【3206】 ○ 貞永 方久 (原作:松本清張) 「松本清張の交通事故死亡1名 (1982/12 日本テレビ) ★★★★ (△ 長谷部 安春 (原作:レイモン・マルロー) 「エロチックな関係 (1978/07 日活) ★★☆)

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林隆三の渋い演技で、ハードボイルドタッチに仕上がっている佳作「交通事故死亡1名」。

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「松本清張の交通事故死亡1名」['82年/日テレ・火曜サスペンス劇場]林隆三/山田吾一
「交通事故死亡1名」01.jpg ある夜、タクシー運転手の小山田(林隆三)は、客の栗野(重田尚彦)を乗せて走っていると、前の車が急停車し、さらに車の前に女が飛び出してきて、それらを避けようとした小山田は思わずハンドルを大きく切り、その時道路脇に立っていた男・吉川を運悪く撥ねてしまう。小山田は業務上過失致死の罪で三年の実刑となり、妻・恵子(あべ静江)、一人息子と仲良く暮らしていた彼の人生は一変する。ところが、面会に来た会社の事故係・亀村(桑山正一)が妙なことを言う。「お前さんは嵌められたのかもしれんぞ」。その言葉を奇異に感じた小山田は、出所後、亀村に会いに行く。すると、亀村はタクシー会社を辞め、今では喫茶店のマスターになっていた。事故の裏に何が隠されているのか、小山田は真相を追求しようとするが、亀村は、あれは自分の思い込みだったと言う。その亀村がある日、ビルから落ちて、謎の死を遂げる―。

『死の枝』文庫1.jpg「交通事故死亡1名」0211.jpg 1982年12月7日「火曜サスペンス劇場」枠で放送。原作は松本清張が「小説新潮」に1967(昭和42)年2月から12月まで11回にわたって『十二の紐』と題して連載し、同年12月、新潮社より『死の枝』と改題されて刊行された連作短編集の第1話「交通事故死亡1名」。林隆三の渋い演技で、ハードボイルドタッチに仕上がっており、ドラマとして佳作だと思います(視聴率21.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区))。

 原作では、物語の探偵役が会社の事故係の亀村で、小山田が服役中に事故の真相に迫りますが、ドラマでは、林隆三が演じる事故を起こしたタクシー運転手の小山田が、交通刑務所で服役して、出所後に自ら事件の真相を探るという具合に改変されています。実は亀村も小山田が服役中に事件の真相には気づいていて(それが「お前さんは嵌められたのかもしれんぞ」という言葉に繋がる)、ただし、途中から犯人を恐喝する側に回ったようで、それで今は脅し取った金を元手に喫茶店を開き、そのオーナーになっているが。金を脅し取り続けているうちに殺害されたということです。

「交通事故死亡1名」031.jpg 加山麗子演じる吉川の愛人(今は、山田吾一演じる、小山田のタクシーの前を走っていたクルマを運転していた浅野の愛人)・池内篤子が自殺するなど(彼女もわざと小山田のタクシーの前に飛び出してきた共犯者)、原作から多少の改変はありましたが(原作は自殺未遂(狂言自殺?)で、ドラマは浅野から持ち出された別れ話が原因の自殺か)、基本的な枠組みは変わっておらず、タクシー運転手・小山田の推理劇&復讐劇になっている分ドキドキ感とカタルシス効果があり、しかも先にも述べたように、林隆三が「ハードボイルド」していて渋かったです。

 それと、原作では明かされていないタクシーの客の栗野と、前を走っていた車を運転していた浅野の関係が(原作は、探偵役の亀村がこれから栗野から聞き出すというところで終わっている)、ドラマでは商品の横流しという経済犯罪が背景となっていることが窺え、犯行の動機が示されているのも親切だったと思います。

 また、事故で亡くなったヤクザ男の吉川の未亡人役の山口美也子、警視庁捜査1課の刑事役の戸浦六宏など、脇役陣もしっかりしていたように思います。あべ静江(1951年生まれ)、加山麗子(1956年生まれ)といった女優も懐かしいです。特に加山麗子は、「日活ロマンポルノの清純派」(こういうよく分からない路線があった)として人気を得た後、多くのテレビドラマに出演したかと思ったら、20代で引退してしまったからちょっと懐かしかったりもします。

(上から)
林隆三/あべ静江
山口美也子
加山麗子

「エロチィック関係」 1978p.jpg「エロチィック関係」 1.jpg 日活ロマンポルノ時代の加山麗子は, 長谷部安春(1932-2009)監督、内田裕也(1939-2019)主演の「エロチックな関係」('78年/日活)を池袋文芸地下で観ましたが、加山麗子(当時22歳)も主演といっていい作品でした。併映が推理作家の小林久三原作、貞永方久監督の「錆びた炎」('77年/松竹)であったように、「エロチックな関係」もまた推理もの(探偵もの)で、ある女の浮気の調査を依頼された探偵が、予想もつかなかった連続殺人事件に巻き込まれていくという、レイモン・マルロー原作の「春の自殺者」の映画化ですが、何「エロチックな関係」加山・内田1.jpgか物足りなかった記憶があります。ただし、内田裕也のロマンポルノ出演作品の中では代表作とされていて、'92年に今度は内田裕也の製作・脚本で、内田裕也が前作と同じ探偵役でビートたけしが依頼人役、加山麗子が演じた探偵の妻兼秘書役(銃撃アクションシーンなどもある)を宮沢りえ(当時19歳)が演じた(秘書役)リメイク作品「エロティックな関係」('92年/松竹)が作られました(個人的にはリメイクの方は観ていない)。
「エロティックな関係」('92年/松竹)宮沢りえ/ビートたけし/内田裕也
「エロティックな関係」図3.jpg


「交通事故死亡1名」041.jpg「松本清張の交通事故死亡1名」●監督:貞永方久●プロデューサー:小杉義夫(日本テレビ)/鍋島壽夫●脚本:原寛司●音楽:大谷和夫●原作:松本清張●出演:林隆三/あべ静江/山田吾一/加山麗子/重田尚彦/桑山正一/山口美也子/戸浦六宏/木村元/青空球児・好児/奥野匡/小沢象/小田草之介/三島史郎、坂本由英、石井洋光、羽吹正吾、中沢青六、竹村晴彦、浦上喜久、谷本小代子、田村元治、井上れい子、小日向範成、上枝俊介、石原愛美、西村容子、鈴木恵美、青木啓二、青江薫、門間利夫、菊川予市、松原昇/平井千都/金原敬三/永淳●放送日:1982/12/07●放送局:日本テレビ(評価:★★★★)

「エロチィック関係」 1978.jpg「エロチィック関係」 2.jpg「エロチックな関係」●制作年:1978年●監督:長谷部安春●製作:栗林茂●脚本:中島絋一/長谷部安春●音楽:A・イカルト・ルティアーニ●原作:レイモン・マルロー「春の自殺者」●出演:内田裕也/加山麗子/牧ひとみ/田中浩/井上博一/南条マキ/西村昭五郎/江角英明/岡尚美/梓ようこ/日野繭子/安岡力也/ジョー・山中●公開:1978/07●配給:日活●最初に観た場所:池袋文芸地下(80-07-04)(評価:★★☆)●併映:「錆びた炎」(貞永方久)
ロマンポルノ45周年記念・HDリマスター版「ゴールドプライス3000円シリーズ」DVD エロチックな関係」['20年]

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