【3410】 ○ ノール・M・ティシー/イーライ・コーエン (一條和生:訳) 『リーダーシップ・エンジン―持続する企業成長の秘密』 (1999/06 東洋経済新報社) ★★★★

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成功するリーダーの特性は、教育、学習とIdea、Value、Energy、Edge、Story。

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リーダーシップ・エンジン: 持続する企業成長の秘密』['99年]

 企業におけるリーダーシップを長年研究してきたビジネススクールの教授による本書は、勝ち続ける企業にはリーダーを生み出す仕組みがあるとし、成功するリーダーの特性を探究したリーダーシップ論となっています。

 第1章「リーダーが率いる組織」では、勝利する組織にはリーダーがいて、勝利するリーダーは教育を行い、また、過去を省みて、経験から貪欲に学習するとしています。さらに、リーダーには、アイデア、バリュー(価値観)、エネルギー、エッジ(大胆な意志決定力)、ストーリーが備わっているとしています。この教育、学習、アイデア、バリュー、エネルギー、エッジ、ストーリーの重要性については、後に第3章から第9章の各章でそれぞれ詳説されることになります。

 第2章「なぜリーダーが重要なのか」では、リーダーは変革のときを乗り切り、カルチャーを形成し、現実に直面して適切な対処を示し、他者も同様に行動するよう激励するとしています。

 第3章「リーダーシップおよび教育的見地」では、優れたリーダーは優れた教師であり、成功するリーダーは、教えることを第一義と捉え、あらゆる機会を逃さず学び、教えるとしています。また、リーダーとは「教育的見地」を持ち、他者をリーダーになるべく教える人のことであると述べています。

 第4章「プロローグとしての過去」では、成功するリーダーは自分の過去から教訓を得るが、誰にも役立つ過去があり、リーダーはそれを上手に活用するにすぎないとしています。また、リーダーのストーリーは、彼らの教育的見地を明らかにするとしています。

第5章「リーダーシップの神髄」では、勝利する組織は明確なアイデアの上に作られ、リーダーはアイデアを現実に即した適切なものにし、また、アイデアは、組織の全階層で行動の枠組みとなるとしています。

 第6章「価値観」では、勝利する組織にはしっかりした価値観があり、リーダーたちはその価値観を自ら実践するが、そうした価値観こそが競争力を強化する重要なツールになるとしています。

 第7章「実現する」では、勝利するリーダーは精力的な人間で、チャレンジを好み、自分の仕事を楽しむと同時に、従業員の中にエネルギーを創出し、野心に満ちた努力を促すとしています。

 第8章「エッジ」では、エッジとは、現実を直視し、それに基づいて行動する勇気であり、勝利するリーダーは決して楽な道をとらないとしています。また、エッジとは、残酷であることではなく正直であることであり、エッジがなければご都合主義が勝利を収めてしまうとも述べています。

 第9章「皆で一緒にトライする」では、リーダーにとって自身のリーダーシップ・ストーリーを描くことの重要性を説いています。勝利するリーダーは未来を展開中のドラマとして描き出し、そのダイナミックなストーリーは人々を動機づける成功へのシナリオとなるとしています。

 第10章「結び」では、これまでの総括として、勝利するリーダーシップとは未来を作ることであり、成功は他のリーダーを育成することで達成されるとしています。そして最後に、最高のリーダーは去るべきときを知っているとしています。

 本書におけるリーダーシップ・エンジンとは、組織の全階層でリーダーを生み出し続ける仕組みであり、優れたリーダーとは、わが身を削って後継者の育成を行う人々のことであるというのが本書の趣旨であるともいえます。

ジャック・ウェルチわが経営 下.jpgジャック・ウェルチわが経営.jpgジャック・ウェルチ.jpg GEのジャック・ウェルチなどがこの考え方に影響を受けており、また本書の中でもその実践者としてウェルチが登場します。そう言えば、『ジャック・ウェルチ わが経営』('01年/日本経済新聞社)の中で、A(評価)プレイヤーの4つのEとして、ウェルチは以下を挙げていました(ほぼ本書に重なる)。
 ・活力(Energy)
 ・周囲の活力を引き出す(Energize)
 ・決断力(Edge)
 ・実行力(Execute))

 後継者を育てないと自分が上に行けないという、米国流のプロモーション(昇進)の仕組みも関係しているとは思ますが、リーダーが忙しさにかまけて後継を育てないとき、そのリーダーが去ったあとの組織はどうなるだろうかということを考えてみれば、どこにでも当て嵌まる帰結であるとも言えます。

 だだ、日本の企業で、われわれの日常で、そうしたことが日々どれほど真剣に行われているか、どれだけの経営者がこの考えに沿って実践しているかを考えると、(反省も込めて)改めて啓発される本であるように思いました。

《読書MEMO》
●アイデア、バリュー(価値観)、エネルギー、エッジ、ストーリー
(1)アイデア(Idea):仕事を成功させるためのアイデアを確立せよ。アイデアは組織としての目標を明確に述べるもの。これを明示することによって組織は大きく変わる。
(2)バリュー(Value)(価値観):目的を達成するために必要な価値基準バリューを組織に浸透させよ。バリューは望ましい行動様式を規定する。いかにして目標を達するかという方法に関わる。いわば日々の判断に際しての倫理的指針。リーダーはこれを体現せよ。そして組織に浸透させよ。ジョンソン&ジョンソン社の「タイラノル事件」(鎮痛剤のビンに毒を入れられた事件)の際の見事な行動は、その直前に会社のバリューを全社的に見直したことによる。組織としてバリュー を持つだけでは不十分で人々に徹底しておく必要がある。
(3)エネルギー(Energy):部下にエネルギーを注入せよ。そもそもリーダーはエネルギッシュな人。仕事に価値を見出しているから、ほかを犠牲にしているという意識なくして仕事に勢力を注ぎ込む。かくして部下のエネルギーをかき立てよ。やる気にさせよ。方法はさまざまある。パーソナルタッチもよい。より高い目標を設定することでもよい。
(4)エッジ(Edge):リーダーは厳しい決断をせよ。エッジ とは、現実を直視する能力、今後発展の望めない分野からきっぱりと手を引く能力、組織にとってプラスでない人物を取り除く能力を意味する。いずれにせよ、個人的にはつらい厳しい決断をしなくてはならない。
(5)ストーリー(Story):以上の全ての要素を盛り込んだ生き生きとしたストーリーを語れ。物語を語れ。そうすることによって部下は全てを理解する。

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