【3473】 ○ 電通若者研究部 ワカモン 『フラット・マネジメント―「心地いいチーム」をつくるリーダーの7つの思考』 (2023/07 エムディエヌコーポレーション) ★★★★

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「上司を辞めることから、はじめよう」と。やや総花的だが、様々な気づきがあった。

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フラット・マネジメント 「心地いいチーム」をつくるリーダーの7つの思考』['23年]

 本書の著者である電通のワカモン(若者研究部)は、「若者から未来をデザインする」というビジョンを掲げ、高校生・大学生を中心に10~20代の若者の実態に迫り、新しい価値観の兆しを捉えることを目指すユニットだそうで、本書は、若者にとって働き易い職場・チームを考えたという一冊とのことです。

 本書では、チームメンバーの一人一人と向き合いながら、その多様性を生かしてチームをより良い形に整えていく「フラット・マネジメント」というものを提唱し、その実践のためにこれからのリーダーに求められる「7つの思考」「16のスタンス(以下、S)」「35のアクション(以下、A)」を示しています。

 まず「思考1:固定観念より新しい価値観」では、古い慣習やステレオタイプを押しつけず(S1)、自分にとっての常識は部下にとっての非常識であることを自覚し(A1)、偏見や先入観(バイアス)を取り除き(A2)、「押しつける」のではなく「すり合わせる」という意識で部下と向き合い(A3)、部下へのリスペクトも忘れないこと(A4)、さらに、いつまでも過去の成功体験にすがらず(S2)、「いま」と「未来」の話をし(A5)、成功ではなく失敗に目を向けよ(A6)としています。

 「思考2:会社の都合より部下自身の「納得解」」では、会社の都合だけで人を動かそうとせず(S3)、「会社のため」よりも「部下自身のため」を考え(A7)、他社でも使えるポータブルスキルを伸ばしてあげること(A8)、部下にとっての「納得解」を見つけ出すために(S4)、「やらされ仕事」をゼロにすること(A9)、「チームの納得解」を整理すること(A10)を説いています。

 「思考3:費用対効果より時間対効果」では、若者のタイムパフォーマンス(タイパ)志向を理解すること(S5)、コスパよりタイパを意識して(A11)、「効率的な作業」を重視し(A12)、アジェンダのない会議などはしないこと(A13)、「習うより慣れろ」ではなく「慣れろより教えろ」であって(S6)、慣れるためにはやはり教えることが大事であり(A14)、教える=やり方を丁寧に共有すべき(A15)としています。

 「思考4:大きなビジョンより小さなアクション」では、「伝える」だけでは伝わらないと認識し(S7)、相手とキャッチボールすることが必要で(A16)、言葉とタイミングを意識すること(A17)、チームの信頼は行動で得られるため(S8)、言行不一致はNGで(A18)、What to say(何を言うか)」より「What to do(何をするか)」を大事にせよ(A19)としています。

 「思考5:上から目線より横から目線」では、「上司だから偉い」と勘違いしないこと(S9)、上下関係の呪縛を断ち切り(A20)、「感情的知性」を高めよと(A21)。さらに、伴走者としてのスタンスで(S10)、目線を合わせた指導をし(A22)、「聞き出す」ではなく、相手が自然に話すことを「聞く」こと(A23)、部下からも学ぼうとする姿勢で(S11)、恥をかくことを恐れず(A24)、プライドを捨てて素直に向き合うことで、得られるものは多い(A25)としています。

 「思考6:嫌われない建前より丁寧な本音」では、「心理的安全性」が高い職場を目指すべきで(S12)、チームの居心地の良さはリーダーの言動次第であり(A26)、「配慮」は必要だが「遠慮」は不要であり(A27)、等身大で対話するスタンスが大事で(S13)、自他尊重のコミュニケーションで(A28)、「素の自分」を見せるべきであると(A29)。怒らず丁寧に叱り(S14)、あくまでも「怒る」より「叱る」ことが肝要で(A30)、メンバーの良い部分を引き出すこと(A31)を説いています。

 「思考7:リッチキャリアよりサステナブルライフ」では、「人生100年時代」の視点を持ち(S15)、ワークをライフの一部とする「ワークライフ」思考で(A32)、持続可能な人生という目線で生き方を考えよ(A33)と。また、「違い」を認め、「互いの成功」を思案するスタンスで接することが必要で(S16)、変化を恐れず(A34)、Win-Winになるバランスを取り続ける(A35)ことで、チームとして成長できるとしています、

 本書の主題であるフラット・マネジメントは、「杓子(しゃくし)定規な考え方にとらわれず、チームメンバーの一人一人と向き合いながら、その多様性を生かしてチームをより良い形に整えていく」というマネジメントの在り方を意味します。そのためには、「立場の上下」にこだわる従来のリーダー像は成り立ちません。その意味で、本書の帯にある「上司を辞めることから、はじめよう」というキャッチが印象的です。書かれていることの一つ一つはそれほど目新しいわけではないですが、そうした視点からまとめられていることで、気づきを与えてくれる本になっています。

《読書MEMO》
●まとめ(若者の仕事観を知ることが大切! 「これからのリーダーに求められる7つの思考」とは(マイナビニュース2023/07/25 by春奈))
【1】固定観念より新しい価値観
時代とともに価値観が変化していく中、自分にとっての「常識」は部下にとっての「非常識」であることを自覚し、時代に適応していく意識をもつことが重要。そのために、古い慣習やステレオタイプを押しつけるのではなく、「すり合わせる」という意識で部下と向き合う。
【2】会社の都合より部下自身の「納得解」
今は個人が望む自分のあり方を実現できる時代。部下のモチベーションや動かし方においても、部下が思う"納得できるやる意味"=「納得解」を一緒に考えることで、「やらされ仕事」をゼロにすることが大事になる。
【3】費用対効果より時間対効果
「タイパ」が流行語となったように、時間対効果が重視されるようになっている。上司は「自分の時間は有限である」という今の時代の思考を理解した上で、部下と向き合う必要がある。具体的なアクションとして、労働時間の長さよりも生産性で評価する、明確な議題や目的のない会議はやめるなどがある。
【4】大きなビジョンより小さなアクション
今の時代において、具体的なアクションがない口だけの上司は部下の信頼を得られない。良いチームを構築するためには、言行不一致はNGだと心得て、「What to say(何を言うか)」より「What to do(何をするか)」を大事にする必要がある。
【5】上から目線より横から目線
今の若者は、上から目線での指導や強制的な物言いに抵抗を感じやすいため、リーダーのあり方を根底から考え直す必要がある。「上司だから偉い」と勘違いせず、部下からも学ぼうとする姿勢を持つことが大切。
【6】嫌われない建前より丁寧な本音
「部下を怒ってはいけない」という風潮が高まっており、若い部下を腫れ物に接するように扱う上司もいるが、部下を指導する上で「注意する」ことは避けられない。「配慮」は必要だが「遠慮」は不要。"怒る"と"叱る"の違いを理解し、本音で部下と向き合うことが重要。
【7】リッチキャリアよりサステナブルライフ
価値観が変化し続ける時代、リーダーに求められているのは、自分と相手の気持ちを尊重する姿勢で未来を見つめること。「違い」を認め、「互いの成功」を思案するスタンスで接することが必要で、お互いがWin-Winになるバランスを取り続けることで、チームとして成長できる。

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