「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2817】 永田 よしのり 『カルト映画館 ホラー』
「●た‐な行の外国映画の監督」の インデックッスへ 「●か行外国映画の監督」の インデックッスへ 「●ま行の外国映画の監督」の インデックッスへ 「●デニス・ホッパー 出演作品」の インデックッスへ(「スピード」)「●チャールトン・ヘストン 出演作品」の インデックッスへ(「トゥルーライズ」)「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ
'94年公開の個人的ラスト・アクション・ヒーロー・ムービー「トゥルーライズ」「スピード」。

『映画イヤーブック〈1995〉 (現代教養文庫)』「スピード [DVD]
」「トゥルーライズ [DVD]
」
1994年劇場公開の全作品(洋画304本、邦画161本、計465本)にデータと解説を付して収録、ビデオ・ムービー、未公開ビデオのデータなども網羅しているほか、『映画イヤーブック』としては5冊目になるということで、全5冊の総索引も付きました。
本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「トゥルー・ロマンス」「シンドラーのリスト」「さらば、わが愛 覇王別姫」「ピアノ・レッスン」「青い凧」「ギルバート・グレイブ」「パルプ・フィクション」「ショート・カッツ」「スピード」の9作品、一方邦画は、「トカレフ」(阪本順治監督)、「全身小説家」(原一男監督)、「棒の哀しみ」(神代辰巳監督)、「忠臣蔵外伝・四谷怪談」(深作欣二監督)の4作品。
'94年の映画館入場者数は1億2299万人で、それまでの史上最低だったそうで、前年の「ジュラシック・パーク」のような大ヒット作が無かったということもあるようですが、この頃には平成不況による停滞感が定着して、多くの人が、わざわざ映画館まで行かなくともビデオで観ればいいいという感覚になっていたのではないかなあ。
ハリウッド映画のアクション系で、「ダイ・ハード」('88年)、「氷の微笑」('92年)のカメラマンだったヤン・デ・ボン(「トータル・リコール」「氷の微笑」のポール・バーホーベン監督と同じくオランダ人)の初監督作品「スピード」('94年)が気を吐きました。
時速を80キロ以下に落とすと爆発する爆弾を仕掛けたバスの疾走が迫力満点のノンストップアクションで、バスが街中を車をはじき飛ばしながら爆走したり、キアヌ・リーブスが爆弾を解除するために高速で走るバスの下にもぐりこむシーン、或いは、地下鉄の車両が工事現場を破壊しながら地上に突き抜けるシーンなどは実写中心であるため見応えはありました。
脚本を書いたグレアム・ヨストは、 アンドレイ・コンチャロフスキー監督の「暴走機関車」('86年/米)の原
案である黒澤明のオリジナル脚本を読んで着想を得たと述懐していますが、その脚本もまずまずではないでしょうか。但し、脚本を含めてよく出来ていた「ダイ・ハード」と比べるのと、トータルではやや落ちるか。キアヌ・リーブス、サンドラ・ブロック共に頑張っているけれど、爆弾魔のデニス・ホッパー(1936-2010)は、クイズ好きのオタクみたいで、それほど凄味がないような....。デニス・ホッパーということで、期待し過ぎてしまったのかもしれませんが(結局、大掛かりなアクションで見せる映画だった。元々の狙いも概ねそうだとは思うが)。

ということで、個人的にはヤン・デ・ボン監督には次に期待、というところだったのですが、その続編「スピード2」('97年/米)であっさりコケてしまった感じでした(既に同年の「ツイスター」('97年/米)を観れば、この監督の力量の限度は窺い知れたのだが。因みに、竜巻パニック
映画「ツィスター」はアメリカではそこそこヒットしたらしく、アメリカ人にとって竜巻は身近な恐怖なのでしょう(日本にもこうした映画のファンは多いらしく、Amazon.comのレビュー評価などもそう悪くないようだが、個人的には、竜巻をあまりに擬人化し過ぎているように思えた)。「スピード2」は舞台を大型客船に移したことで、看板の〈スピード〉感は無くなり、サンドラ・ブロック演じるヒロインは残りましたがキアヌ・リーブスは出演しておらず、代わりにジェイソン・パトリックが出演していましたが地味で、敵役のウィレム・デフォーの方がむしろ頑張ってはいましたが、それでもデニス・ホッパーに比べるとやはり格下感は否めなかったでしょうか。話の展開にも〈スピード〉感は感じられなかった...(いずれにせよ、キアヌ・リーブスとデニス・ホッパーがいないというのはロスト感が大きい)。
「スピード2 [DVD]」
「スピード」の「四つ星」評価に対し、本書で星3つの評価となっている「ターミネーター」シリーズのジェームズ・キャメロンが監督した「トゥルーライズ」('94年)の方が、ユーモアの要素があって個人的な評価はやや上になります。
アガサ・クリスティの「おしどり探偵」シリーズの現代アクション版みたいで、アーノルド・シュワルツェネッガーはコメディも充分にこなすし、スタント無しのジェイミー・リー・カーティスも良かったです(アクションでもそれ以外でも身体を張った演技をしていたなあ)。
カーチェイスの場面で実際に橋を爆破したというのもスゴいですが、一方で、シュワちゃんがゴールデン・ゲート・ブリッジにしがみつくシーンやハリヤー・ジェット機上でのテロリストとの"生身"のバトルシーンなど、デジタル合成のSFXをふんだんに使っています。
アクション・シーンをCGで撮るというのは「バットマン リターンズ」('92年)あたりがハシリだそうですが、米国の俳優協会ではその頃から、役者自身がアクションを演じる場面が無くなってしまうということで問題視され始めていたようです。「バットマン リターンズ」の中には、一旦CGで撮ったものを、俳優協会からの要請で俳優やスタントマンを使ったものに撮り直した場面があります(高い所から飛び降りたバットマンが地面に着地するシーンなど)。
「トゥルーライズ」ではそのほかに、ハリヤー・ジェット機の熱で空気が揺らぐシーンなどにもデジタル・ドメイン社が開発したCGが初めて使われていて、この技術は「アポロ13」('95年)のロケット発射シーンなどにも使われました(ジェームズ・キャメロンはデジタル・ドメイン社の初代共同経営者)。
シュワルツェネッガーは、この作品の前年にジョン・マクティアナン監督の「ラスト・アクション・ヒーロー」('93年)を製作総指揮しており(主演もシュワルツェネッガー)、もう生身の肉体を使ってのアクションは終わりだなという意識はこの頃からあったのではないでしょうか。その前の作品が、それこそCGで描かれる敵と戦う「ターミネーター2」('91年)だったし(これもジェームズ・キャメロン監督)。
個人的には、'94年の「トゥルーライズ」が(すでにCGがいっぱい使われてはいるけれども)自分の中での"ラスト・アクション・ヒーロー"ムービーという印象ですが、同じく'94年の「スピード」も、キアヌ・リーブスの次のヒット作「マトリックス」('99年)がアクションシーンをCG主体で構成していたことを考えると、キアヌ・リーブス的に言えばこれもまた"ラスト・アクション・ヒーロー"ムービーだったと言えるように思います。
SPEED-1994 -On set / Keanu Reeves|Sandra Bullock

「スピード」●原題:SPEED●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:
ヤン・デ・ボン●製作:マーク・ゴードン●脚本:ランダル・マコーミック/ジェフ・ナサンソン●撮影:アンジェイ・バートコウィアク●音楽:マーク・マンシーナ/ビリー・アイドル●時間:115分●出演:キアヌ・リーブス/デニス・ホッパー/サンドラ・ブロック/ジョー・モートン/ジェフ・ダニエルズ/アラン・ラック●日本公開:1994/12●配給:20世紀フォックス映画●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(94-12-17)(評価:★★★☆)

「スピード2」●原題:SPEED:CRUISE CONTROL●制作年:1997年●制作国:アメリカ●監督:ヤン・デ・ボン●製作:マーク・ゴードン●脚本:グレアム・ヨスト●撮影:ジャック・N・グリーン●音楽:マーク・マンシーナ●時間:121分●出演:サンドラ・ブロック/ジェイソン・パトリック/ウィレム・デフォー/テムエラ・モリソン/ブライアン・マッカーディー/グレン・プラマー/コリーン・キャンプ/ロイス・チャイルズ/マイケル・G・ハガーティー/ボー・スヴェンソン/フランシス・ギナン/ジェレミー・ホッツ●日本公開:1997/08●配給:20世紀フォックス映画(評価:★★☆)

「ツイスター」●原題:TWISTER●制作年:1996年●制作国:アメリカ●監督:ヤン・デ・ボン●製作:キャスリーン・ケネディ/イアン・ブライス/マイケル・クライトン●脚本:マイケル・クライトン/アン・マリー・マーティン●撮影:ジャック・N・グリーン●音楽:マーク・マンシーナ●時間:113分●出演:ヘレン・ハント/ビル・パクストン/ケイリー・エルウィス/ジェイミー・ガーツ/ロイス・スミス/アラン・ラック/フィリップ・シーモア・ホフマン/トッド・フィールド/ジョーイ・スロトニック/ジェレミー・デイビス/スコット・トマソン/ウェンデル・ジョセファー/ショーン・ウォーレン/ザック・グルニエ/ラスティ・シュウィマー●日本公開:1996/07●配給:UIP(評価:★★)
「ツイスター [DVD]」

「トゥルーライズ」●原題:TRUE LIES●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジェームズ・キャメロン●製作:ジェームズ・キャメロン/ステファニー・オースティン●オリジナル脚本:クロード・ジディ/シモン・ミシェル/ディディエ・カミンカ●撮影:ラッセル・カーペンター●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:144分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/ジェイミー・リー・カーティス/トム・アーノルド/ビル・パクストン/ティア・カレル/アート・マリック
/エリザ・ドゥシュク/グラント・ヘスロヴ/チャールトン・ヘストン●日本公開:1994/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(94-09-25)(評価:★★★★)
アーノルド・シュワルツェネッガー/ティア・カレル チャールトン・ヘストン(主人公ハリーの上司スペンサー・トリルビー)

「ラスト・アクション・ヒーロー」●原題:LAST ACTION HERO●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:スティーヴ・ロス/ジョン・マクティアナン●脚本:デヴィッド・アーノット/シェーン・ブラック●撮影ディーン・セムラー●音楽:マイケル・ケイメン●時間:131分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/オースティン・オブライエン/チャールズ・ダンス/ロバート・プロスキー/トム・ヌーナン/フランク・マクレー/
アンソニー・クイン/ブリジット・ウィルソン/F・マーリー・エイブラハム/マーセデス・ルール/アート・カーニー/イアン・マッケラン/プロフェッサー・トオル・タナカ/ジョーン・プロウライト/ノア・エメリッヒ/(カメオ出演)M.C.ハマー/リトル・リチャード/マリア・シュライヴァー/ティナ・ターナー/ジェームズ・ベルーシ/チェビー・チェイス/ジャン=クロード・ヴァン・ダム/ロバート・パトリック/シャロン・ストーン/シルヴェスター・スタローン/ハンフリー・ボガート/ローレンス・オリヴィエ●日本公開:1993/08●配給:コロンビア映画(評価:★★★)


でも、前出の通り、ピレ・アウグスト監督の「愛の風景」(スウェーデン他9カ国)、チャン・イーモウ監督の「秋菊の物語」(中国)、パトリス・ルコント監督の「タンゴ」(仏)、アッバス・キアロスタミ監督の「友だちのうちはどこ?」(イラン)といったハリウッド映画以外の作品も一部で注目された年であり、また、ハリウッド映画の中にも、ロバート・アルトマン監督がハリウッドの映画製作の内幕を描いた「ザ・プレーヤー」('92年/米)などの変わった作品もありました(この作品は1992年カンヌ国際映画祭「監督賞」「男優賞」及びインディペンデント・スピリット賞、
ニューヨーク映画批評家協会賞などを受賞している)。
ラスト近く、グリフィンはウケだけを狙ったどうしょうもない通俗映画を作っていて、それに主演しているのが、ジュリア・ロバーツ、ブルース・ウィリスの二人で、更にバート・レイノルズ、アンジェリカ・ヒューストン、ジョン・キューザック、ジャック・レモン、アンディ・マクダウェル、シェール、ピーター・フォーク、スーザン・サランドンなどが映画内映画にカメオ出演している―この辺りはやはりロバート・アルトマンの名の下に―という感じでしょうか。
「ザ・プレイヤー」●原題:THE PLAYER●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・アルトマン●製作:デヴィッド・ブラウン/マイケル・トルキン/ニック・ウェクスラー●脚本・原作:マイケル・トルキン●撮影:ジャン・ルピーヌ●音楽:トーマス・ニューマン●時間:124分●出演:ティム・ロビンス/グレタ・スカッキ/フレッド・ウォード/ウーピー・ゴールドバーグ/ピーター・ギャラガー/ブライオン・ジェームズ/ヴィンセント・ドノフリオ/ディーン・ストックウェル/リチャード・E・グラント/
シェール/ピーター・フォーク/
●ブルース・ウィリス&ジュリア・ロバーツ/スーザン・サランドン&ピーター・フォーク/ロッド・スタイガー


結局、邦画界は1月に公開された周防正行監督の「シコふんじゃった。」がその年の映画賞を総ナメした形になりましたが、これ、意外と穴だったと言うか、実際に面白く(個人的にもこの年のナンバー1作品。但し、これだけ賞を獲ると、日本映画は他にいい作品がないのかという気も)、一方、洋画も例年の大作とは一味違ったものがじわじわ人気を呼んだりして、その典型が
1941年、場末の安ホテルに籠って脚本を書いていた劇作家バートン・フィンク(ジョン・タトゥーロ)は、隣室のセールス男メドウズ(ジョン・グッドマン)と親しくなるが、フィンク自身は脚本が書けなくなるスランプに陥り、更には自分の部屋で殺人事件が起きて、メドウズが死体を片付けてくれたものの、彼は完全に神経症に陥る―。
もう一つ、同じく'92年公開のジョン・アヴネット監督の「フライド・グリーン・トマト」('91年/米)は、「ドライビング・ミス・デージー」のジェシカ・タンディが演じる元カフェ経営者の昔話を、「ミザリー」のキャシー・ベイツ演じる夫に愛想をつかされた女性が聴くという展開でしたが(アカデミー主演賞女優同士!)、ジェシカ婆さんが淡々と語る話の内容が、ある種、女性たちの人間として生きる権利を求めての闘いの軌跡というか、感動ストーリーでありながらも、合間に入るエピソードがグリム童話みたいに残酷(猟奇的)だったりして、この取り合わせの妙が何とも言えない作品でした。
女流監督ペニー・マーシャルが「レナードの朝」('90年)の次に撮った「プリティ・リーグ」('91年/米)のあらすじは―、1943年、男たちが戦争に駆り出され、プロ野球閉鎖の危機が訪れる中、全米女子プロ野球リーグが結成され、最強チーム"ピーチズ"のメンバーは、田舎の主婦からホール・ダンサーまで、野球を愛する男顔負けのスーパー・レディースで構成さ
れていたが、汗と埃にまみれて白球を追う彼女たちの力強く美しい姿には全米が拍手を贈った―という感動もので、一見すると漫画的題材ですが、実話がベースになっているというのはやはり強いなあと。監督役のトム・ハンクスの演技が冴え、痛快スポーツ・ドラマとなっていますが、最後の同窓会的にかつてのメンバーが集う場面は、賛否があるものの個人的には良かったです。スーパースターのマドンナがナインの一員として(エース役のジーナ・デイビスの助演として)しっかり演技しているという点で興味深い作品でもあります。マドンナはハマリ役でした。 

「バートン・フィンク」●原題:BARTON FINK●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ジョエル・コーエン●製作:イーサン・コーエン●脚本:ジョエル&イーサン・コーエン●撮影:ロジャー・ディーキンス●音楽:カーター・パウエル●時間:116分●出演:ジョン・タトゥーロ/ジョン・グッドマン/ジュディ・デイヴィス/マイケル・ラーナー/ジョン・マホーニー/トニー・シャルーブ●日本公開:1992/03●配給:KUZUIエンタープライズ(評価:★★★★)
「フライド・グリーン・トマト」●原題:FRIED GREEN TOMATO●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・アヴネット●製作:ジョン・アヴネット/ジョーダン・カーナー●脚本:キャロル・ソビエス
![プリティ・リーグ [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%20%5BDVD%5D.jpg)
「プリティ・リーグ」●原題:A LEAGUE OF THEIR OWN●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ペニー・マーシャル●製作:ロバート・グリーンハット/エリオット・アボット●脚本:ババルー・マンデル/ローウェル・ガンツ●撮影:ミロスラフ・オンドリチェク●音楽:ハンス・ジマー●時間:116分●出演:トム・ハンクス/ジーナ・デイヴィス/マドンナ/ロリー・ペティ/ロージー・オドネル/ジョン・ロビッツ/デヴィッド・ストラザーン/ゲイリー・マーシャル/ビル・プルマン/ティア・レオーニ/アン・キューザック/エディ・ジョーンズ/アン・ラムゼイ/ポーリン・ブレイスフォード/ミーガン・カヴァナグ/トレイシー・ライナー/ビッティ・シュラム/ドン・S・デイヴィス/グレゴリー・スポーレダー●日本公開:1992/10●配給:コロンビア・トライスター映画社(評価:★★★★)



『
個人的なイチオシは、リドリー・スコット監督の「テルマ&ルイーズ」('91年/米)で、専業主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス)とレストランでウエイトレスとして働く独身女性のルイーズ(スーザン・サランドン)の親友同士が週末旅行に出掛けた先で、自分たちをレイプしようとした男を射殺したことから、転じて逃走劇になるという話(ロンドン映画批評家協会賞「作品賞」「女優賞(スーザン・サランドン)」受賞作)。
リドリー・スコットが女性映画を撮ったという意外性もありましたが、ジーナ・デイヴィスとスーザン・サランドンが、どんどん破局に向かいつつも、その過程においてこれまでの束縛や因習から解放され自由になっていく女性を好演し、彼女ら追いつつも彼女らの心情を理解し、何とか連れ戻したいと
思う警部役のハーベイ・カイテルの演技も良かったです(まださほど知られていない頃のブラッド・ピットが、彼女らの金を持ち逃げするヒッチハイカー役で出ていたりもした)。
「ダンス・ウィズ・ウルブス」といったアカデミー賞受賞作品と並んで「羊たちの沈黙」や「ターミネーター2」が星4つの評価を得ているというのがこの年の特徴でしょうか。
ジェームズ・キャメロン監督の「ターミネーター2」('91年/米)は、形状記憶疑似合金でできたT1000型ターミネーターが登場したものでしたが、この作品の前に「アビス」('89年)を撮り、ずっと後に「アバター」('09年)を撮ることになる
ジェームズ・キャメロン監督らしい特撮CGが冴えていたように思われ、T1000型を演じるロバート・パトリックも、華奢なところがかえって凄味がありました。一方、アーノルド・シュワルツネッガーが演じる旧タイプのT800型ターミネーターを善玉にまわしてヒューマンにした分、前作「ターミネーター」に比べ甘さがあるように思いました(これ、本書において山口猛氏が書いている批評とほぼ同じなのだが、山口氏の評価は最高評価になる星4つ)。IMDb評価は、「ターミネーター」が[8.1]、「ターミネーター2」が[8.6]で、「2」が上になっています。後からまとめて観た人は「2」の方がいいのかもしれないけれど、それぞれリルタイムで観た自分の場合、「1」のインパクトが大きかったです。
督デビュー作「殺人魚
フライング・キラー」(81年)に続く監督2作目であり、彼の出世作と言えます。ジェームズ・キャメロン監督はシュワルツネッガーと1度会食をしただけで、キャリアが浅く当初脇役で出演の予定だった彼をT800型ターミネーター役に抜擢することを決めたそうですが、シュワルツネッガーの全裸での登場シーンから始まって、そのストロングタイプのヒールぶりは今振り返っても
強烈なインパクトがあったように思います。ただ、この作品の後、「ターミネーター2」との間の7年間の間隔があり(ヒットしたB級映画にありがちだが、すぐにでも続編を撮りたいところが版権が複数社に跨っており、撮ろうにもなかなか撮れなかった)、その間に
シュワルツネッガーは「レッドソニア」「コマンドー」「ゴリラ」「プレデター」「バトルランナー」「レッドブル」「ツインズ」「
因みに、91年は、これも映像表現に特徴のあるデイヴィッド・リンチ監督のテレビ・シリーズ「ツイン・ピークス」が6月にWOWOWで日本で初公開、9月にビデオがリリースされており、日本中のレンタルビデオ店が「ツイン・ピークス」入荷&予約待ち状態になるという大ブームになりましたが、この作品もある意味「脱日常」的な作品だったなあと(まあ、「Xファイル」にしろ「LOST」にしろ、どれもみんな「脱日常」なのだが)。
ビデオ14巻、全29話(パイロット版(「序章」)を含めると30話)、25時間強のサスペンス・ミステリーですが、毎回毎回いつもいいところで終わるので、続きを観るまで禁断症状になるという(あの村上春樹も米国でリアルタイムでハマったという)―ラストは腑に落ちなかったけれども(「えーっ
、これが結末?」という感じか)、そのことを割り引いてもテレビ・ムービーの金字塔と言えるのでは(デイヴィッド・リンチによると、このラストはあくまでも第2シーズンの最終話に過ぎず、「ツイン・ピークス」という物語そのものの結末ではないとのことだが、続編は未だ作られていない)。(●その後、2017年に物語の25年後を描いた「リミテッド・イベント・シリーズ(全18話)」(邦題「ツイン・ピークス The Return」)が作られた。)

「テルマ&ルイーズ」●原題:THELMA & LOUISE●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:リドリー・スコット/ミミ・ポーク●脚本:カーリー・クーリ●撮影:エイドリアン・ビドル●音楽:ハンス・ジマー●時間:129分●出演:スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス/ハーヴェイ・カイテル/マイケル・マドセン/ブラッド・ピット●日本公開:1991/10●配給:松竹富士(評価:★★★★☆)
「ターミネーター2」●原題:TERMINATOR2:JUDGMENT DAY●制作年:1991
年●制作国:アメリカ●監督・製作:ジェームズ・キャメロン●脚本ジェームズ・キャメロン/ウィリアム・ウィッシャー●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:137分(公開版)/154分(完全版)●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/リンダ・ハミルトン/エドワード・ファーロング/ロバート・パトリック/アール・ボーエン/ジョー・モートン/ジャネット・ゴールドスタイン●日本公開:1991/08●配給:東宝東和(評価:★★★)
「ターミネーター」●原題:THE TERMINATOR●制作年:1984年●制作国:アメリカ/イギリス●監督:ジェームズ・キャメロン●製作:ゲイル・アン・ハード●脚本:ジェームズ・キャメロン/ゲイル・アン・ハード
●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:108分●出演:



(1段目)デイル・クーパー捜査官(カイル・マクラクラン)/ローラ・パーマー(シェリル・リー)/アルバート・ローゼンフィールド捜査官(ミゲル・フェラー)/ハリー・S・トルーマン保安官(マイケル・オントキーン)/ハリーの部下、アンディ・ブレナン(ハリー・ゴアズ)/(2段目)ホーク保安官補佐(マイケル・ホース)/署の受付嬢ルーシー(キミー・ロバートソン)/ローラの同級生ドナ・ヘイワード(ララ・フリン・ボイル)/ローラの同級生オードリー・ホーン(シェリリン・フェン)/シェリー・ジョンソン(メッチェン・アミック)/(3段目)製材所経営者の未亡人ジョスリン・パッカード(ジョアン・チェン)/ボビー・ブリッグス(ダナ・アッシュブルック)/マイク・ネルソン(ゲイリー・ハーシュバーガー)/ローラの同級生ジェームズ・ハーレイ(ジェームズ・マーシャル)/シェリーの夫レオ・ジョンソン(エリック・ダ・レー)/(4段目)小さな男(マイケル・アンダーソン)/片腕の男(アル・ストロベル)/丸太おばさん(キャサリーン・コウルソン)/ネィディーン・ハーレイ(ウェンディ・ロビー)/謎の男ボブ(フランク・シルバ)
ジョアン・チェン/ベルナルド・ベルトルッチ監督「
992年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・リンチ●製作:グレッグ・ファインバーグ●脚本:デイヴィッド・リンチ/ロバート・エンゲルス●撮影:ロン・ガルシア●音楽:アンジェロ・バダラメンティ●時間:135分●出演:シェリル・リー/レイ・ワイ
ズ/メッチェン・アミック/カイル・マクラクラン/デヴィッド・ボウイ/ミゲル・フェラー/キーファー・サザーランド/ダナ・アシュブルック/フィービー・オーガスティン●日本公開:1992/05●配給:日本ヘラルド映画(評価:★★★?)
デイヴィッド・リンチ(映画監督)2025年1月15日逝去。78歳。人気ドラマシリーズ「ツイン・ピークス」や、映画「マルホランド・ドライブ」など、カルト的人気を得た多くの作品で知られる。
「
●2025年ドラマ化【感想】2025年6月22日からNHKBSの「プレミアムドラマ」枠にて、直木賞作家での父である井上光晴と瀬戸内寂聴の不倫を基に描いた『あちらにいる鬼』('19年/朝日新聞出版)が話題になった井上荒野の『照子と瑠衣』('23年/祥伝社)のドラマ化作品が風吹ジュン・夏木マリのW主演で放映されたが、井上荒野の原作はまさに映画「テルマ&ルイーズ」へのオマージュ的な小説であり、従ってドラマも「テルマ&ルイーズ」を原案としていると
見ていい。ただし、原作は主人公の二人の女性の年齢を70代に引き上げており、ドラマでも実際に共に1952年5月生まれで73歳の風吹ジュン、夏木マリが演じている(二人は初共演)。70歳の親友同士の照子と瑠衣がそれぞれ、照子はモラハラ気味の夫との生活に見切りをつけ、瑠衣は老人マンションでのトラブルから逃れるために、二人一緒に逃避行を始め、長野県・八ヶ岳の別荘地で素性を隠して暮らし始めるというストーリー(因みに、井上荒野も2019年より長野県八ヶ岳の麓に暮らす)。風吹ジュンは年齢を重ねるごとにいい役者になっていく。
「照子と瑠衣」●演出:大九明子●脚本:大九明子/フル
タジュン●音楽:侘美秀俊●原作:井上荒野『照子と瑠衣』●時間:49分●出演:

'90年公開の洋画で先ず個人的に良かったのは、スパイク・リー監督の「ドゥ・ザ・ライト・シング」('89年/米)で、ブルックリンの黒人街でピザ屋を営むイタリア系父子と店員のムーキーやその周辺の黒人たちの暑い夏の1日を、毒々しい色彩感覚とラップのリズムにのせて描いたものですが、まだメジャーになる前のスパイク・リー監督自身がピザ屋の店員のムーキー役で主演しており、作品の根柢には人種差別問題があるのですが、予定調和に終わらない結末にスパイク・リーの鋭さが窺えました。ダニー・アイエロは「ゴッドファーザーPart II」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」にもちょこっと出ていた俳優ですが、この作品で1989年・
続いて良かったのがブルース・ベレスフォード監督の「ドライビング Miss デイジー」('89年/米)で、90年度アカデミー賞優秀作品賞・主演女優賞などの最多4部
門に輝いた秀作(ジェシカ・タンディは歴代最高齢(80歳)でのアカデミー主演女優賞受賞)。1948年のアトランタを舞台に70歳過ぎのユダヤ人の元教師(ジェシカ・タンディ)と黒人運転手(モーガン・フリーマン)の交流を描いたもので、ラストの老人ホームでの二人の再会シーンは感動的。こうした"感動ストーリー"仕立てを好まない人もいますが、個人的には入れ込んでしまいました。dジェシカ・タンディの名演もさることながら、この頃のモーガン・フリーマンもいいです(本書評価★★★★/個人的評価★★★★☆)。
モーガン・フリーマンが映画俳優として知られるようになったのは50歳の時、ジェリー・シャッツバーグ監督の「NYストリート・スマート」('87年/米)でアカデミー助演男優賞にノミネートされてからで、この「ドライビング Miss デイジー」でアカデミー主演演男
優賞にノミネートされたのは52歳の時。さらにフランク・ダラボン監督の「ショーシャンクの空に」('94年/米)でティム・ロビンスと共に主役レッドを演じて最高の評価を得、前作に続いてアカデミー主演演男優賞にノミネートされますが受賞はならず、その10年後に、クリント・イーストウッドが監督した「
デミー助演男優賞受賞を受賞し、4回目のノミネートでアカデミー俳優となります。(●2023年10月9日、「ショーシャンクの空に」を「TOHOシネマズ錦糸町オリナス」にて「午前十時の映画祭13」で4K版にて再鑑賞(劇評で観るのは初)。モーガン・フリーマンの堂々たる演技が、レッドを単なる"観察者"ではなくより強い存在していることを再認識した。一方で、アカデミー賞を獲れなかった理由も、主人公と異なりレッドが"行動者"ではなく"観察者"に留まっているという役柄設定のせいもあったのではないかと思った。原作は スティーヴン・キングの『刑務所のリタ・ヘイワース』。壁に貼られた女優のポスターリタ・ヘイワース、マリリン・モンロー、ラクエル・ウェルチと変わっていくのが時の流れを表していた。2023年時点で、
・ザ・ライト・シング」を取り上げ、「この映画には真実がある」と訴えています(キム・ベイシンガーも「ドライビング Miss デイジー」が良くないとは言っていない。しかしながら、この頃からアカデミーのある種"偏向"を見抜いていたとも言える)。
マーティン・スコセッシ監督の「グッドフェローズ」('90年/米)は、実在の人物をモデルにギャングたちの生き様を描いた作品で、ヴェネツィア国際映画祭「銀獅子賞」受賞作。ロバート・デ・ニーロが口封じのために仲間を次々と殺していく様子や、ジョー・ペシがギャングの幹部に呼ばれて昇格かと思い出向いたところ、逆に殺されてしまうところなどオソロシイ。「グッドフェローズ」って、反語的意味合いを含んでいるわけね(本書評価★★★★/個人的評価★★★★)。
「トータル・リコール」('90年/米)は、フィリップ・K・ディック(1928-1982/享年53)の短編SF小説「記憶倍
ります」をポール・バーホーベンが監督したもので、シュワルツェネッガー演じる主人公の偽(ニセ)の妻役に、後に同じくポール・バーホーベン監督の「氷の微笑」('92年/米)に主演するシャロン・ストーンが出ていました。優れたSF映画に贈られる「サターンSF映画賞」の第17回受賞作。この作品、最近リメイクされています(本書評価★★★★/個人的評価★★★☆)。
因みに、ポール・バーホーベン監督は「ロボコップ」('87年/米)で米映画界に進出して成功を収めたオランダ人です。「ロボコップ」は、殉職した警官の遺体を利用したサイボーグ警官が活躍するバイオレンスSFアクション映画で低予算で作られながらもヒットし、「ロボコップ2」「ロボコップ3」やテレビドラマシリーズも作られました(2014年にリメイクされた)。サイボーグ警官を演じたのはピーター・ウェラーでしたが、アーノルド・シュワルツェネッガーも候補だったと
か。犯罪多発都市としてデトロイト市を舞台としていますが、デトロイトは当時から既に自動車産業の衰退で荒廃していたため、ロケのほとんどはダラスで行われたそうです。暴力シーンも多いですが、一方で、ピーター・ウェラーの演じる哀愁を帯びた主人公と、そのロボット歩き(ピーター・ウェラーしかできなかったので彼がスタントも演じた)はなかなかのものでした。ラストで、悪人がオム二社(ロボコップを造った会社)の会長を人質にして逃走を図りますが、悪人はオムニ社の役人で、ロボコップに内蔵されていた「オムニ社役員には危害を加えない」というプログラムがあって手を出せないでいたところ、会長が悪人に「お前はクビだ!」と叫んだことでプログラムの規定が消滅し、ロボコップは悪人を射殺するという、そうしたコミカルな面もありました(これも「サターンSF映画賞」の受賞作)。







「ショーシャンクの空に」●原題:THE SHAWSHANK REDEMPTION●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:フランク・ダラボン●製作:ニキ・マーヴィン●撮影:ロジャー・ディーキンス●音楽:トーマス・ニューマン●原作:スティーヴン・キング「刑務所のリタ・ヘイワース」●時間:142分●出演:ティム・ロビンス/モーガン・フリーマン/ボブ・ガントン/ウィリアム・サドラー/クランシー・ブラウン/ギル・ベローズ/ジェームズ・ホイットモア●日本公開:1995/06●配給:松竹富士(評価:★★★★)「
「グッドフェローズ」●原題:GOODFELLAS●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:マーティン・スコセッシ●製作:アーウィン・ウィンクラー●脚本:ニコラス・ピレッジ/マーティン・スコセッシ●撮影:ミヒャエル・バルハウス●時間:145分●出演:レイ・リオッタ/ロバート・デ・ニーロ/ジョー・ペシ/ロレイン・ブラッコ/ポール・ソルヴィノフランク・シベロ/


ティン/シャロン・ストーン/ロニー・コックス/マイケル・アイアンサイド/マーシャル・ベル/メル・ジョンソン・Jr/ ロイ・ブロックスミス/レイ・ベイカー/マイケル・チャンピオン/デビッド・ネル●日本公開:1990/06●配給:東宝東和(評価:★★★☆)
「ロボコップ」●原題:RoboCop●制作年:1987年●制作国:アメリカ●監督:ポール・バーホーベン●製作:アーン・L・シュミット●脚本:エドワード・ニューマイヤー/マイケル・マイナー●撮影:ヨスト・ヴァカーノ/ソル・ネグリン●音楽:ベイジル・ポールドゥリス●時間:103分●出演:ピーター・ウェラー/ナンシー・アレン/ロニー・コックス/カートウッド・スミス/ダン・オハーリー/ミゲル・フェラー/ロバート・ドクィ/フェルトン・ペリー/レイ・ワイズ/ポール・マクレーン●日本公開:1988/02●配給:ワーナー・ブラザース映画(評価:★★★★)





個人的に一番印象に残った話は、ピーター・フォークのエピソードで、彼は3歳の時に悪性の腫瘍のため右目を取り、代わりに義眼を入れていたのですが、12歳の時、野球の試合で二塁打を三塁打にしようと三塁にかけ込んだらアンパイアがアウトにしたので、「どこ見てんだヨォ。お前のがよっぽどこれが必要じゃねぇかァ?」と、おもむろに義眼を取り出して怒鳴ったことがある―というもの。
この手の話は本書の中で他にも幾つか紹介されていて、グレゴリー・ペックは「真昼の決闘」の主役を降りたが、「駅馬車」(1939)の主役を降りたゲイリー・クーパーが代わりに主役をやり、アカデミー主演男優賞を獲得した―。因みに、ウィキペディアによれば製作者のスタンリー・クレイマーはこの映画を「誰も守ろうとするガッツが無かったので滅んでいった町についての話だ」と語ったといい、別の本で、ジョン・ウェインなどは同じような理由でこの作品が好きではなかったというような話を読んだことがあります(作家の村上春樹氏が『村上さんのところ』('15年/新潮社)
で「何度も観返している映画ベスト3はなんですか?」との問いに、「ジョン・フォードの『静かなる男』と、フレッド・
ジンネマンの『真昼の決闘』です。四面楚歌みたいな状況に置かれたときに(何度かそういうことがありました)、よく観ました。見終わると、「僕もがんばらなくちゃな」という気持ちになれます。どちらもとてもよくつくられた映画です。何度観ても飽きません」と答えていた。同氏によれば、アメリカのホワイトハウスの映画室で、もっとも数多く大統領に観られた映画は「真昼の決闘」だという話を聞いたことがあるそうな)。
「マイ・フェア・レディ」のヒンギス教授役で知られるレック・ハリスンは、ミュージカル「王様と私」の"王様"役を断り、代わりに初舞台を飾り、大成功を収めたのが当時新人のユル・ブリンナーであるとのこと。当然のことながら、そのまま映画でも"王様"を演じたユル・ブリンナーは、アカデミー主演男優賞を受賞しています("アンナ"役のデボラ・カーもゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞)。
ポール・ニューマンは、「
ジョン・ガ―フィールドが「欲望という名の電車」(1951)のスタンリー・コワルスキー役を断ったために、その役が廻ってきたのが
マーロン・ブランド。そのマーロン・ブランドは、「
そのロバート・レッドフォード主演の三大作品「スティング」「

オリバー・バレット役、「
「真昼の決闘」●原題:HIGH NOON●制作年:1952年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・ジンネマン●製作:ス






そうした日本での「本の仕事」も多く紹介されていますが、年代とともにどんどん洗練度を増して時代をリードする一方で、時にクラッシカルな雰囲気に回帰したりして自由自在という感じで、ほんと、スゴイね(日本での「本の仕事」は神奈川近代文学館に多く集まっているとのこと)。
寄贈された本は彼がパリに永住した時期に現地や旅先で入手した本など500冊ほどですが、20年代を中心にパリで藤田自らが手掛けた挿絵本がかなり揃っていたとのこと、但し、それらの多くは、彼自身が世界恐慌の際に一旦手放したものを50年代に買い直したものが多く、彼が失われた青春を取り戻すかのように集めた若き日の労作を、君代夫人がずっと最後まで手元に置いていた気持ちは何となく分かる気がします。



陸上男子100メートルのボブ・ヘイズ、マラソンのビキラ・アベベ、水泳のドン・ショランダー、体操のベラ・チャフラフシカ、柔道のアントン・へ―シング、ややマニアックなところでは、重量挙げのジャボチンスキーや女子砲丸投げのタマラ・プレスなんていう選手が印象に残っています。
女子80メートルハードルの依田郁子選手も、スタート前のウォーミングアップでトンボ返りをするなど印象的でしたが、この人も'83年に自殺しています(柔道重量級の金メダリストの猪熊功選手も2001年に自刃により自殺している)。人気度という点では水泳の木原光知子選手などもいました(愛称ミミ。この人も2007年に突然のように亡くなったなあ)。
巻末の競技別成績一覧を見ると、水泳の男子200メートル背泳の福島滋雄選手とか女子100メートル背泳の田中聡子選手とか、メダルまであと一歩だった選手もいて、田中聡子選手は日本新記録を出しながらも4位、福島滋雄選手は3位の選手と10分の1秒差―その悔しさは測り知れません(但し、田中聡子選手は東京五輪の前のローマ五輪で銅メダルを獲得し、日本では前畑秀子以来二人目の女子競泳メダリストとなっていた)(彼女は、2012年と2017年、マスターズ水泳の世界大会と国内大会で100m背泳ぎの世界記録をつくっている)。
この大会の公式記録映画である市川昆(1915-2008/享年92)監督の「東京オリンピック」('65年/東宝)では、試合前の選手の悲愴感すら漂う緊張ぶりや、脱落したり敗者となった選手の表情(田中聡子選手のように惜しくもメダルに届かなかった選手のレース直後の様子なども含め)にもスポットを当てており、選手の心情を描くことを重視したドラマ性の高いものとなっていました。
この作品は当時750万人の一般観客と、学校動員による1,600万人の児童生徒の、合計で2,350万人が観たとのことで(ギネスブック日本版)、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」('01年/東宝)が '01年に観客動員数2,350万人を達成したそうですが、国民の広い層が観たという意味ではいい勝負と言うか、「東京オリンピック」の方が上かもしれません。
聖火リレーや開会式の様子をしっかりと撮っていて、観ていて約半世紀前の記憶が甦ってくるとともに、当時の日本国民の熱狂ぶりを改めて感じとることができま
す。
当初、黒澤明が監督をする予定だったものが予算面で折り合わず、新藤兼人、今村昌平など何人かの有名監督が候補に挙がった中で、最後にお鉢が廻ってきたのが、スポーツはプロ野球観戦ぐらいしか興味の無かった市川昆監督でした。
でも、経費的な制約条件の中、超望遠カメラを多数使用し、人海戦術で各競技の様子を撮ることに予算を集中投下した市川監督の手法は"当たり"だったのではないでしょうか。興行面だけでなく、質的にも、市川昆監督自身の代表作と言えるものと思います。
最終的には制作費3.5億円と、やっぱり予算オーバーになったみたいですが、興行収入はそれを大きく上回る12億円超。予算オーバーは、監督自身が当初2時間半程度に纏めるつもりでいたのが、協会側から3時間程度に、という要請があったことも関係しているのでは。
内容的には当時、記録性に乏しいとの批判もあり(オリンピック担当大臣だった河野一郎が「作り直せ」とイチャモンをつけたのは有名)、「記録が芸術か」という議論にまで発展したようですが、ドキュメンタリーというのは必ずフィクションの要素が入るものではないかなあ(この作品については「脚本」に市川崑、和田夏十の他に、白坂依志夫や谷川俊太郎が名を連ねており、映画のエン
ディングロールには安岡章太郎などの名も見られる)。因みに、1936年のベルリンオリンピックの記録映画「オリンピア」('38年)(日本では「民族の祭典」および「美の祭典」として公開)を監督した
ディレクターズカット版では、そうした批評を受けてか、劇場版で休憩時間を経ての後半の冒頭に出てくる、独立して間もないアフリカのチャドから来た選手のエピソードなどが割愛されているようです。この選手、映画の中では母国の何百とある方言のうちの1つを話す、とされていますが、市川昆監督自身が後のインタヴューで、実はフランス語がペラペラの"近代青年"であったことを明かしており、さすがにここは"作り過ぎた"との意識が監督自身にもあったのでしょうか(この人の弱点は、和田夏十の脚本をすんなり受け容れすぎてしまうことにあったのではないか)。
当時、東西に分かれていたドイツは合同チームとして参加し(但し、団体種目では表向き東西統一ドイツという名称であっても、実際には東ドイツもしくは西ドイツどちらかのチームだった)、「ドイツ」が金メダルをとると国歌の代わりにベートーヴェンの第九交響曲「歓喜の歌」が流されるなどしました。オリンピックはこの頃が一番「平和の祭典」に近かったのかもしれません。ただ、オリンピックに政治を持ち込まないと言っても、これもまた政治の影響であることには違いなく、その辺りが難しいところかもしれません。
オリンピックを巡る様々なエピソードで個人的に印相深いものの1つに、東京オリンピックの4年後に行われた1968年メキシコシティオリンピックで、男子200mの表彰台での「ブラックパワー・サリュート」があり、あれなども「政治」的行為かもしれませんが、彼らにはそうした行為をするに至る切実な思いがあったわけで、非常に複雑な問題だと思います。表彰台で拳を掲げた米国の金メダリストのトミー・スミス(中央)と銅メダリストのジョン・カーロス(右)に賛同して、銀メダリストのオーストラリアのピーター・ノーマンも彼らと同じく、前年に彼らが設立したOPHR(人権を求めるオリンピック・プロジェクト)のバッジを咄嗟に着け、彼らの行為に賛同の意を表しました。スミスとカーロスが帰国後バッシングに会い、カーロスなどは100ヤード世界タイ記録を出しながら二度とオリンピック代表に選ばれなかったのと同様、ノーマンもメキシコ五輪以降も国内トップ級アスリートであったあったにも関わらず二度と五輪代表に選ばれること
はありませんでした(米国が黒人問題を抱えるのと同様、オーストラリアはアボリジニ問題を抱えていた)。ノーマンをは2006年に死去し、葬儀ではスミスとカーロスが棺側付添い人を務
めています。また、2005年、カリフォルニア州立大学サンノゼ校は、卒業生であるスミスとカーロスの抗議行動を賞賛し、20フィートの銅像を建立していますが、この像にはノーマンの姿はありません。これには経緯があり、当初は今あるようにスミスとカーロスだけを像にする予定だったのが、本人たちがノーマンを加えないならば像は立てないでくれと反対、ところがノーマン本人の方から像に自分を加えないで欲しいとの申し出があったとのこと。ノーマン曰く、「誰でも僕の代わりにそこに立ち、記念写真を撮ることができるじゃないか」ということだったようですが、「その場所には誰でも立つことが出来る」という象徴的な意味に繋がるこのノーマンの意向には偉いなあと思わされます。

「東京オリンピック」●制作年:1965 年●監督:市川昆●製作:東京オリンピック映画協会●脚本:市川崑/和田夏十/白坂依志夫/谷川俊太郎●撮影:林田重男/宮川一夫/中村謹司/田中正●音楽:



著者は「週刊文春」記者時代から中国をずっとテーマとして追っているジャーナリストで、これまで多くのインサイドレポートを著していますが、本書はとりわけ著者が得意とする「地下経済」に的を絞って書かれている点が良かったです。
また、「中華」という1箱58元(754円)の高級タバコを大量に買い込んでいた事務所もあったとのことですが、更にその上をいく「黄鶴楼」という1箱300元(3900円)もする超高級タバコがあって、これらも役人に渡す賄賂として利用され、「回収煙酒」という看板を掲げている商店があって、そこにこうした酒・タバコ持ち込めば、定価の一定率で買い取ってくれるという―つまり、非合法(且つ何ら危険を伴わない)裏マーケットがあるということで、要するに、この場合「高級タバコ」は(パチンコの景品のように循環して)疑似通貨の役割を果たしているわけです。
国家による地下経済"表化"施策の象徴とも言えるのが、本書の最後にある、当局によるマフィア掃討作戦であり、重慶市における「掃黒(打黒)」キャンペーンで有名になったのが薄煕来・重慶市党委員会書記ですが、大多数の国民から熱狂的な支持を集める一方で、その強引なやり口には綻びも見られるという―。

本書は、そのドキュメンタリー番組を担当した女性ディレクターが("Nスぺ"のテーマって局内公募で決まるんだなあ)、番組並びに多田氏が自ら綴った闘病手記「鈍重な巨人」を補足するかたちで書いた取材記であり、'05年に約半年に渡って行われた番組制作のための取材を軸に構成された"メタ・ドキュメント"となっています。
本書の原稿にも多田氏は目を通し、「NEK的スタイルにとらわれるな」と著者にアドバイスし、亡くなる前月に訪れた際には「ヤメル トモダチノ キロクデ イインデス」とトーキングエイに打ち込んだということであり、また、亡くなる10日前にも東大でトーキングエイドを使って講演し、この時にはすでに肺に癌性胸水が溜まって息をするのも辛かったはずであるにも関わらず、講演会が終了した後の打ち上げにも顔を出してスタッフを労ったということです。




既に著者は'10年に、『PATAGONIA―野村哲也写真集』(風媒社)という大判の写真集を発表しており、こちらの新書の方は、写文集とはいえ写真はそう数はないかと思ったら、相当数の写真が掲載されていて、写真集としても十分堪能出来て、これで千円以下というのは相当お得ではないかと思いました。

