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個人のビジョンからアプローチし、持続的な変化を促す「思いやりのコーチング」。


『成長を支援するということ――深いつながりを築き、「ありたい姿」から変化を生むコーチングの原則』['24年]リチャード・ボヤツィス
本書(原題:Helping People Change: Coaching with Compassion for Lifelong Learning and Growth,2019)は、従来のコーチングに対し、相手と深いつながりを築き、「ありたい姿」から変化を生む新たなコーチングの原則を提唱したもので、成長を願う相手の情熱やビジョンを呼び起こし、本気で相手を支援するための理論と実践方法を示したものです。著者の一人、リチャード・ボヤツィスは、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の組織行動、心理学、認知科学部門の著名な大学教授であり、ダニエル・ゴールマンの『EQリーダーシップ』(2002年/日本経済新聞社)の共著者でもあります。
第1章では、外から規定された目的を果たすための行動を促す従来のコーチングを「誘導型のコーチング」とし、それに対し、相手に心からの気遣いや関心を示し、相手を中心に考え、相手が自分のビジョンや情熱の対象を自覚、追求できるようにするコーチングを「思いやりのコーチング」と呼んで、他者が学び、成長するのを真に助けるには、後者の方がうまくいくとしています。
第2章では、優秀なコーチは、人々が追い求め、潜在能力を最大限に発揮するためにインスピレーションを与え、励まし、サポートするとし、これこそが思いやりのコーチングであり、真に持続する望ましい変化を達成するコーチングでは、「共感する関係」を築くことが重要だとしています。
第3章では、思いやりのコーチングの方法をさらに掘り下げていきます。「人は変わりたいと思ったときに変われる」と気づくことの重要性から始め、持続する望ましい変化モデルとして、「意図的変革理論(ICT)」における5つのディスカバリーを解説しています。
第4章では、脳科学の観点から、不安や怒り、罪悪感といったネガティブな感情を引き起こすNEAと、希望や喜び、高揚感といったポジティブな感情を呼び起こすPEAという2つの脳内要素を示し、PEAを呼び込む方法としては、まず相手に夢やパーソナルビジョンを尋ねること、さらに、思いやりを示すことであるとし、マインドフルネスや遊び心などの効用も説いています。
第5章では、変化や学びのプロセスを維持するには、PEAの影響下にいる時間がNEAの影響下にいる時間の2~5倍必要であり、PEAは安全、希望、喜びなどの感情を生み出し、私たちの繁栄を助け、NEAは、ストレスホルモンを活性化することで、脅威に対する闘争、逃亡、停止などの反応を引き起こし、私たちの生存を助けるとしています(両者は相互補完的な関係にあり、コーチングにおいても、NEAとPEAのバランスを保つことが重要)。
第6章では、パーソナルビジョンについて述べています。個人のビジョンを発見し発展させることが、PEAを呼び起こすための最も強力な方法であるとし、パーソナルビジョンがいかに変化を生み出すかを述べるともに、パーソナルビジョンは、特定の目標というより、夢を映像化したものに近いとしています。
第7章では、夢を現実に変える手助けをするために、コーチ、マネジャー、その他の支援者が対象者と共鳴する関係を育むにはどうすればよいかを、第8章では、組織の中でコーチングや助け合いの文化を築くにはどうすればよいかを、第9章では、コーチングに適した瞬間の見分け方や、気の進まない相手に対してどう対処すべきかを述べています。
そして最終第10章で、改めて相手を思いやることの大切さを説き、コーチングにおける対話を通して人々を支援し、鼓舞するにはどうすればよいか、これまで述べてきたことを振り返りながら、読者それぞれの将来に向けてアドバイスを呼びかけています。
本書で提唱されている思いやりのコーチングとは、個人のビジョンをもとに、総合的なアプローチを取りながら持続的な変化を促すプロセスであるといえ、お互いに共鳴するコーチングによって、真の人間関係を築かれ、支援者はビジョンを実現できるようになり、より充実した人生を送れるようになるという考えは、どうしてもコーチングをテクニカルなものと捉えがちな我々にとって、従来のコーチングの枠を超えるものであり、たいへん啓発的であったように思います。
著者の一人、リチャード・ボヤツィスが『EQリーダーシップ』の共著者であることも念頭に置いて読むといいのではないかと思います。
《読書MEMO》
●「意図的変革理論(ICT)」における5つのディスカバリー
・ディスカバリー1 理想の自分
コーチや支援者は、コーチング対象者がどのような人間になりたいか、どのような人生を送りたいかを明確にする手助けをする。この探索はキャリアだけに留まらず、人生の全ての側面にわたる。
・ディスカバリー2 現実の自分
コーチは対象者の現実の姿を理解することを支援し、その人の強みや弱みを明らかにし、理想の自分と比較する。
・ディスカバリー3 学習アジェンダ
コーチや支援者は対象者の強みを活かし、理想と現実のギャップを埋めるための学習アジェンダを作成するよう促す。
・ディスカバリー4 新しい行動の実験と実践
新しい行動を試みることを奨励し、失敗しても再度挑戦するか別のアプローチを試すようにサポートする。
・ディスカバリー5 共鳴する関係と社会的アイデンティティ・グループ
対象者が信頼できる人々のネットワークから引き続きサポートを受けることが重要である。これらの発見を通じて、コーチや支援者は対象者が自己効力感を高め、希望や楽観を持つように励まし、核となる価値観や人生の目的について深く考えるよう促す。
●NEAとPEA
▪️NEA
不安や怒り、罪悪感といったネガティブな感情を引き起こし、目の前のタスクの実行や課題の解決を促すもの。
▪️PEA
希望や喜び、高揚感といったポジティブな感情を呼び起こし、パーソナルビジョンに向けた自律的な成長を促すもの。


マーシャル・ゴールドスミ
米アマゾンによれば、本書『コーチングの神様』と、同じく今回文庫化された『トリガー』は、「リーダーシップ本と成功本のトップ100リスト」(古典から現代までの経営本、自己啓発本で構成)に入っており、著者は、そのトップ100リストに2冊もランク入りしている、唯一の存命の作家(2024年時点)であるとのことです。






本書はコーチングのプロを目指す人のための入門書であり、「コーアクティブ・コーチング」というものが提唱されているように、コーチとクライアントが協働してコーチングを進めていくことを重視し、「クライアントはもともと完全な存在であり、自らが答えを見つける力を持っている」ということを鍵(前提)にしています。個人的には

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最初の『「出来る人」の法則』では、経営トップになる目前の段階のエグゼクティブに見られる数々の"悪い癖"を指摘し、この癖を直さなければビジネスでも人生でも成功しないとして、そのためにはどうすべきかを説いています。後の『「前向き思考」の見つけ方』では、目標を達成するリーダーに必要なモジョ(アイデンティティ、成果、評判、受容)を手に入れるにはどうすればよいかを説いています。そして、(この真ん中にあたる)本書『後継者の育て方』では、後継者を選び、育て、地位をバトンタッチするという経営者としての最大の仕事を失敗しないようにするにはどうすればよいかを、後進に道を譲ることに備える、後継者を選ぶ、後継者をコーチングする、バトンを渡す、の4つの局面について説いています。


著者のリズ・ワイズマンはオラクルで長年人材育成に携わった人で、前著『



『BCGの特訓 成長し続ける人材を生む徒弟制』['15年]



●SL理論(「





ホールシステム・アプローチの代表的な手法には、ワールド・カフェやOST(オープンスペース・テクノロジ―)、AI(アプリシエイティブ・インクワイアリ)、フューチャー・サーチなどがあり、これらの会議の特徴は、無理に結論を出そうとしたり、結果を出すことに最初からこだわらないで、むしろ話し合いの質やプロセスに気を配り、参加者同士の関係の質を向上させることを大切にしているところであり、こうした「決めない会議(決めようとしなくても決まってしまう会議)が今注目されているとのことです。
本書によれば、ホールシステム・アプローチによる組織改革においては、組織の階層や部門の違いを超えた密接な社内コミュニケーションを維持し、多様なものの見方や意見を尊重し、自由活発な意見交換がなされ、また、組織が何を実現したいのか。そのために何が必要なのかを全員が共有することを目的とするとのことで、それが、本書のタイトルにある「アジャイル(俊敏)な組織をつくる」ということになります。


そのうえで、モチベーションをタイプ分けするために、まず「やる気のエンジン」がどこにあるか、つまり、内発的動機づけによるもの(目的的)か外発的動機づけによるもの(手段的)かで区分し、それぞれに、自己決定が可能な自律的ケースと、他からの支援など関係性に依存する他律的ケースがあるとしています。






原口 佳典 氏(コーチングバンク代表/略歴下記)
事例やエピソードも豊富で、最終状態を「想像する/想像させる」ことが目標達成を早めることになることをゴルフを例とし、殆どのゴルファーが良いバックスウィング、良いダウンスウィングをすれば良いショットができると考えるのに対し、タイガー・ウッズは、どういうインパクトをすれば良いかから考え始めるといい、彼の父親のアール・ウッズは、息子にゴルフを教えるに際して、ドライバーから練習を始めるのが通常であるのに対し、「ゴール」であるパットから練習させたとのこと。ゴルフの目的はカップにボールを沈めることであり、上手にスウィングすることではないからであると。

●組織変革の9つのステップ(214p)
「メンタリング」について書かれた本の中には、リーダーシップ論やコーチングの技法論とまったく同じになってしまっているものも散見し、「高成果型人材を育成する」といった、短期間でパフォーマンスの向上を求めることが直接目的であるかのような書かれ方をしているものもあります。



本書の興味深い特徴の1つは、上司や部下といった年功序列的な階級意識の強い言葉を使うのをできるだけ避けているということです。
パフォーマンス・コーチング及びメンタリングについての理解を(理論上)深める上で、よく整理された本だと思います。


菅原 裕子氏(ワイズコミュニケーション代表取締役)
こうした前提を踏まえたうえで、実践的な事例を挙げつつ、ミラーリング、ベーシング、バックトラッキングといった"技術"論に入る姿勢には好感が持てました。さらに応用として、グループ・コーチング(ファシリテーション)やセルフコーチングにも触れています。結果として網羅する範囲が広い分、それぞれの突っ込みは浅くなったような気がしますが、それはあくまでも入門書であるから仕方がないのかも。
コーチングの人間観は、相手をまず「能力を有する存在であると捉える」ということだと著者は述べていますが、カウンセリングとの共通点を感じました(カウンセリングの立場では、コーチングは「職場」への適応を通して個人の発達を支援するものという捉え方をし、一方カウンセリングの場合は、個人の発達を通して、仕事や職場への適応を促進するとされているのですが)。
毎週1回、30分から1時間ぐらいのセッションを繰り返し、それを3ヶ月から半年続けるような"有料"のスタイルが前提となっているようで(休憩の取り方まで書いてある)、プロのコーチを目指す人にとっては良書だと思いますし、将来こうした職業的コーチの需要は増えるでしょう。

本書の特徴は、あくまでも"企業内"で独自に研修を企画し実施することを前提にしていることで、それは「企業文化を創造し発展するも目的を外部者に依存するわけにはいかない」という考え方に基づいています。