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人間性の研究結果として生まれた「動機づけ―衛生理論」とその実証的裏討ちを示す。

フレデリック・ハーズバーグ
『仕事と人間性: 動機づけ-衛生理論の新展開』['68年]

1966年にフレデリック・ハーズバーグ(Frederick Herzberg、1923 - 2000)による原著(Work and the Nature of Man)の初版が刊行された本書は、仕事における動機づけの心理学的調査研究の結果から、人間の仕事における満足度は、ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるということではなくて、「満足」に関わる要因(動機付け要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)は別のものであるとする「動機づけ―衛生理論」という考え方を実証的に提唱し、経営や組織、社会に新しい人間観を持ち込んだことで知られる本です。
「1.ビジネス―現代の支配的制度」で、ビジネス組織が今日の社会の支配的制度となっているとし、「2.アダムとアブラハム」では、人間はアダム的要素とアブラハム要素の両方を基本的性質として持っているとしています。エデンの園を追われたアダムは、人間の回避的性質の象徴であり、不快さの回避に関する欲求を持っている(後に述べる衛生要因につながる)のに対し、神から「完全なものになれ」といわれたアブラハムは、人間が有能で生得の潜在能力があることの象徴であり、成長、自己実現の欲求を持っている(同じく動機づけ要因につながる)としています。
「3.産業界の人間概念」では、産業界における人間の概念が、プロテスタント倫理、テーラーの科学的管理法、ホーソン工場の実験と人間関係論などを経て「経済的人間」から「社会的人間」「情緒的人間」へと変遷してきたと振り返り、「4.人間の基本的欲求」では、人間はアダム的人間としての欲求とエブラハム的人間としての欲求の二組の欲求を有するとしています。「5.精神的成長」では、精神成長とはなにか、その6つの要点(より多く知ること、知識内の関係づけが増えること、創造性、あいまいさの中での効率、個別化、現実的成長)を挙げています。
そして「6.動機づけ―衛生理論」において、仕事の満足に関わるもの(動機づけ要因)は、「達成」「承認」「仕事そのもの」「責任」「昇進」などで、これらが満たされると満足感を覚えるが、欠けていても職務不満足を引き起こすわけではなく、一方、仕事の不満足に関わるもの(衛生要因)は「会社の政策と経営」「監督技術」「給与」「対人関係」「作業条件」などで、これらが不足すると職務不満足を引き起こすが、満たしたからといっても満足感につながるわけではなく、単に不満足を予防する意味しか持たないとしています。「7.動機づけ―衛生理論の実証」「8.動機づけ―衛生理論の追加実証」で、そのことがさまざまな職種における調査から実証できることを証明し、「9.どうすればいいか」で、この理論を現実にどう活かすべきかを説いています。
本書の前半のかなりの部分が人間性をめぐる解釈と変遷の記述で占められているのは、「動機づけ―衛生理論」が人間性の研究結果として生まれた理論であることを示しており、同時に、実証研究による理論の裏打ちもされています。それらが、この理論が今なおビジネスの現場で活きている理由であると考えます。
因みに、フレデリック・ハーズバーグは、両親がリトアニア出身のユダヤ系米国人臨床心理学者であり(そう言えばアブラハム・マズローもユダヤ人だった)、こうしたモチベーションの性質と人をやる気にさせる最も効果的な方法の研究によって影響力のある経営思想家となりました。彼を最初に心理学の道に進ませた「メンタルヘルスに対する一方ならぬ関心」は、「メンタルヘルスはわれわれの時代の中核的な課題である」という信念から生じているそうです。この信念は、第2次世界大戦で、悪名高いダッハウ強制収容所に解放直後に配属された従軍体験によって形成されたと言われています(収容所にいた多くの同胞ユダヤ人を見たものと思われる)。米国に戻ると公衆衛生局で働き、その後は学究生活に入って、「動機づけ―衛生理論」は1959年に刊行された『作業動機の心理学』(The Motivation to Work)で初めて発表されています(35,6歳の頃か。衛生局に勤めていたから「衛生要因」になった? 普通だったら「環境要因」とかになった可能性もあったのでは)。後半生は大学教授として、ケース・ウェスタン・リザーブ大学で心理学の教授、ユタ大学で経営学の教授を歴任しています(つまり、心理学者から経営学者へという流れ。マズローもそうだった)。
Frederick Irving Herzberg

Stephen Covey
第1部「パラダイムと原則」では、「個性主義」なものはあくまで二次的なものであって、まずは「人格」を磨かなければ真の成功は得られないとするとともに、問題の見方を「自分が変わらなければ周囲も変化しない」という「インサイド・アウト」という考え方にパラダイム・シフトすべきであるとしています。そして、「7つの習慣」は人格を磨くための基本的な原則を具体的なかたちにしたものであり、その原則を守ることで、自らが変わり結果を引き寄せていく、という新しいパラダイムを手に入れることができるとしています。





本書は、社会人として身につけるべき「人間関係の原則」を具体的に明示した、自己啓発本の古典としてよく知られている本です。1936年に刊行(日本語版は抄訳版が1937(昭和12)年創元社刊)されて以降、全世界で1500万部以上売れてたベストセラーであり、タイトルだけは聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。もちろん、すでに読んだという人も多いかと思います。
創元社の単行本【新装版】(1999年刊)と【文庫版】(2016年刊)の違いは、単行本版には「付」として「幸福な家庭をつくる7原則」というのが掲載されていますが、文庫版にはありません(昨年['23年]、【改訂新装版】の単行本が6月に、文庫が9月に刊行されたが、どこが"改訂"なのか、個人的には未確認。目次を見る限りそれぞれ同じに見えるが...)。また、新潮社より『人を動かす 完全版』(2016年刊)が東条健一訳で刊行されており、こちらは著者の未亡人が編纂に関わり、著者の死後に加えられたエピソードを排し、失われていた「本書を書いた理由」など多くの原稿を復活させたものです(ただし、個人的には創元社版の方が読みつけているせいか読みやすい)。

アーロン・ズー((株)電通 BXCC事業開発プロデューサー)
本書によれば、PDCAよりも環境変化に柔軟に対応でき、変化が激しい昨今のビジネスをハンドリングしていくフレームワーク概念として「OODAループ」というものがあり、それは「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(実行)」に分かれていて、意思決定から行動までを網羅しているとのことです。
第1章では、マネジャーの役割は複雑さに対応することであるのに対し、リーダーの重要な役割は「変化に対応する」ことであるとしています。その上で、真のリーダーに必要な5つの基本要素(①意義を共有する、②与える人になる、③メンバーの強みを見つける、④フィードバック上手になる、⑤成果を明確にする)を掲げています。また、OODAとPDCAの決定的な違いとして、OODAは目指すべき結果を想定しておらず、評価のプロセスもなく、そもそも意思決定のためのものであり、業務改善のためのものであるPDCAとは役割が異なるとしています。
ターの法則」から説き起こしています(弱者のための「一次法則(=機動戦)」と「強者のための二次法則(=消耗戦)」)。そして、PDCAが「消耗戦」でいく"正策"であるのに対し、OODAは「機動戦」に可能性を見出した"奇策"であり、本当の戦争よりもビジネスにおいて、その実力を発揮できるとしています。また、一般に知られているOODAの図は、正確なOODAではなく、実際の現場では「明示的な決定」は必要とされず、「判断(Orient)」が直接「行動(Act)」を統制することで、スピーディーな意思決定のプロセスが踏め、これこそがOODAの「速さの正体」だとしています。





アンドリュー・J・M・ビンズ(後ろ)/チャールズ・A・オライリー(手前)


本書は、実際に多くの企業の再生に携わったハーバード・ビジネススクールの教授が、エンパワーメント・リーダーシップについて唱えたものです(本書の原題は"Unleashed"(解き放つ)となっている。副題の"Unapologetic Leader"は、「謝らないリーダー」というより「誤らないリーダー」という意味に近いか)。


