【3323】 ◎ ジョン・ウィリアム・ガードナー (加藤幹雄:訳) 『リーダーシップの本質―ガードナーのリーダーの条件』 (1993/03 ダイヤモンド社) ★★★★☆

「●上司学・リーダーシップ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3350】 オーブリー・C・ダニエルズ 『ベストを引き出せ

「リーダーは、集団を"リニューアル"するのがその最終的な役割」―説得力あり。

リーダーシップの本質.jpgジョン・ウィリアム・ガードナー.jpg John William Gardner
リーダーシップの本質―ガードナーのリーダーの条件』['93年]

ジョン・ウィリアム・ガードナー 2.jpg 本書の著者ジョン・ウィリアム・ガードナー(1912-2012)は、医療、教育、福祉部門の長官、ケネディ政権で教育タスクフォースのメンバーになったのを皮切りに、6人の大統領の顧問、スタンフォード大学の教授を務めた人物であり、そうした経験を持つ著者が、アメリカ各界の指導者数百名にインタビューするなどして5年間を費やした研究調査の成果を横糸に、著者自身の社会観、文明観、哲学を縦糸にして、リーダーシップ論を展開したのが本書です(原題:On Leadership,1990)。

 第1章では、リーダーシップというのは、個人あるいはリーダー・チームが、リーダーやリーダーと部下が共有している目的を追求すべく、集団を誘導していくプロセスであるとしています。第2章では、最も重要なリーダーシップ機能として、目標設定、動機づけなど、リーダーの9つの任務を示しています。

 第3章では、リーダーとフォロワーズとの相互作用について述べ、その関係がうまく機能するために必要なこととして、効果的な双方向のコミュニケーションは不可欠であるとしています。第4章では、いかなる状況の中でも成功するリーダーシップを保証するような、リーダーの特質などは存在しないとしています。

 第5章では、リーダーにとって重要な資質として、以下の14 項目を挙げています。
  1.肉体的活力とスタミナ
  2.知力と実行判断力
  3.責任を引き受ける意欲
  4.任務遂行能力
  5.部下に対する理解
  6.人を扱う技術
  7.偉業を達成する必要性
  8.動機づけ能力
  9.勇気、決意、着実性
  10.信頼を獲得し保持する能力
  11.管理し、決定し、優先順位を設定する能力
  12.自信
  13.主導権、支配、自己主張
  14.戦術の適応性と柔軟性

 第6章では、リーダーシップとパワー(権限)は同じものではないとし、第7章では、道徳的に受容できるリーダーの特質とはどのようなものかを述べています。

 第8章では、今日の複雑化した大規模組織におけるリーダーの機能と役割を探り、第9章から第11章にかけては、そうした大規模組織内で起きる断片化と共通利益の問題、連携と責任のネットワークの問題、コミュニティ意識の喪失の問題を取り上げ、リーダーはどう対応すべきかを説いています。

 第12章では、今日リーダーが対応しなければならない組織の問題は、分断化、共有価値の喪失、対立勢力を妥協させる困難だけでなく、組織を常にリニューアル(再活性化)する必要があるということを理解しなければならないとし、さらに言えば、リーダーは組織文化の再生者でなければならないとしています。

 第13章では、リーダーシップにおける役割の分担について述べ、その1つの形態として、リーダーと密接な関係を保ちながら働く少数の個人グループ、リーダーシップ・チームというものを取り上げ、リーダーシップ任務を分担することの利点を説いています。

 第14章では、リーダーシップは教育できるかという問いに対する答えは「イエス」であるが、その教育は、多数の人々を対象に、できるだけ早期のうちに取り組むことが、社会の活力に決定的な重要性を持つとし、また、大学レベルにおけるリーダーシップのための最善の準備は、リベラル・アーツ(一般教養)を身につけさせることであるとしています。第15章では、リーダーシップ開発は生涯にわたって可能であり、その過程は生涯学習となるとしています。

 第16章では、動機づけ者としてのリーダーという観点から、リーダーにはフォロワーズのニーズが何かを知ることが求められ、また、自己を超えた献身が求められるとしています。第17章では、リーダーは人々に自信を持たせる試みをするものであり、リーダーとフォロワーズの関係は、人間の可能性に対する信念によって設定されるとしています。

 フォロワーズとの関係においてリーダーの優劣か決まるとしているというのは尤もだと思わされました。リーダーの特質は、眠っている個人の才能を発掘・育成する点にあり、さらに、最終的には、集団を"リニューアル"するのがその役割であるというのが、説得力をもって響いてくる、啓発度の高い名著です。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1