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岩下志麻主演の2作。一人二役がいい「古都」。酔っ払いシーンが見ものの「暖春」。

「<あの頃映画> 古都 [DVD]」

「談春」
京都平安神宮の咲いたしだれ桜の下で、佐田千重子(岩下志麻)は幼な友達の水木真一(早川保)に突然「あたしは捨子どしたんえ」と言う。呉服問屋の一人娘として何不自由なく育ったが、自分は店の前の弁柄格子の下に捨てられていたのだと...。とは言え、親娘の愛は細やかだった。父の太吉郎(宮口精二)は名人気質の人で、ひとり嵯峨にこもって下絵に凝っていた。西陣の織屋の息子・大友秀男(長門裕之)は秘かに千重子を慕っており、見事な帯を織り上げて太吉郎を驚かした。ある日千重
子は、清滝川に沿って奥へ入った北山杉のある村を訪ねた。そして杉の丸太を磨いている女達の中に自分そっくりの顔を見い出す。夏が来た。祇園祭の谷山に賑う四条通を歩いていた千重子は北山杉の娘・苗子(岩下志麻、二役)に出会った。娘は「あんた姉さんや」と声をふるわせた。千重子と苗子は双子の姉妹だった。しかし父も母もすでにこの世にはいない、と告げると苗子は身分の違うことを思い雑踏に姿を消した。
その苗子を見た秀男が千重子と間違えて、帯を織らせてくれと頼む。一方自分の数奇な運命に沈む千重子は、四条大橋の上で真一に声をかけられ兄の竜助(吉田輝雄)を紹介された。8月の末、千重子は苗子を訪ねた。俄か
雨の中で抱きあった二人の身体の中に姉妹の実感がひしひしと迫ってきた。秋が訪れる頃、秀男は千重子に約束した帯を苗子のもとに届け、時代祭の日に再会した苗子に結婚を申し込む。しかし、苗子は秀男が自分の中に千重子の面影を求めていることを知っていた。冬のある日、以前から千重子を愛していた竜助が太吉郎を訪ねて求婚し、翌日から経営の思わしくない店を手伝い始めた。その夜、苗子が泊りに来た。二階に並べた床の中で千重子は言う。「二人はどっちの幻でもあらしまへん、好きやったら結婚おしやす。私も結婚します」と―。

中村登(1913-1981/67歳没)監督の1963(昭和38)年公開作で、川端康成の同名小説を忠実に映画化した文芸ロマンス。原作は川端康成が「朝日新聞」に1961(昭和36)年10月から翌1962(昭和37年)年1月まで107回にわたって連載したもので、1962年6月新潮社刊。京都各地の名所や史蹟、年中行事が盛り込まれた作品で、国内より海外での評価が高く、ノーベル文学賞の授賞対象作とされる作品です。(1968(昭和43)年、川端康成は日本人として初めてノーベル文学賞を受賞する。しかしその当時、受賞対象の作品名は発表されず、50年間非公開となっていた。ようやく2016(平成28)年に受賞作品が公開され、スウェーデンアカデミーは、受賞対象は「古都」(The Old Capital)であり、「まさに傑作と呼ぶにふさわしい」と絶賛した。(2017.1.4 日本経済新聞))

映画化に際し、原作者の川端康成が撮影現場に足を運び、指導監修を手掛けており、その結果、静謐で繊細、情緒的な川端の世界を忠実に再現した作品になっています。映画の方も四季折々の美しい風景や京都の伝統を背景に、当時21歳の岩下志麻が二人の姉妹の二役を好演し、彼女の一人二役は自然かつ美しいと思いました。原作(読んだのはかなり前だが)の良さを(おそらく)損なっておらず、中村登監督の職人的な技量が感じられます。この作品は第36回米国「アカデミー賞外国語映画賞」にノミネートされています(後に1980年に市川崑監督、山口百恵主演で、2016年には Yuki Saito監督、松雪泰子主演でリメイク作品が撮られている)。
実は双子の姉妹だった千重子と苗子の生い立ちを比べると、千重子は呉服問屋の一人娘として何不自由なく育てられたお嬢さんで、一方の苗子は早くから北山杉の木場(製材所)における労働力として勤しみ苦労してきたはずなのに、二人が出会ってからずっと苗子の方が千重子に対して何か済まないような気持ちは抱いているのは、最初は身分差を感じて苗子が自分を卑下しているのかなと思ったりしましたが(確かに最初自ら千重子に会わないようにしたのはそのためだったが)、根っこのところでは、実親に捨てられたのが千重子の方で、実親の元に残されたのが自分だったからということだったのだなあ。
しっかり者の苗子に対して、お嬢さん育ちでおっとり気味の千重子でしたが、竜助(吉田輝雄)に店の番頭(田中春男)が不正を働いているのではと指摘され、少し変化が見られます。そして最後はしっかり番頭を問い詰めますが、この時の岩下志麻はちょっと「極妻」っぽかった、と言うか、それに繋がる雰囲気があり(当時まだ22)、「お嬢さん」と「強い女」の両方を演じられるところが、岩下志麻の強みと言うか、魅力だと思いました(一人二役だが、三役演じているみたい)。
京都東山南禅寺に小料理屋「小笹」を出す佐々木せい(森光子)には、24歳になる娘・千鶴(岩下志麻)がいた。せいは、日頃親しくする西陣の織元・梅垣のぼん(長門裕之)との縁談を望んでいたが、千鶴は何か吹っ切れぬものを感じていた。そんな時、かつてせいが祇園の舞妓だった頃、せいのファンであった山口信吉(山形勲)が小笹を訪れた。大学教授だという山口を、格好の脱出先とみた千鶴は、母親の愚知を無視して、山口に連れられ上京した。途中、千鶴を連れて箱根に立寄った山口は、千鶴の亡父らと京大三人組と呼ばれた実業家の緒方(有島一郎)を紹介した。そこで緒方の秘書・長谷川一郎(川崎敬三)に紹介された千鶴は、洗錬された長谷川に好感を持つ。その晩千鶴のお酌で、学生時代に返った二人は、せいが千鶴の父と結婚した時に、既にせいのお腹の中には千鶴がおり、三人の内の誰の子供か判らないと冗談まじりに話した。その話は千鶴に秘かな母への不審を抱かせた。上京した千鶴は、山口や緒方の家に泊り、銀座で長谷川と飲み明かし、ますます長谷川に魅かれていった。ある日、結婚して上京している親友・金子三枝子(桑野みゆき)を訪れた千鶴は、ちょうど遊びに来ていたOLでかつての級友・長嶋節子(倍賞千恵子)に会って懐しい一日を過した。二人が自分の生活の範囲で、楽しく暮らしているのを知った千鶴は急に長谷川に会いたくなり、電話をしたが、長谷川にはすでに同棲している恋人・京子(宗方奈美)がいることを知り、千鶴はすっかり失望した。また緒方の浮気を目撃した千鶴は、東京でのめまぐるしい生活から、京都が懐しく思い出された。せいの心臓病発作で急拠京都へ帰った千鶴は、梅垣のぼんが店をきりもりする姿に、急に親しみを感じた。その夜、ぼんと結婚を決意した千鶴は、せいから出生の秘密を確かめると、初めて母娘の情愛が交流するのを感じた。大安吉日、千鶴は美しい花嫁姿でせいの前に立った―。
中村登監督の1965年作で、里見弴と小津安二郎の原作を中村登が脚色・監督した青春もの。撮影は「夜の片鱗」の成島東一郎。岩下志麻が、嫁入り前の娘の心の揺らぎを演じており、中村登版「秋刀魚の味」('62年/松竹)といったところでしょうか
里見弴と小津安二郎の原作だと、後期の小津作品の「嫁に行く・行かない」と似たような話にどうしてもなってしまうのだなあ。ヒロイン・千鶴の父親とその友人たちも、小津映画が「東大三人組」ならばこちらは「京大三人組」で状況設定がよく似ています。「秋刀魚の味」は笠智衆・中村伸郎・北竜二がかつて中学の同級だったという設定でしたが、こちらはヒロインの父親はすでに亡くなっていて、後の二人は山形勲と有島一郎です。
森光子演じる千鶴の母親は元・祇園の芸妓で、千鶴を妊娠した頃「三人組」のいずれとも行き来があったらしく、千鶴は自分の本当の父親は誰なのか知りたく思い、結構彼女としては思い切った行動に出たりしますが、最後は「誰だっていいじゃない」ということでした。
当時24歳の岩下志麻がキュートに酔っ払ってるシーンは見もの。考えてみれば岩下志麻は銀座生まれの吉祥寺育ちで、東京っ子の彼女が、京言葉をこなしてお御転婆な京娘を演じているわけで、やはりこの頃から演技力がありました。
倍賞千恵子/桑野みゆき/岩下志麻
岩下志麻(呉服問屋丸太屋の一人娘・佐田千重子(北山杉の村娘・苗子と一人二役))/長門裕之(帯織職人の息子・大友秀男)

「古都」●制作年:1963年●監督・脚色:中村登●製作:桑田良太郎●脚本:権藤利英●撮影:成島東一郎●音楽:武満徹●原作:川端康成●時間:106 分●出演:岩下志麻/宮口精二
/中村芳子/吉田輝雄/柳永二郎/長門裕之/環三千世/東野英治郎/浪花千栄子/田中春男/千之赫子●公開:1963/01●配給:松竹●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(23-06-27)(評価:★★★★)


岩下志麻/宮口精二(呉服問屋丸太屋の主人・佐田太吉郎)
長門裕之(西陣の織元・梅垣のぼん)
「暖春」●英題:SPRINGTIME●制作年:1965 年●監督・脚色:中村登●製作:佐々木孟●撮影:成島東一郎●音楽:山本直純●原作:里見弴/小津安二郎●時間:93分●出演:森光子/岩下志麻/山形勲/三宅邦子/太田博之/有島一郎/乙羽信子/早川保/桑野みゆき/倍賞千恵子/川崎敬三/宗方奈美/長門裕之/三ツ矢歌子/呉恵美子/岸洋子/志賀真津子●公開:1965 /12●配給:松竹●最初に観た場所:神田・神保町シアター(23-08-19)(評価:★★★)




中の外国捜査官の男の狙撃を花田に依頼するが、花田は手元を狂わせ、無関係の人物を射殺してしまう。このためにランキング外に転落した花田は、殺し屋の掟として、彼を処刑しに来る殺し屋たちの襲撃を次々と受ける。妻の真実(小川万里子)や美沙子も処刑人のひとりだった。しかし美沙子と花田は互いを愛し合ったために殺し合うことができず、ともに逃げる立場となる。美沙子は殺し屋組織に囚われの身となる。美沙子以外の刺客をすべて倒した花田の前に最後の敵として現れたのは、かつて彼が護送した謎の男だった。この男・大類こそが伝説の殺し屋ナンバー1だった。花田は大類との決闘に臨む―。
鈴木清順監督の1969年作。一応ストーリーは書きましたが、観ている分にはぐちゃぐちゃで、ぐちゃぐちゃなのに面白く、また、全体を通して映像がスタイリッシュでした。しかし、どうしてこんなぐちゃぐちゃなストーリーなのか。
まず、1966年に結成された脚本家グループ「具流八郎」によるシナリオ執筆が決まり、中心人物だった大和屋竺が「殺し屋の世界ランキング」というアイディアを立ててハードボイルド・タッチの前半部分を書き、他のメンバーがそれに話を加えていくという方式をとり、また、一部の場面でギャビン・ライアル『
作中には小川万里子ら女優のヌードが随所に登場しますが、編集当初はフィルムに直接白い矢印を書き、その矢印が自粛個所を追いかけながら隠すという手法を取ろうとしたのが、この方法は会社から無断でお蔵入りにされ、公開時点で、画面半分を隠すほどの大げさな黒ベタによって塗りつぶされることになったとのことです。このため、鈴木清順監督を含む製作スタッフは、この修正版を「インチキ『殺しの烙印』」と呼んでいたそうで、修正が入っていない「完全版」は東京国立近代美術館フィルムセンター(のちの国立映画アーカイブ)に収蔵され、のちにビデオソフトとしてこの「完全版」復活したそうです(自分がシネマブルースタジオで観たのは"修正版"の方だった)。
本作は公開時、批評家や若い映画ファンに熱狂的に支持されましたが、一方、当時の日活社長・堀久作は完成した作品を観て激怒し、特に、宍戸錠が演じる主人公の殺し屋が、ガス炊飯器の蓋を開け、米飯の炊ける匂いに恍惚とする、という描写が特に気に入らなかったようです(後にこのシーンのためにこの映画は有名になるのだが、元々の意図はCMのパロディだったようだ)。
堀久作は公開翌年1968年の年頭社長訓示において、「わからない映画を作ってもらっては困る」と本作品を名指しで非難し、同年4月に鈴木清順監督に対し電話で一方的に専属契約の打ち切りを通告しました。これらの問題を不服とした映画人や大学生有志による「鈴木清順問題共闘会議」が結成され、映画界を巻き込んだ一大騒動に発展し、鈴木も日活を提訴、1971年に和解が成立しましたが、鈴木は1977年に松竹で「悲愁物語」を監督するまで約10年間のブランクを送ることとなりました。
本作はやがて海外で高い評価を得るようになり(クエンティン・タランティーノ、ジョン・ウー、パク・チャヌクらがその影響を認め、ジム・ジャームッシュ、ウォン・カーウァイらが絶賛している)、国内でも再評価されることになりましたが、こうしたことは時々あるパターンだなあという気がします(そして、クエンティン・タランティーノがそれによく噛んでいる(笑))。

真理アンヌは1948年生まれ。父親がインド人で母親が日本人。この作品と同じ年「ウルトラマン(第32話)果てしなき逆襲」('67年)に科学特捜隊インド支部・パティ隊員役で出ています。因みに、「ウルトラセブン」で菱見百合子が演じた「友里アンヌ隊員」の役名は、第1期ウルトラシリーズを企画した金城哲夫(1938-1976/37歳没)が真理アンヌのファンだったことからその名になったとのことです(この人は吉本興業所属の現役)。
鈴木清順監督自身にとっても思い入れのある作品なのか、後に、この作品の"続編"と言うより、殺し屋がナンバーランキングされている世界というモチーフを生かした「ピストルオペラ」('01年/東宝)を撮り、その作品は第58回ヴェネツィア国際映画祭アウト・オブ・コンペ部門正式招待作品となり、同映画祭では「偉大なる巨匠に捧げるオマージュの盾」を受賞しています。
日本でも多くの人がこの"続編"作品を高く評価しているようですが、個人的には、鈴木清順監督の独自の映像美が横溢している作品だと感じられた一方で(観終わった直後は新鮮さを感じた)、後で考えてみたら、主演の江角マキコと共演の山口小夜子の高身長二人組も、演技しているのかどうかもよく分からない作品でした(江角マキコのセリフが棒読みなのは、下手なのか監督の演出なのか)。結局、「殺しの烙印」よりは落ちるかなという印象です。
「殺しの烙印」●制作年:1967年●監督:鈴木清順●脚本:具流八郎(鈴木清順/大和屋竺/木村威夫/田中陽造/曽根中生/岡田裕/山口清一郎/榛谷泰明)●撮影:永塚一栄●音楽:山本直純(主題歌:大和屋竺「殺しのブルース」)●時間:91分●出演:宍戸錠/南原宏治/真理アンヌ/小川万里子/南廣/長弘/大和屋竺●公開:1967/06●配給:日活●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(23-03-28)(評価:★★★★)



旅先で病気になってしまい、宿の女中(悠木千帆)に親兄弟があるのか心配された寅次郎(渥美清)は、とらやの人びとの写真を見せ、ついさくらを「奥さん」、満男を「自分の赤ちゃん」、おばちゃん・おいちゃんを「おふくろとおやじ」と見栄を張ってしまう。久々に故郷柴又に帰ってきた寅次郎を見合い話が待っていた。本人もすっかりその気になったが、相手の駒子(春川ますみ)は寅次郎と旧知の仲であり、しかも旦那持だった。寅次郎は、駒子の妊娠も知らずに旦那が浮気したと聞くや、二人の仲を取り持つために一肌脱ぐ。しかし、二人のための結婚式や新婚旅行まがいの宴会やハイヤーの代金をとらやに請求したことが原因で、おいちゃん(森川信)と大ゲンカして
しまい、いたたまれなくなった寅次郎は再び旅に出る。旅先の伊勢・湯の山温泉で腹を下した寅次郎は、便所を借りに温泉宿・もみじ荘に入り浸り、そこの女将・お志津(新珠三千代)の同情を買って宿に泊めてもらう。未亡人のお志津に惚れ込んた寅次郎は、宿代がないことを理由にもみじ荘に居着くようになり、住み込みの番頭として一生懸命働く。お志津の弟・信夫(河原崎建三)となじみの芸者・染奴(香山美子)との仲を取り持つことに奔走してお志津に感謝され、お志津の小さな女の子を可愛がるあまり風邪を引いてお志津に看病してもらって、寅次郎は有頂天になる。しかし、寅次郎の知らないところで、お志津には再婚を考えている相手(高野真二)がいたのだった―。
ストーリー的には、おいちゃん・おばちゃんが湯の山温泉を訪れた際、寅次郎が働いている宿に泊まり、寅と出会う(さらにマドンナのお志津の存在を知る)という設定になっていて、お志津がとらやを一度も訪れていないことも含め、旅先の寅次郎が中心の話になっており、さくら役の倍賞千恵子の出番は非常に少ないのが特徴でしょうか。
あとは、自分なりに"細部"を突き詰めていくと、おいちゃんと喧嘩したり(まあ、これはシリーズの他の作品でもあることが、この回のはかなり激しくやり合い、それが原因で寅次郎は再び旅に出ることになる)、染奴の中風にかかった父・清太郎(花沢徳衛)が元テキ屋であるということで、寅次郎の将来を暗示するかのように見えてしまったりするのがやや暗かったりします。駒子と再び一緒になった夫が、寅次郎からの電話をプツリと切ってしまうあたりもちょっと冷たい感じがしました。
森崎東監督の演出は、シリーズ第4作「新・男はつらいよ」の監督・小林俊一とは相通じるものがあるかもしれません(小林俊一は山田洋次と共にこの作品に脚本参加している)。定番である「寅次郎の失恋」も、山田流では哀愁が漂う切ない雰囲気ですが、森崎・小林流だと、寅次郎の勘違いが際立っていて、可哀そうなのは同じですが、やや乾いた感じでした。暗い部分と明るい部分でバランスをとっていて、結局、前作に比べ「雰囲気を大きく外してはいない」という個人的感想に至ったのですが、観る人によって山田洋次監督版とは「大きく異なる」という人がいても納得です(細部を見ていけば必然的にそういうことになる)。
「男はつらいよ フーテンの寅」●制作年:1970年●監督:森崎東●脚本:山田洋次/小林俊一/宮崎晃●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●原作:山田洋次●時間:90分●出演:渥美清/新珠三千代(東宝)/倍賞千恵子/香山美子/河原崎建三/前田吟/春川ますみ/三崎千恵子/野村昭子/悠木千帆/佐々木梨里/高野真二/左卜全(特別出演)/佐藤蛾次郎/太宰久雄/晴乃ピーチク/晴乃パーチク/森川信/笠智衆/花沢徳衛●公開:1970/01●配給:松竹●最初に観た場所:神田・神保町シアター(23-02-02)(評価:★★★☆)


ストリッパー斡旋業「新宿芸能社」を営む金沢(森繁久弥)と竜子(中村メイ子)夫妻は、父さん母さんと呼ばれながら、踊り子たちと家族のように暮らしている。ある日、旅に出ていたマタタビ笠子(倍賞美津子)が、金も溜まり、そろそろ結婚したいと久し振りに帰って来る。が、金沢夫婦の留守中、昔のヒモに強引に連れ去られ、金沢が談判に行くがイタメつけられて戻る。腹にすえかねた竜子が人糞を流し込んで報復したが、笠子は再び旅に出る。笠子の紹介でやって来た、泣いているような顔の田舎臭い星子(緑魔子)は、踊りを教えているうちに、結構いい線いくようになる。とは言え、客の頼みを断れず、トイレで性行為したり、道端で自殺しそうな青年を救おうとしてアオカンしたと警察に捕まったりして、その都度竜子は一喜一憂する。一方、笠子は旅先で彼女に心酔する青年・照夫(河原崎長一郎)に出会い、彼が作ってくれたキャンピング・カーで一緒に旅回りを続ける。運転は勿論、三度の食事までひたすら尽くすだけで、絶対に手を出さない照夫。笠子は運転免許を取ったのを機会にいったんはクビにしたが、彼のこのうえない愛情と誠意に気づき、結婚しようと心に決める。しかし―。

昨年['20年]7月に92歳で亡くなった森崎東監督の「女シリーズ」の第1作で、原作は、藤原審爾のお座敷ストリッパーを描いた連作短編集『わが国おんな三割安』の中の「またたび笠子」「あおかん星子」を中心としています(脚本は山田洋次)。笠子を演じる倍賞美津子は森崎東監督の「喜劇 女は度胸」('69年)、「喜劇 男は愛嬌」('70年)に続く出演で、星子を演じた緑魔子は山田洋次監督(森崎東脚本)の「吹けば飛ぶよな男だが」('68年)にも出ています。

1931年生まれの山田洋次監督は「男はつらいよ」「続・男はつらいよ」などで1969(昭和44)年度・第20回「芸術選奨」を、1927年生まれの森崎東監督は「男はつらいよ フーテンの寅」「喜劇・男は愛嬌」などで1970(昭和45)年度・第21回「芸術選奨新人賞」を受賞しています。因みに、山田洋次監督は東京大学法学部を卒業し、新聞社勤務を経て1954年に松竹に補欠入社、森崎東監督は京都大学法学部を卒業して1956年に松竹に入社しています(年齢は森崎東監督の方が上だが、松竹では山田洋次監督の方が先輩ということになる)。
森崎東監督は森繁久弥を中心にシリーズを撮っていきましたが、倍賞美津子を中心にシリーズを撮っていくという選択肢もあったのでないかという気がします(山田洋次監督のヴィーナスが倍賞千恵子で、森崎東監督のヴィーナスが倍賞美津子であるというのも面白い)。そうしたならば、もしかしたら倍賞美津子が女性版寅さんみたいな存在になっていたかもしれません。ただし、この倍賞美津子のストリッパー「笠子」のキャラクターは、森崎東監督の後の作品「
「喜劇 女は男のふるさとヨ」●制作年:1971年●監督:森崎東●製作:小角恒雄●脚本:山田洋次/森崎東●撮影:吉川憲一●音楽:山本直純●原作:藤原審爾●時間:91分●出演:森繁久弥/中村メイコ/倍賞美津子/緑魔子/河原崎長一郎/花沢徳衛/伴淳三郎/佐藤蛾次郎/園佳也子/山本紀彦/犬塚弘/名古屋章/左卜全●公開:1971/05●配給:松竹●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(19-12-06)(評価:★★★☆) 





この間たまたま観たシリーズ第27作「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」('81年)では、寅さんが瀬戸内海のどこかの島で一人で夏物ワンピース(俗に言うアッパッパ)を売っているシーンと(ここで初めてマドンナと出会う)、東大阪市の石切神社の参道で"バイ"しているシーンがありましたが(ここで偶然マドンナと再会する)、参道に露店を出すときはやはり、地元の親分に対して口上を述べたということになるのでしょうか。ヤクザへの連想を避けるために、そうしたシーンを山田洋次監督は敢えてシリーズでは殆ど取り扱っていない気もします(テキヤの生活が最もよく描かれているのは森崎東監督によるシリーズ第3作「男はつらいよ フーテンの寅」('70年)だと言われている)。
この「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」のマドンナ役は松坂慶子(撮影時28歳)で(寅さんは参道で「水中花」を売っていた)、松坂慶子はこの作品で第5回「日本アカデミー賞」最優秀主演女優賞など多数の賞を受賞しています。個人的には"演技力"より"美貌"がもたらした賞のように思われなくもないですが、この頃の松坂慶子はこの後に「


「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」●制作年:1981年●監督:山田洋次●製作:島津清/佐生哲雄●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●時間:104分●出
演:渥美清/松坂慶子/倍賞千恵子/三崎千恵子/太宰久雄/前田吟/下條正巳/吉岡秀隆(シリーズ初登場)/正司照江/正司花江/笑福亭松鶴/関敬六/大村崑/笠智衆/初音礼子/芦屋雁之助●公開:1981/08●配給:松竹(評価:★★★☆)


シリーズ第11作「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」のマドンナ・リリー(浅丘ルリ子)が再登場。葛飾柴又の"とらや"で、寅次郎(渥美清)の帰省が遅いことを皆が心配しているところへリリーが訪れ、寿司屋の亭主と離婚した彼女は、再びドサ回りの歌手をしているという。寅次郎に会えなかったことを残念がるリリー。その寅次郎は青森で、通勤途中不意に蒸発したくなったというサラリーマン・兵頭謙次郎(船越英二)と出会う。自由な生き方に憧れるという兵頭に手を焼く寅次郎だった
が、そこで偶然にも、青森に来ていたリリーと再会、寅次郎とリリーは兵頭も巻き込んで北海道へと向
かう。ごろ寝や啖呵売もこなして楽しい道中となるが、小樽に着いた兵頭はどうしても彼の初恋の人に会いたいと言う。その女性・信子(岩崎加根子)は夫を亡くし女手一つで子供を育てており、懸命に生きる姿を見た兵頭はいたたまれなくなる。そんな彼の複雑な心中をめぐって寅次郎とリリーは対立し、ついには喧嘩別れしてしまう
。やがて柴又に帰ってきた寅次郎だが、リリーとの一件を悔やんで表情は沈んだまま。そこへひょいとリリーが現れ、リリーもまたあの一件を悔やんでおり、二人はあっという間に寄りを戻す。リリーとすっかりいい仲になった寅次郎だが、その仲睦ましさが近所でも噂になり始めた時、さくらは寅次郎がこのままリリーと結ばれればいいと思うようになる―。
1975(昭和50)年8月公開のシリーズ第15作で、第11作「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」('73年)以来の再登場。以後、第25作「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」('80年)、渥美清(1928-1996/享年68)の遺作となった第48作「男はつらいよ 寅次郎紅の花」('95年)と通算4回、松岡リリーという同一キャラクターでマドンナ役を務めたことになります。満男のマドンナとしてシリーズ終盤に出演した後藤久美子の5回を除いて、寅次郎のマドンナとしては、竹下景子の3回を超えて最多となっていますが、むしろ同じキャラクター(歌子)で2回登場した吉永小百合が比較の対象となるでしょうか。4回は傑出していると思います。
この「寅次郎相合い傘」は、男女の機微を浮き彫りにしつつ余韻を残して終わるラストもいいですが(寅次郎とリリーは恋人同士である以上に、むしろ友情で結ばれた"同志"に近かったのか)、この1本の作品の中に、シリーズを通しての名シーンと言われ、よく「名場面ベスト10」などで挙げられるシーンが2か所もあり、それぞれ「寅のアリア」「メロン騒動」と呼ばれています。
「寅のアリア」は、リリーをキャバレーまで送った寅次郎が、そのあまりの環境の劣悪さに驚き、「俺にふんだんに銭があったら」と大ステージで歌い上げるリリーの姿を、さくらたちに臨場感たっぷりに想像で語るもので、スタッフによれば、後日リリー役の浅丘ルリ子がこのシーンを見て涙したとのことです(倍賞千恵子著『お兄ちゃん』('97年/廣済堂出版)。渥美清の本領発揮というか、山田洋次監督は渥美清に初めて会った頃、彼が語る的屋の口上を聞いてこの人は天才だと思ったそうですが、こうしたところでその力を引き出しているのはスゴイと思いました。
「メロン騒動」は、寅次郎に世話になったと兵頭から高級メロンを貰ったとらやの面々が切り分けて食べ始めたところへ寅次郎が外から戻って来て、寅次郎の分を勘定に入れ忘れていたこ
とに気付いた一同が大慌てで場を取り繕う様に、とらやの連中は心が冷たいと激しくなじる寅次郎に対し、リリーが核心を
突いた言葉で寅次郎を一喝してしまうという場面ですが、こちらは、浅丘ルリ子の演技が渥美清のそれに拮抗した場面であるとも言え、大袈裟に言えば、シリーズを通してそれまで憧れの対象でしかなかったマドンナの位置づけを、主体的な存在にパラダイム変革させた場面でもあったかと思います。
浅丘ルリ子は最近またNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の寿桂尼役やテレビ朝日系ドラマ「やすらぎの郷」への出演で注目されていますが、もともと演技も歌も上手い方だと思います。歌の方は20曲以上シングルを出した後に、「
リリーが仕事で歌う場末の酒場のうらぶれた様子は、寅次郎の口から語らせるものの映像化せず、一方で、リリーが別の女性と同居する狭いアパートに相手方の男が来て彼女がそこにおれなくなる場面は映像化しており、その辺りのリアリティの出し方の加減が上手いと思いました。あまり全部隠してしまうとリアリティが湧かないし、あまり見せ過ぎると暗くなり過ぎるし...(シリーズ全作を通して観ると、この加減に失敗しているものも幾つかある)。
サラリーマン・兵頭を演じた船越英二の演技も手堅く、兵頭に纏わるサイドストーリーもまずまずでしょうか。ただ、失踪事件をモチーフにした野村芳太郎監督(松本清張原作)の「
因みに、冒頭にある、映画館でうたた寝しながら寅次郎が見る夢は、前年['74年]12月日本公開の「シンドバッド 黄金の航海」('73年/米)のパロディだそうですが(統一劇場と米倉斉加年、上條恒彦がノンクレジットで友情出演している)、個人的には、こちらもまた当時より一昔前の、小野田嘉幹監督の「

「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」●制作年:1975年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●時間:91分●出演:渥美清/浅丘ルリ子/船越英二/倍賞千恵子/下條正巳/三崎千恵子/太宰久雄/佐藤蛾次郎/吉田義夫/岩崎加根子/久里千春/早乙女愛/中村はやと/宇佐美ゆふ/村上記代/光映子/秩父晴子/米倉斉加年(ノンクレジット)/上條恒彦(ノンクレジット)/谷よしの/笠智衆●公開:1975/08●配給:松竹(評価:★★★★)

和田 誠
このシリーズは、映画の中の名セリフを取り上げて、リレー方式というか連想方式的に一定サイクル話を繋いでいっていますが(それと、勿論のことだが、イラストとの組み合わせ)、著者によれば、日本映画の方がセリフに関する記憶が少なく、洋画においてスパーインポーズで読んだものの方が記憶に残っているとのことです(そういうものかもしれないなあ)。

その代りのお楽しみとして、毎回違った"マドンナ"が登場するパターンになったということなのでしょう。初代マドンナは昨年['13年]食道癌で亡くなった光本幸子でした。また、著者が矛盾を指摘する「俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ」という主題歌の歌詞はもともとTV版用に作られたものですが、映画版の第2作からは別の歌詞に差し替えられています。
第1作は、黒澤明監督映画の重鎮俳優・志村喬(諏訪飈一郎役)が出演し、さくらの披露宴のシーンで小津映画の重要俳優・笠智衆(御前様役)と同じ画面に収まっているというのが珍しいかもしれません(黒澤監督の「
第1作がヒットして、山田洋次監督が松竹
「


「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」●制作年:1935年●監督:山中貞雄●脚本:三村伸太郎●潤色:三神三太郎●撮影:安本淳●音楽:西梧郎●原作:林不忘●時間:92分●出演:大河内傳次郎/喜代三/沢村国太郎/山本礼三郎/鬼頭善一郎/阪東勝太郎/磯川勝彦/清川荘司/高勢実乗/鳥羽陽之助/宗春太郎/花井蘭子/伊村理江子/達美心子/深水藤子●公開:1935/06●配給:日活(評価:★★★★☆)
「男はつらいよ 〈シリーズ第1作〉」●制作年:1969年●監督・原作:山田洋次●脚本:山田
洋次/森崎東●製作:上村力●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●時間:91分●出演:渥美清/倍賞千恵子/光本幸子/笠智衆/志村喬(特別出演)/森川信/前田吟/津坂匡章/佐藤蛾次郎/関敬六

志賀真津子/津路清子/村上記代/石井愃一/市山達己/北竜介/川島照満/水木涼子/谷よしの/●公開:1969/08●配給:松竹(評価:★★★★)










三沢(勝呂誉)は久しぶりに会った友人・鬼島明(山中紘)の家でくつろいでいたが、家の前で偶然見かけた鬼島の父・竹彦(浜村純)の話をした際の鬼島夫妻の様子から、鬼島と竹彦の間に確執があることが窺えた。急にテレビの映りが変になったところで話にキリをつけ、三沢は鬼島の誘いで一泊することに。その夜、三沢は就寝中に何者に襲われ、手に傷を負う。同じ頃、帰宅途中のサラリーマンが刃物で殺害され、三沢は手の傷から事件の容疑者となってしまう。証拠不十分で釈放された三沢だが、その帰り道にまたも何者かに襲われる。三沢の事件を知った鬼島は一人暮らしの父の家を訪ねるが、竹彦は会おうともせず、一人"子供部屋"に戻り、ベビーベッドに横たわる何かに向かって話しかけるのだった。翌晩、竹彦の家を見張っていた三沢は、酒に酔った竹彦をタクシーで家まで送り届けた女性に会うが、女性を自分の車内に残して竹彦を自宅に送る間に、女性は何者かに襲われ、三沢は自宅に逃げ帰った彼女の後を追うが、女性の部屋に着くと女は既に息絶えていた。三沢はまたも容疑者にされるが、これも証拠不十分で釈放に。自分が襲われた晩に鬼島宅でテレビ画像が乱れたことを警察の町田警部(小林昭二)に告げ、それが警察の今回の事件の聞き込みと一致したことから、犯行時にテレビ画面を乱すほどの強力な電波が出ていることが判明、調べてみると、その電波の発信源は竹彦の家だった―。
「怪奇大作戦」は円谷プロダクションが制作し、TBS系で1968(昭和43)年9月から1969(昭和44)年3月まで毎週日曜日19:00-19:30に全26話が放送された、SRI(科学捜査研究所)の活躍を描いた特撮テレビドラマ。2007年にNHKデジタル衛星ハイビジョンで「怪奇大作戦 セカンドファイル」(全3回)、2013年にNHK-BS2で「怪奇大作戦 ミステリー・ファイル」(全4回)としてリメイク放映されて、この間BS-2などでオリジナルの再放映もされています。オリジナルは最初の方、回が浅い間はやや方向性がバラバラだったような感じでしたが、この第7話「青い血の女」辺りになると、大体定まってきたかなという感じでした。
サラリーマン、三沢、女性を襲ったのは《殺人人形》で、早くから画面に登場しますが、これは完全に機械仕掛けのからくり人形。その殺人人形を操っているのは誰なのか。ラストで警察が竹彦の部屋に踏み込む際に、竹彦は、ここには4歳の女の子がいるだけだと拒みますが、そこで彼らが見たものは―。
う~ん。竹彦は、自分を見捨てていく子どもたちの代わりに《女の子》を作って(高額の特許料で生活しているようだから発明家なのだろう)これを偏愛していたけれど、その《女の子》が老人である竹彦に代わって老人を見捨てる者を襲っているうちに"彼女"も自我を持つようになるとともに成熟し、竹彦から自由になりたいと考え、「あたしも老人を捨てて独立するの。だから、あたしも殺さなきゃ...」ということで"自殺"することになるわけか。なかなか凝ったレトリックだったなと思います。
「青い血の女」というタイトルから成熟した女性が出てくると思われがちですが、結局"自我を持った人形"だったわけで(老人の少女愛、人形愛というのは川端康成っぽい?)、但し、自殺して「血を流した」という意味においては半ば"人間"であり、しかしながら「血が青かった」という意味では"人間"ではなかったという、こうしたレトリックにおいても、シリーズの中では佳作とされるべきものではないかと思います。
この「青い血の女」は大井武蔵野館で観ましたが、併映作品の1つに「恐怖劇場アンバランス(第9話)死体置場(モルグ)の殺人者」('73年/フジテレビ、長谷部安春監督)がありました。「恐怖劇場アンバランス」は円谷プロが「怪奇大作戦」に続いて制作した本格オムニバスホラーの1時間ドラマで、「ウルトラQ」の企画時のタイトルだった「ア
ンバランス」を冠しており、「怪奇大作戦」のSRIのようなレギュラーメンバーがおらず「ウルトラQ」のようなスタイルで、内容的には「怪奇大作戦」にも増して大人向けの色合いが濃くなっています。内容が過激で、台本の段階かそれ以前でストップし放映されなかったものが幾つかあり、おおよそ3年のお蔵入り期間を経て放映された13話のうち、制作No.7まではオリジナル脚本によるホラー路線で、制作No.8以降は原作付きのサスペンスに路線変更しています(放映順は制作順と異なる)。その原作者というのが、円地文子、西村京太郎、松本清張、山田風太郎、仁木悦子、樹下太郎といった錚々たるメンバーで、監督も、まだ巨匠扱いされる以前の鈴木清順、藤田敏八、神代辰巳、黒木和雄あたりだったりします。また、作り手として知られる人たち(大和屋竺、蜷川幸雄、唐十郎)が主演俳優として出演しているのも、今観ればレア感があります。
この第9話「死体置場(モルグ)の殺人者」(制作No.3)のあらすじは―
というもので、背景が「白い巨塔」('66年/大映)みたいで、水上と涼子(演じるのは元「プレーガール」メンバーの西尾三枝子)のベッドシーンもあったりして、完全に大人向けになっています。ゾンビなった村田が脱がされた背広をまた着直しているし(結局、水上の妄想か。但し、ゾンビ村田は涼子の前にも現れるし、更には自宅にも)、包帯ぐるぐる巻きになって家に帰ったのに、村田の妻が「あなたどうしたの?」程度にしか驚かないし(これは人が死ぬ前に近しい者の前に現れるという超常現象か)、野坂昭如(特別出演)演じる、水上の教授昇進祝いに水上宅に来ていた友人「
坂野」が、唐突に死体が甦る話をし始める(しかもセリフ棒読み)違和感など、突っ込みどこ
ろは多いですが、怪奇モノ(怪談×モダンホラー)としてはオーソドックスだったでしょうか、いや、オーソドックスと言うより"ベタ"と言うべきか。あくまで今観て思うことで、リアルタイムで見ていた頃は結構怖がって観ていたかもしれません(そのことを加味して、星半分オマケ)。

![怪奇大作戦2 [VHS].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E6%80%AA%E5%A5%87%E5%A4%A7%E4%BD%9C%E6%88%A62%20%5BVHS%5D.jpg)
「怪奇大作戦(第7話)/青い血の女」●制作年:1968年●監督:鈴木俊継●監修:円谷英二●制作:円谷英二●脚本:若槻文三●特技:高野宏一●音楽監督:山本直純●音楽:玉木宏樹●出演:勝呂誉/原保美/岸田森/松山省二/小橋玲子/小林昭二/山中紘/浜村純●放送:1968/10/27●放送局:TBS●最初に観た場所(再見):大井武蔵野館(83-03-24)(評価:★★★☆)●併映:「恐怖劇場アンバランス(第9話)死体置場(モルグ)の殺人者」(長谷部安春)/「ウルトラQ/東京氷河期」(野長瀬三摩地)/「怪奇大作戦/死神の子守歌」(実相寺昭雄)
「恐怖劇場アンバランス(第9話)/死体置場(モルグ)の殺人者」●制作
年:1969年(制作№3)●監督:長谷部安春●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクシ
ョン/フジテレビ●脚本:山浦弘靖●音楽:冨田勲●出演:久富惟靖/西尾三枝子/向精七/渥美国泰/柳川慶子/高杉哲平/熊倉重之/鈴木勇作/小池泰光/酒井郷博/宮島邦継/斉藤リカ/倉石和
旺/野坂昭如(特別出演)/中原早苗/高橋幸雄●放送:1973/03/05●放送局:フジテレビ●最初に観た場所(再見):大井武蔵野館(83-03-24)(評価:★★★☆)●併映:「怪奇大作戦(第7話)/青い血の女」(鈴木俊継)/「ウルトラQ/東京氷河期」(野長瀬三摩地)/「怪奇大作戦/死神の子守歌」(実相寺昭雄)


矢)/松山省二(野村)/小橋玲子(小川)/小林昭二(町田)●放映:1968/09~1969/03(全26回)●放送局:TBS












ジテレビ。TBSの「ウルトラマン」の少し前くらいに放送が始まった)でマモル少年を演じた江木俊夫('52年生まれ。3歳でデビューし黒澤明の「
ドルグループ・フォーリーブスのメンバーとなり、「バンパイヤ」('68年/フジテレビ)でトッペイ・チッペイ兄弟の兄トッペイを演じた水谷豊('52年生まれ)は、今もTVドラマで活躍中と、子役のその後の人生は様々なようです。





矢子/二宮秀樹/吉田次昭/イーデス・ハンソン/三瀬滋子/黒丸良●放映:1966/07~1967/06(全52回)●放送局:フジテレビ

「バンパイヤ」●演出:山田健/菊地靖守●制作:疋島孝雄/西村幹雄●脚本:山浦弘靖/辻真先/藤波敏郎/久谷新/安藤豊弘/雪室俊一/中西隆三/宮下教雄/今村文人/三芳加也/石郷岡豪●音楽:司一郎/林光●原作:手塚治虫●出演:水谷豊/佐藤博/渡辺文雄/戸浦六
宏/山本善朗/左ト全/上田吉二郎/岩下浩/平松淑美/鳳里砂/嘉手納清美/桐生かおる/市川ふさえ/館敬介/中原茂男/手塚治虫●放映:1968/10~1969/03(全26回)●放送局:フジテレビ





『

ノン・ブックにあった遠藤周作(1923‐1996/享年73)の『私のイエス-日本人のための聖書入門』('76年/祥伝社)(現在はノン・ポシェット)が、「奇跡」とは何かということを軸に遠藤周作の独自のキリスト教に対する考え方を反映していて興味深いですが、"イエスの復活"というものに対する解釈とは別に(遠藤周作は、"復活"を無理に信じる必要はないと述べている)、イエスを裏切った者や"転びバテレン"に対する独自の見解(これは代表作『



因みに、冒頭に挙げた「氷点」の原作は、'63年に朝日新聞社が、大阪本社創刊85年、東京本社創刊75周年を記念する事業として懸賞小説を募集した時の入選作品で、TVドラマ版は、最初にドラマ化された'66年のもの(主演:内藤洋子、新珠三
千代、芦田伸介)が"原罪"というテーマに沿った重厚さを最も備えていて、その後に作られたものを引き離しているのではないでしょうか。夏枝(新珠三千代)の冷酷さが怖く、卒業式で陽子(内藤洋子)に白紙の原稿を読ませるよう仕組むが...。前年に黒澤明監督「
「氷点」●演出:北代博●脚本:楠田芳子●音楽:








1968(昭和43)年から1972(昭和47)年にかけて「産経新聞」に連された長編大河小説で、経営者に最も読まれている小説といえば、かつては『徳川家康』(山岡荘八)、今はこの『坂の上の雲』ということですが、この『坂の上の雲』は、'69年の単行本刊行以来、文庫も含め1400万部ぐらい売れているとのこと、'04年には単行本の新装版が出ました(読みやすいが、6巻とも文庫本新版の第1巻の表紙絵を流用しているのはなぜ?)。
物語のクライマックスは、二〇三高地で有名な旅順大戦と、ロシアのバルチック艦隊に勝利した日本海海戦ですが、間に様々な人物挿話が入り(ロシア側の人物もよく描けている)、バルチック艦隊がアフリカ東岸マダガスカルあたりでいつまでもグダグダしている(スエズ運河を支配していた大英帝国が日英同盟の名の下にロシアにスエズ運河の通過許可を出さなかったためにアフリカ大陸を迂回するハメになった)、その間にも、著者のウンチクは繰り広げられます。
これを面白いと見るか、冗長と見るか。著者の初期作品のような快活なテンポはないけれど、先述のスパイ活動をやった明石元二郎の秘話など随所に面白い話がありました。
この作品での乃木希典将軍の無能ぶりの描き方は徹底していて、乃木は、日本戦史上、最も多くの部下をむざむざと死地へ追いやった大将ということになるのではないでしょうか。
それにしても、バルチック艦隊の大航海とその疲弊による敗北は、近代戦において最も時間と費用を要するのがロジスティックであることを端的に象徴していると思いました(湾岸戦争もイラク戦争も「輸送」に一番カネがかかっている)。
二〇三高地の攻防戦をメインに描いた舛田利雄監督の映画「二百三高地」('80年/東映)は3時間の大作、時折旅順大戦の戦況図なども画面に出てきて、大戦の模様を正確に描こうとしている姿勢は買えますが、これだけ乃木希典(仲代達矢)が自軍の兵士たちに強いた犠牲の大きさを描きながらも、彼を悲劇の英雄視するような姿勢が窺えて解せませんでした。さだまさしの音楽もとってつけたような感じで、(自分が司馬遼太郎のこの小説に感化された部分もあるかも知れないが)乃木希典の戦術的無能を情緒的な問題にすりかえてしまっている印象を受けました。
「二百三高地」●制作年:1980年●監督:舛田利雄●脚本:笠原和夫●撮影:飯村雅彦●音楽:山本直純●主題曲:さだまさし●時間:181分●出演:仲代達矢/あおい輝彦/新沼謙治/湯原昌幸/佐藤允/永島敏行/長谷川明男/稲葉義男/新克利/矢吹二朗/船戸順/浜田寅彦/近藤宏/伊沢一郎/玉川伊佐男/名和宏/横森久/武藤章生/浜田晃/三南道郎/
北村晃一/木村四郎/中田博久/南廣/河原崎次郎/市川好朗/山田光一/磯村健治/相馬剛三/高月忠/亀山達也/清水照夫/桐原信介/原田力/久地明/秋山敏/金子吉延/森繁久彌/天知茂/神山繁/平田昭彦/若林豪/野口元夫/土山登士幸/川合伸旺/久遠利三/須藤健/吉原正皓/愛川欽也/夏目雅子/野際陽子/桑山正一/赤木春恵/原田清人/北林早苗/土方弘/小畠絹子/河合絃司/須賀良/石橋雅史/村井国夫/早川純一/尾形伸之介/青木義朗/三船敏郎/松尾嘉代/内藤武敏/丹波哲郎●公開:1980/08●配給:東
映●最初に観た場所:飯田橋・佳作座 (81-01-24)(評価:★★)●併映:「将軍 SHOGUN」(ジェリー・ロンドン)


かつて旅回りの役者だった喜八(渥美清)は、一人娘の小春(有森也実)と二人で長屋暮らし。小春は浅草「帝国館」で人気の売り子として働いていた。ある日、小春の噂を聞きつけた映画監督の小倉(すまけい)がスカウトに来たことで
、小春は女優への道に。小春は見学に行った撮影現場で看護婦の役を与えられたが、いきなりのことで散々な結果となる。意気消沈した小春は女優を諦めようとするが、思いを寄せる助監督の島田(中井貴一)が説得し、大部屋女優として歩み始めた―。
1986年公開の「松竹大船撮影所」50周年記念作品で、1920(大正9)年から大船に移転する1936(昭和11)年まで映画を作り続けた「松竹蒲田撮影所」が舞台。製作の契機としては、松竹映画の象徴である「
脚本に井上ひさし、山田太一が加わる力の入れ様で、「蒲田行進曲」をライバル視しつつも「蒲田行進曲」に出ていた松坂慶子や平田満まで出ているオールスターキャスト、「男はつらいよ」シリーズの製作を1回飛ばしてこちらに注力しているので、渥美清、倍賞千恵子、前田吟、下條正巳、三崎千恵子、笠智衆、佐藤蛾次郎など「男はつらいよ」のレギューラーが総出演(当時15歳の吉岡秀隆は、倍賞千恵子と前田吟の夫婦の間の子の役で、役名もそのまま「満男」)、すまけい、笹野高史、美保純など凖レギューラー、毎回ノンクレット出演の出川哲朗も含め「男はつらいよ」から全員引っ越してきたという感じです。
一方で、浅草の映画館の売り子からスター女優になる主役の「田中小春」役を「
松坂慶子が演じる、突然の逐電で主役を降板し、小春にチャンスをもたらすことになる川島澄江は、岡田嘉子(1902-1992)がモデル(1927(昭和2)年3月27日、主役を務める「椿姫」(村田実監督)の相手役であった竹内良一との失踪事件を起こした。小津安二郎監督の「
岸部一徳が演じる緒方監督は小津安二郎(1903-1963)監督を明確にモデルにしており、その演出の様子まで再現していますが、小津の演出を知る笠智衆がその岸部一徳の演技を"語り下ろ
し"の自著『
渥美清のキャラクターは、小津安二郎監督の「


「キネマの天地」●英題:FINAL TAKE-THE GOLDEN DAYS OF MOVIES●制作年:1986年●監督:山田洋次●製作:野村芳太郎●脚本:山田洋次/井上ひさし/山田太一/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●時間:135分●出演:渥美清/中井貴一/有森也実/すまけい/岸部一徳/堺正
章/柄本明/山本晋也/なべおさみ/大和田伸也/松坂慶子/津嘉山正種/田中健/美保純/広岡瞬/レオナルド熊/山城新伍/油井昌由樹/アパッチけ(中本賢)/光石研/山田隆夫/石井均/笠智衆/桜井センリ/山
内静夫/桃井かおり/木の実ナナ/下條正巳/三崎千恵子/平田満/財津一郎/石倉三郎/ハナ肇/佐藤蛾次郎/松田春翠/関敬六/倍賞千恵子/前田吟/吉岡秀隆/笹野高史/ 出川哲朗(ノンクレジット)/(以下、特別出演)9代目松本幸四郎/藤山寛美●公開:1986/08●配給:松竹●最初に観た場所:神保町シアター(24-04-05)(評価:★★★☆)
神保町シアター
岸部一徳(緒方監督(小津安二郎がモデル))/柄本明(佐伯監督)/松坂慶子(川島澄江(岡田嘉子がモデル))/すまけい(小倉金之助監督)/9代目松本幸四郎(城田所長(城戸四郎がモデル))/笠智衆(小使トモさん)/桃井かおり(彰子妃殿下)/倍賞千恵子(ゆき)/前田吟(ゆきの亭主・弘吉)