【3442】 ○ フランシス・フライ/アン・モリス (桜田直美:訳) 『世界最高のリーダーシップ ―「個の力」を最大化し、組織を成功に向かわせる技術』 (2023/01 PHP研究所) ★★★★

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優れたリーダーは「脇役」。エンパワーメント・リーダーシップを提唱。

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世界最高のリーダーシップ 「個の力」を最大化し、組織を成功に向かわせる技術』['23年]

 本書は、実際に多くの企業の再生に携わったハーバード・ビジネススクールの教授が、エンパワーメント・リーダーシップについて唱えたものです。

 1章では、一般的なリーダーシップ論ではリーダーにとって最も大切な仕事が隠されてしまうとし、その仕事とは、他者(メンバー)を育てることであって、エンパワーメント・リーダーシップとは、自分の存在によって他者をエンパワーメントし、その影響力が、自分が不在の状況でも続くようにすることであると定義しています。

 そして、「エンパワーメント・リーダーシップの輪」というものを示し、円の中心に「信頼」があり(第2章)、そこから外に向かうにつれて、エンパワーできる他者も増えていき、まず「愛」を通して個人をエンパワーし(第3章)、「帰属」を通してチーム(第4章)、「戦略」を通して組織(第5章)、そして「文化」を通してさらにその影響の範囲を拡げる(第6章)としています。

 つまり、信頼、愛、帰属の3つがエンパワーメント・リーダーシップのコア・コンピタンス(核となる強み)であるが、この段階ではリーダー現場に姿を見せることを前提とした「存在のリーダーシップ」であり、さらにその外側に、組織に対する「戦略」と、組織およびその先のコミュニティに対する「文化」という、「不在のリーダーシップ」の領域があるということです。

 第1部(第1章~第4章)では、「存在のリーダーシップ」について述べています。第2章で「信頼」について、人が信頼するのは、本当の自分を出していると感じられる人(オーセンティシティ)、判断や能力があてにできる人(ロジック)、自分を気にかけてくれると感じられる人(共感)であるとしています。

 第3章では「愛」について、高い基準と献身を両立させた「正義のリーダーシップ」により他者をエンパワーメントできるとし、他者が確実に能力を発揮できる状況をつくるための枠組みを示しています。

 第4章では「帰属」について、多様な組織を構成・維持する4つのステップとして、①多様な才能を引き寄せて選別する、②成功するチャンスを平等に与える、③厳密で透明なシステムを通して最高の人材を昇格させる、④最高の人材を維持する、を掲げています。

 第2部(第5章~第6章)では、「不在のリーダーシップ」について書かれています。第5章で「戦略」について、自分がいない状況でも組織の隅々までリーダーシップを浸透させるにはどのような戦略が効果的であるかを、多くの事例で紹介しています。

 第6章では「文化」について、文化は組織の隅々まで届いてこそ行動指針となるとして、文化を変えるための「プレイブック」として、①懐疑的なデータを集める、②情報を(まだ)誰にも話さない、③厳密で、楽観的な実験プランを作成する、④解決策に全員を巻き込む、の4つのステップを示しています。

 書かれていることは、これまで多くのリーダシップ本で言われてきたようなことも多いです。ただし、帯に「優れたリーダーは『脇役』」とあるように、「リーダーシップの主役はリーダー本人ではない」と言い切っている点や、自分が不在の状況でも続くような「不在のリーダーシップ」というものを提唱している点がユニークでしょうか。事例が多く紹介されていて、方法論・技術論的なこと――例えば「スマホを置き、目の前にいる相手の話を聴く」といったこと――まで細かく書かれており、誰が読んでも啓発される箇所は少なからずあるかと思います。

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