【3344】 ◎ エリック・シュミット/ジョナサン・ローゼンバーグ/アラン・イーグル/ラリー・ペイジ (土方奈美:訳) 『How Google Works(ハウ・グーグル・ワークス)―私たちの働き方とマネジメント』 (2014/10 日本経済新聞出版社) ★★★★☆

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○経営思想家トップ50 ランクイン(エリック・シュミット)

どうやってスマート・クリエイティブを惹きつける労働環境を作っているかが分かる。

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How Google Works: 私たちの働き方とマネジメント』['14年]『How Google Works: 私たちの働き方とマネジメント』['17年/日経ビジネス人文庫] エリック・シュミット氏(右)とジョナサン・ローゼンバーグ氏

How Google Works1.jpg グーグル現会長で前CEO(本書執筆時)のエリック・シュミットと、前プロダクト担当シニア・バイスプレジデント(上級副社長)のジョナサン・ローゼンバーグが、グーグルはどうやって成功したのかを述べた本で、すべてが加速化している時代にあって、ビジネスで成功する最良の方法は、スマート・クリエイティブを惹きつけ、彼らが大きな目標を達成できるような環境を与えることであるとして、文化、戦略、人材、意思決定、コミュニケーション、イノベーションの各重要トピックについて、グーグルの考え方、グーグルでの働き方を説き明かしています。

 まず彼らは「現代は、どのような時代か?」という問いに、「現代は、インターネットの世紀である。具体的には、3つの生産要素が格段に安くなった。情報、インターネットへの接続、そしてコンピューティング性能」であると答えます。そして、「その結果、企業の成功に最も必要な要素は何か?」という問いには、「プロダクトの優位性である。情報の管理能力でも、流通チャネルの支配力でも、圧倒的なマーケティング力でもない」と答えます。さらに、優れたプロダクトをスピードを持って開発するのに必要な人材はどのようなものか?」という問いのGoogleの答は、「スマート・クリエイティブと言われる人々」である」と。では、「スマート・クリエイティブを惹きつける、良い会社にするにはどうしたら良いか?」という問いに対し、その答えは文化、戦略、人材、意思決定、コミュニケーション、イノベーションの6つの要素に集約されるとして、以下、それぞれについて解説していきます。

 「文化」では、社員同士の距離を近づけること、「カバ」すなわち、エライ人の言うことを聞かないこと、「悪党」すなわち、傲慢な人間、妬む人間からは仕事を取り上げること、人に「ダメ」と言わないこと(「イエス」の文化を醸成すること)などを推奨しています。

「戦略」では、計画は流動的であるべきであり、市場調査はせず、技術的アイデアに賭け、利益よりも成長(大きくなること)を重視せよと言っています。

 「人材」では、採用は一番大切な仕事であり、採用は絶対に妥協せず、学ぶ意欲の高い人物を採用すること、大事なのは「何を知っているか」ではなく、「これから何を学ぶか」であるとし、また、好き嫌いではなく、人格と知性で選ぶようにし、採用を全社員の担当業務に含め、「スゴイ知り合い」を紹介させるようにし(その際の貢献度は評価に入れる)、報酬は、低いところから始め、成果を出す人にはずば抜けた報酬を支払うようにせよと言っています。

 「意思決定」については、データに基づき決定すること、最適解に達するため意見の対立を不可欠とするとすること、収益の8割を稼ぐ事業に8割の時間をかけることを説いています。

 「コミュニケーション」については、役員会の議事録であったとしても、法律、あるいは規制で禁じられているごくわずかな事柄を除き、全て共有すること、会話を促進し(時にはコミュニケーション過剰と言われるくらい)話しやすい雰囲気を作ることを説いています。

 「イノベーション」については、①それが対象とするものは、数百万人、数十億人に影響をおよぼすような大きな問題あるいはチャンスだろうか。②既に市場に存在するものとは根本的に異なる解決策のアイデアはあるのか。③根本的に異なる解決策を世に送り出すための画期的な技術は既に存在しているのか、あるいは実現可能なのか、この3つの条件を検討せよと述べています。また、イノベーティブな人間にイノベーションを起こせと言う必要はなく、自由にさせれば良いとし、ユーザーに焦点を絞れば、後は全部ついてくる(カネを出す「顧客」ではなく、サービスを利用するユーザーに焦点を絞る)、リソースの70%をコアビジネスに、20%を成長ビジネスに、10%を新規ビジネスに投下せよとも言っています。

 本書で述べられているのはあくまでもGoogleの考え方であって、安易にマネをできるものではないし、異なる考え方を持つ方も多いでしょう(Amazon.comのレビューで「製造業には無縁の話で」というのもあった)。それでも、「次の時代の働き方」を模索するビジネスパーソンには、啓発される要素を多く含んだ本であると思います。また、人事パーソンの視点から見ても、世界的なエクセレント・カンパニーがどのようにして魅力的な労働環境を作っているかが分かるとともに、「人材」に関する記述などは、これからの人材マネジメントの在り方について多くの示唆を含むものであると思います(日本の人事部「HRアワード」2015の書籍部門で「最優秀賞」を受賞)。

【2017年文庫化[日経ビジネス人文庫]】


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