【3444】 ○ ランジェイ・グラティ (山形浩生:訳) 『DEEP PURPOSE―傑出する企業、その心と魂』 (2023/02 東洋館出版社) ★★★★

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「表層的なパーパス」とは異なる「深層的なパーパス(ディープ・パーパス)」を提唱。

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DEEP PURPOSE 傑出する企業、その心と魂』['23年]  ランジェイ・グラティ(ハーバード大学ビジネス・スクール教授)

 ハーバード大学ビジネス・スクール教授による本書では、高業績を上げる企業は利潤よりもパーパスに導かれているとしています。パーパスは、その会社の従業員、顧客、パートナー、株主などあらゆるステークホルダーをまとめるビジョンを作り出し、倫理的な行動を動かし、ステークホルダーの最善の利益に反する行動に対する本質的な抑制を作り出すものであり、また、文化の強力な原動力であり、組織の内部すべてで一貫性を持つ意思決定の枠組みを提供し、最終的には、会社の株主のために長期的な収益を維持するのに役立つとしています。

 最初の3章は、ディープ・パーパス・リーダーがパーパスについて考える強力なやり方を検討しています。

 第1章「そもそもパーパスとは何か?」では、一般の多くのリーダーは、パーパスを機能または道具として考え、ツールだと思っているが、ディープ・パーパス・リーダーはそれを、より根源的な企業の存在理由そのものを表現するものと考え、彼らにとっては、パーパスは意思決定を形成し、ステークホルダーたちをお互いに結びつける組織原理となるとしています。

 第2章「かみそりの刃の上を歩く」では、ディープ・パーパス・リーダーは、商業主義と社会倫理のトレードオフの調整に取り組み、ステークホルダー間の利害を調整して、ときには彼らが短期的には「不満足」と思うが、やがて万人に利益をもたらすつらい決断をすることもあるとしています。

 第3章「すぐれた業績の四つのレバー」では、ディープ・パーパス・リーダーは企業の成長を導くレバーとして、①戦略立案の焦点を定める能力、②顧客との関係構築、③外部ステークスホルダーへの対応、④従業員の啓発、の四つ便益を指摘しているとしています。

 第4章から第7章は、存在理由(パーパス)を定義して企業に根づかせ、それが本当に業績を改善するようにするために、リーダーたちが実施すべき鍵となるアクションを検討しています。

 第4章「パーパスの真の源:前を見ながら振り返る」では、ディープ・パーパス・リーダーは過去を振り返り、創業者や初期の従業員たちの意図に入り込んで企業の不滅の魂や本質を捉えるため、結果的に感情的なつながりが深まって、存在理由への献身が高まるとしています。

 第5章「あなたは詩人? それともただの作業員?」では、ディープ・パーパス・リーダーがパーパスを伝える際には、壮大な基盤となる物語を語り、会社に深みと意義と、詩情さえももたらすとしています。

 第6章「パーパスの中の「自分」」では、ディープ・パーパス・リーダーは、組織のパーパスをチームメンバーの個人的な発展と成長に結びつけ、内在的動機に火をつけ、高水準の献身と業績を実現するとしています。

 第7章「鉄の檻を逃れる」では、パーパスを深く追求するリーダーは、伝統的な官僚主義的やり方を破壊し、自社をイノベーション、アジャイル性、成長に向かわせようとするとしています。

 最後に、第8章「思いつきから理想へ:未来に湛えるパーパス」で、パーパスを次第に空疎化させてしまういくつかの罠を述べ、ディープ・パーパス・リーダーが会社を正しい方向に維持するために使う手法を紹介しています。

 昨今「パーパス経営」という言葉がよく使われますが、本書では、「ディープ・パーパス(深層的なパーパス)」という概念を初めて提唱し、パーパスには「表層的なパーパス」と「深層的なパーパス」があって、両者は異なるとしています。

 パーパスステートメントを書くのは簡単だが、出来上がった美辞麗句を社員に伝えただけではパーパス経営が行なわれているとは言えず、深層的なパーパスは、経営者が中心となり、経営者と社員が長い時間を掛けて真剣に検討し何度も議論する中で生まれてくるものであるとしています。

 さらには、経営者自らが社員一人ひとりに、パーパスを浸透させるために、自ら実践する必要があり、戦略立案、人材採用、新規事業開発など、どのような仕事を行なう際にも、経営者を始め管理者層がパーパスを実践し、それを下へと伝えていくことが肝要あるとしています。

 ペプシコやレゴ社、リクルートなど、パーパス経営を実現しているとされる18の企業例が紹介されていますが、解説の鵜澤慎一氏が、伊藤忠商事が近江商人の「三方よし」の精神を企業理念に掲げていることを例に、「パーパス経営は実は日本の経営観に近い」と述べており、このことを念頭に置くと、身近な印象を抱きながら読み進めることができるのではないかと思います。

《読書MEMO》
●目次
序文
はじめに
第1章 そもそもパーパスとは何か
都合のいいパーパス
パーパスの別のパラダイム
会社の魂とのつながり
第2章 かみそりの刃の上を歩く
「同時解決策」の誘惑
かみそりの刃の上を歩く
実務的理想主義の心構え
実務的理想主義の勇敢な追求
トレードオフの妙技
第3章 優れた業績の四つのレバー
成長を導く「北極星」(パーパスのレバーその1:方向的)
緊密なエコシステム(パーパスのレバーその2:関係的)
顧客への評判強化(パーパスのレバーその3:評判的)
従業員を惹きつけ啓発(パーパスのレバーその4:動機的)
第4章 パーパスの真の源:前を見ながら振り返る
道徳的コミュニティとしてのビジネス企業
過去に見出す聖なるもの
未来を見つつ振り返る
戦略その1:過去の美化と邪悪化の緊張に特に注目
戦略その2:過去についての批判的対話を育む
戦略その3:パーパスをストレステストにかけよう
第5章 あなたは詩人? それともただの作業員?
ただのエピソードではない――大きな物語
業績はパーパスとともに
ペプシコの大きな物語を語る
「大きな物語」の背後の物語
自分/我々/今
大きな物語を具象化する
第6章 パーパスの中の「自分」
「自分」を解き放つ
「自分らしく、率直に、親切に」
何のために会社にくるのか?
会社はあなたのために何ができる?
人生のパーパスの力を解き放つ
第7章 鉄の檻を逃れる
「醜悪な一大惨状」
パーパスとのつながり
「船頭が多すぎる」問題の解決
パーパス=自律性=信頼のつながり
「根深いタコツボ」問題の解決
パーパス=信頼=協働のつながり
第8章 思いつきから理想へ:未来に湛えるパーパス
コース逸脱
脱線要因その1:属人化のパラドックス
脱線要因その2:(不適切な)計測による死
脱線要因その3:善行者のジレンマ
脱線要因その4:パーパスと戦略の分裂

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