくれる子どもも孫もいて、しかも自分には創作という"定年の無い仕事"があるという、ある意味、ラドミラル氏は充分に恵まれた老人なのかもしれません。それでも、全体として見れば、老いと人生の侘しさをしみじみと描いた作品であると言え(印象派絵画のように描かれる田舎の紅葉の光と影が主人公の老境にすごくマッチしている)、家族のこと(娘イレーヌの恋愛)が心配事に絡んでいる点など、小津安二郎の作品にも通じるものがあるように思いました。
しかし、最後に家族が去った後、新たな創作にとりかかろうとするラドミラル氏のその姿からは、非常に強い「個人」や「自我」というものが見て取れ、小津安二郎などの日本映画とはまた違った趣も感じられました。
「田舎の日曜日」●原題:UN DIMANCHE A LA CAMPAGHE●制作年:1984年●制作国:フランス●監督・製作・脚本:ベルトラン・タヴェルニエ●共同脚本:コロ・タヴェルニエ●撮影:ブルーノ・ド・ケイゼル●音楽:ガブリエル・フォーレ●原作:ピエール・ボスト「ラドミラル氏はもうすぐ死んでしまう」●時間:95分●出演:ルイ・デュクルー/サビーヌ・アゼマ/ミシェル・オーモン/ジュヌヴィエーヴ・ムニック/カティア・ボストリコフ●日本公開:1985/11●配給:フランス映画社●最初に観た場所:テアトル新宿(86-03-30)(評価:★★★★)●併映:「パリ、テキサス」(ヴィム・ヴェンダース)





示、反抗すれば密告屋アンガー(チャールズ・タイナー)の便利屋(ジム・ハンプトン)殺人事件の共犯にして20年は刑務所を出られないようにすると脅す。前半互角だった囚人チームは、ポールの手抜きプレーで次第に負けていって21点差がつき、それ以降は看守チームが囚人チームへ暴力を振るわないというのがポールが所長と交わした約束だったのに、所長は看守長に逆の指示を出し、堂々と戦うつもりだったは看守長も、鼻白みながらも所長の指示には逆らえない。そんな中、囚人
チームのチームメイト、グランヴィル(ハリー・シーザー)が退場する際に吐いた「お前を信用したのが間違いだった」との捨てゼリフがポールを目覚めさせる―。
オリジナル版の魅力は、主演のバート・レイノルズの男臭さもさることながら、やはり脇役陣が充実していることでしょうか。刑務所長役のエディ・アルバート、看守長役のエド・ローターをはじめ、個性的な役者が勢揃いし(007の"ジョーズ"ことリチャード・キールなども出ている。選手探しをするところが「七人の侍」みたいで面白い)、最後に看守長がポールに対して男同士の友情のような気持ちを抱くようになるところまで含め、定番的なストーリーとの予測がつくにしても、やっぱりぐいぐい引き込まれて観てしまいます。
似たような状況でのスポーツの試合を題材にした作品では、ジョン・ヒューストン監督、シルヴェスター・スタローン主演の「勝利への脱出」('81年/米)という、第二次世界大戦最中のドイツの捕虜収容所で、ドイツ軍の将校(マックス・フォン・シドー)の発案のもと、連合国軍捕虜たちとドイツ代表がサッカー試合をするという作品がありましたが、並行して脱走計画の話があり、最後、成功するというもの(実話に基づくものとのこと)。こうした作品に比べると、この「ロンゲスト・ヤード」の結末は、この後の囚人たちに待ち構えるもののことを思うとややほろ苦いものと言えるかも。
題:THE MEAN MACHINE (THE LONGEST YARD)●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:ロ


給:パラマウント映画●最初に観た場所:三鷹オスカー (78-07-20) (評価:★★★★☆)●併映:「トランザム7000」(ハル・ニーダム)/「デキシー・ダンスキングス」(ジョージ・G・アビルドセン) 三鷹オスカー 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。


意地の悪い判事へクター(ポール・ジェッソン)は、 村にやって来たオーヴィル(ケビン・マクナリー)をリーダーとするロマ達(ジプシー)を追い出そうと、知り合いの軍人まで呼んでしまうような陰険な男だった。一旦はバーナビー警部が仲裁に入り収まるが、その後、ロマ達が開催した祭りの最中に、へクターが猟銃で撃たれて死亡する―。
トム・バーナビー警部のシリーズの第9話「報いの一撃」(原題:Blood Will Out)の本国放映は1999年9月、日本では2002年7月にNHK‐BS2にて前後編(第17話・第18話)に分けて初放映され、その時のタイトルは「流浪の馬車がやって来る」でした。
馬車とトレーラーで移動する現代版ジプシーの描写が興味深かった作品ですが、ダグラス・ワトキンソンの脚本はかなり複雑なストーリーとなっています。元将校で今は判事のへクターと、元軍人で今はジプシーを率いるオーヴィルがかつて因縁事があった戦争というのは、フォークランド紛争(1982年)だったのだなあと。オーヴィルを見ただけで、彼に"想いの人"がいると分かってしまうバーナビーは、ややスゴ過ぎ。
次から次へと意外な事実が明らかになり、ラストも意外でした(もう、これは推理不能)。そんな中、ジプシー兄妹の兄が最後に妹にみせる思いやりが泣け、家族からフルーツ・ダイエットを強いられ、家族の依頼を受けた部下のトロ
イに間食しないか監視されているバーナビーがユーモラスです。
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田舎地主カベンディッシュ家の若き後妻タラ(フェリシティ・ディーン)が、何者かによってクリケットのバットで撲殺される。凶器は仲の悪い義理の息子のものであり、しかも事件現場の当家所有の採石場は、かつてカベンディッシュ家の家政婦が崖から転落死した場所でもあった。偶然にもクリケットチームの一員となったトロイ巡査部長を使い捜査を進めていたバーナビー警部は、暴君であるタラの夫ロバート・カベンディッシュ(ロバート・ハーディ)が、息子のスティーブン(アンソニー・カーフ)をはじめ様々な人といがみ合っていたことを突き止める―。
トム・バーナビー警部のシリーズの第8話「不実の王」(原題:Dead Man's Eleven)の本国放映は1999年9月、日本では2002年8月に
NHK‐BS2にて前後編(第19話・第20話)に分けて初放映され、その時のタイトルは「採石場にのろいの叫び」でした。


引退後のベリゼール・べレスフォード大佐(アンドレ・デュソニエ)と妻のプリュダンス(カトリーヌ・フロ)は田舎でのんびり過ごしているが、プリュダンスは退屈を持て余し気味。そんな折、大佐の叔母のバベットが二人のもとを訪ねるために乗った夜行列車の車中で深夜、すれ違う列車内で女性が首を絞められているのを目撃、車掌に伝えるが寝ぼけていたのだと相手にされない。翌日、大佐夫妻に事件を伝えたが、新聞に事件の記事は載っていない。プリュダンスは、その列車がモルガン発4時50分の列車で、死体は犯行直後の急カーブで窓から外に投げ出されたと推理、線路近くの邸が怪しいと、夫に内緒で家政婦として単独その邸に入り込む。そこには、大富豪とその長女及び3人の息子たちがいた―。
パスカル・トマ監督による、トミーとタペンスのおしどり夫婦探偵シリーズの『親指のうずき』をフランス風に改変した「奥様は名探偵」('05年)、ノンシリーズ物の『ゼロ時間へ』の舞台をブルターニュ地方に改変した「ゼロ時間の謎」('07年)に続く、アガサ・クリスティのフランス映画化シリーズ第3弾で、原作はもちろんミス・マープルシリーズの『
カトリーヌ・フロ、アンドレ・デュソリエ主演のおしどり夫婦探偵物としては第2弾で、他にもトミーとタペンスのおしどり夫婦探偵シリーズ物の原作はあるのに、なぜこの本来ミス・マープル物である『パディントン発4時50分』をおしどり夫婦探偵物に改変したのかということについては、前作「奥様は名探偵」の原作が一旦引退したトミーとタペンスのその後の活躍を描いたものであったために、それ以前の作品をもってこれなかったんだろうなあ。「おしどり探偵」シリーズも最後の『運命の裏木戸』では2人とも75歳と更に年齢がいっており、これはカトリーヌ・フロが演じるには原作の方が年齢が高すぎるという判断からではないでしょうか。
シリーズ3作の前2作は劇場公開されたのに対し、こちらは劇場未公開でしたが、比較的原作通りに作られた「奥様は名探偵」に対し、本来は「ミス・マープル物」であるところを「おしどり夫婦探偵風」のサスペンスコメディにアレンジした作品でありながらも結構愉しめ、劇場公開されなかったのがやや不思議。
カトリーヌ・フロとアンドレ・デュソリエの遣り取りが楽しく、未亡人と偽って邸に乗り込んだところへ夫のべレスフォード大佐が捜査に乗り込んで来て、邸の人々の前では初対面をつくろいながら、裏では、夫が妻の冒険に苦言を呈し、妻がそれを宥めすかすという構図が愉快です。
コメディ部分において、スコットランド系フランス人のべレスフォード大佐のキルトスカートが、ポーチのベルトがマンホールに引っ掛かった際にめくれるといった場面はややベタでクドかったかな。でも、叔母バベットが蛾の大家という設定で、べレスフォード大佐に頼まれて嫌々ながら乗り込んだ邸で蛾の講釈を垂れる場面など、素直に笑えるシーンの方が多かったように思います。
大富豪の長女エンマ役のキアラ・マストロヤンニと次男で彫刻家(原作では画家)のフレデリク役のクリスチャン・ヴァディムはカトリーヌ・ドヌーヴの娘と息子で、キアラ・マストロヤンニはクリスティ原作の主演作「
「アガサ・クリスティー 奥さまは名探偵 〜パディントン発4時50分〜」●原題:LE CRIME EST NOTRE AFFAIRE(Crime Is Our Business)●制作年:2008年●制作国:フランス●本国上映:2008/10/15●監督・脚本:パスカル・トマ●製作:ナタリー・ラフォリ●原作:アガサ・クリスティ●時間:119分●出演:カトリーヌ・フロ/アンドレ・デュソリエ/キアラ・マストロヤンニ/メルヴィル・プポー/クリスチャン・ヴァディム/クロード・リッシュ/アレクサンドル・ラフォーリ/イポリット・ジラルド/イヴ・アフォンソ/アニー・コルディ●DVD発売:2011/05●発売元:ファインフィルムズ(評価:★★★☆)


偶然に女優のジェーン・ウィルキンソン(フェイ・ダナウェイ)と知り合ったポワロ(ピーター・ユスティノフ)は、彼女から離婚に応じない夫エッジウェア卿を説得して欲しいと頼まれる。ポワロはエッジウェア卿に会うが、卿からは半年も前に承諾の手紙を書いたことを聞かされ訝しがる。そしてその晩、エッジウェア卿は何者かに殺害され、現場ではジェーンの姿が目撃されたのだが、彼女には確かなアリバイがあり、どうやらそれは彼女そっくりの物真似タレント、カーロッタ(フェイ・ダナウェイが二役)だったらしい。しかし今度はそのカーロッタまで不自然な死を遂げる。エッジウェア卿の娘をはじめ、卿の死を望みそうな人間は多くいるが、その誰もにアリバイがあった―。
映画「
そうした中、興味深いのは、お馴染みジャップ警部を、'89年からTⅤ版「名探偵ポアロ」でポワロを演じることになるデビッド・スーシェが演じている点で、ピーター・ユスティノフ演じるポワロに常に先行される役どころを彼が演じているというのが、なかなか面白かったです。
「名探偵ポワロ/エッジウェア卿殺人事件」●原題:THIRTEEN AT DINNER●制作年:1985年●制作国:アメリカ●本国放映:1985/09/19●監督:ルー・アントニオ●脚本:ロッド・ブラウニングス●原作:アガサ・クリスティ●時間:95分●出演:ピーター・ユスティノフ/デヴィッド・スーシェ/フェイ・ダナウェイ/ジョナサン・セシル/リー・ホースリー/ビル・ナイ/ダイアン・キートン●ビデオ発売:1990/11 (ビクターエンタテインメント)(評価:★★★☆)






1932年に刊行されたアガサ・クリスティのエルキュール・ポワロシリーズの長編第6作で(原題:Peril at End House)、『牧師館の殺人』(1930)、『シタフォードの秘密』(1931)に続く「館物」でもあり、タイトルの邦訳は、ハヤカワ・ミステリ文庫・クリスティー文庫(共に田村隆一:訳、クリスティー文庫新訳版は真崎義博:訳)では「邪悪の家」ですが、創元推理文庫(厚木淳:訳)では「エンド・ハウスの怪事件」、新潮文庫(中村妙子:訳)では「エンド・ハウス殺人事件」などとなっています。
犯人がポワロの謎解きをミスリードさせる張本人である作品ですが、ポワロに対する読者の、彼がどんな状況においても超人的な名探偵であるという思い込みがある種トラップになっている作品とも言え、そう言えばこの作品はポワロとヘイスティングスとの謎解きを巡る会話が多く、振り返ってみれば、2人して読者をミスリードする役割を果たしていた感じもします。
デヴィッド・スーシェ(David Suchet)の主演TⅤ版(London Weekend Television)「名探偵ポワロ」でも、吹替えの熊倉一雄(1917-2015)の独特の声の抑揚のもと、ポワロはヘイスティングスに対しても「です・ます調」で語りかけ、それが固定的イメージになっていますが、考えてみれば、ポワロがヘイスティングスに対して「です・ます調」で話すのは、あくまでも翻訳者の選択であると言えるのでないかと思います。
そのデヴィッド・スーシェ版「名探偵ポワロ」ですが、英国LWT(London Weekend Television)が主体となって制作、1989年1月放映分から2014年1月放映予定分まで70作品作られており、この『邪悪の家』は、第2シーズン第1話(通算第11話)「エンドハウスの怪事件」として、1990年1月にシリーズ初の拡大版(ロング・バージョン)で放映されました。日本でも1990年8月11日、NHKがこのシリーズの放映を始めた年に放映されており、このシリーズで最初に観たポワロ物がコレという人も多いのではないかと思われます。
ほぼ原作に忠実に作られていますが、田舎に来て、誰も自分が有名な探偵であることを知らないことに不満なポワロのご機嫌斜めぶりが強調されているのが可笑しいです。それと、原作には出てこないミス・レモンが登場し、謎解きのヒントはヘイスティングスと彼女の言葉遊び的な遣り取りから生まれることになっています。更に、ラストのポワロが仕組んだ降霊会で、無理やり霊能力者の役割を演じさせられるのは、原作ではヘイスティングスのところが、この映像化作品ではミス・レモンになっています。
「名探偵ポワロ(第11話)/エンドハウスの怪事件」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT II:PERIL AT END HOUSE●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/07●監督:レニー・ライ●脚本:クライブ・エクストン●時間:103分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン) /ポリー・ウォーカー(ニック・バックリー) /ジョン・ハーディング/ジェレミー・ヤング/メアリー・カニンガム/ポール・ジェフリー/アリソン・スターリング/クリストファー・ベインズ/キャロル・マクレディ/エリザベス・ダウンズ●日本放映:1990/08/11●放映局:NHK(評価:★★★☆)


モハメド・オマル・アブディン氏



Steve Hamilton



ホームズの元にメアリー・モースタン(ジェニー・シーグローブ)という若い女性が相談に訪れ、彼女の父親はインド英国軍の大尉だったが、帰国した際に消息を絶ち、その数年後から謎の人物から彼女に贈り物が届くようになって、そして今度は、その相手から直接会いたいとの連絡があったという。ホームズとワトスンは、メアリーに付添って、彼女の父親とインドで一緒だったショルトー少佐の息子サディアス(ロナルド・レイシー)を訪れ、そこで父親の死と秘密の財宝についての話を聞かされる。それによれば、サディアスの父ショルトー少佐はインドにいた時期に、友人のモースタン大尉と共にアグラの財宝を発見し、ショルトーは先に財宝を持ってイギリス本国に戻っていたが、約束していた財宝の分け前を要求してインドからやってきたモースタン大尉と口論になり、心臓発作を引き起こさせてしまう。せめてもの罪滅ぼしに、財宝の一部を娘の元に送るようにというショルトー少佐の遺言を守っていたというのが事の真相で、ショルトーはその後持病を悪化させ、謎の侵入者の影に怯えながら急死、遺骸の胸に、侵入者が現れたことを示す「四人の署名」の文字と、シーク教を象徴する4の意味の赤い印付きの紙片が残されていたという。そして今回、父が生前に隠し場所を話さなかった財宝の隠し場所を発見して、メアリに分け与えるために手紙で呼び出したのだという。ホームズ一行はショルトーの兄が住むノーウッドの屋敷へと向かうが、鍵のかかった部屋の中で、双子の兄(ロナルド・レイシー二役)の死体が発見され、サディアスは兄殺しの容疑をかけられ逮捕される。ホームズが犬のトービィの嗅覚を頼りに真犯人を追ってテムズ河畔に辿り着くと、貸し船屋の女主人が義足の奇妙な男に船を貸したとを言う。ホームズは船を発見するため、ベーカー街イレギュラーズをロンドンの街に放った―。
1点だけ大きな違いがあり、原作では最後ワトソンンはメアリーと婚約してめでたしめでたし、それをホームズが「絶対におめでとうとは言えないね」と皮肉るところ、この映像化作品では、彼女は事件解決後に去っていき、それを窓から見遣ったワトスンが「魅力的な女性だ」とポツリ漏らすと、ホームズは「気がつかなかったよ」と―(この遣り取りは、原作では、メアリーがベイカー街を最初に訪れ、帰った後にある)。以降、長編第2作にしてワトスンが婚約してしまった原作に対し、このシリーズでは、最後までワトスンはホームズの同居人でいます。
ジェニー・シーグローブ演じるメアリーは美しく、また、原作よりかなり気丈な印象。彼女の手に財宝が渡るかどうかがストーリーのカギとなりますが、ファッションから見て何だか原作よりも経済的に恵まれている生活を送っている印象もあり、これだったら、財宝がなくても大丈夫?
る義足の男ジョナサン・スモールが逮捕された後に事件の内容を自らホームズらへ語るのも原作と同じですが、このジョナサン・スモールを演じているのが、「主任警部モース」のジョン・ソウ(John Thaw、1942-2002)だとは、最初気づきませんでした。「主任警部モース」の第1話は、この年(1987年)の1月に英国で放映されています。



2011(平成23)年・第14回「大藪春彦賞」受賞作。2012年・第9回「本屋大賞」第6位。




