【3443】 ○ アンドリュー・J・M・ビンズ/チャールズ・A・オライリー/マイケル・L・タッシュマン (加藤今日子:訳) 『コーポレート・エクスプローラー―新規事業の探索と組織変革をリードし、「両利きの経営」を実現する4つの原則』 (2023/02 英治出版) ★★★★

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CEは、新規事業を立ち上げ推進するだけでなく、既存組織の変革も両立して行うリーダー。

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コーポレート・エクスプローラー――新規事業の探索と組織変革をリードし、「両利きの経営」を実現する4つの原則』['23年]

 本書は、企業の中から新しい探索事業を立ち上げるリーダー(コーポレート・エクスプローラー、CE)に焦点を当てています。CEはスタート・アップの起業家とは異なり、成熟した企業の内側からイノベーションを起こしつつ、既存事業の変革も担うリーダーであり、本書では、実際に存在するCEの事例にフォーカスし、新規事業を立ち上げ、既存組織も変革する「両利きの経営」を実現するための4つの原則を提示しています。

 第Ⅰ部では、調査の結果、創造的破壊を起こす企業には、「戦略的抱負」「イノベーションの原則」「両利きの組織」「探索事業のリーダーシップ」の4つの特徴(原則)があったとしています(第1章)。

 まず、自社の資産を活用して破壊的イノベーションを起こした企業が生まれた経緯とその方法を分析し、CEが社内イノベーションに果たした役割を紹介、CEこそが新規事業は起こすと結論づけています(第2章)。さらに、CEの成功を左右するCEOや経営陣の役割は、企業の成長意欲と直結する「戦略的抱負」を定め、探索事業にお墨付きを与えることだとしています(第3章)。

 第Ⅱ部では、CEが知っておくべき「イノベーション」の原則――着想、育成、量産化――について述べています。着想はただ案を出すだけではなく、解決すべき顧客の問題を突き止め、顧客を惹きつける力のある解決策を出すという二段階があるとし(第4章)、育成は、新規事業の軸となる最重要仮説を検証し、そこから学ぶことであって(第5章)、さらにCEは新規事業のために資産(顧客、組織能力、経営資源)を集めることで、新規事業の成功に欠かせない量産化を実現するとしています(第6章)。

 第Ⅲ部では、探索事業とコア事業を分離する「両利きの経営」について扱っています。探索事業の組織形態としてのフォーカス型、ボトムアップ型、トップダウン型の3つの選択肢を紹介し(第7章)、探索事業システムとしてのチーム構成などについて解説(第8章)、さらに、CEが直面する社員のモチベーション問題や、CE個人のモチベーション問題などのリスクについて述べています(第9章)。

 第Ⅳ部では、経営陣とCEの両面から、リーダーシップについて考察しています。まず、探索事業を妨げる抵抗(「サイレントキラー」)はコア事業システムから生じるとして(第10章)、イノベーションと組織変革を「両立する」リーダーが求められるとし、そうした"二重らせん"型のリーダーの特質を述べ(第11章)、最終章で、新規事業を成功させる最後の要素は「リーダーとして実行する覚悟だ」としています(第12章)。

 著者らの前著『両利きの経営』(2019年/東洋経済新報社)の実践版とのことで、まだ全体的に概念的な記述が多いものの、今回は事例も多く紹介されて、内容をイメージしながら読み進むことができます。ここで言うCEとは、新規事業を立ち上げ推進するだけでなく、既存組織の変革も両立して行うリーダーということになるかと思います。

 CEOに実行する覚悟を持たせるのもCEの役割であると。また、イノベーションの原則、両利きの経営などの要素はすべて成功への地固めであり、最終的にはリーダーとしての勇気が不可欠なのだとしています。個人的には、創造的破壊に向けて、実務者にエールを送っている本であるように思いました(前著が経営論、組織論の色合いが強かったのに対し、今回はリーダーシップ論の色合いが濃い)。

《読書MEMO》
●目次
Part1 戦略的抱負
1 社内イノベーションの利点
2 新規事業はCEが動かす
3 戦略的抱負の条件
Part2 イノベーションの原則
4 着想―新規事業のアイデアを出す
5 育成―検証を通して学ぶ
6 量産化―新規事業のための資産を集める
Part3 両利きの組織
7 探索事業部
8 探索事業システム
9 CEのリスクと報酬
Part4 探索事業のリーダーシップ
10 探索事業を妨げる「サイレントキラー」
11 二重らせん―イノベーションと組織変革を「両立する」リーダー
12 行動する覚悟―新規事業の量産化を決断するリーダー

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