【1353】 ○ 手塚 治虫 『ハトよ天まで―手塚治虫作品集1』 (1975/08 文民社) 《『ハトよ天まで (全3巻)』 (1977/09 手塚治虫漫画全集)》 ★★★★

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ストーリーテイリングのしっかりた傑作。民話ブームの先駆け?

ハトよ天まで.jpg ハトよ天まで1.jpg ハトよ天まで 中公文庫コミック版1.jpg ハトよ天まで 中公文庫コミック版2.jpg
手塚治虫作品集〈1〉ハトよ天まで (1975年)』 『ハトよ天まで (1) (手塚治虫漫画全集 (47))』 (全3巻)『ハトよ天まで (1) (中公文庫―コミック版)』『ハトよ天まで (2) (中公文庫―コミック版)

ハトよ天まで.jpg 久呂岳と黒姫山には、それぞれアビルとテングという主がいて争いを続けてきたが、麓の村人たちは、そのとばっちりを受け、飢えと貧困に苦しんでいた。母親と別れ父親に死なれたタカ丸・ハト丸の兄弟は、その両山の狭間にある竜が渕の大蛇・立田姫を育ての親として成長するが、やがてタカ丸は出世を望んで村を出て都へ行き、一方のハト丸は、村に残って村の平和を守ろうとし、それぞれに数奇な人々と出会い、多くの妖怪たちと戦うことになる―。

ハトよ天まで 作品集.jpg '64(昭和39)年11月から'67(昭和42)年1月にかけて「サンケイ新聞」に連載された作品で、全集そのものが完結しなかった文民社の「手塚治虫全集」の第1巻に収録された作品ですが、作者の唯一の「民話絵物語」であるとのことです。
 その前に同紙に'61(昭和36)年から3年間連載していた『オズマ隊長』も「絵物語」作品ですが、これは近未来物語であり、民話的な愛蔵版 ハトよ天まで.jpg作品となると初期の手塚作品には短編も含め殆ど無く、そうした意味では貴重な作品ですが、それだけでなく、ストーリーテイリングのしっかりた傑作として仕上がっています。

 '78年刊行の講談社の「手塚治虫漫画全集」の方の作者の"あとがき"では、"最近になって民話復活のきざしがみえはじめました"とありますが、これは、'75年にTBS系で放送がスタートした「日本むかし話」のことを指していて、「あれは虫プロダクション出身の人が中心になってつくった」と。 ならば、この作品は、約30年続いた長寿番組の先駆け的作品とも言えるのではないかという気もしますが、この作品自体、松谷みよ子氏の名作「竜の子太郎」に刺激を受けて描いたことを正直に告白しています。
ハトよ天まで』 ['90年/文藝春秋]

ハトよ天まで kindle.jpg 様々な妖怪たちの戦い、妖怪と人間の戦い、そして人間同士の争いという縦軸に、育ての母の愛情、兄弟の反目と協力、彼らの人間的成長という横軸を絡ませたストーリーの巧みさは見事で、時に応じて兄弟の敵となり味方となる佐佐木大二郎という合理主義者のキャラクターも、物語に緊張をもたらす意味で効いているように思いました。

 一応の大円団は迎えるものの、事後談においては単なるハッピーエンドに終わらせず、現実の厳しさを忘れないのも、手塚治虫ならでは。
 個人的に懐かしい作品ですが、読み直してみて、子供の頃にはらはらどきどき、或いはわくわくさせられた思いが甦ってきました。

Kindle版(2014)

 【1975年全集版[文民社]/1977年全集[講談社(全3巻)]/1982年手塚治虫選集[ほるぷ社(全2巻)]/1990年中公コミックス愛蔵版・1996年中公文庫コミック版(全2巻)[中央公論社]/2010年再文庫化[講談社(手塚治虫文庫全集BT)]/2014年Kindle版[ 手塚プロダクション(全3巻)]】

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This page contains a single entry by wada published on 2010年7月30日 22:50.

【1352】 ○ 東風 孝広 (原作:田島 隆) 『カバチタレ! (全20巻)』 (1999/11 講談社) ★★★☆ was the previous entry in this blog.

【1354】 ○ つげ 義春 『近所の景色/無能の人―つげ義春全集8』 (1994/04 筑摩書房) ★★★★ is the next entry in this blog.

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