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28年ぶりの劇場公開。翻案は成功している。2日続けて観に行った。。

「レ・ミゼラブル 2Kリマスター版 [Blu-ray]」ジャン=ポール・ベルモンド
1899年の大晦日の深夜、醜聞に巻き込まれた伯爵(ダニエル・トスカン・デュ・プランティエ)が逃亡中に自殺した。逃亡を
助けた運転手のアンリ・フォルタン(ジャン=ピエール・ベルモンド)が状況証拠から伯爵殺害の嫌疑を受け、有罪になる。フォルタンの妻カトリーヌ(クレマンティーヌ・セラリエ)と幼い息子アンリはノルマンディーの海岸にある居酒屋でなんとか職を得る。彼女は吝嗇で残酷な主人ギヨーム(ルフュ)にこき使われながら夫の再審のため懸命に金を稼ぎ、ギヨームの手引きで売春までするが、アンリは脱獄に失敗して命を落とす。彼女は夫の後を追って自殺し、息子のアンリだけが遺される。1918年、成長したアンリはボクシングのチャンピオンになり、養父ギヨーム
から独立した。彼はその後1931年までチャンピオンの地位を守り、引退してトラック運送屋になった。同じ1931年、バレリーナのエリーズ(アレサンドラ・マルティネス)は弁護士の卵アンドレ・ジマン(ミシェル・ブジューナー)と結婚した。1939年、第2次世界大戦でパリはドイツの占領下になり、ユダヤ人のジマン夫妻はノルマンディーに引っ越す。その運送屋がアンリ・フォルタン(ベ
ルモンド=二役)だった。ノルマンディーも安全でないと知った夫妻は、アンリにスイス国境まで運んでくれるよう頼む。道中、非識字者のアンリはセーヌ川の古本屋(ダリー・カウル)から買った『レ・ミゼラブル』を読んでくれるようアンドレに頼む。力持ちの彼は、まるでジャン・ヴァルジャンだとよく人に言われていたのだ。前
科者ジャン・ヴァルジャン(ベルモンド=三役)が田舎の司教(ジャン・マレー)の慈愛に触れて人間らしさを取り戻す物語を聞いたこの日から、アンリ・フォルタンは小説のヴァルジャンのように、自分でなく人間愛のため
に生きていくことを決意する。アンリはジマンの娘サロメ(サロメ・ルルーシュ)をカトリックの寄宿学校に預ける。修道院長(ミシュリーヌ・プレール)は、サロメがユダヤ人と見抜きつつも彼女を庇護する。アンリのお蔭で国境にたどり着いたジマン夫妻だが、逃がし屋が独軍に通じており、亡命ユダヤ人たちは虐殺される。アンドレは重傷を負うが、近所の農家の夫婦もの(アニー・ジラルド、フィリップ・レオタール)に匿われる。一方捕虜になったエリーズは、独軍の慰安婦になることを拒否し、ドイツの強制収容所へ。アンリはペタン派の刑事(フィリップ・コルサン)に捕らえられ拷問に遭うが、同じ房にいた強盗団(ティッキー・オルガドほか)に助けられ脱走。強盗団はゲシュタポから情報を得て、空襲警報中の邸宅に盗みに入るのが仕事。アンリは助けられた義理から嫌々ながら手を貸す。そこへ連合軍上陸作戦の噂が入り、一同は早速レジスタンスに鞍替えする。ノルマンディーにあるギヨームの居酒屋は、今では息子(ルフュ=三役)が経営しているが、その海岸こそ連合軍の上陸地点だった。一同が居酒屋に着いた翌朝に作戦が始まり、アンリは居酒屋の裏手にあるトーチカを爆破して英雄になる。やがてパリも解放され、仲間と別れたアンリは、ギヨームの店で働いていた青年マリウスと共に、パリ郊外にリゾート風のレストランを買う。ジマン夫妻は未だ行方不明で、アンリがサロメを引き取る。実はアンドレはまだ地下に籠もったままだった。匿ってくれた夫婦の妻の方が彼に恋し、嫉妬しながらも妻から離れられない夫が、ドイツ軍の勝利という
嘘を吹き込んで彼を引き止めていたのだ。アンリは福祉などに力を尽くして地域の尊敬を集め、市長から自分の後任にと頼まれる。強制収容所で生き残ったエリーズ・ジマンが戻り、サロメと親子の再会を果たす。だがそこへアンリの昔の仲間が匿ってくれと言って現れ、彼らを追ってかつてアンリを拷問した元ペタン派の刑事もやって来る。アンリは血に飢えた昔の仲間が許せず、最後には逮捕に協力すらするが、逮捕される。刑事はアンリを裁判にかければ自分の対独協力も白日のもとに晒されると悟り、いったんはアンリを殺そうとするが、アンリの善良さに自らを恥じて自殺する。しかしアンリは刑事殺しの濡れ衣まで着せられそうになる。そのころスイス国境の山中ではアンドレ・ジマンを匿っていた夫婦がついに殺し合い、アンドレは初めて戦争が終わっていたことを知る。アンリの留守中にその店を支えるエリーズと、それにサロメと再会したアンドレは、一家の大恩人アンリの弁護を引き受ける。無罪を勝ち取って数年後、市長になったアンリは、美しく成長したサロメとマリウスの結婚式を執り行うのだった―。
1995年公開のクロード・ルルーシュの製作・監督・脚本作で、主演は「あの愛をふたたび」「ライオンと呼ばれた男」以来ルルーシュと3度目のタッグとなったジャン=ポール・ベルモンド。ヴィクトル・ユーゴーの原作を大幅にアレンジし、その物語にソックリの人生を送る男が主人公で、20世紀の激動の時代を舞台に描いた大河ロマン(第2次大戦前後に時代設定され、ドイツ軍のユダヤ人狩りにかなりの時間が割かれている。因みにクロード・ルルーシュはユダヤ人である)。1996年・第17回「ロンドン映画批評家協会賞 外国語映画賞」、同年・第53回「ゴールデングローブ賞 外国語映画賞」受賞作。
ジャン=ポール・ベルモンド
海外では評価も高く、またヒットもしたのに、日本ではシネマスクエア東急の単館ロードで終わってしまいました。トークイベントでの解説によれば、日本では当時、娯楽映画はCGなどを駆使したハリウッド映画の方に関心が行ってしまい、一方、フランス映画は、ゴダールやトリュフォーなどヌーベルバーグの監督を中心に"作家主義"的に語られることが多くなり、ジャン=ポール・ベルモンドのこうした作品は、日の目を見ない不遇の時代が続いたとのこと。ベルモンドという俳優そのものも、ゴダールの「勝手にしやがれ」などの作品の中で語られるのが主で、結果として、こうした作品に目が行かなかったのではないかということです。
本邦では1997年にVHS版とレーザーディスク版が「レ・ミゼラブル 輝く光の中で」というタイトルでリリースされて以来ソフト化されておらず、ずっと観る機会がありませんでした。それが、昨年['24年]、ベルモンド主演作をリマスター版で上映する「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選グランドフィナーレ(第4弾)」('24年6月28日~東京・新宿武蔵野館ほか)にて28年ぶりに劇場公開され、本作としての初日それを観ましたが、期待に違わず楽しめた3時間が短く感じられる作品で、2日目にまた観にいきました(その2日目が、仏文学者・翻訳家の野崎歓氏のトーク・イベント付きだった)。
まず、アンリ・フォルタン(父)として登場するジャン=ポール・ベルモンドは、アンリ・フォルタン(子)役のほか、劇中劇としての原作『レ・ミゼラブル』でジャン・ヴァルジャン役も務める1人三役で(オープニングシーンのベルモンドは、そのジャン・ヴァルジャンとしての彼であることが暫くして判る)、さらに、居酒屋を営む夫婦にこき使われながら育てられるアンリ(子)の子供時代は、原作の宿屋のテナルディエ夫婦にこき使われたコゼットにダブります(このことが、大人になったアンリが『レ・ミゼラブル』に惹かれる要因の1つにもなり、彼は自分がヴァルジャンでありコゼットであるとい言う)。
アンリ(子)を追う警部役のフィリップ・コルサンも、原作のジャヴェール警部との二役で、原作のジャヴェール警部は橋の欄干から飛び降り自殺しましたが、自殺死する点でもジャヴェール警部と同じです。コルサンは、原作のジャヴェール警部を、職務に忠実な男として尊敬しています(そこでアンリと意見が合わない)。
また、アンリ(父)の妻カトリーヌ役のクレマンティーヌ・セラリエも、同じく非業の死を遂げる、原作のゴゼットの母ファンティーヌとの二役です。さらには、吝嗇な居酒屋の主人ギヨーム(ルフュ)を演じたルフュも、店を継いだその息子役と、作中劇としての原作の宿屋のテナルディエの三役です(ギヨームはテナルディエを尊敬している。その点でアンリと意見が合わない)。こうしたことを確認しながら観るのも面白いです。
そのほか、アンリが一時仲間に加わる「強盗団」は、原作の悪党集団「パトロン=ミネット」の翻案で、そこから身を転じるレジスタンスは原作の共和派秘密結社「ABC(ア・ベ・セー)の友」の翻案でしょうか(原作で「ABCの友」に加入するのはマリウスなのだが)。
原作『レ・ミゼラブル』は劇中劇とし、本編は内容を大幅に改変しているわけですが、物語が原作とパラレルになっている点で、脚本がよく出来ていると思いました。しかも演出は見事であり、感動的させられます(1回目観て感動を味わい、2回目観て翻案を楽しんだという感じ)。結末のハッピーエンドはある程度見えていましたが、それでもカタルシス効果充分で、クロード・ルルーシュの翻案は成功したと思います。
ジャン=ポール・ベルモンド(1933生まれ)は当時62歳。渋みがあり、顔の皺の一つ一つに味わいがある感じ。ヴァルジャンに銀器を与える司教を演じたジャン・マレー(1913生まれ)(「美女と野獣」('46年/仏))は81歳で、貫録の演技。アンドレを匿うことで夫から心が離れてしまう妻を演じたアニー・ジラルド(1931生まれ)(「若者のすべて」('68年/伊・仏))も、演技達者ぶりを見せています(夫婦の愛憎劇はサスペンスフルでもあった)。
これまで観た「レ・ミゼラブル」映画の評価は以下の通り(◎が多いね)。ジャン・ギャバン版は原作を忠実に映画化しているとされており、リーアム・ニーソン版は、ジャン・ヴァルジャンとジャヴェール警部の葛藤を中心に描いていて、ジャヴェール警部が自殺したところで終わります。ヒュー・ジャックマン版はミュージカルで、ミュージカルのオリジナル脚本を忠実に映画化しているとされるようです。


◎ ジャン=ポール・ル・シャノワ 監督、ジャン・ギャバン主演 「レ・ミゼラブル」 ('57年/仏・伊)(186分) ★★★★☆
〇 ビレ・アウグスト監督、リーアム・ニーソン主演 「レ・ミゼラブル」 ('98年/米)(124分) ★★★☆
◎ トム・フーパー監督、ヒュー・ジャックマン主演 「レ・ミゼラブル」 ('12年/英)(158分) ★★★★☆
◎ クロード・ルルーシュ 監督、ジャン=ポール・ベルモンド主演 「レ・ミゼラブル」 ('95年/仏・伊)(175分) ★★★★☆
このジャン=ポール・ベルモンド版が、いちばん独創に富んでいると言えばそういうことになるかと思います(原作をベースとした別個の物語との言える)。先述の通り、新宿武蔵野館がそれまで'20年、'21年、'22年の3回にわたって上映してきた「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」('21年9月にベルモンドが亡くなり、'22年が言わば「1周忌上映」になってしまった)の第4弾「グランド・フィナーレ」('24年)で鑑賞したわけですが、観ることができて良かったです。
「レ・ミゼラブル」●原題:LES MISERABLES●制作年:1995年●制作国:フランス●監督・製作・脚本:クロード・ルルーシュ●撮影:クロード・ルルーシュ/フィリッペ・パヴァン・ド・チェカティ●音楽:ディディエ・バルベリヴィエン/エリック・ベルショー/フランシス・レイ/ミシェル・ルグラン/フィリップ・サーヴェイン(挿入歌:パトリシア・カース(作詞:ディディエ・バルブリヴィアン/作曲:フランシス・レイ))●原作:ヴィクトル・ユーゴー●時間:175分●出演:ジャン=ポール・ベルモンド/ミシェル・ブジュナー/アレサンドラ・マルティネス/サロメ・ルルーシュ/マルゴ・アバスカル/アニー・ジラルド/フィリップ・レオタール/クレマンティーヌ・セラリエ/フィリップ・クロワシル/ティッキー・オルガド/ウィリアム・レイメルジー/ジャン・マレー/ミシュリーヌ・プレール/ダニエル・トスカン・デュ・プランティエ/ミカエル・コーエン/ジャック・ブーデ/ロベール・オッセン/ダリー・コール/アントワーヌ・デュレリ/ジャック・ガンブラン/ピエール・ヴェルニエ/ルフュ●日本公開:1996/08●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:新宿武蔵野館(24-07-05)●2回目:新宿武蔵野館(24-07-06)(評価:★★★★☆)



刑務所を裏取引で出所したドク・マッコイ(スティーブ・マックイーン)は、引き換えに、取引相手のテキサスの政界実力者ベニヨン(ベン・ジョンソン)の要求で、妻キャロル(アリ・マッグロー)と銀行強
盗に手を染める。ベニヨンからはルディ(アル・レッティエリ)とジャクソン(ボー・ホプキンズ)が助手兼ドクの監視役として送り込まれ、綿密な計画の末に強盗は何とか成功するが、ジャクソンが銀行の守衛を射殺してしまう。ルディは目撃者に面が割れたジャクソンを車内で射殺し、今度はドクに銃を向けるが、ドクの銃が先に火を吹く。ドクは、銀行から奪った金を約束通りベニヨンの元に運び込ぶが、キャロルの様子がおかしく、実はベニヨンとキャロルは男女の関係にあり、当初はドク
を裏切って消す考えだったのだ。しかし、キャロルはドクではなくベニヨンを射殺する。ドクは逃走中に車を止め、嫉妬と怒りからキャロルを殴り倒す。一方のルディは、防弾チョッキ
のお蔭で死んでおらず、獣医の家に押し入り、ドクに撃たれた肩の治療をしていたが、ベニヨンの死を知り、ドクの追跡を開始する。ドクは町で自分が指名手配になっているのを知ってショットガンを
買い求め、警察に追われながらも逃げて、エルパソのホテルに辿り着く。だが、そこへはルディが先回りしていて、ベニヨンの手下も向かっていた。ルディがホテルに現れ、ドグが彼を殴り倒した時に今度はベニヨンの手下が現れて大銃撃戦が始まるが、ドクのショットガンで全員が倒され、ルディも射殺される。ドクはホテルからメキシコ人の老人のトラックに乗り込み、国境を越えたところで老人からトラックを買取り、夫婦はメキシコ側へ消えていく―。
しかしながら故・淀川長治は、必ずしも2人の未来は明るいと示唆されているわけではないと言っており、これは、原作にこの続きがあって、バッドエンディンが待ち受けていることを指していたのでしょうか。但し、原作における主人公のキャラクターは極悪人に近く、取引上やむなく銀行強盗をする映画の主人公とはかなり異なるようです。個人的には、この映画のラストには、やはり何となくほっとさせられます。
妻役のアリ・マックグローは銃を扱ったことがなく、マックイーンが銃の撃ち方を教えて銃に慣れさせたりもしたそうです
が、「ある愛の詩」('70年)の白血病で死んでいく女子大生よりは、こちらの方が"演技開眼"している印象です。でも、この作品での共演をきっかけにマックイーンと結婚し、この後2本だけ映画に出て実質的に映画界を引退してしまいました。6年後に離婚してしまったことを考えると惜しい気もしますが、2006年に68歳で Festen(映画「セレブレーション」の舞台化)でブロードウェイ・デビューを果たしています。
一方、「ある愛の詩」で共演したライアン・オニールは、その後「ペーパー・ムーン」('73年)、「バリー・リンドン」('73年)などに主演するなどして活躍しましたが、2001年に慢性白血病に冒されていることが判明し、また、パートナーであったファラ・フォーセットのガンによる死(2009年6月25日、マイケル・ジャクソンと同じ日に亡くなった)を看取るとともに、自身も前立腺がんであることが公表(2012年)されていて、こちらはかなりタイヘンそうだなあと(2023年12月8日逝去・82歳没)。
「ある愛の詩」は、エリック・シーガルによる同名の小説が原作ですが、未完の小説を原作として映画の製作が始まり、先に映画が完成し、映画の脚本を基に小説が執筆された部分もあるそうです。先に小説が刊行され、その数週間後に映画が公開されており、今で言う"メディアミックス"のはしりでした。ペーパーバックを読みましたが、初めて英語で読んだ小説の割には読み易かったのは、ある種ノベライゼーションに近かったせいもあるかもしれないし、ストーリーが古典的で結末が見えているせいもあったかもしれません。この映画のヒットの後、難病モノの映画が幾つか続いた記憶があります(アメリカ人は白血病モノが好きなのか?)。
この映画がアメリカでヒットしたことについて、映画監督の大林宣彦氏はアメリカで封切り時にこの作品を現地で観ていて、ベトナム戦争で疲弊したアメリカが、本音ではこのような純愛ドラマを求めている時代感覚を肌で感じていたとのこと。但し、この映画の作られた1970年と言えばまだベトナム戦争の最中ですが、映画内にその影は一切見えません(最初観た時は"ノンポリ"恋愛映画だと思ったが、今思えば意図的にそうしていたのか)。日本でもヒットしたのは、古典的なストーリーに加えて、
因みに、主人公のオリバー・バレット4世(ライアン・オニール)のルームメイト役で無名時代のトミー・リー・ジョーンズ(当時24歳)が出演していますが、その後3年間は映画の仕事がなく、彼の無名時代は長く続き、オリバー・ストーン監督の「
ライアン・オニール 2023年12月8日逝去。(82歳没)
(●ライアン・オニールが亡くなった。「ある愛の愛の詩」('70年)の興行的成功や「ザ・ドライバー」('78年)といった渋い作品もあるが、代表作はと言うとやはり「ペーパー・ムーン」('73年)と「バリー・リンドン」('73年)になるのではないか。「ペーパー・ムーン」は泣けた。原作はジョー・デヴィッド・ブラウンの小説『アディ・プレイ』だが、日本では『ペーパームーン』の題名でハヤカワ文庫 から刊行された。ライアン・オニールとテータム・オニールの父娘共演で話題になり、本国では年間トップの興行収入を得、1973年の第46回アカデミー賞ではテータム・オニールが史上最年少で助演女優賞を受賞したが、その後、彼女が思ったほど伸びなかったことを思うと、ピーター・ボグダノヴィッチ監督の演出力がやはり大きかったか、または、父親ライアンの導き方が上手かったのか(個人的評価は、初見の時の感動に沿って★★★★☆)。
「バリー・リンドン」は、スタンリー・キューブリック監督が、18世紀のヨーロッパを舞台とし、ウィリアム・メイクピース・サッカレーによる小説"The Luck of Barry Lyndon"(1844年)を原作としたもので、アカデミー賞の撮影賞、歌曲賞、美術賞、衣裳デザイン賞を受賞した。世評は「ペーパー・ムーン」よりむしろ「バリー・リンドン」の方が上か。ただ、"ライアン・オニール"に目線を合わせると、主人公でを演じる彼が抑制を効かせた演技をすることで回りを浮き立たせているので、彼自身はやや背景に埋没している印象も受けなくもない。ラストの決闘シーンにおいてさえそう感じる。そこがキューブリック監督の演出のやり方なのだろうが(個人的評価は★★★★)。)
「ゲッタウェイ」●原題:THE GETAWAY●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督:サム・ペキンパー●製作:デヴィッド・フォスター/ミッチェル・ブロウアー●脚本:ウォルター・ヒル●撮影:ルシアン・バラード●音楽:デイヴ・グルーシン●原作:ジム・トンプスン●時間:122分●出演:スティーブ・マックィーン/アリ・マックグロー/ベン・ジョンソン/アル・レッティエリン/スリム・ピケンズ/リチャード・ブライト/ジャック・ダドスン/ボー・ホプキンス/ダブ・テイラー●日本公開:1973/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:高田馬場パール坐(77-12-10)●2回目:自由が丘・武蔵野推理(84-09-23)(評価★★★★)●併映(1回目):「パピヨン」(フランクリン・J・シャフナー)●併映(2回目):「48時間」(ウォルター・ヒル)
「ある愛の詩」●原題:LOVE STORY●制作年:1970年●制作国:アメリカ●監督:アーサー・ヒラー●製作:ハワード・ミンスキー●脚本:エリック・シーガル●撮影:リチャード・クラディナ●音楽:フランシス・レイ●原作:エリック・シーガル●時間:99分●出演:ライアン・オニール/アリ・マックグロー/ジョン・マーレー/レイ・ミランド/キャサリン・バルフォー/シドニー・ウォーカー/ロバート・モディカ/ラッセル・ナイプ/トミー・リー・ジョーンズ ●日本公開:1971/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー(80-11-03)(評価★★★)●併映:「おもいでの夏」(ロバート・マリガン)/「フォロー・ミー」(キャロル・リード)
「ペーパー・ムーン」●原題:PAPER MOON●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督・製作:ピーター・ボグダノヴィッチ●脚本:アルヴィン・サージェント●撮影:ラズロ・コヴァックス●原作:ジョー・デヴィッド・ブラウン●時間:103分●出演:ラ
イアン・オニール/テータム・オニール/マデリーン・カーン/ジョン・ヒラーマン/P・J・ジョンソン/ジェシー・リー・フルトン/ェームズ・N・ハレル/リラ・ウォーターズ/ノーブル・ウィリンガム/ジャック・ソーンダース/ジョディ・ウィルバー/リズ・ロス/エド・リード/ドロシー・プライス/ドロシー・フォースター/バートン・ギリアム/ランディ・クエイド●日本公開:1974/03●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:名画座ミラノ(77-12-18)●2回目:名画座ミラノ(77-12-18)(評価★★★★☆)
「バリー・リンドン」●原題:BARRY LYNDON●制作年:1975年●制作国:イギリス・アメリカ●監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック●撮影:ジョン・オルコット●音楽: レナード・ローゼンマン●原作:ウィリアム・メイクピース・サッカレー●時間:185分●出演:ライアン・オニール/マリサ・ベレンソン/ハーディ・クリューガー/ゲイ・ハミルトン/レオナルド・ロッシーター/アーサー・オサリヴァン/ゴッドフリー・クイグリー/パトリック・マギー/フランク・ミドルマス●日本公開:1976/07●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:飯田橋・ギンレイホール(79-02-05)(評価★★★★)





ポスターに関して言えば、60年代よりも前のものの方がいいものが多いような印象を受けました。個人的には、「キング・コング」('33年)のポスターが見開き4ページにわたり紹介されているのが嬉しく、「『美女と野獣』をフロイト的に改作」したものとの解説にもナルホドと思いました。映画の方は、最近のリメイクのようにすぐにコングが出てくるのではなく、結構ドラマ部分で引っ張っていて、コングが出てくるまでにかなり時間がかかったけれど、これはこれで良かったのでは。当のコングは、ストップ・アニメーションでの動きはぎこちないものであるにも関わらず、観ている不思議と慣れてきて、ティラノサウルスっぽい「暴君竜」との死闘はまるでプロレスを観ているよう(コマ撮りでよくここまでやるなあ)。比較的自然にコングに感情移入してしまいましたが、意外とこの時のコングは小さかったかも...現代的感覚から見るとそう迫力は感じられません。但し、当時は興業的に大成功を収め(ポスターも数多く作られたが、本書によれば、実際の映画の中での
コングの姿を忠実に描いたのは1点[左上]のみとのこと)、その年の内に「コングの復讐」('33年)が作られ(原題は「SON OF KONG(コングの息子)」)公開されました。 「コングの復讐」('33年)[上]
因みに、アメリカやイギリスでは「怪獣映画」よりも「恐竜映画」の方が主に作られたようですが、日本のように着ぐるみではなく、模型を使って1コマ1コマ撮影していく方式で、ハル・ローチ監督、ヴィクター・マチュア、キャロル・ランディス主演の「紀元前百万年」('40年)ではトカゲやワニに作り物の角やヒレをつけて撮る所謂「トカゲ特撮」なんていう方法も用いられましたが、何れにしても動きの不自然さは目立ちます。そもそも恐竜と人類が同じ時代にいるという状況自体が進化の歴史からみてあり得ない話なのですが...。
この作品のリメイク作品が「恐竜100万年」('66年)で、"全身整形美女"などと言われたラクエル・ウェルチが主演でしたが(100万年前なのに
ラクェル・ウェルチがバッチリ完璧にハリウッド風のメイキャップをしているのはある種"お約束ごと"か)、やはりここでも模型を使っています。結果的に、ラクエル・ウェルチの今風のメイキャップでありながらも、何となくノスタルジックな印象を受けて、すごく昔の映画のように見えてしまいます(CGの出始めの頃の映画とも言え、なかなか微妙な味わいのある作品?)。

それが、その10年後の、ジョン・ギラーミン監督のリメイク版「キングコング」('76年)(こちらは邦題タイトル表記に中黒が無い)では、キング・コングの全身像が出てくる殆どのシーンは、リック・ベイカーという特殊メイクアーティストが自らスーツアクターとなって体当たり演技したものであったとのことで、ここにきてアメリカも、「ゴジラ」('54年)以来の日本の怪獣映画の伝統である"着ぐるみ方式"を採り入れたことになります(別資料によれば、実物大のロボット・コング(20メートル)も作られたが、腕や顔の向きを変える程度しか動かせず、結局映画では、コングがイベント会場で檻を破るワンシーンしか使われなかったという)。
「

代では「遊星よりの物体X」('51年)や「大アマゾンの半魚人」('54年)などのポスターがあるのが楽しく、50年代では日本の「ゴジラ」('54年)のポスターもあれば、「
「キャット・ピープル」はポール・シュレイダー監督、ナスターシャ・キンスキー主演で同タイトル「キャット・ピープル」('81年)としてリメイクされ(オリジナルは日本では長らく劇場未公開だったが1988年にようやく劇場公開が実現したため、多くの人がリメイク版を先に観たことと思う)、「遊星よりの物体X」は、ジョン・カーペンター監督によりカート・ラッセル主演で「遊星からの物体X」('82年)としてリメイクされています。
前者「キャット・ピープル」は、オリジナルでは、猫顔のシモーヌ・シモンが男性とキスするだけで黒豹に変身してしまう主人公を演じていますが、ストッキングを脱ぐシーンとか入浴シーン、プールでの水着シーンなどは当時としてはかなりエロチックな方だったのだろうなあと。実際に黒豹になる
場面は夢の中で暗示されているのみで、それが主人公の妄想であることを示唆しているのに対し、リメイク版では、ナスターシャ・キンスキーが男性と交わると実際に黒豹に変身します。ナスターシャ・キンスキーの猫女(豹女?)はハマリ役で、後日
「あの映画では肌を露出する場面が多すぎた」と述懐している通りの内容でもありますが、むしろ構成がイマイチのため、ストーリーがだらだらしている上に分かりにくいのが難点でしょうか。ナスターシャ・キンスキー自身は、「テス」('79年)で"演技開眼"した後の作品であるため、「肌を出し過ぎた」発言に至っているのではないでしょうか。「テス」は、19世紀のイギリスの片田舎を舞台に2人の男の間で揺れ動きながらも愛を貫く女性を描いた、文豪トマス・ハーディの文芸大作をロマン・ポランスキーが忠実に映画化した作品で、ナスターシャ・キンスキーの演技が冴え短く感じた3時間でした(ナスターシャ・キンスキーはこの作品でゴールデングローブ賞新人女優賞を受賞)。一方、「テス」に出る前年にナスターシャ・キンスキーは、スイスの全寮制寄宿学校を舞台に、そこにやって来たアメリカ人少女という
設定の青春ラブ・コメディ「レッスンC」('78年)に出演していて、そこでは結構「しっかり肌を出して」いたように思います。「レッスンC」は音楽は



「キング・コング」('33年)のリメイク、ジョン・ギラーミン監督の「キングコング」('76年)は、オリジナルは、ヒロイン(フェイ・レイ)に一方的に恋したコングが、ヒロインをさらってエンパイアステートビルによじ登り、コングの手の中フェイ・レイは恐怖のあまりただただ絶叫するばかりでしたが(このため、フェイ・レイ"絶叫女優"などと呼ばれた)、
リメイク版のヒロイン(ジェシカ・ラング)は最初こそコングを恐れるものの、途中からコングを慈しむかのように心情が変化し、世界貿易センタービルの屋上でヘリからの銃撃を受けるコングに対して「私といれば狙われないから」と言うまでになるなど、コングといわば"男女間的コミュにケーション"をするようになっています(そうしたセリフ自体は観客に向けての解説か?)。但し、「美女と野獣」のモチーフが、それ自体は「キング・コング」の"正統的"なモチーフであるにしてもここまで前面に出てしまうと、もう怪獣映画ではなくなってしまっている印象も。個人的には懐かしい映画であり、
興業的にもアメリカでも日本でも大ヒットしましたが、後に観直してみると、そうしたこともあってイマイチの作品のように思われました。ジェシカ・ラングも「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)で一皮むける前の演技であるし...2005年にナオミ・ワッツ主演の再リメイク作品が作られましたが、ナオミ・ワッツもジェシカ・ラング同様、以降の作品において"演技派女優"への転身を遂げています。
(●2017年に32歳のジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督による「キングコング:髑髏島の巨神」('17年/米)が作られた。シリーズのスピンオフにあたる作品とのことだが、主役はあくまでキングコング。1973年の未知の島髑髏島が
舞台で、一応、コングが島の守り神であったり、主人公の女性を救ったりと、オリジナルのコングに回帰している(一方で、随所にフランシス・フォード・コッポラ監督の「
込められているようだ)。ヴォート=ロバーツ監督自らが来日して行われた本作のプレゼンテーションに参加した
「

「キング・コング」●原題:KING KONG●制作年:1933年●制作国:アメリカ●監督:メリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサ
ック●製作:マーセル・デルガド●脚本:ジェームス・クリールマン/ルース・ローズ●撮影:エドワード・リンドン/バーノン・L・ウォーカー●音楽:マックス・スタイナー●時間:100分●出演:フェイ・レイ/ロバート・アームストロング/ブルース・キャボット/フランク・ライチャー/サム・ハーディー/ノーブル・ジョンソン●日本公開:1933/09●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★☆)●併映:「紀元前百万年」(ハル・ローチ&ジュニア)


「恐竜100万年」●原
題:ONE MILLION YEARS B.C.●制作年:1966年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ドン・チャフィ●製作:マイケル・カレラス●脚本:ミッケル・ノバック/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリッカート●撮影:ウィルキー・クーパー●音楽:マリオ・ナシンベーネ●時間:105分●出演:ラクエル・ウェルチ/ジョン・リチャードソン/パーシー・ハーバート/ロバート・ブラウン/マルティーヌ=ベズウィック/ジェーン・ウラドン●日本公開:1967/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:杉本保男氏邸 (81-02-06) (評価:★★★) Raquel Welch age71

「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシス/レスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作:レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)


ズビー●撮影:ジョン・ベイリー●音楽:ジョルジ
オ・モロダー(主題歌:








「キングコング」●原題:KING KONG●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:ジョン・バリー●時間:134分●出演:ジェフ・ブリッジス/ジェシカ・ラング/チャールズ・グローディン/ジャック・オハローラン /ジョン・ランドルフ/ルネ・オーベルジョノワ/ジュリアス・ハリス/ジョン・ローン/ジョン・エイガー/コービン・バーンセン/エド・ローター ●日本公開:1976/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:新宿プラザ劇場(77-01-04)(評価:★★★)![郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E9%83%B5%E4%BE%BF%E9%85%8D%E9%81%94%E3%81%AF%E4%BA%8C%E5%BA%A6%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%92%E9%B3%B4%E3%82%89%E3%81%99%20%5BDVD%5D.jpg)

ブ・ラフェルソン●脚本:デヴィッド・マメット●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マイケル・スモール●原作:ジェイムズ・M・ケイン「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●時間:123分●出演:ジャック・ニコルソン/ジェシカ・ラング/ジョン・コリコス/マイケル・ラーナー/ジョン・P・ライアン/ アンジェリカ・ヒューストン/ウィリアム・トレイラー●日本公開:1981/12●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:三鷹オスカー (82-08-07)●2回目:自由ヶ丘・自由劇場 (84-09-15)(評価★★★★)●併映:(1回目)「白いドレスの女」(ローレンス・カスダン(原作:ジェイムズ・M・ケイン))●併映:(2回目)「ヘカテ」(ダニエル・シュミット)


「キングコング:髑髏島の巨神」●原題:KONG:SKULL ISLAND●制作年:2017年●制作国:アメリカ●監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ●脚本:ダン・ギルロイ/マックス・ボレンスタイン/デレク・コノリー●原案:ジョン・ゲイティンズ/ダン・ギルロイ●製作:トーマス・タル/ジョン・ジャシュー/アレックス・ガルシア/メアリー・ペアレント●撮影:ラリー・フォン●音楽:ヘンリー・ジャックマン●時間:118分●出演:トム・ヒドルストン/
サミュエル・L・ジャクソン/ジョン・グッドマン/ブリー・ラーソン/ジン・ティエン/トビー・ケベル/ジョン・オーティス/コーリー・ホーキンズ/ジェイソン・ミッチェル/シェー・ウィガム/トーマス・マン/テリー・ノタリー/ジョン・C・ライリー●日本公開:2017/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:OSシネマズ ミント神戸 (17-03-29)(評価★★☆)

OSシネマズ ミント神戸 神戸三宮・ミント神戸(正式名称「神戸新聞会館」。阪神・淡路大震災で全壊した旧・神戸新聞会館跡地に2006年10月完成)9F~12F。全8スクリーン総座席数1,631席。





バルガス=リョサが1988年に発表した作品で(原題:Elogio de La Madrastra)、父親と息子、そして継母という3人家族が、息子であるアルフォンソ少年が継母のルクレシアに性愛の念を抱いたことで崩壊していく、ある種アブノーマル且つ"悲劇"的なストーリーの話。
当時からガルシア=マルケス、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、フリオ・コルタサルと並んでラテンアメリカ文学の四天王とでもいうべき位置づけにあった作家が、こうしたタブーに満ちた一見ポルノチックともとれる作品を書いたことで、発表時は相当に物議を醸したそうですが、バルガス=リョサの描く官能の世界は、その高尚な文学的表現のため、どことなく宗教的な崇高ささえ漂っており、「神話の世界」の話のようでもあります。そのことは、現在の家族の物語と並行して、ヘロドトスの『史記』にある、自分の妻の裸を自慢したいがために家臣に覗き見をさせ、そのことが引き金となって家臣に殺され、妻を奪われた、リディア王カンダウレスの物語や、ギリシャ神話の「狩りの女神」の物語が挿入されていることでより強まっており、更に、物語の展開の最中に、関連する古典絵画を解説的に挿入していることによっても補強されているように思いました。
ただ、個人的には、バルガス=リョサの他の作品にもこうした熟女がしばしば登場し、また、彼自身、19歳の時に義理の叔母と結婚しているという経歴などから、この人の"熟女指向"が色濃く出た作品のようにも思いました。それがあまりにストレートだと辟易してしまうのでしょうが、「現代の物語」の方は、ルクレシアの視点を中心に、第三者の視点など幾つかに視点をばらして描いていて、少年自身の視点は無く、少年はあくまでも無垢の存在として描かれており、この手法が、「穢れを知らない無垢な天使と肉感的な美の象徴であるヴィーナスが出会えばどうなるのか」というモチーフを構成することに繋がっているように思いました。



「エマニエル夫人」はいかにもファッション写真家から転身した監督(ジュスト・ジャカン)の作品という感じで、モデル出身のシルヴィア・クリステル(1952-2012/60歳没)が、演技は素人であるにしても、もう少し上手ければなあと思われる凡作でしたが、フランシス・ジャコベッティが監督した「続エマニュエル夫人」('75年)になっても彼女の演技力は上がらず、結局は上手くならないまま、シリーズ2作目、3作目(「さよならエマニュエル夫人」('77年))と駄作化していきました。内容的にも、第1作にみられた性に対する哲学的な考察姿勢は第2作、第3作となるにつれて影を潜めていきます。その間に舞台はタイ → 香港・ジャワ → セイシェルと変わり「観光映画」としては楽しめるかも知れないけれども...。でもあのシリーズがある年代の(男女問わず)日本人の性意識にかなりの影響を及ぼした作品であることも事実なのでしょう。
同じくシルヴィア・クリステル主演の、ロジェ・ヴァディムが監督した「華麗な関係」('76年/仏)も、かつてジェラール・フィリップ、ジャンヌ・モロー、ジャン=ルイ・トランティニャンを配したロジェ・ヴァディム自身の「危険な関係」('59年/仏)のリメイクでしたが、原作者のラクロが墓の下で嘆きそうな出来でした。
同じ年にシルヴィア・クリステルは、ヴァレリアン・ボロヴズィック監督の「夜明けのマルジュ」('76年/仏)にも出演していて(実はこれを最初に観たのだが)、アンドレイ・ピエール・マンディアルグ(1909 -1991)のゴンクール賞受賞作「余白の街」が原作で、1人のセールスマンが、出張先のパリで娼婦と一夜を共にした翌朝、妻と息子の急死の知らせを受け自殺するというストーリー。メランコリックな脚本やしっとりしたカメラワーク自体は悪くないのですが、「世界一美しい娼婦」という触れ込みのシルヴィア・クリステルが、残念ながら演技し切れていない...。
何故この女優が日本で受けたのかよく解らない...と言いつつ、自分自身もシルヴィア・クリステルの出演作品を5本以上観ているわけですが、個人的には公開から3年以上経って観た「エマニエル夫人」に関して言えば、シルヴィア・クリステルという女優そのものが受けたと言うより、ピエール・バシュレの甘い音楽とか(「続エマニュエル夫人」ではフランシス・レイ、「さよならエマニュエル夫人」ではセルジュ・ゲンズブールが音楽を担当、セルジュ・ゲンズブールは主題歌歌唱も担当)、女性でも観ることが出来るポルノであるとか、商業映画として受ける付加価値的な要素が背景にあったように思います(合計320万人の観客のうち女性が8割を占めたという(『
バルガス=リョサの熟女指向の話から始まって、ほとんどシルヴィア・クリステル談義になってしまいましたが、シルヴィア・クリステル主演の「エマニュエル夫人」はエマニュエル・シリーズの初映像化ではなく、この作品の5年前にイタリアで作られたチェザーレ・カネバリ監督、エリカ・ブラン主演の「アマン・フォー・エマニュエル(A Man for Emmanuelle)」('69年/伊)が最初の映画化作品です(日本未公開)。 
「シビルの部屋」のストーリーは、シビルという16歳の少女がポルノ小説を書こうと思い立って、憧れの中年男に性の手ほどきを受け、その体験を本にしたところベストセラーになってしまい、執筆に協力してくれた男を真剣に愛するようになった彼女は、今度は手を切ろうとする男に巧妙な罠をしかけて陥落させようとする...というもので、原作はエマニュエル・アルサンの半自伝的小説であり、アルサンは実際にこの作品に出てくる「ネア」という小説も書いている-と言うより、この映画の原作が「ネア」であるという、ちょっとした入れ子構造。映画化作品は、少女の情感がしっとりと描かれている反面、目的のために手段を選ばないやり方には共感しにくかったように思います。
「エマニエル夫人」のジュスト・ジャカン監督は、ポーリーヌ・レアージュのポルノグラフィー文学として名高いSM文学小説『
O嬢を演じたコリンヌ・クレリーが出た映画では、「ホテル」('77年/伊・西独)というものがあり、あらすじは以下の通り。
て「僕は観てないよ。要は、高級なポルノグラフィさ」と述べている)。全体の暗い雰囲気はいかにもドイツという感じ。これを観た「新橋文化」は山手線のガード下にあり、列車が通る度にガタガタうるさい音がするのが記憶に残っています。コリンヌ・クレリーは、この作品の後「007 ムーンレイカー」('79年/英)にも出演し、ロイス・チャイルズに次ぐ"第2のボンド・ガール"となりますが、歴代で最もセクシーなボンド・ガールだったとの声も一部にあるようです。

「エマニエル夫人」●原題:EMMANUELLE●制作年:1974年●制作国:フランス●監督:ジュスト・ジャカン●製作:イヴ・ルッセ=ルアール●脚本:ジャン=ルイ・リシャール●撮影:リシャール・スズキ●音楽:ピエール・バシュレ●原作:エマニュエル・アルサン「エマニュエル」●時間:91分●出演:シルヴィア・クリステル/アラン・キュニー/ダニエル・サーキー/クリスティーヌ・ボワッソン/マリカ・グリーン●日本公開:1974/12●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:三鷹オスカー(78-07-17)(評価:★★)●併映:「続・エマニエル夫人」(フランシス・ジャコベッティ)/「さよならエマニエル夫人」(フランソワ・ルテリエ)

「さよならエマニエル夫人」●原題:GOOD-BYE, EMMANUELLE●制作年:1977年●制作国:フランス●監督:フランソワ・ルテリエ●製作:イヴ・ルッセ=ルアール●脚本:


「華麗な関係」●原題:UNE FEMME FIDELE●制作年:1976年●制作国:フランス●監督:ロジェ・ヴァディム●製作:フランシス・コーヌ/レイモン・エジェ●脚本:ロジェ・ヴァディム/ダニエル・ブーランジェル●撮影:クロード・ルノワ●音楽:モルト・シューマン/ピエール・ポルト●原作:ピエール・コデルロス・ド・ラクロ「危険な関係」●時間:91分●出演:シルヴィア・クリステル/ジョン・フィンチ/ナタリー・ドロン/ジゼール・カサドジュ/ジャック・ベルティエ/アンヌ・マリー・デスコット/セルジュ・マルカン●日本公開:1977/05●配給:東宝東和●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-16)(評価:★☆)●併映:「エーゲ海の旅情」(ミルトン・カトセラス)/「しのび逢い」(ケビン・ビリングトン)
「夜明けのマルジュ」●原題:LA MARGE●制作年:1976年●制作国:フランス●監督:ヴァレリアン・ボロヴズィック●製作:ロベール・アキム/レイモン・アキム●撮影:ベルナール・ダイレ



「O嬢の物語」●原題:HISTOIRE D'O●制作年:1975年●制作国:フランス●監督:ジュスト・ジャカン●製作:エリック・ローシャ●脚本:セバスチャン・ジャプリゾ●撮影:ロベール・フレース●音楽:ピエール・バシュレ●原作:
「ホテル」●原題:KLEINHOFF HOTEL●制作年:1975年●制作国:イタリア・西ドイツ●監督:カルロ・リッツァーニ●製作:ジュゼッペ・ベッツァーニ●脚本:セバスチャン・ジャプリゾ●撮影:ガボール・ポガニー●音楽:ジョルジオ・ガスリーニ●原案:バレンティーノ・オルシーニ●時間:105分●出演:コリンヌ・クレリー/ブルース・ロビンソン/ケイチャ・ルペ/ウェルナー・ポチャス/ペーター・カーン/ミケーレ・プラチド - ペドロ ●日本公開:1981/05●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:新橋文化劇場(83-09-17)(評価:★☆)●併映:「ラストタンゴ・イン・パリ」(ベルナルド・ベルトリッチ)/「スキャンダ






それを知った娘ジャクリーヌ・ササールは泣きながら去り、後半は、ムッソリーニ政権の崩壊、新政権の誕生、イタリアの降伏という動乱の戦局の下、刹那的な恋に激しく燃える高官の息子トランティニャンと未亡人ロッシ・ドラゴの愛と別離が描かれています。
2人の「出会い」は海岸で、独軍機の威嚇飛行に人々が怯え逃げる際に、転んで泣いていた幼子をトランティニャンが助けたのが、ロッシ・ドラゴの娘だったというもの、「別れ」は、トランティニャンが兵役逃れを図りロッシ・ドラゴと逃避行を図る際に、列車が米軍機の爆撃を受け大勢の死者が出て、その中にその娘の亡骸を見つけて、彼女が現実に(乃至"罪の意識"に)目覚めるという、「出会い」も「別れ」も共に「爆撃機」と「娘」が絡んだものです。双葉十三郎氏は、「後半になって愛国モラルが顔を出すと、凡庸化していしまう」とsていますが、これは兵役を嫌がっていたトランティニャンが列車の被爆事故を機に女性と別れ、戦線に加わるというストーリーがいかにもという感じがするからでしょう。
戦時下の恋の物語ですが、当時のイタリアの上流階級の一部は、そうした戦局の最中に合コンみたいなパーティーをやったり、海水浴に興じたりしていたというのは、実際の話なのだろうなあと。ある種、集団的な"刹那主義"的傾向?(その反動で、或いはバランスをとるために、トランティニャンを兵役に行かせた?)。

「男と女」(Un homme et une femme、'66年/仏)もジャン・ルイ・トランティニャンが未亡人(スタントマンの夫を目の前で失った女アヌーク・エーメ)に絡むもので、こちらはトランティニャン自身も妻に自殺された男寡のカーレーサーという設定で、2人が知り合ったのは互いの子供が通う寄宿学校の送り迎えの場という、「激しい季節」同様に子供絡みです(カンヌ国際映画祭「グランプリ」(現在の最高賞パルム・ドールに相当)及び「国際カトリック映画事務局賞」、米国「アカデミー外国映画賞」「ゴールデングローブ賞外国語映画賞」受賞作)。
一作品の中でモノクロ、カラ―、セピア調などを使い分けるといった凝った映像のつくりです。但し、ストーリーそのものは個人的には結構俗っぽく感じられ、トランティニャンが鬱々として煮えたぎらずしょぼい恋愛モノという印象しか受けないの
最初から映像美と音楽を調和させることが最大の狙いで、ストーリーの方は意図的に通俗であることを図っていたのかも。ルイ・マル監督の「


「激しい季節」●原題:ESTATE VIOLENTA●制作年:1959年●制作国:イタリア●監督:ヴァレリオ・ズルリーニ●製作:シルヴィオ・クレメンテッリ●
脚本:ヴァレリオ・ズルリーニ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/ジョルジョ・プロスペリ●撮影:ティノ・サントーニ●音楽:マリオ・ナシンベ




「男と女」●原題:UN HOMME ET UNE FEMME(英:A MAN AND A WOMAN)●制作年:1966年●制作国:フランス●監督・製作:クロード・ルルーシュ●脚本:クロード・ルルーシュ/ピエール・ユイッテルヘーヴェン●撮影:クロード・ルルーシュ●音楽: