【3472】 ○ ジョージ・セラフェイム (倉田幸信:訳) 『PURPOSE+PROFIT パーパス+利益のマネジメント (2023/07 ダイヤモンド社) ★★★★

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「ニューアラインメント」(パーパスと利益の新たな調和)を説く。両立可能と。

パーパス+利益のマネジメント.jpgパーパス+利益のマネジメント2023.jpg  ジョージ・セラフェイム.jpg George Serafeim
PURPOSE+PROFIT パーパス+利益のマネジメント』['23年]

 本書は、「ESG」(環境・社会:ガバナンス)問題の研究者によるもので、これからの企業経営に不可欠なのは、地域や社会との共生を図りながら利益を追求することであるとして、「ニューアラインメント」(パーパスと利益の新たな調和)を説くとともに、パーパスと利益の両立は可能であるだけでなく、企業に莫大な見返りをもたらし得るとしています(因みに、著者はハーバード・ビジネス・スクールで最も若くしてテニュア(終身在職権)を得た教授で、「ESG界の権威」とされている)。

 2部構成のパート1では、企業におけるパーパスと利益を調和させようとする最近のトレンドについて述べています。まず、多くの企業において、パーパスを利益の障害とみなす見方から、パーパスを重視する方向への変化が見られると指摘しています(第1章)。そして、その背景には、顧客や社員にとっての選択肢の増加、企業行動に関する透明性の向上、社員および消費者としての意思表示の機会の増加などがあるとしています(第2章)。

 透明性ということで言えば、テクノロジーやソーシャルメディアの発達により、かつてないほどに企業行動は"見える化"され、企業にとって隠し事はもはや不可能であり、社会から大きな結果責任を常に問われるようになったとしています(第3章)。そのため企業は、社会的役割を果たそうとするとともに、同時に自社にプラスの結果を得るために、パーパスを利益と一致させ、善行を競争優位に結びつける方向に行動変容しつつあるとしています(第4章)。

 パート2では、それを実行するにあたって企業はどうすればよいか、投資家や個人は何をすればよいかを論じています。まず、企業が善行をしつつ利益を出すための戦略的手法として、さまざまな企業がこうしたトレンドを追い風にする方法を見つけつつある様子を紹介し(第5章)、そうした戦術を足場にしてチャンスをつかむための「価値創造の6つのパターン」を示しています(第6章)。

 さらに、変化を後押しするためには投資家もニューアラインメントを受け入れ、後押ししなければならないとするとともに(第7章)、個人にとっても、自分と組織が調和するために、個人として、リーダーとしてできる最高のことは、組織のニューアラインメントを維持することであるとしています(第8章)。

 そして最後に結論として、未来を見据え、サステナブルな企業行動を支えていくための柱として、①分析による透明性、②結果に応じたインセンティブ、③教育、④政府の役割の4つを挙げています。

 著者は、我々はみな、日々の選択と行動を通して毎日インパクトを生み出していることを自覚するべきだとし、我々全員が、社会トレンドを通して商品購入やキャリアを見直し、日々の生活や自分の所属する組織になるべく大きな影響を与えるにはどうすればよいかを考えなければならないとしています。

 企業事例などが紹介されている一方で、根幹部分はコンセプチュアルな記述も多い本です。ただし、ESGやニューアラインメントといった概念の知識もさることながら、環境・社会問題の企業にとっての重要性を認識し、また、個人として何ができるかを考える上では、啓発度の高い内容の本であると思います。

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