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ドラマとは異なり、ほぼ原作通りの「悪が勝つ」結末で満足!?

「けものみち [DVD]」池内淳子/池部良/小沢栄太郎/小林桂樹/伊藤雄之助

中風で寝たきりの夫・寛次(森塚敏)を女中勤めで養っている成沢民子(池内淳子)は、客のホテル支配人・小滝(池部良)に誘われ、事故死を装い、夫の寛次を焼き殺した。そして民子は翌日、小滝の紹介で弁護士・秦野(伊藤雄之助)と共に鬼頭洪太(小沢栄太郎)の邸を訪れた。中風で身体の不自由な老人・鬼頭の世話をするため民子は選ばれたのだ。金に任せた華
美な生活、民子は鬼頭に身体を任せながら、いつか小滝が忘れられない人となる。一方焼死事件に不審を抱いた警視庁捜査一課の久恒刑事(小林桂樹)は、当日現場付近に
民子らしい女がいたことを聞き込みながら、民子のアリバイを崩せず、次第に民子の美しさに職業を逸脱した淫らな行為を迫るのだった。久恒の調査で、鬼頭は元満州浪人で、戦後莫大な金を手にし、政治
を裏から動かし、右翼団体を握っている人物であり、秦野とは、かつて鬼頭のもとで働いていた鉱夫の偽名で、本物の弁護士・秦野は満州で行方不明となっていた。また小滝は左翼くずれで、満州から古美術を盗み秦野らに近づいて、一つのラインを形成していることが判明した。その頃政界では、ある殺人事件にまきこれた高速道路公団総裁・香川(千田是也)が辞職し、新しい総裁が椅子についた。鬼頭のさ<しがねであることは当然ながら、確証がつかめず久恒は苛立つ。だが鬼頭の手は久恒にも伸びた。知りすぎた久恒は退職を勧告され呆然とする。そして数日後、久恒は鬼頭の用心棒・黒谷(黒部進)に殺害された。事件は複雑な人間関係を見せた頃、鬼頭が死亡、通夜の鬼頭邸で秦野が殺害される。民子は今さらながら、自分の置かれた立場に恐怖を感じた。小滝を訪ねた民子は、ある安宿に逢瀬を楽しんだが、入浴中、不意に乱入した黒部の手で石油をかぶり火だるまとなって死ぬ。だがその黒部も、浴室の戸をいち早く閉めてニヒルな笑いを浮かべる小滝の策に自ら滅んでゆくのだった―。
須川栄三(1930-1998/68歳没)監督の1970年作で、原作は、松本清張が「週刊新潮」に'62(昭和37)年1月から翌年12月にかけて連載したもので、'64(昭和39)年5月、新潮社から単行本として刊行されています。この映画化作品のほか、過去3度テレビドラマ化されています。
•1982年「松本清張シリーズ・けものみち」[全3回]名取裕子・山崎努(NHK)
•1991年「松本清張作家活動40年記念・けものみち」[全3回]十朱幸代・草刈正雄(NHK)
•2006年「松本清張 けものみち」[全9回]米倉涼子・佐藤浩市(テレビ朝日)


この中で、'82年の名取裕子・山崎努版の民子役の名取裕子はピッタリだと思いましたが、その上をいく映画における池内淳子という感じ。ジェームス三木脚本、和田勉演出の'82年のドラマ版も錚々たる配役ですが、やはり全体的にみても映画版の方が上でしょうか('06年ドラマ版はかなり落ちる)。
役名 '65年映画 /'82年ドラマ ('06年ドラマ)
民子 池内淳子 / 名取裕子 (米倉涼子)
小滝 池部 良 / 山崎努 (佐藤浩市)
鬼頭 小沢栄太郎/ 西村晃 (平幹二朗)
秦野 伊藤雄之助/ 永井智雄 (吹越 満)
久恒 小林桂樹 /伊東四朗 (仲村トオル)
米子 大塚道子 /加賀まりこ(若村麻由美)
'82年のドラマ版では、原作よりも、名取裕子演じる民子を中心に描いていて、原作と結末を変えて、民子が、最後は山崎努演じる小滝との逃避行を図るかたちになっており、"道行(みちゆき)物"のような印象があって(小滝が最後に民子に心底惚れた)、小滝を完全な悪者にしていないところがテレビ的であると思えましたが、これはこれで良かったです(評価★★★★)。
【3133】 ○ 和田 勉 (原作:松本清張) 「松本清張シリーズ・けものみち」 (1982/01 NHK) ★★★★

一方、この池内淳子の映画版は、ラストで民子が辿る運命は原作と同じで、ちょっと残酷ですが、これも夫殺しの原罪の報いということでしょうか。まあ、原作は民子ではなく小滝が主人公であり、その彼のピカレスク小説と解するのがオーソドックスであると思われます。
こうしたピカレスク小説は、原作は「悪が勝つ」といった終わり方になっていても、映画化される際にはその「悪」も最後は滅びるといった改変がされることが清張作品においても少なからずありますが(「黒い画集 ある遭難」('61年/東宝)などはその典型)、この映画は、黒谷(黒部進)という原作には無い殺し屋が登場するなど途中一部改変はあるものの、ほぼ原作通りの「悪が勝つ」結末で満足(!?)でした。ただし、最後に小滝が見せるニヒルな笑いは、泣き笑いともつかぬ表情ともとれます。(評価はこちらも★★★★)。
その池部良演じる「悪」を体現している小滝が、ずっとニヒルで(前年の「乾いた花」('64年/松竹)で演じたヤクザ・村木に近いイメージ)、これちょっとカッコ良すぎるのではと思ってしまうのは、小滝のモデルが当時ホテルニュージャパンのオーナー兼社長だった横井英樹(1913-1998)であると言われていて、落差イメージが念頭にあるためかもしれません。

「けものみち」●英題:BEAST ALLEY●制作年:1965年●監督:須川栄三●製作:藤本真澄/金子正且●脚本:白坂依志夫/須川栄三●撮影:福沢康道●音楽:武満徹●時間:150分●出演:池内淳子/池部良/小沢栄太郎/小林桂樹/伊藤雄之助/森塚敏/大塚道子/黒部進/千田是也/菅井きん/矢野宣/土屋嘉男/中丸忠雄/小松方正/稲葉義男●公開:1965/09●配給:東宝●最初に観た場所:神田・神保町シアター(25-05-11)(評価:★★★★)

「松本清張シリーズ・けものみち」●演出:和田勉●脚本:ジェームス三木●音楽:(オープニング)ムソルグスキー「交響詩 禿山の一夜」/(劇中音楽)ムソルグスキー「組曲 展覧会の絵」(ラヴェル編曲)●原作:松本清張●出演:名取裕子/山崎努/西村晃/伊東四朗/永井智雄/加賀まりこ/石橋蓮司/中村伸郎/久米明/加藤和夫/勝部演之/林昭夫/塩見三省/松崎真/高森和子/原知佐子/矢吹二朗/林ゆたか/奥野匡/野村信次/西村淳二/松本マツエ/増田順司/大森義夫/山崎満/松村彦次郎/入江正徳/小坂明央/小林かおり/永六輔●放送日:1982/01/09~23●放送局:NHK(評価:★★★★)

「松本清張 けものみち」●演出:松田秀知/藤田明二/福本義人●プロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)/伊賀宣子(共同テレビ)●脚本:寺田敏雄●音楽:(エンディング)中島みゆき「帰れない者たちへ」●原作:松本清張●出演:米倉涼子/佐藤浩市/仲村トオル/若村麻由美/平幹二朗●放映:2006/01/12~03/09(全9回)●放送局:テレビ朝日


1997年1月号「都電のゆく町」の方は、赤瀬川凖、安西水丸、浅田次郎といった人たち9氏が、消えた
懐かしの路線についてのそれぞれの思いの丈を綴っていますが、何よりも良かったのが、池内紀、南伸坊、田中小実昌の3氏による、唯一現存する都電荒川線のリレー紀行で、実際に改めて都電に乗ってみて、駅ごとに乗り降りして書いているのでシズル感がありました。
中でも、「王子駅前」から「三ノ輪橋」までの15駅区間を担当した田中小実昌の「終点は飲み屋の入り口。」というエッセイが面白かったです。荒川遊園地前で降りて、荒川遊園地で、頭上のレールを、ペダルをこいで走るスクーターみたいのが面白かったと(自分も昔に子どもを連れて乗った)。遊園地の河の手が隅田川の遊覧船の発着場所になっているのを見て、「隅田川も遊覧船が行き来するなど、セーヌ川なみになってきた」(笑)と。そして最後は、三ノ輪橋で降りて、酒場「中里」で煮込みを堪能する―(「中ざと」は、多分同じ店だと思うが、どちらかというと日比谷線の三ノ輪駅に近い場所に今もある)。
写真も充実して、付録で都電の大判路線図(「電車案内図」)が八ツ折で付いていますが(コレ、貴重!)、かつては都内を網の目のように都電が走っていたのだなあと改めて思わされます。この路線図は、2007年5月号では見開きページで(4分の1くらいの大きさになってしまったが)掲載されています。今残っているのは都電荒川線だけかあ。

2007年5月号「昭和30年代、都電のゆく町」の方は、昭和30年代という時代がコンセプトになっているようで、こちらも貴重な写真が多く、漫画家のつげ忠男氏などが文章を寄せていて、前の特集の二番煎じになっていないのがいいです(使いまわしが無く、重なっているのはまさにその「電車案内図」ぐらいか)。
目玉は、小林信彦氏と荒木経惟氏の対談で、でも実質4ページ足らずなので、やや物足りない感じ。その代わり写真が豊富で、また、都電が乗り物絵本でどのように描かれてきたかといった興味深い図版も10点ぐらいあります。都電の車両図鑑などもあって(都電の鉄道オタク向け?)ある意味マニアックです。
ているけれど、"電車バカ"(頭師佳孝)が運転するのは"空想の路面電車"で、原作者の山本周五郎の経歴からすれば、横浜市電がモデルらしいです(本作は興行的には失敗し、黒澤明は大きな借金を抱えることになった。だだし、第44回「キネマ旬報ベスト・テン」では第3位に選ばれ、井川比佐志が男優賞を受賞した)。
個人的には、畑山博原作、中田新一監督、和由布子主演の「海に降る雪」('84年)がここに出てこないのが残念。故郷を飛び出した男女が同棲するのが、まさに都電が軒をかすめるように通るアパートではなかったか(と思うのだが、都電ではなかったのか。コレ、DVD化されていないなあ)。因みに、小説発表後、女優の出演希望や企画申し込みが殺到し、一時は原田美枝子主演・監督で製作に入ったというエピソードもあります。体当たり演技の和由布子は、渡辺淳一原作、池広一夫監督の「化粧」('84年)で松坂慶子、池上季実子と京都の老舗料亭の三姉妹を演じたのが映画デビュー作で、この作品が映画出演第2作で初主演でした。1989年に五木ひろしと結婚して女優を引退しています。新高輪プリンスでのゴージャスな結婚式はバブル期を象徴するものでしたが、この映画のアパートで同棲する主人公と「イメージ合わないなあ」と思った記憶があります。
最後に「都電」の話に戻って、都電荒川線には2017年から「東京さくらトラム」という愛称が付けられていますが、都電に乗らない人にはあまり定着していないのではないでしょうか。逆に、都電によく乗る人の間では、「東京さくらトラム」が正式名称だと思われているフシがありますが、正式名称は「都電荒川線」のまま変わっていません。
「どですかでん」●制作年:1970年●監督:黒澤明●脚本:黒澤明/小国英雄/橋本忍●撮影:斎藤孝雄/福沢康道●音楽:武満徹●原作:山本周五郎『季節のない街』●時間:140分●出演:頭師佳孝/菅井きん/三波伸介/楠侑子/伴淳三郎/丹下キヨ子/日野道夫/下川辰平/古山桂治/田中邦衛/吉村実子/井川比佐志/沖山秀子/松村達雄/辻伊万里/山崎知子/亀谷雅彦/芥川比呂志/奈良岡朋子/三谷昇/川瀬裕之/根岸明美/江角英明/高島稔/加藤和夫/荒木道子/塩沢とき/桑山正一/寄山弘/三井弘次/ジェリー藤尾/谷村昌彦/渡辺篤/藤原釜足/小島三児/園佳也子●公開:1970/10●配給:東宝●最初に観た場所:池袋・文芸地下(81-01-31)(評価:★★★)●併映:「白痴」(黒澤明) 

「海に降る雪」●制作年:1984年●監督:中田新一●製作:相澤徹/北川義浩●脚本:石倉保志/中田新一●撮影:姫田真佐久●音楽:木森敏之●原作:畑山博●時間:105分●出演:和由布子/田中隆三/奥田瑛二/美保純/風間杜夫/井川比佐志/鈴木瑞穂/浦辺粂子/前田吟/橋本功/矢野宣●公開:1984/11●配給:東宝●最初に観た場所:新宿・ビレッジ2(84-11-25)(評価:★★★)●併映:「チ・ン・ピ・ラ」(川島透)



京都平安神宮の咲いたしだれ桜の下で、佐田千重子(岩下志麻)は幼な友達の水木真一(早川保)に突然「あたしは捨子どしたんえ」と言う。呉服問屋の一人娘として何不自由なく育ったが、自分は店の前の弁柄格子の下に捨てられていたのだと...。とは言え、親娘の愛は細やかだった。父の太吉郎(宮口精二)は名人気質の人で、ひとり嵯峨にこもって下絵に凝っていた。西陣の織屋の息子・大友秀男(長門裕之)は秘かに千重子を慕っており、見事な帯を織り上げて太吉郎を驚かした。ある日千重
子は、清滝川に沿って奥へ入った北山杉のある村を訪ねた。そして杉の丸太を磨いている女達の中に自分そっくりの顔を見い出す。夏が来た。祇園祭の谷山に賑う四条通を歩いていた千重子は北山杉の娘・苗子(岩下志麻、二役)に出会った。娘は「あんた姉さんや」と声をふるわせた。千重子と苗子は双子の姉妹だった。しかし父も母もすでにこの世にはいない、と告げると苗子は身分の違うことを思い雑踏に姿を消した。
その苗子を見た秀男が千重子と間違えて、帯を織らせてくれと頼む。一方自分の数奇な運命に沈む千重子は、四条大橋の上で真一に声をかけられ兄の竜助(吉田輝雄)を紹介された。8月の末、千重子は苗子を訪ねた。俄か
雨の中で抱きあった二人の身体の中に姉妹の実感がひしひしと迫ってきた。秋が訪れる頃、秀男は千重子に約束した帯を苗子のもとに届け、時代祭の日に再会した苗子に結婚を申し込む。しかし、苗子は秀男が自分の中に千重子の面影を求めていることを知っていた。冬のある日、以前から千重子を愛していた竜助が太吉郎を訪ねて求婚し、翌日から経営の思わしくない店を手伝い始めた。その夜、苗子が泊りに来た。二階に並べた床の中で千重子は言う。「二人はどっちの幻でもあらしまへん、好きやったら結婚おしやす。私も結婚します」と―。
中村登(1913-1981/67歳没)監督の1963(昭和38)年公開作で、川端康成の同名小説を忠実に映画化した文芸ロマンス。原作は川端康成が「朝日新聞」に1961(昭和36)年10月から翌1962(昭和37年)年1月まで107回にわたって連載したもので、1962年6月新潮社刊。京都各地の名所や史蹟、年中行事が盛り込まれた作品で、国内より海外での評価が高く、ノーベル文学賞の授賞対象作とされる作品です。(1968(昭和43)年、川端康成は日本人として初めてノーベル文学賞を受賞する。しかしその当時、受賞対象の作品名は発表されず、50年間非公開となっていた。ようやく2016(平成28)年に受賞作品が公開され、スウェーデンアカデミーは、受賞対象は「古都」(The Old Capital)であり、「まさに傑作と呼ぶにふさわしい」と絶賛した。(2017.1.4 日本経済新聞))
映画化に際し、原作者の川端康成が撮影現場に足を運び、指導監修を手掛けており、その結果、静謐で繊細、情緒的な川端の世界を忠実に再現した作品になっています。映画の方も四季折々の美しい風景や京都の伝統を背景に、当時21歳の岩下志麻が二人の姉妹の二役を好演し、彼女の一人二役は自然かつ美しいと思いました。原作(読んだのはかなり前だが)の良さを(おそらく)損なっておらず、中村登監督の職人的な技量が感じられます。この作品は第36回米国「アカデミー賞外国語映画賞」にノミネートされています(後に1980年に市川崑監督、山口百恵主演で、2016年には Yuki Saito監督、松雪泰子主演でリメイク作品が撮られている)。
実は双子の姉妹だった千重子と苗子の生い立ちを比べると、千重子は呉服問屋の一人娘として何不自由なく育てられたお嬢さんで、一方の苗子は早くから北山杉の木場(製材所)における労働力として勤しみ苦労してきたはずなのに、二人が出会ってからずっと苗子の方が千重子に対して何か済まないような気持ちは抱いているのは、最初は身分差を感じて苗子が自分を卑下しているのかなと思ったりしましたが(確かに最初自ら千重子に会わないようにしたのはそのためだったが)、根っこのところでは、実親に捨てられたのが千重子の方で、実親の元に残されたのが自分だったからということだったのだなあ。
しっかり者の苗子に対して、お嬢さん育ちでおっとり気味の千重子でしたが、竜助(吉田輝雄)に店の番頭(田中春男)が不正を働いているのではと指摘され、少し変化が見られます。そして最後はしっかり番頭を問い詰めますが、この時の岩下志麻はちょっと「極妻」っぽかった、と言うか、それに繋がる雰囲気があり(当時まだ22)、「お嬢さん」と「強い女」の両方を演じられるところが、岩下志麻の強みと言うか、魅力だと思いました(一人二役だが、三役演じているみたい)。
京都東山南禅寺に小料理屋「小笹」を出す佐々木せい(森光子)には、24歳になる娘・千鶴(岩下志麻)がいた。せいは、日頃親しくする西陣の織元・梅垣のぼん(長門裕之)との縁談を望んでいたが、千鶴は何か吹っ切れぬものを感じていた。そんな時、かつてせいが祇園の舞妓だった頃、せいのファンであった山口信吉(山形勲)が小笹を訪れた。大学教授だという山口を、格好の脱出先とみた千鶴は、母親の愚知を無視して、山口に連れられ上京した。途中、千鶴を連れて箱根に立寄った山口は、千鶴の亡父らと京大三人組と呼ばれた実業家の緒方(有島一郎)を紹介した。そこで緒方の秘書・長谷川一郎(川崎敬三)に紹介された千鶴は、洗錬された長谷川に好感を持つ。その晩千鶴のお酌で、学生時代に返った二人は、せいが千鶴の父と結婚した時に、既にせいのお腹の中には千鶴がおり、三人の内の誰の子供か判らないと冗談まじりに話した。その話は千鶴に秘かな母への不審を抱かせた。上京した千鶴は、山口や緒方の家に泊り、銀座で長谷川と飲み明かし、ますます長谷川に魅かれていった。ある日、結婚して上京している親友・金子三枝子(桑野みゆき)を訪れた千鶴は、ちょうど遊びに来ていたOLでかつての級友・長嶋節子(倍賞千恵子)に会って懐しい一日を過した。二人が自分の生活の範囲で、楽しく暮らしているのを知った千鶴は急に長谷川に会いたくなり、電話をしたが、長谷川にはすでに同棲している恋人・京子(宗方奈美)がいることを知り、千鶴はすっかり失望した。また緒方の浮気を目撃した千鶴は、東京でのめまぐるしい生活から、京都が懐しく思い出された。せいの心臓病発作で急拠京都へ帰った千鶴は、梅垣のぼんが店をきりもりする姿に、急に親しみを感じた。その夜、ぼんと結婚を決意した千鶴は、せいから出生の秘密を確かめると、初めて母娘の情愛が交流するのを感じた。大安吉日、千鶴は美しい花嫁姿でせいの前に立った―。
中村登監督の1965年作で、里見弴と小津安二郎の原作を中村登が脚色・監督した青春もの。撮影は「夜の片鱗」の成島東一郎。岩下志麻が、嫁入り前の娘の心の揺らぎを演じており、中村登版「秋刀魚の味」('62年/松竹)といったところでしょうか
当時24歳の岩下志麻がキュートに酔っ払ってるシーンは見もの。考えてみれば岩下志麻は銀座生まれの吉祥寺育ちで、東京っ子の彼女が、京言葉をこなしてお御転婆な京娘を演じているわけで、やはりこの頃から演技力がありました。
「古都」●制作年:1963年●監督・脚色:中村登●製作:桑田良太郎●脚本:権藤利英●撮影:成島東一郎●音楽:武満徹●原作:川端康成●時間:106 分●出演:岩下志麻/宮口精二
/中村芳子/吉田輝雄/柳永二郎/長門裕之/環三千世/東野英治郎/浪花千栄子/田中春男/千之赫子●公開:1963/01●配給:松竹●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(23-06-27)(評価:★★★★)

「暖春」●英題:SPRINGTIME●制作年:1965 年●監督・脚色:中村登●製作:佐々木孟●撮影:成島東一郎●音楽:山本直純●原作:里見弴/小津安二郎●時間:93分●出演:森光子/岩下志麻/山形勲/三宅邦子/太田博之/有島一郎/乙羽信子/早川保/桑野みゆき/倍賞千恵子/川崎敬三/宗方奈美/長門裕之/三ツ矢歌子/呉恵美子/岸洋子/志賀真津子●公開:1965 /12●配給:松竹●最初に観た場所:神田・神保町シアター(23-08-19)(評価:★★★)



ヤクザ抗争で敵対していた安岡組の男を刺して三年ぶりに刑務所から出所した船田組の村木(池部良)は、賭場で男達に混じり大胆な花札勝負をする「その少女」と出会う。彼女に
自分と同じ匂いを感じた村木は、愛人の新子(原佐知子)との逢瀬も気が入らない。次の賭場で村木は再びその少女に会い、彼女との
サシで勝負する。有り金を全部張って挑みかかる彼女は、村木の心を楽しませる。その夜、村木は思いがけず屋台でコップ酒を飲む彼女と出会う。冴子(加賀まりこ)という名の彼女は、もっと大きな勝負のある場所へ行きたいとせがむ。約束の日、豪華なスポーツカーで現れた彼女に村木は眼を瞠る。大きな賭場での冴子の手捌きは見事だった。彼はふと隅に蹲って彼
女を擬視する葉(藤木孝)という男に気づく。中国帰りで殺しと麻薬だけに生きているというその男の死神のような眼に、村木は危険を感じる。それでも勝負に酔った村木と冴子は、
夜の街を狂ったように車を走らせ、充実感を味わう。勝負事への刺激を追い求める冴子が、勝負が小さくてつまらないと言うので、村木は弟分の相川(杉浦直樹)が主宰する、その筋の大物らが集まる花札賭場へ彼女を案内し、大勝負の刺激に心震える冴子の姿に村木は満足する。そこへガサ入れがあり、隠れる中二人はカモフラージュで恋人同士を演じるが、二人の間にキス以上の関係はない。更に刺激を求める冴子は、葉から麻薬の刺激を教わってしまう。一方の村木は、自分の組と大阪の組との抗争に巻き込まれ、再び鉄砲玉になる。標的の組長を殺る直前、村木は冴子に会い「あんたにヤクよりいいものを見せてやる。俺は人を殺すんだ」と襲撃現場に彼女を連れて行く。オペラBGMが流れる重厚ゴージャスなクラブで、冴子の目の前で村木はターゲットの組長(山茶花究)を刺す。その時、冴子は―。
1964(昭和39)年公開の篠田正浩監督作で、原作は石原慎太郎が雑誌「新潮」1958(昭和33)年に発表した短編小説。公開前に配給会社側から難解という理由で8カ月間お蔵入りとなった後、反社会的という理由で成人映画に指定のうえ公開されたそうですが、確かに池部良演じる主人公の村木はヤクザだしなあ。但し、ヤクザと言ってもインテリ・ヤクザといったイメージでしょうか(本を読んだりしている場面があるわけではないが)。
主人公の村木が出所してみたら、船田組と安岡組が既に手打ちをしていて、安岡組のチンピラ・次郎(佐々木功)がかつての仇である村木を襲うが失敗、次郎は安岡(東野英治郎)の命令で指を詰め、安岡も船田(宮口精二)近しくなっていて、次郎もその後は村木の子分みたいになるという―ちょっと最初の方の勢力図が分かりにくいですが(この話は原作には無い映画のオリジナル)、結局、冴子との出会いを経て、村木は再び刺客として大阪の組の組長を殺ることになり、その際に冴子を連れれ行き、その刺殺現場を見せます。
何のために村木は冴子を襲撃現場に連れて行ったのか。自分と同じく日常生活の刺激に対して不感症状態になっていて、生の充足を賭博でしか得ることが出来なくなってしまっている彼女に、葉が彼女に与える麻薬以上の刺激を村木は与えたかったのか。それが村木の冴子に対する愛の形であり、それが虚しいと分かっていても、彼はそれをしないではおれなかったのか―。
作家・石原慎太郎の初期の中短編作品は悪くないものが多く、この映画の原作「乾いた花」もその一つですが、映画はストーリーの根幹部分は原作を踏襲しながらも、映像や音楽を研ぎ澄ませて原作を超えているように思いました(マーチン・スコセッシはこの作品を30回は見ているという)。但し、音楽は、武満徹が賭場に響く花札の札の音にインスパイアされてテーマ曲を作ったとのことですが、劇中では殆ど使われていません(花札を切る音がバックミュージックの代わりになっていたりする)。
加賀まりこ演じる冴子の小悪魔感と、賭場の緊迫した雰囲気との取り合わせが光っています。コラムニストの中森明夫は、この映画の美少女ヒロイン像を押尾守のアニメーションで観てみたいとしており、"萌え"系の感性がここにはあり、「やはり石原慎太郎は元祖おたく作家だ!」としています(『石原慎太郎の文学9』('07年/文藝春秋)解説)。
東京オリンピックの年に、こうした世間一般の感覚で言えば"退廃的"とも言える作品が公開されていて、その原作者が、「
安岡組のチンピラ役の佐々木功、村木の弟分役の杉浦直樹ともに若々しく、葉を演じた藤木孝に至っては、「




「乾いた花」●制作年:1964年●監督:篠田正浩●製作:白井昌夫/若槻繁●脚本:馬場当/篠田正浩●撮影:小杉正雄●音楽:
上真一郎/宮口精二/佐々木功/杉浦直樹/平田未喜三/山茶花究/倉田爽平/水島真哉/竹脇無我/水島弘/玉川伊佐男/斎藤知子/国景子/田中明夫●公開:1964/03●配給:松竹(評価:★★★★)
篠田 正浩(映画監督)


寛永7(1630)年10月、井伊家上屋敷に津雲半四郎(仲代達矢)という浪人が訪れ、「仕官先もままならず、生活も苦しくなったので屋敷の庭先を借りて切腹したい」と申し出る。申し出を受けた家老・斎藤勘解由(かげゆ)(三國連太郎)は、春先、同様の話で来た千々岩求女(石濱朗)の話をする。食い詰めた浪人たちが切腹すると称し、なにがしかの金品を得て帰る最近の流行を苦々しく思っていた勘解由が切腹の場をしつらえると、求女は「一両日待ってくれ」と狼狽したばかりか、刀が竹光であったために死に切れず、舌を噛み切って無惨な最期を遂げたと。この話を聞いた半四郎は、自分はその様な"たかり"ではないと言って切腹の場に向かうが、最後の望みとして介錯人に沢潟(おもだか)彦九郎(丹波哲郎)、矢崎隼人(中谷一郎)、川辺右馬介(青木義朗)の3人を順次指名する。しかし、指名された3人とも出仕しておらず、何れかの者が出仕するまでの間、半四郎は自身の話を聞いて欲しい
と言う。求女は実は半四郎の娘・美保(岩下志麻)の婿で、主君に殉死した親友の忘れ形見でもあった。孫も生れささやかながら幸せな日が続いていた矢先、美保が胸を病み孫が高熱を出した。赤貧の浪人生活で薬を買う金も無く、思い余った求女が先の行動をとったのだ。そんな求女に一両日待たねばならぬ理由ぐらいせめて聞いてやる労りはなかったのか、武士の面目などとは表面だけを飾るもの、と勘解由に厳しく詰め寄る半四郎が懐から出したものは―。
「人間の條件」6部作('59-'61年)の小林正樹(1916-1996/享年80)が1962(昭和37)年に撮った同監督初の時代劇作品であり、
を抜かれたお飾りのように被告席にいるだけ)、そのことを(主役が法廷にいないことも含め)浮き彫りにした内容であるだけに4時間37分を飽きさせることなく、下手なドラマよりずっと緊迫感がありました(この編集の仕方こそがドキュメンタリーにおける監督の演出とも言える。ナレーターは佐藤慶)。争点が天皇にあったことは、この裁判が、昭和天皇の誕生日(現昭和の日)に11ヶ国の検察官から起訴されたことに象徴されており、天皇に処分は及ばなかったものの、皇太子(当時)の誕生日(現天皇誕生日)に被告人28名のうちの7名が絞首刑に処されたというのも偶然ではないように思われます。
「切腹」の原作は滝口康彦(1924-2004)の武家社会の虚飾と武士道の残酷性を描いた作品です。映画化作品にも、かつて日本人が尊んだサムライ精神へのアンチテーゼが込められているとされていますが、井伊家の千々岩求女への対応は、武士道の本筋を外れて集団サディズムになっているように感じました(同時に斎藤勘解由は、千々岩求女を自らの出世の材料にしようとしたわけだ)。ストーリーはシンプルですが骨太であり(脚本は橋本忍)、観る側に、何故半四郎が介錯人に指名した3人が何れもその日に出仕していないのかという疑問を抱かせたうえで、半四郎がまさに切腹せんとする庭先の場面に、半四郎の語る回想話をカットバックさせた橋本忍氏の脚本が巧みです。
壮絶且つ凄絶な復讐(仇討)劇でしたが、改めて観ると、息子・千々岩求女の亡骸を半四郎が求女の妻・美保と一緒に引き取りに来た際に、求女に竹光で腹を切らせた首謀者である沢潟、矢崎、川辺の3人しか半四郎に会っておらず、それ以外の者には半四郎の面が割れていないとうのが一つの鍵としてあったんだなあと。
半四郎役の仲代達矢(当時29歳)は、長台詞を緊迫感絶やすことなくこなしており、勘解由役の三國連太郎(当時39歳)、沢潟役の丹波哲郎(当時39歳)の "ヒール(悪役)"ぶりも効いています(19歳の美保を演じた岩下志麻は当時21歳だったが、やはり若い。11歳の少女時代(右)まで演じさせてしまっているのはやや強引だったが)。
撮影中に起きた仲代達矢と三國連太郎の演劇と映画の対比「論争」は
カットバック(回想)シーンの中にある仲代達矢と丹波哲郎の決闘場面はなかなかの圧巻で、仲代達矢はこの作品と同じ年の1月に公開された「

因みに、滝口康彦(1924-2004)による原作「異聞浪人記」は、講談社文庫版『一命』に所収(三池崇史監督、市川海老蔵 主演の本作のリメイク作品('11年)のタイトルは「一命」となっている)。『滝口康彦傑作選』(立風書房)にある原作に関する「作品ノート」によれば、「『明良洪範』中にある二百二十字程度の記述にヒントを得た。彦根井伊家の江戸屋敷での話で、原典では井伊直澄の代だが、小説では、大名取潰しの一典型といえる福島正則の改易と結びつけるため、直澄の父直孝の代に変えている」とのことです。『明良洪範』の記述の史実か否かの評価については様々な異論があるようですが、ある程度歴史通の人たちの間では、この中にある、彦根藩(この藩は当時は弱小藩だったが後に安政の大獄で知られる大老・井伊直弼を輩出する)が士官に来た浪人を本当に切腹させてしまったことが、こうした「狂言切腹」の風習が廃れるきっかけとなったとされているようです。
小林 正樹(こばやし まさき、1916年2月14日 - 1996年10月4日)は、北海道小樽市出身の映画監督である。1952年(昭和27年)、中編『息子の青春』を監督し、1953年(昭和28年)『まごころ』で正式に監督に昇進。1959年(昭和34年)から1961年(昭和36年)の3年間にかけて公開された『人間の條件』は、五味川純平原作の大長編反戦小説「人間の條件」の映画化で、長きに渡る撮影期間と莫大な製作費をつぎ込み、6部作、9時間31分の超大作となった。続く1962年(昭和37年)初の時代劇『切腹』でカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞。続いて小泉八雲の原作をオムニバス方式で映画化した初のカラー作品『怪談』は3時間の大作で、この世のものとは思えぬ幻想的な世界を作り上げ、二度目のカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受けた他、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、日本映画史上屈
指の傑作と絶賛された。1965年(昭和40年)松竹を退社して東京映画と契約し、1967年(昭和42年)三船プロ第一作となる『上意討ち 拝領妻始末』を監督して、ヴェネツィア国際映画祭批評家連盟賞を受賞、キネマ旬報ベスト・ワンとなった。1968年(昭和43年)の『日本の青春』のあとフリーとなり、1969年(昭和44年)には黒澤明、木下恵介、市川崑とともに「四騎の会」を結成。1971年(昭和46年)にはカンヌ国際映画祭で25周年記念として世界10大監督の一人として功労賞を受賞。1982年(昭和57年)には極東国際軍事裁判の長編記録映画『東京裁判』を完成させた。1985年(昭和60年)円地文子原作の連合赤軍事件を題材にした『
「切腹」●制作年:1962年●監督:小林正樹●脚本:橋本忍●撮影:宮島義勇●音楽:武満徹●原作:滝口康彦「異聞浪人記」●時間:133分●出演:仲代達矢/三國連太郎/丹波哲郎/石浜朗/岩下志麻/三島雅夫//中谷一郎/佐藤慶/稲葉義男/井川比佐志/武内亨/青木義朗/松村達雄/小林昭二/林孝一/五味勝雄/
安住譲/富田仲次郎/田中謙三●公開:1962/09●配給:松竹(評価:★★★★)
「東京裁判」●制作年:1983年●監督:小林正樹●総プロデューサー:須藤博●脚本:小笠原清/小林正樹●原案:稲垣俊●音楽:武満徹●演奏:東京コンサーツ●ナレーター:佐藤慶●時間:277分●公開:1983/06●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋文芸坐(84-12-08)(評価:★★★★)
仲代達矢(俳優)




『太平洋ひとりぼっち』の40年ぶりの復刻(2004年刊)ということですが、帯にある「『挑戦』を忘れた日本人へ...」云々はともかくとして、今読んでもとにかく面白い!
"原作"刊行の翌年には、石原裕次郎(1934-1987)主演で映画化され、これは石原プロの設立第1作作品でもありますが、 同じヨットマンの石原裕次郎がこの作品に執着したのは理解できる気がします(自分のヨットを手に入れるまでの経済的苦労は、慶応出のお坊ちゃんと、高卒の一青年の間には雲泥の差があるが...)。
嵐の場面は市川崑(1915-2008)監督の演出と円谷プロの特撮で迫力あるものでしたが、全体としては必ずしも良い出来であるとは言い難く、市川昆監督自身が後に失敗作であることを認めています(「あんなにいいシナリオがあの程度にしかできなかったという意味で失敗。裕ちゃんはよくやってくれたけれど、ヨットが思うように動いてくれなかった。わからないようにモーターをつければ良かった。そうすればもっと自由に撮れた」と言っている。シナリオは和田夏十(本名:市川由美子、1920-1983))。それでも、快挙を成し遂げサンフランシスコ港で温かく現地の米国人に迎えられる場面は感動させられます。
「太平洋ひとりぼっち」●制作年:1963年●監督:市川昆●脚本:和田夏十●撮影:山崎善弘●音楽:芥川也寸志/武満徹●特殊技術:川上景司(
山勝/草薙幸二郎●公開:1963/10●配給:石原プロ=日活 (評価:★★★)





「サード」('78年3月/ATG)は、少年院にいる"サード"という少年の、大人達から浮ついた励ましの言葉をかけられたところで決して満たされることのない鬱々とした日々を描いた作品。彼は元々、「大きな町へ行く」ことを夢見る高校生男女の4人組の1人で、資金稼ぎに始めた売春がもとで事件を起こし少年院へ送られてきたのだった―。
ただ、"オシ"という無口な少年をはじめ、"トベチン"、"アキラ"、"漢字"、脱走を試みる"ⅡB"といった少年達は皆、自閉的ながらもユニークで、こういうキャラは寺山の半自伝的作品にもあったかも(そう言えば"短歌"と呼ばれている少年もいた)。
永島敏行(1956年生まれ。現在、俳優兼「農業コンサルタント」?)は、この作品が映画初出演でしたが、演技はそれほど悪くないけれども良くもないと言うか、あまり陰が感じられず、同年に主演した藤田敏八(1932‐1997/享年65)監督の「
「サード」は、主人公を演じた永島敏行よりも、主人公の女友達役の森下愛子(1958年生まれ、この作品が映画初出演。吉田拓郎と結婚し、いったん芸能活動を休止したが、その後また復帰し、宮藤官九郎脚本の作品の常連に)の陰のある演技が良く、「帰らざる日々」で主人公の青年が高校時代に思いを寄せた喫茶店のウェイトレス役の浅野真弓(1957年生まれ)や、中学時代の同級生役の竹田かほり(1958年生まれ、同年の「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」('78年4月/日活)が映画初主演)などの演技も良かったように思います(橋本治原作の「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」は思春期の女の子をヴィヴィッドに描いていて単純に面白かった)。



寺山修司は「サード」以前にも、羽仁進監督の「初恋・地獄変」('68年/ATG)の脚本を羽仁進と共同で書いていて、これは、救護院にいた少年が彫金師に引き取られて成長する様を、少年の過去と現在を交互に織り交ぜ、そこにインタビューや隠し撮りなどのドキュメンタリーの手法も入れて描いたものですが、こちらは「サード」と違って、寺山の色が薄いと言うより、どの部分が寺山修司でどの部分が(多分ゴダールの影響を受けたらしい)羽仁進の部分かということが、観ていて何となく分かってしまう―その点では、必ずしも成功したコラボだったようには思えませんでした。
出演俳優の1人だった

「![サード ≪HDニューマスター版≫ [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%89%20%E2%89%AAHD%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%89%88%E2%89%AB%20%5BDVD%5D.jpg)
作:前田勝弘●脚本:
間:103分●出演:永島敏行/吉田次昭/森下愛子/志方亜紀子/片桐夕子/峰岸徹/内藤武敏/島倉千代子/西塚肇/根本豊/池田史比古/佐藤俊介/鋤柄泰樹/若松武 /飯塚真人/宇土幸一/渋谷茂/尾上一久/藤本新吾/岡本


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夏たより●公開:1978/08●配給:日活●最初に観た場所:飯田橋ギンレイホール(79-05-23)●2回目:神田・神保町シアター(22-08-28)(評価:★★★★)●併映(1回目):「

「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」●制作年:1978年●監督:小原宏裕(おはらこうゆう)●製作:岡田裕●脚本:金子成人●撮影:森勝●音楽:長戸大幸●原作:
内田裕也/遠山牛/大竹智子/一谷伸江/関悦子/岸部シロー●公開:1978/04●配給:日活●最初に観た場所:池袋文芸地下(79-06-03)(評価:★★★☆)●併映:「ふりむけば愛」(大林宣彦)

「初恋・地獄篇」●制作年:1968年●監督:羽仁進●脚本:脚本:
「やさしいにっぽん人」●制作年:1971年●監督:東陽一●製作:高木隆太郎●脚本:東陽一/前田勝弘●撮影:池田伝一●音楽:東陽一/田山雅光●時間:112分●出演:河原崎長一郎/緑魔子/伊丹十三/伊藤惣一/石橋蓮司/蟹江敬三/渡辺美佐子/寺田柾/横山リエ/大辻伺郎/平田守/東山千栄子/桜井浩子/秋浜悟史/陶隆司●公開:1971/03●配給:東プロ●最初に観た場所:●最初に観た場所:●最初に観た場所:新宿・紀伊國屋ホール(82-03-27)(評価:★★★☆)●併映:「日本妖怪伝サトリ」(東陽一) 



緑魔子 in「


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ハイテク企業に勤めるトム・サンダース(マイケル・ダグラス)は、自分に内定していた副社長ポストに、社の創設者ボブ・ガーヴィン(ドナルド・サザーランド)が目をかけてきた野心溢れる女性メレディス(デミ・ムーア)が就任したことを知らされ唖然とする。彼女はかつてのトムの恋人だったのだ。そしてトムは就任したばかりの彼女に部屋に呼び出されて誘惑され、その誘いに負けそうになるも、かろうじて踏み止まり部屋を出る。しかし今度は、彼女から部屋でレイプをされそうになったと訴えられる―。
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イケル・クライトン
たのが『アンドロメダ病原体』('69年)であり、『ジュラシック・パーク』('90年)などのバイオ・サスペンスや、ハーバード・メディカルスクールの出身でもあるだけに、TVドラマ「ER」のようなメディカル系に強かった印象があります(1994年にはテレビ(「ER」)、映画(「
映画としては凡作になってしまったと思いますが、マイケル・クライトンへの追悼と、「ライジング・サン」よりはまだ映画らしい映画になっているということで本作品を取り上げました。
上司デミ・ムーアの誘いを断った主人公に対する上司の仕打ちの1つに、会社のサーバーへのアクセス権を奪ってしまうというのがあって、そのことで主人公は仕事が完全にストップしてしまいパニックに陥るというのが当時としてはすごく"現代風"の恐怖だなあと思われ、印象的に残りました。

マイケル・クライトン原作のその他の映画化作品では、マイケル・クライトン自身の脚本・監督で、ショーン・コネリーが主演した
「大列車強盗」('78年/米)が面白かったです。ヴィクトリア朝時代のイギリスで実際に起きた事件を基に、怪盗とその仲間たちが厳重管理で列車輸送している莫大な金塊の強奪に挑むさまを描いた犯罪サスペンスで、ストーリーはいいし(1975年に出版された原作『大列車強
盗』('76年/早川書房、'81年/早川書房)は、今回取り上げた『ディスクロージャー』よりはっきり言って面白い)、怪盗ピアースを演じるショーン・コネリーをはじめ役者もいいです。ショーン・コネリー(当時48歳)は、桁の低い陸橋が何本も接近してくる中、それをよけながら疾走する列車の屋根を這い進んで行くというアクションをスタントなしでこなしています。
「大列車強盗」と同じショーン・コネリー主演でフィリップ・カウフマンが監督した「ライジング・サン」('93年/米)は、ロサンゼルスに進出した日本企業のビルで殺人事件が発生し、ショーン・コネリー演じる刑事ジョン・コナーが捜査を進めるうち、文化の違いという壁にぶち当たるという、コネリーが製作総指揮と主演を兼ねたサスペンス・アクション。ネタバレになりますが、偽造ディスクを解明した女性がコナー刑事の愛人だったというオチは、裏ストーリーを暗示させるものの、あまりに説明不足。日本人の社員が黒服にサングラスだったり、日本語の使い方がヘンテコリンで笑わせます(もっと以前よりは良くはなっているが、この時点でまだ日本文化の認識の違いが窺えるのは仕方のないことか)。因みに、武満徹が劇中音楽を担当し、そのキャリアの中で唯一の外国映画音楽作品となりました。
あともう1本、フランク・マーシャル監督の「コンゴ」('95年)というのもありました。映画的展開の狭い「ライジング・サン」や「ディスクロージャー」の失敗を反省材料にしたのか、今度は旧作('80年発表)ながら派手な見せ場のある『失われた黄金都市』を映画化したもので、アフリカ奥地で、レーザー通信の核となるダイヤモンドの鉱脈を調べていたトラヴィコム社の先発隊が全滅し、手掛かりは通信画面に映し出された"灰色の猿人"らしきものだけだった...というもの。この監督はあまり上手くない(本業は映画プロデューサー。妻のキャスリーン・ケネディと共に、多くのスピルバーグ作品を手がけている)。観終わって時間が無駄だったと思いましたが(一緒に観た人間と「もう今後(こんご)は観ない」と冗談を言い合った)、amazonのレビューでは高い評価を得ているみたいで、自分たちだけ違う映画を観たのかなあ(笑)。
「ディスクロージャー」●原題:DISCLOSURE●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:バリー・レヴィンソン●製作:バリー・レヴィンソン/マイケル・クライトン●脚本:ポール・アタナシオ●音楽:エンニオ・モリコーネ●撮影:アンソニー・ピアース=ロバーツ●原作:マイケル・クライトン●時間:128分●出演:マイケル・ダグラス/デミ・ムーア/ドナルド・サザーランド/キャロライン・グッドオール/デニス・ミラー/ロマ・マフィア/
ニコラス・サドラー/ローズマリー・フォーサイス/ディラン・ベイカー/ジャクリーン・キム/ドナル・ローグ/アラン・リッチ/ スージー・プラクソン●日本公開:1995/02●配給:ワーナー・ブラザース (評価★★★)
「大列車強盗」●原題:THE GREAT TRAIN ROBBERY/THE FIRST GREAT TRAIN ROBBER●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督・脚本:マイケル・クライトン●製作:ジョン・フォアマン●撮影:ジェフリー・アンスワース●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:マイケル・クライトン●時間:111分●出演:ショーン・コネリー/ドナルド・サザーランド/レスリー=アン・ダウン/アラン・ウェッブ/ロバート・ラング/マイケル・エルフィック/パメラ・セイラム/ガブリエル・ロイド/ジェームズ・コシンズ/ブライアン・グローヴァー/マルコム・テリス/ウェイン・スリープ●日本公開:1979/11●配給: ユナイト映画(評価★★★★)
「ライジング・サン」●原題:RISING SUN●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:フィリップ・カウフマン●製作:ピーター・カウフマン●脚本:マイケル・クライトン/フィリップ・カウフマン/マイケル・バックス●撮影:マイケル・チャップマン●音楽:武満徹●原作:マイケル・クライトン●時間:125分●出演:ショーン・コネリー/ウェズリー・スナイプス/ハーヴェイ・カイテル/ケイリー=ヒロユキ・タガワ/ケヴィン・アンダーソン/マコ/レイ・ワイズ/スタン・イーギー/ティア・カレル/タジャナ・パティッツ/ヴィング・レイムス/スティーヴ・ブシェミ/サム・ロイド●日本公開:1993/11●配給:20世紀フォックス(評価★★★)
「コンゴ」●原題:CONGO●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:フランク・マーシャル●製作:キャスリーン・ケネディ/サム・マーサー●脚本:ジョン・パト
リック・シャンリー●撮影:アレン・ダヴィオー●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:マイケル・クライトン●時間:109分●出演:ショーン・コネリー/ウェズリー・スナイプス/ハーヴェイ・カイテル/ケイリー=ヒロユキ・タガワ/ケヴィン・アンダーソン/マコ/レイ・ワイズ/スタン・イーギー/ティア・カレル/タジャナ・パティッツ/ヴィング・レイムス/スティーヴ・ブシェミ/サム・ロイド●日本公開:1995/10●配給:UIP(評価★★)

![乱 デジタル・リマスター版 [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E4%B9%B1%20%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%89%88%20%5BDVD%5D.jpg)

「乱」●制作年:1985年●制作国:日本・フランス●監督:黒澤明●製作:セルジュ・シンベルマン/原正人●脚本:黒澤明/小国英雄/井手雅人●撮影:斎藤孝雄●音楽:武満徹●衣装:ワダエミ●時間:162分●出演:仲代達矢/寺尾聡/根津甚八/隆大介/原田美枝子/宮崎美子/野村武司/井川比佐志/ピーター/油井昌由樹/加藤和夫/松井範雄/伊藤敏八/鈴木平八郎/児玉謙次/渡辺隆/東
郷晴子/南條玲子/神田時枝/古知佐知子/音羽久米子/加藤武/田崎潤/植木等●公開:1985/06●配給:東宝=日本ヘラルド映画(評価:★★☆)