【3350】 ◎ オーブリー・C・ダニエルズ (梅津祐良:訳) 『ベストを引き出せ―部下の業績を最大化するリーダーシップ』 (1995/09 ダイヤモンド社) ★★★★☆

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業績管理法(PM)を解説。部下が「笛吹けど踊らず」状態の上司に読ませたい。

ベストを引き出せ1.jpgベストを引き出せ.jpg オーブリー・ダニエルズ.jpg オーブリー・ダニエルズ
ベストを引き出せ―部下の業績を最大化するリーダーシップ』['95年]

 本書は、臨床心理学者でコンサルタントでもある著者によって、心理学的な観点から業績管理法について書かれた本であり、この分野では代表的な著作であるとされています。業績管理法はパフォーマンス・マネジメント(PM)とも呼ばれ、本書により「メンバーが行動を結果に結びつけるための人材マネジメント手法」として紹介されました。

 まえがきにおいて、「リーダーが企業内で変革を勧めようとする場合、リーダーは従業員たちの貢献意欲、創造活動、協力、業績を高めるか逆に低下させるかどちらかのやり方で変革を推進する。本書は、どうして、いかにこのような状況が発生するのかについて、明確に説明したい」としています。

 第Ⅰ部「伝統的マネジメントの危険性」では、1章で、流行の経営管理手法に惑わさず、また「自己流のスタイル」から脱して確固たる方法をとるべきであるとしたうえで、ビジネスとは行動そのものであり、業績管理法は人間行動を理解することを目的とし、行動を変革するための科学的な方法を活用するとしています。2章では、常識的な知識は通常のビジネスや生活の中で身につくが、科学的知識は計画的、体系的に追求されなければならず、科学的な知識こそが継続的な成果の基になるとしています。3章では、行動分析の科学では、行動の前に現れてくる現象を「前件」、行動の後に生じてくることを「結果」と呼び、前件はある行動を引き起こすが持続させることはできず、結果こそが行動を持続させるとしています。

 第Ⅱ部「行動強化は驚くべき力をもたらす」では、4章で、行動に伴って出てくる結果には、行動強化、行動否定、行動処罰、行動消去の4つのタイプがあり、行動強化は業績を改善させる「結果」と定義されているので、この方法は常に有効であることになるとしています。5章では、業績管理の基本は、ものごとを他人が見ているのと同じ見方でとらえることであり、それによって部下との信頼が築けるとしています。6章では、行動否定には大きな欠陥があるとして、行動強化と行動否定でどのような差があるか、行動否定が作用していることを示すヒントとはどこに見られるのかを解説しています。7章では、行動強化で部下の自発的努力を引き出すにはどうすればよいか、8章では、行動消去と行動処罰を活用するにはどうすればよいか、9章では、行動強化を効果的に活用するにはどうすればよいかをそれぞれ解説しています。

 第Ⅲ部「業績管理法によりリーダーシップを発揮する」では、10章で、成果を達成するために必要とされる行動をどう特定するかを述べています。11章では、行動を測定する方法の妥当性を高めるにはどうすればよいか、12章では、部下に効果的に業績をフィードバックするにはどうすればよいかを述べ、13章では、部下の業績を最大に高めるための技法を紹介しています。

 第Ⅳ部「組織の業績をベストに導く」では、14章で、業績管理法において経営幹部の果たすべき役割を説き、困難な時期こそ支援的行動強化が必要とされるとしています。15章では、従業員の学習効果を最大限に高めるにはどうすればよいかを説き、16章では、部下からベストを引き出すための心構えやヒントを示しています。

 さらにエピローグで、業績管理法が基礎とする価値として、つつみ隠さぬ姿勢、一貫性、公平性と人間尊重などを挙げています。

 近年、組織としてどのようなアクションをとるのが望ましいかを明らかにし、それを従業員一人ひとりの個人的な目標とリンクさせることによって、組織全体の生産性を向上させようと考える企業が増えてきています。本書によれば、業績管理法は、目標達成につながる行動を社員本人と一緒に考え、そのアクションの結果を受けて、定期的にフィードバック。社員に気付きを促すことで、さらに能力発揮につながるように導くものであるということになります。

 より具体的には、各メンバーの行動とその結果に注目し、客観的な計測結果をフィードバックすることで、パフォーマンスに繋がる「望ましい行動」を増やし、「望ましくない行動」を減らそうとするものということになります。この手法は現代の職場においても効果的であると考えられ、従業員や部下が「笛吹けど踊らず」状態の経営者やマネジャーには是非読んでほしい本です。

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