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フレディとメンバーの関係が美化されていたりもするが、ライブシーンは良かった。


「ボヘミアン・ラプソディ [DVD]」ラミ・マレック(フレディ・マーキュリー)
「ワルキューレ」('08年/米・独)のブライアン・シンガー監督が、イギリスのロックバンド「クイーン」のボーカルで、1991年にHIV感染合併症で45歳で亡くなったフレディ・マーキュリーに焦点を当て、1970年のクイーン結成から1985年の「ライブエイド」出演までを描いた伝記映画です。
第91回「アカデミー賞」で主演男優賞、編集賞、録音賞、音響編集賞の4冠に輝き、2019年1月には世界各国における収益の総計が、伝記映画として例のない9億ドル超(同年4月レートで約1,007億円)となりました。日本でも興行収入が130億円を超えたとのことで(英国の1.5倍以上。日本人はクイーンが好きな人が多いのだろなあ。クイーンのメンバーも日本が好きだったし)、音楽伝記映画の観客動員数で言うと、「アマデウス」('84年/米)あたりが国内の過去最高ではなかったかと思われますが、おそらくそれも超えたでしょう。
この映画では、自身の性的傾向に悩むフレディが描かれていて、個人的にはバレエダンサーのニジンスキーと、彼を育て愛人関係にもあったロシア・バレエ団の主宰者セルゲイ・ディアギレフを描いた「ニジンスキー」('80年/米)を想起しました(ニジンスキーは分裂症になり、破滅的な人生を送ることなるのだが)。昨今のLGBT映画の潮流に乗った印象もあります。
因みに、伝記映画にありがちですが、この映画でも事実と異なる点が多くあるようです。ざっと見ただけででも大小26か所あるとして、それらを列挙したサイトがありました。
例えばフレディがメアリー・オースティンと出会ったのは、映画では彼女がクイーンの前身の「スマイル」のライブを初めて観た日にライブハウスの廊下で偶然出会ったようになっていますが、実際はメアリーは最初メンバーのブライアン・メイと交際していたとか(このメアリーという女性はフレディの遺産の半分を相続した)、フレディがバンドに加わった経緯は、映画ではスマイルのライブを偶々観たフレディがブライアンとロジャー・テイラーに自己紹介してバンドに加わったように描かれていますが、実際は加入前から2人とは知り合いだったとか、映画では、フレディがCBSとソロ・アルバム契約を結んだことで「クィーン」は事実上解散状態になったように描かれていますが、実際には一度も解散状態に至ったことは無かったとか...。
したがって、映画では、解散期があったことで、また、エイズに罹ったフレディの体調が悪化しつつあったために、ライブ・エイドの本番1週間前になっても以前のような演奏は出来ず、観客をハラハラさせますが、実際にはクイーンとしての活動は絶えることなくずっと続いていて、ライブ・エイドの8週間前にはツアーの最後の日本公演を終えたところだったとのこと(ただし、内部でのフレディと他のメンバーとの関係は良くなかった?)。
「報知新聞」1991年11月26日
そして、これはかなり大きな改変だと思うのですが、映画ではライブ・エイドに向けたリハーサルをしている最中に、フレディは自分がHIVポジティブであることをメンバーに明かしますが、'85年の検査では彼はHIVネガティブであり、'87年頃の再検査でポジティブであることが初めて判明したようです。したがって、ライブ・エイドに向けたリハーサル中にフレディが自分がHIVポジティブだとメンバーに告白することはあり得ないことになります(映画にも登場するフレディの最後の恋人ジム・ハットンは、フレディは'87年4月には感染を認識していたと証言している。しかしそれを公にしたのは、彼が亡くなる前日の'91年11月23日だったと英紙は報じた)。
そして、この最後の改変点が、批評家が最も問題視している点であり、なぜならば、フレディの病気を知ったメンバーがそれを受け容れ、伝説となるライブをやってのけたというのが映画の肝(キモ)になっているためです。ブライアン・メイ、ロジャー・テイラーが製作に名を連ねているお墨付きの映画ですが、一方で、身内をよく描くという美化作用もあったりするのでしょう。
史実と異なる点についてブライアン・メイは、「ドキュメンタリーじゃないから、すべての出来事が順序立てて正確に描写されているわけじゃない。でも、主人公の内面は正確に描かれていると思う」「僕らは脚本を書いていないが、この映画でいくつかのを出来事が起きた時期をずらすことを許可している。20年もの出来事を2時間で伝えるためには、たくさんのことを圧縮したり、シャッフルしなくてはいけない」と述べています。
クイーンがライブ・エイドのステージ上でパフォーマンスを披露した時間がおおよそ21分であったことにちなんで、「魂に響くラスト21分」と映画のキャッチコピーにもありましたが、映画内では13分30秒に圧縮されているとのことです。逆にショット数の方は、ライブ・エイドの記録映像(YouTubeで視聴可)が21分を175のショットで構成しているのに対し、映画での再現シーンは13分30秒を約360のショットに割っていて、使われているショット数に倍以上の違いがあるそうです。
そうした効果もあったのかもしれませんが、映画におけるライブ・エイドのシーンは良かったです。後で映画撮影の舞台裏を明かすような内容のテレビ番組を見て知ったのですが、ライブシーンにおける観客席はほとんど合成で撮影されていました。観客エキストラは900人ほどで、それを画面いっぱいに"コピペ"したのです。それでも、映画を観ていて違和感が無かったです。
余談ですが、ブライアン・メイは2006年には、かねてより研究していた天文学についての本を2年半以上の時間を費やし執筆、2007年に天体物理を授与されていて、さらに、今年['22年]7月、英王立ハル大学より科学の名誉博士号を授与されましたが、スピーチで「唯一の正しい道はない」と述べています。これは、キャリアへの不安を持つ若者に対して、自身のキャリア(研究者→ミュージシャン→研究者と"回り道"(?)した)を振り返った上での励ましの言葉を送ったものであるとのことですが、この映画の表現にも当て嵌まる(彼が"当て嵌めて"言っている)ように思えました。
「ボヘミアン・ラプソディ」●原題:BOHEMIAN RHAPSODY●制作年: 2018年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ブライアン・シンガー●脚本・原案:アンソニー・マクカーテン●製作:グレアム・キング/ジム・ビーチ/ロバート・デ・ニーロ/ピーター・オーベルト/ブライアン・メイ/ロジャー・テイラー●撮影:ニュートン・トーマス・サイジェル●音楽:ジョン・オットマン●時間:134分●出演:ラミ・マレック/ルーシー・ボイントン/グウィリム・リー/ベン・ハーディ/ジョゼフ・マゼロ/エイダン・ギレン/トム・ホランダー/アレン・リーチ/マイク・マイヤーズ●日本公開:2018/11●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:OSシネマズ ミント神戸(19-01-01)(評価:★★★★)


フレデリック・ワイズマン監督の2011年発表のフランス・アメリカ合作作で、「BALLET/アメリカン・バレエ・シアターの世界」('95年)、「パリ・オペラ座のすべて」('09年)に続くダンスをテーマとした作品であり、有名なパリの老舗ナイトクラブ「クレイジーホース」に10週間、70時間密着したドキュメンタリーです。幻想的できらびやかなショーの模様から、そこで働く女性ダンサーたちの姿、スタッフや舞台裏、オーディションの風景なども収められています。
クレイジーホースには以前にスペイン旅行の帰りに寄ったパリの観光ツアーで行ったことがあり、懐かしかったですが、映画では、ショーそのものを見せるというより、練習風景と裏方の様子、そして完成形に近いダンスを見せるという点で、構成は前作の「パリ・オペラ座のすべて」と似ています。
フレデリック・ワイズマン監督のこの作品を観ると、舞台上で女性をもっとも美しく表現するためにはダンサーの美しさのみならず演出、音楽、衣装、小道具、照明等に工夫をこらさなければならないことが分かり、そうしたことに関わるスタッフの大変さや細やかさと、「世界最高のヌードショー」を自負するプライドが伝わってきました。
総監督がショーの質を上げるために一定期間休業しようと提案するものの、女性支配人が株主の指示が得られないとして反対するなどの生々しいやり取りもあります。総監督と監督の激論もあって、総監督のフィリップ・ドゥクフレは、1992年のアルベールビルオリンピックで僅か31歳にして開会式・閉会式の演出を担当したダンサー出身の振付師であり(オリンピックでのサーカスとダンスを融合させた演出は今も記憶に残っている。この人、近年では尊敬する
監督とダンサーたちの討議、ダンサーのくつろいでいる様子(ボリショイバレ団か何かのNG集ビデオを観て大笑いしている)、オーディションの様子などがあり、特にオーディションでは選ぶ側が最初から「あくまでボディライン」を見ると明言していました(だから開脚しなくてもいいとも言っていた)。
また、クレイジーホースには、女性同士でレズビアンを示唆するものやエレガントな形でマスターベーションを示唆する演目はあるものの(男性二人のタップダンスなどもある)、一方で、異性間の性交を示唆するようなものが一切ないのが面白いとも言っています。女性がひとり、あるいは女性同士のグループで見に来ることもあり、これも特筆すべきことであると。ナルホドと思いました。
「クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち」●原題:CRAZY HORSE●制作年: 2012年●制作国:フランス●監督.:フレデリック・ワイズマン●製作:ピエール=オリヴィエ・バルデ●撮影:ジョン・デイヴィ●時間:134分●出演:フィリップ・ドゥクフレ/フィリップ・ドゥワレ/フィリップ・ボウ/ナアマ・アルバ/ディーバ・ノヴィタ●日本公開:2012/06●配給:ショウゲート●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(22-10-18)(評価:★★★★)
フレデリック・ワイズマン(Frederick Wiseman、1930年1月1日-2026年2月16日)米映画監督、ドキュメンタリーの巨匠。

フレデリック・ワイズマン監督の2009年発表のフランス・アメリカ合作作で、フランス国王ルイ14世が権力を尽くして作り上げた世界最古のバレエ団「パリ・オペラ座」の舞台裏を84日完全密着して記録したドキュメンタリーです。公演では見られない、「エトワール」と呼ばれる最高位のダンサーたちの練習風景や、ダンサーたちを支えるスタッフの日常を映し出しています。
主な登場シーンとしては、エトワールやダンサーたちの稽古風景、舞台のリハーサル、ゲネプロ、公演のレセプション、大口寄付者への特典について話合うスタッフ、経営陣からダンサーに年金についての説明(ダンサーの定年は40歳のようだ)、運営についてのミーティング、メーク風景、食堂のランチ風景、音響テスト、裏方の衣装の制作、屋上でミツバチの巣箱からハチミツを採取するスタッフ(オペラ座の屋上で養蜂しているのは有名)などの多岐にわたるシーンが盛り込まれています。
特に稽古に関するシーンでは、メートル・ド・バレエ(振付師)との様々なやり取りや、役柄について芸術監督に直訴する場面などがあり、映画のメインとなっています。ダンスシーンに緊張感があって、ずっとそれだけ観ているとしんどい感じもしますが、ちょうど合間に、裏方の仕事ぶりなどの紹介があったりするので(ただし、全編を通じてノンナレーション)、それがいいアクセントになっていて、160分を飽きずに観ることができました(自分でもちょっと意外だった?)。


エトワールは皆、超一流であることが、素人目にも分かります。ダンスシーンは、前半の部分は主にパートごとの練習風景で、後半にいくと完成状態のリハーサルを主に見せるようになっていて、この構成も良かったです。また、コンテンポラリー・ダンスがバラエティに富んでいて、その力強さに圧倒されました。ただし、映像の中で芸術監督がコンテンポラリーを練習するダンサーが少ないと嘆いてました。興行としての裾野を広げていくのならば、コンテンポラリーの充実は不可欠であろうことは分かるように思いました。
パリ・オペラ座はほとんどがフランス人で占められており、またパリ・オペラ座バレエ学校出身者が多いため、外部からの入団は難しいとされていますが、オペラ座でプルミエール・ダンスーズとして活躍する日本人にオニール八菜(はな)がいて(父親はニュージーランド人のラグビー選手で、12年間にわたって伊勢丹ラグビー部でスクラムハーフとしてプレイ、母親は日本人)、もし最高峰「エトワール」に昇格すれば、日本人としてはもちろんアジア人としてオペラ座史上初の快挙となるため、期待されるところです(バレエ用品メーカーのチャコットは、オニール八菜をイメージ・キャラクターとして起用している)。
「パリ・オペラ座のすべて」●原題:LA DANSE - LE BALLET DE L'OPERA DE PARIS●制作年: 2009年●制作国:フランス●監督:フレデリック・ワイズマン●製作:フランソワ・ガズィオ/ピエール=オリヴィエ・バルデ/フレデリック・ワイズマン●撮影:ジョン・デイヴィ●時間:160分●出演:(エトワール)エミリー・コゼット/オーレリー・デュポン/ドロテ・ジルベール/マ
リ・アニエス・ジロ/アニエス・ルテステュ/デルフィーヌ・ムッサン/クレールマリ・オスタ/レティシア・プジョル/カデル・ベラルビ/マチュー・ガニオ/ジェレミー・ベランガール/マニュエル・ルグリ/ニコラ・ル・リッシュ/エルヴェ・モロー/ウィ
ルフリード・ロモリ/バンジャマン・ペッシュ/ジョゼ・マルティネス/(メートル・ド・バレエ、他)ブリジッド・ルフェーブル(オペラ座バレエ団芸術監督)/ローラン・イレール(メートル・ド・バレエ)/エマニュエル・ガット(メートル・ド・バレエ)/ウェイン・マクレガー(メートル・ド・バレエ)/アンジュラン・プレルジョカージュ(メートル・ド・バレエ)/マッツ・エック(メートル・ド・バレエ)/ピエール・ラコット(振付家)●日本公開:2009/10●配給:ショウゲート●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(22-10-04)(評価:★★★★)



1944年8月、第2次世界大戦の連合軍の反撃作戦が始まっていた頃、フランスの装甲師団とアメリカの第4師団がパリ進撃を開始する命令を待っていた。独軍下のパリでは地下組織に潜ってレジスタンスを指導するドゴール将軍の幕僚デルマ(アラン・ドロン)と自由フランス軍=FFIの首領ロル大佐(ブリュノ・クレメール)が会見、パリ防衛について意見を闘わしていた。左翼のFFIは武器弾薬が手に入りしだい決起すると主張、ドゴール派は連合軍到着まで待つという意見だった。パリをワルシャワのように廃墟にしたくなかったからだ。一方独軍のパリ占領軍司令官コルティッツ将軍(ゲルト・フレーベ)は連合軍の進攻と同時に、パリを破壊せよという総統命令を受けていた。将軍は工作隊に命じて、工場、記念碑、橋梁、地下水道など、ありとあらゆる建造物に対して地雷を敷設させていた。このような時に、イギリス軍諜報部から"連合軍はパリを迂回して進攻する"というメッセージがレジスタンス派に届いた。ロル大佐は自力でパリを奪回しようと決意し、これを知ったデルマは、これをやめさせる人間は政治犯として独軍に捕らえられているラベしかないと考え、ラベの妻フランソワーズ(レスリー・キャロン)とスウェーデン領事ノルドリンク(オーソン・ウェルズ)を動かして、ラベ救出を図ったが失敗、結局、ドゴール派と左翼派の会議の結果、決起が決まった。ドゴール派は市の要所を占領し、市街戦が始まった。パリ占領司令部は、独軍総司令部からパリを廃墟にせよという命令を受けていた上、市
街戦が長びけば爆撃機が出動すると告げられていた。コルティッツ将軍は、すでにドイツ敗戦を予想していて、パリを破壊することは全く無用なことと思っていた。そこでノルドリンク領事を呼び、一時休戦をしてパリを爆撃から守り、その間に連合軍を呼べと遠回しに謎をかける。ノルドリンクから事情を知ったデルマは、ガロア少佐(ピエー
ル・ヴァネック)を連合軍司令部に送った。ガロアはパリを脱出、ノルマンディの米軍司令部に到着した。パットン将軍(カーク・ダグラス)はパリ解放は米軍の任務ではないと告げ、ガロアを最前線のルクレク将軍(クロード・リッシュ)に送る。ルクレク将軍は事態の急を知ってシーバート将軍(ロバート・スタック)を動かし、ブラドリー将軍(グレン・フォード)を説いた。ブラドリーは全軍にパリ進攻を命令した。8月25日、ヒットラーの専用電話はパリにかかっていて"パリは燃えているか"と叫び続けていた―。
1966年の米・仏合作のオールスターキャスト戦争映画で、原作はラリー・コリンズ、ドミニク・ラピエールによるレジスタンスとパリの解放を描いたノンフィクション作品。「
群像劇の中で誰が主人公か敢えて言えば、ゲルト・フレーベが演じた"独軍のパリ占領軍司令官コルティッツ将軍だったかも。ヒトラーの信任が厚い人物ながら、パリの破壊と市民の人命を救うべく、ナチ親衛隊の命令を聞き流すなど面従腹背の腹芸をしたことが描かれています。ラストの方で、フランス軍の中尉が降伏要求と身柄確保に乗り込んで来るシーンがありますが、伝わるところでは、仏軍中尉は、司令官室に乗り込むと緊張のあまり「ドイツ語を話せるか」とドイツ語で叫んでしまい、それに対してコルティッツ将軍は「貴官よりいくらか上手だと思う」と余裕で答えたそうです。ただし、この逸話は映画では描かれていませんでした(代わりに、中尉が自分が敵将軍を逮捕するまでの人間になったと親に電話で報告する場面が描かれている)。

「パリは燃えているか」●原題:PARIS BRULE-T-IL ?/IS PARIS BURNING?●制作年: 1966年●制作国:アメリカ・フランス●監督:ルネ・クレマン●製作:ポール・グレッツ●脚本:ゴア・ヴィダル/


ある夜、タクシー運転手の小山田(林隆三)は、客の栗野(重田尚彦)を乗せて走っていると、前の車が急停車し、さらに車の前に女が飛び出してきて、それらを避けようとした小山田は思わずハンドルを大きく切り、その時道路脇に立っていた男・吉川を運悪く撥ねてしまう。小山田は業務上過失致死の罪で三年の実刑となり、妻・恵子(あべ静江)、一人息子と仲良く暮らしていた彼の人生は一変する。ところが、面会に来た会社の事故係・亀村(桑山正一)が妙なことを言う。「お前さんは嵌められたのかもしれんぞ」。その言葉を奇異に感じた小山田は、出所後、亀村に会いに行く。すると、亀村はタクシー会社を辞め、今では喫茶店のマスターになっていた。事故の裏に何が隠されているのか、小山田は真相を追求しようとするが、亀村は、あれは自分の思い込みだったと言う。その亀村がある日、ビルから落ちて、謎の死を遂げる―。
1982年12月7日「火曜サスペンス劇場」枠で放送。原作は松本清張が「小説新潮」に1967(昭和42)年2月から12月まで11回にわたって『十二の紐』と題して連載し、同年12月、新潮社より『
加山麗子演じる吉川の愛人(今は、山田吾一演じる、小山田のタクシーの前を走っていたクルマを運転していた浅野の愛人)・池内篤子が自殺するなど(彼女もわざと小山田のタクシーの前に飛び出してきた共犯者)、原作から多少の改変はありましたが(原作は自殺未遂(狂言自殺?)で、ドラマは浅野から持ち出された別れ話が原因の自殺か)、基本的な枠組みは変わっておらず、タクシー運転手・小山田の推理劇&復讐劇になっている分ドキドキ感とカタルシス効果があり、しかも先にも述べたように、林隆三が「ハードボイルド」していて渋かったです。
日活ロマンポルノ時代の加山麗子は, 長谷部安春(1932-2009)監督、内田裕也(1939-2019)主演の「エロチックな関係」('78年/日活)を池袋文芸地下で観ましたが、加山麗子(当時22歳
)も主演といっていい作品でした。併映が推理作家の小林久三原作、貞永方久監督の「錆びた炎」('77年/松竹)であったように、「エロチックな関係」もまた推理もの(探偵もの)で、ある女の浮気の調査を依頼された探偵が、予想もつかなかった連続殺人事件に巻き込まれていくという、レイモン・マルロー原作の「春の自殺者」の映画化ですが、何
か物足りなかった記憶があります。ただし、内田裕也のロマンポルノ出演作品の中では代表作とされていて、'92年に今度は内田裕也の製作・脚本で、内田裕也が前作と同じ探偵役でビートたけしが依頼人役、加山麗子が演じた探偵の妻兼秘書役(銃撃アクションシーンなどもある)を宮沢りえ(当時19歳)が同じく秘書役で演じたリメイク作品「エロティックな関係」('92年/松竹)が作られました(個人的にはリメイクの方は観ていない)。
「松本清張の交通事故死亡1名」●監督:貞永方久●プロデューサー:小杉義夫(日本テレビ)/鍋島壽夫●脚本:原寛司●音楽:大谷和夫●原作:松本清張●出演:林隆三/あべ静江/山田吾一/加山麗子/重田尚彦/桑山正一/山口美也子/戸浦六宏/木村元/青空球児・好児/奥野匡/小沢象/小田草之介/三島史郎、坂本由英、石井洋光、羽吹正吾、中沢青六、竹村晴彦、浦上喜久、谷本小代子、田村元治、井上れい子、小日向範成、上枝俊介、石原愛美、西村容子、鈴木恵美、青木啓二、青江薫、門間利夫、菊川予市、松原昇/平井千都/金原敬三/永淳●放送日:1982/12/07●放送局:日本テレビ(評価:★★★★)
「エロチックな関係」●制作年:1978年●監督:長谷部安春●製作:栗林茂●脚本:中島絋一/長谷部安春●音楽:A・イカルト・ルティアーニ●原作:レイモン・マルロー「春の自殺者」●出演:内田裕也/加山麗子/牧ひとみ/田中浩/井上博一/南条マキ/西村昭五郎/江角英明/岡尚美/梓ようこ/日野繭子/安岡力也/ジョー・山中●公開:1978/07●配給:日活●最初に観た場所:池袋文芸地下(80-07-04)(評価:★★☆)●併映:「錆びた炎」(貞永方久)



、門信徒を冒涜し、宗教活動を妨害する」との抗議を受け、交渉の結果、今後再放送を一切行わないこと、ビデオ化などの二次使用もしないという約束をもって妥結したそうです(犯人のネタバレになったが、読んでいて大体は途中で気づくと思う)。2002年にBSジャパンの「BSミステリー」枠で放映された(テレビ東京でも放映)岸本加世子版の方は、大地康雄が刑事役で出演しているので、犯人逮捕までいくのではないでしょうか。
買う女」('61年)などもそうでした。自分を裏切った男を殺害するのも同じですが、蓄財してアパートを建てるのも似ています。因みに、「鉢植を買う女」は完全犯罪で終わりますが(ドラマではなく原作)、こちらは、警視庁捜査一課の連中が高尾山に登って現場を検分し、容疑を固めたところで終わります。ドラマ化作品は1件のみで、1988年に関西テレビ制作・フジテレビ系列の「月曜サスペンス(松本清張サスペンス)」枠(22:30~23:24)にて「松本清張サスペンス 年下の男」として、小川真由美主演で放送されています(関西テレビ制作・月曜夜10時枠の連続ドラマ通称"月10"(1985-1996年)は1時間ドラマだった)。
女との密会に赴くが、当の女は風呂場で死んでおり、彼女を見捨ててこっそり逃げ帰る―。エリートにしては、最後、警官が訊いてもいないことを喋てしまったのは、ちょっとドジ過ぎるのでは。ドラマ化作品は、2008年にBSジャパンの「BSミステリー」枠で放映された(テレビ東京でも放映)「松本清張特別企画 不在宴会 死亡記事の女」があり、魚住一郎を三浦友和が演じています(どうやら平田満演じる出張で案内役を務めた男に脅迫されるらしい)。
【1974年文庫化・2009年改版[新潮文庫]】






松本清張の、1959年2月刊行の短編集『危険な斜面』収録作6編を所収。もう少しで完全犯罪が成立しそうだったり、事件が迷宮入りになったままで終わりそうだったりしたのが、偶然の事実やある人物の洞察によって、その壁が崩れ、事実が見えてきたといった展開のものをはじめ(「急な斜面」「投影」)、6編とも「意外な結末」という意味では共通していて、さすがに上手いなあと思いました。
「危険な斜面」(1959.2 オール読物)
「男というものは、絶えず急な斜面に立っている。爪を立てて、上にのぼっていくか、下に転落するかである」という一文が響く。秋場文作が用いたのは、超有名作「
「二階」(1958.1婦人朝日)
「婦人朝日」1958年1月号に掲載。坪川裕子という女性がこの家にやってきたのは偶然で、英二とどうだったかとうのも最後に明かされるが、二階で起きていることは何となく見当がつく。最後は妻のプライド、凄まじきかな、という感じ。'77年のTBS「東芝日曜劇場」のドラマ版は、若い妻が十朱幸代(1942年生まれ)なのに対して看護婦が10歳年上の渡辺美佐子(1932年生まれ)が演じて、その年齢差が逆にリアリティを醸していた。登場人物がほぼ3人きりの約45分のスタジオ収録ドラマだが、緊迫感があったように思う(視聴率21.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区))。
「失敗」(1958 新春号・別冊週刊サンケイ)
「投影」(1957.7読売倶楽部)
この短篇集に収録されている作品はすべてテレビドラマ化されていますが、その中でも表題作の「危険な斜面」が8回と多く(「投影」もいい作品だと思うが、ドラマ化回数がそう多くないのは、トリックの再現が難しいからではないか)、個人的は、2012年フジテレビの「松本清張没後20年特別企画・危険な斜面」(出演・渡部篤郎・長谷川京子・溝端淳平)を観ました。
原作では最後に刑事が出てきますが、ドラマでは赤井英和演じる刑事が最初は溝端淳平演じる沼田仁一に嫌疑をかけたことから、頭にきた沼田仁一から示唆されて渡部篤郎演じる秋場文作に接近するようになり、一方で沼田仁一も秋場文作を心理的に追い込み最後の結末に至るという、警察と沼田仁一が実は"共闘戦線"を張っていたというのは原作通りですが、刑事役に赤井英和を配して主要人物の1人としたことでその伏線が描かれている点が、原作との大きな違いだったでしょうか。それ以外は、「点と線」のトリックも、報道写真にたまたま写り込んでいたことによるアリバイ崩壊も活かされていて、オーソドックスな作りになっていたように思います(禿げ頭のはずの会長は、中村敦夫演じるダンディな男性に改変されていたが、長谷川京子演じる会長秘書・野関利江の手引きで渡部篤郎演じる秋場文作がどんどん出世していくのは原作とほぼ同じ)。
「二階」●監督:柳井満●プロデューサー:石井ふく子●脚本:服部佳●原作:松本清張「二階」●出演:十朱幸代/山口崇/渡辺美佐子/松下達夫/岡本茉利/山崎猛/多賀徳四郎/東村佳代●放映:1977/02/06(全1回)●放送局:TBS(評価:★★★★)
「松本清張没後20年特別企画・危険な斜面」●監督:赤羽博●プロデュー:岩崎文(ユニオン映画)●脚本:当摩寿史●サウンドデザイン:石井和之●原作:松本清張「危険な斜面」●出演:渡部篤郎/長谷川京子/溝端淳平/萩尾みどり/大路恵美/品川徹/梨本謙次郎/伊藤栞穂/長谷川朝晴/五辻真吾/木下政治/松川荘八/加藤満/旭屋光太郎/高品剛/有山尚宏/赤井英和/中村敦夫●放映:2012/09/30(全1回)●放送局:フジテレビ
•1990年「松本清張スペシャル・危険な斜面(日本テレビ)」古谷一行・池上季実子・松本留美・薬丸裕英
•2021年「