【3446】 ○ アーロン・ズー 『OODA式リーダーシップ―世界が認めた最強ドクトリン』 (2023/03 秀和システム) ★★★★

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OODAを回すのに必要なリーダーシップとは何か、組織文化の属性は何かを説く。

OODA式リーダーシップ.jpgOODA式リーダーシップ20223.jpg   アーロン・ズー.jpg アーロン・ズー((株)電通 BXCC事業開発プロデューサー)
OODA式リーダーシップ 世界が認めた最強ドクトリン』['23年]

OODA式リーダーシップ2.jpg 本書によれば、PDCAよりも環境変化に柔軟に対応でき、変化が激しい昨今のビジネスをハンドリングしていくフレームワーク概念として「OODAループ」というものがあり、それは「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(実行)」に分かれていて、意思決定から行動までを網羅しているとのことです。

 OODAは米国空軍で戦闘機パイロットだったジョン・ボイド大佐が提唱したもので、米国ではすでに確立されており、民間でも一般的であるとのことです。ただし、PDCAが当たり前になってしまっている日本人がOODAを使いこなすには、日本人が苦手とするリーダーシップが必要であるとし、軍事戦略をベースにしたOODAの基礎知識と、求められるリーダーシップについて解説しています。

OODA式リーダーシップ1-2.jpg 第1章では、マネジャーの役割は複雑さに対応することであるのに対し、リーダーの重要な役割は「変化に対応する」ことであるとしています。その上で、真のリーダーに必要な5つの基本要素(①意義を共有する、②与える人になる、③メンバーの強みを見つける、④フィードバック上手になる、⑤成果を明確にする)を掲げています。また、OODAとPDCAの決定的な違いとして、OODAは目指すべき結果を想定しておらず、評価のプロセスもなく、そもそも意思決定のためのものであり、業務改善のためのものであるPDCAとは役割が異なるとしています。

 第2章では、OODAが持つ軍事的エッセンスについて、軍事戦略の基礎である「ランチェスOODA式リーダーシップ2-2.jpgターの法則」から説き起こしています(弱者のための「一次法則(=機動戦)」と「強者のための二次法則(=消耗戦)」)。そして、PDCAが「消耗戦」でいく"正策"であるのに対し、OODAは「機動戦」に可能性を見出した"奇策"であり、本当の戦争よりもビジネスにおいて、その実力を発揮できるとしています。また、一般に知られているOODAの図は、正確なOODAではなく、実際の現場では「明示的な決定」は必要とされず、「判断(Orient)」が直接「行動(Act)」を統制することで、スピーディーな意思決定のプロセスが踏め、これこそがOODAの「速さの正体」だとしています。

 第3章では、ビジネスにおけるOODAの存在意義として、今後「パラダイムシフト」によってビジネスの根本が変化する中、スピーディーに状況を観察(Observe)し、方向性(Orient)を決め、迅速な決定(Decide)により行動(Act)することは不可欠だとしています。また、OODAを回すために必要な組織文化の属性として、信頼、直観、任務、方向性の4つを挙げ、さらに、すべての経営者(リーダー)は、奇策を生み出せるクリエイターであるべきだとしています。

 第4章では、日本でOODAを高速回転させるための手法として、「イシュー・セリング(Issue Selling)」と呼ばれる「問題を課題として経営層に認識してもらうためのプロセス(提案、根回し、協力者探しなど)」を紹介し、その4つのステップ(①前準備、②パッケージング活動、③巻き込み活動、④セリング活動)について解説しています。

 日本では、PDCAは仕事の基本であると言われ続けてきたように思います。一方で、変化の激しい今の時代において、当初の計画通りに事が運ばないことは少なからずあるかと思います。こうした状況において、OODAというフレームワークは、非常に興味深いと思われます。

 ただし、やや漠たる印象もあり、それを日本の企業や職場においてどう回していけばいいのか、具体的なイメージが把握しにくい面もあるように思います。本書も、読んでみてまだ難しく思われる箇所もあるかもしれませんが、OODAを回すのに必要なリーダーシップとは何か、組織文化の属性は何かにフォーカスして書かれている分、「では、どうすればよいのか」をイメージしやすい内容になっているように思います。

 「OODAループ」についてより知りたい人は、本書にも紹介されている本で、OODAの提唱者であるジョン・ボイド大佐の弟子だった企業コンサルタントのチェット・リチャーズ氏の著書『OODA LOOP(ウーダループ)』('19年/東洋経済新報社)を読んでみるのもいいかと思います。

《読書MEMO》
●目次
第一章 科学的に考えるリーダーシップの定義
第二章 軍事戦略から紐解く「戦略」の要素
第三章 ビジネスにおけるOODAの存在意義
第四章 日本でOODAを活かすための変革とは
●「人生で偽りのリーダーに出会うほど無駄なことはない。」(31p)
●ランチェスターの法則
・ランチェスターの1次法則(弱者戦略)
「一騎打ちの法則」 純粋な白兵戦、一対一の戦闘を前提とすると、戦闘力が優勢な方が勝利し、勝利側の損害は劣勢の戦闘力と等しくなる。
・ランチェスターの2次法則(強者戦略)
30人と50人が同じ能力の武器を使って戦う場合、兵士数はそれぞれ2乗になると考え、50人の軍が、40人を残して勝つことになる。 公式は「戦闘力=(兵士数の2乗)×武器効率」。

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This page contains a single entry by wada published on 2024年3月 6日 04:46.

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