【3461】 ◎ チェット・リチャーズ (原田 勉:訳) 『OODA LOOP(ウーダループ)―次世代の最強組織に進化する意思決定スキル』 (2019/02 東洋経済新報社) ★★★★☆

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「承認欲求の呪縛」を解くには、メンバーの組織への依存を断ち切り、プロ化する。

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OODA LOOP(ウーダループ) 』['19年]
         ジョン・ボイド(元米国空軍大佐・OODA LOOP提唱者)
ジョン・ボイド.jpg 不確実性の高いビジネス環境に"計画"はいらない―。本書によれば、米国の空軍大佐で戦闘機パイロットだったジョン・ボイドが提唱し、世界最強組織と言われる米国海兵隊が行動の基本原則とするOODAループが、アメリカの優良企業の間にも広がっているとのことです。本書は、OODAループとは何かを、その提唱者であるジョン・ボイドの愛弟子である著者が解説したものです。

 第1章では、戦略は多い方がいいとの考え方はビジネスの世界では通用しないとし、軍事の世界でボイドが提唱した、スピードを武器にした機動戦略こそが、ビジネスの世界でも有効であるとしています。

 第2章から第4章では、スピードを武器として活用するためのボイドの一般的な考え方について解説しています。

 第2章では、アジリティ(機敏性)こそが勝利へと導くとしています。また、従来型の戦略モデルは、ランチェスター戦略のように兵器数や兵器能力といった「ハード」のみ扱い、組織文化やリーダーシップといった「ソフト」は捨象されるが、戦争やビジネスで勝利をもたらすのは、実はこのソフト要因であって、ここに従来型戦略モデルの限界があるとしています。

OODA LOOP×.jpg 第3章では、電撃戦を成功させる4つの要因(①相互信頼、②皮膚感覚(直観的能力)、③リーダーシップ契約(リーダーシップの実行)、④焦点と方向性)を挙げています。さらに、OODAループとは何かを解説し、それは、観察(Observe)、情勢判断(Orient)、意思決定(Decide)、行動(Act)の4つの活動からなるとしていますOODA LOOP○.jpgが、ボイドが構想したOODAループの概念は、一般的にそうだと誤解されているO→O→D→Aというような単純なサイクルではないとしています。ボイドは、大部分の意思決定は暗黙的であり、かつそうであるべきであって、多くの場合、明示的な意思決定の必要はなく、情勢判断が直接、行動を統制するとしています。つまり、最も効果的なのは、暗黙的コミュニケーションによる観察(O)→情勢判断(O)→行動(A)のループを瞬時に回すことであるとしています(この部分が本書の肝(キモ)であるとも言える)。

 第4章では、OODAループはビジネスの世界でも機能する戦略であり、信頼、直観的能力、リーダーシップ、焦点化と方向性という4つの属性や、それら結果実現される暗黙的コミュニケーションが重要な要素として含まれるとしています。

 第5章では、迅速な意思決定サイクルが組織で浸透していくための組織文化の属性として、①相互信頼を醸成している、②直観的能力を活用している、③リーダーシップ契約を実行している、④焦点と方向性を与えている、の4つを挙げています。

 第6章では、タイムベース競争論に関する最新のトピックを解説し、中でも起動戦で決定的に重要であり、軍事戦略によって古くから論じられてきた孫子の〈正と奇の機動〉という概念について紹介しています。

 最後に、第7章では、OODAループで実際に何をするべきか、戦略の応用、すなわち戦術的な処方箋を示しています。

 日本ではPDCAは仕事の基本であると言われ続けてきました。一方で、変化の激しい今の時代において、当初の計画(Plan)通りに事が運ばないことは少なからずあるかと思います。こうした状況において、OODAというフレームワークは非常に効果的ではないかと思われ、一読をお薦めします。

 因みに、原著刊行は2004年。年月の経過などを考慮し、各章末に、訳者の解説が付されれているの親切です。

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