【3421】 ○ ローラ・ウィットワース/キャレン・キムジーハウス/ヘンリー・キムジーハウス/フィル・サンダール (CTIジャパン:訳) 『コーチング・バイブル (第2版)―人と組織の本領発揮を支援する協働的コミュニケーション』 (2008/06 東洋経済新報社) ★★★★

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「コーアクティブ・コーチング」を提唱。プロに限らず活かせるのでは。

コーチング・バイブル 第2版.jpgコーチング・バイブル 第2版2008.jpg コーチ1.jpg  Co-Active Coaching.jpg Laura Lynn Whitworth.jpg 
コーチング・バイブル 第2版: 人と組織の本領発揮を支援する協働的コミュニケーション』['08年]『コーチング・バイブル―人がよりよく生きるための新しいコミュニケーション手法』['02年]"Co-Active Coaching: New Skills for Coaching People Toward Success in Work And Life"(2007) Laura Lynn Whitworth (1947-2007)
Laura  Whitworth.jpg 本書はコーチングのプロを目指す人のための入門書であり、「コーアクティブ・コーチング」というものが提唱されているように、コーチとクライアントが協働してコーチングを進めていくことを重視し、「クライアントはもともと完全な存在であり、自らが答えを見つける力を持っている」ということを鍵(前提)にしています。個人的には初版(2002年邦訳刊行)を読んで以来となります(2020年に『コーチング・バイブル(第4版)』が刊行されているが、主たる執筆者でコーアクティブ・コーチングの提唱者であるローラ・ウィットワースが2007年2月に肺がんで亡くなったため(59歳没)、2012年邦訳刊行の第3版から執筆陣の名前から外れている)。

 第Ⅰ部では、コーアクティブ・コーチングの全体像が紹介されています。第1章では、コーアクティブ・コーチングでコーチに求められる「5つの資質」(傾聴、直感、好奇心、行動と学習、自己管理)の各要素について概要を説明するとともに、クライアントの主題を形成する「3つの指針」(フルフィルメント、バランス、プロセス)について触れ、第2章では、コーチングの土台となるコーチとクライアントの協働関係をいかに築くかを解説しています。

 第Ⅱ部では、「5つの資質」についてさらに詳しく述べるとともに、それぞれの資質と関係の深いコーチング・スキルについて、実例を交えながら解説しています。第3章では「傾聴」について、意識の焦点のレベルと各レベルごとの相手に与える影響を解説しています。第4章では「直観」について、直観は強い武器になるとし、それをどこで感じるかを、第5章では「好奇心」について、好奇心は信頼関係を築くとし、それを意図に活用するための鍛錬法を、それぞれ説いています。第6章では「行動と学習」について、「ありのまま」「つながり」「生き生き感」「思い切り」という4つの領域で、コーチが力を出し切ることの重要性を説いています。第7章では「自己管理」について、コーチがクライアントから意識が離れそうになったき、そこから立ち直ってクライアントとの関係を取り戻すにはどうするかを述べています。

 第Ⅲ部では、「3つの指針」についてさらに詳しく説明し、その実践方法を説いています。第8章では「フルフィルメント(充実感)」について、クライアントが描く「充実した人生」とはどのようなものかを明確にするよう支援することの重要性を、「人生の輪」というツールと併せて解説しています。第9章では「バランス」について、行き詰まり感から可能性へ、可能性から行動へとクライアントを導くバランス・コーチングにおける、①視点、②選択、③計画、④決意、⑤実行の5つのステップから成る公式を紹介しています。第10章では「プロセス」について、コーチングにおけるクライアントの変化のプロセスを、同じく5つのステップに分けて解説しています。最終第11章では、これら3つの指針をいかに統合し、コーチングを芸術の域にまで高めるにはどうすればよいかについて解説しています。そして、巻末に、コーチがクライアントに対して使うことができる「ツールキット」が収録されています。

 冒頭に、「コーチングのプロを目指す人のための入門書」と書きましたが、前回は初版を読んだときは、プロのコーチを目指す人にはいいけれども、一般のビジネスパーソンにはどうかと思ったりもしましたが、改めて読んでみて、プロのコーチを目指す人のためだけでなく、日常のコミュニケーションに「コーアクティブ・コーチング」の考え方やスキルは活かせるものであり(前に拠んだときは形式的な枠組みに囚われすぎた?)、コーチを目指す人にとどまらず、ビジネスパーソンに広くお薦めできるのではないかと思います(初版を読んだ際の評価 ★★★☆ → 今回第2版を読んでの評価 ★★★★。2022年現在、第4版まで刊行されている)。

《読書MEMO》
「5つの資質」(第3章~第7章)
「傾聴」(第3章)
 レベル1―クライアントの発言を受けた上での自分の考えや気持ち、意見・判断など自分自身に意識が向いている状態。
 レベル2―声色や表情など、クライアントから読み取れるあらゆることに意識が向かっている状態。このレベルでは,コーチは常に,自分の聴き方がクライアントにどのように影響を与えているかを認識する必要がある。これは、監視のように意識的に行うのではなく、ただ相手に与えている影響に気づいているという無意識的な状態で行わなければならない。
 レベル3―肌で感じるものや感情的なものなど、クライアントの言動以外の全てのことも認識する状態。これは「環境的傾聴」とも言う。
「直感」(第4章)
 直観がコーチングにおいては有益なものになるのは、それが正しいかどうかではなく、それがクライアントの行動を前に進め,学びを深めることに繋がったかどうかで評価されるから。
「好奇心」(第5章)
 質問を投げかけることで簡単に意識の方向を換えることができる。質問する際はクローズドクエスチョンを避け、尋問調にならないようにする必要がある。加えて、質問によってクライアントの意識が向かう方向を自覚しながらも、クライアントがどこに向かおうとそれに拘ってはいけない。
「行動と学習」(第6章)
 クライアントは「行動」「学習」を、コーチは「進める」「深める」ことに重点を置く。そしてクライアントがその経験から学んだ内容に着目しなければならない。行動を進め,学習を深めるためのスキルとして「目標設定のスキル」がある。良い目標は具体的かつ測定可能で、その結果を何らかの形で記録し評価することができるという特徴を持つ。
「自己管理」(第7章)
 例えばクライアントとの会話で自分の専門分野を扱っている場合に,「コーチとしての意見」と「専門家としてのアドバイス」を明確に区別しなければならない。

「バランス・コーチング」の5つのステップ(第9章)
  (1) 有りうる視点を列挙する。
 (2) 挙げられた視点からある視点を選択し、それを通して自身に選択力があることを自覚してもらう。
 (3) 選択した視点であり得る行動を列挙してから絞り込み、行動を計画する。
  (4) 計画した行動をやり切る決意を固めてもらう。
  (5) 実行してもらい、進捗確認とフィードバックを行う。

「プロセス・コーチング」の5つのステップ(第10章)
  (1) クライアントの「心のうねり」を聴き取り、それを言葉にする。
 (2) クライアントとそれを探求する。
 (3) クライアントがそれを深く経験する。
  (4) クライアントのエネルギーに変化が起きる。
  (5) 新たな動きが起きる。

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