【3328】 ◎ ジョン・R・カッツェンバック (マッキンゼー高業績経営研究グループ:訳) 『リアル・チェンジ・リーダー (1998/05 講談社) ★★★★☆

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企業の命運はCEOにではなく、最前線に立つ中間管理職(RCL)にかかっている。

リアル・チェンジ・リーダー1.jpgリアル・チェンジ・リーダー2.jpg ジョン・R. カッツェンバック.jpg ジョン・R. カッツェンバック
リアル・チェンジ・リーダ』['98年]

 本書は、マッキンゼーの企業変革グループが、1990年代のアメリカ経済の復活をけん引した企業変革に関する膨大な研究成果を、「変革の真のリーダー」という切り口から書き下ろしたものです。本書では、アメリカを復活させたのはまったく新しいタイプの中間管理職であり、それをリアル・チェンジ・リーダー(=RCL)としています。

 第1部「リアル・チェンジ・リーダーは変革をになう」では―、

 第1章では、「業績は数字だけではない」とし、RCLは、①市場で何が重要なのかをその理由と併せて明確にし、②変革にどれほどの努力が注がれたかを達成した業績によって計り、③より高い成果を常に求め続ける―としています。

 第2章では、変革における「ワーキング・ビジョン」の重要性を説き、①RCLにとってワーキング・ビジョンによって達成されるものは何か、②RCLが自分たちにのワーキング・ビジョンを作り出すプロセスとはどのようなものか、③ワーキング・ビジョンを育くむために、RCLはどのような働きかけをするのか―を考察しています。

 第3章では、変革には「リスクを冒す勇気」が必要であるとし、RCLは、①自身の自信と信頼感を築き上げ、②他の人々の心に勇気を吹き込み、③経営陣が抱く成功への確信にプラスの影響を及ぼす―としています。

 第2部「会社ぐるみの変革をいかに成し遂げるか」では―、

 第4章では、「組織の全員に期待以上の成果を上げさせる」ためにRCLが従業員活性化のための支援をどのように与えるかを、①少人数グループの活性化、②大規模工場における従業員の活性化、③大企業の広い範囲の部署にいる従業員の活性化―のそれぞれについて、事例で紹介しています。

 第5章では、「プロセス再設計は顧客のニーズから」行うべきであるとし、RCLは、①顧客の視点を把握する、②上下関係にとらわれず行動する、③多様なアプローチを学ぶ―としています。

 第6章では、「組織変革のタイミング」について、従来の典型的な管理職と異なってRCLが選択・実行するのは、①組織図を明確化し、そこから前進する、②チームや作業グループなど柔軟な組織単位に依存する、③必要に応じてリストラを断行する―ことであるとしています。

 第3部「リーダーシップ能力と企業の成長」では―、

 第7章では、変革に「弾み」をつけるためにRCLは、①多様なツールを作り出し、さまざまなアプローチを開発する、②ツールやアプローチのバランスを変えていく、③長時間にわたって変革にかかわる人々の数を増やし、スピードを上げていく―としています。

 第8章では、変革のスキルを身につけるためにRCLは、①どのようなスキルと心構えが必要とされるか、②リーダーとしてどんな役割が浮上してくるか、③より優れたRCLに、どうやって、また、なぜなるか―を説いています。

 第9章では、RCLが自身のキャリアの将来のためにとる態度を、①状況に対応するために「バランスをさまざまに変える」、②将来に目を配ることで「他との違いを際立たせる」―の二点にまとめています。

 最後に「エピローグ 経営陣へのメモ」で、RCLがトップに実践してもらいたいと思っていることとして、
  ⑴ 顧客と従業員たちにとって意味のある目標と測定基準を設定する
  ⑵ 組織内を歩き回って部下に話しかける、要求の多いボスになる、
  ⑶ 成果を上げた人間には十分に報いてやり、怠けた人間には罰を与える
  ⑷ 業績が思わしくない分野の尻を叩く
  ⑸ 要求を達成したら報奨を与える
の5つを挙げています。

 企業の命運はCEOや重役にではなく、最前線に立つ中間管理職にかかっており、新しいタイプの中間管理職リアル・チェンジ・リーダー(RCL)が発意することにより、初めて組織は動き出すという―ではRCLとはどのような人を指し、RCLになるにはどうすればよいかを説いた、多くのビジネスパーソンにとって啓発度の高い本であると思います。

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