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山崎努が演じる"父"老人が破天荒で人間臭く面白い。死して後に何かを遺した?


「あの頃映画 「あ、春」 [DVD]」佐藤浩市/山崎努/斉藤由貴
一流大学を出て証券会社に入社、良家のお嬢様・瑞穂(斉藤由貴)と逆玉結婚して可愛いひとり息子にも恵まれた韮崎紘(佐藤浩市)は、ずっと自分は幼い時に父親と死に別れたという母親の言葉を信じて生きてきた。ところがある日、彼の前に父親だと名乗る男が現れたのである。ほとんど浮浪者としか見えないその男・笹一(山崎努)を、俄かには父親だと信じられない紘。だが、笹一が喋る内容は、何かと紘の記憶と符合する。しかも、実家の母親・公代(富司純子)に相談すると、笹一はど
うしようもない男で、自分は彼を死んだものと思うようにしていたと言う。笹一が父親だと知った紘は、無碍に彼を追い出すわけにもいかず、同居する妻の母親・郁子(藤村志
保)に遠慮しながらも、笹一を家に置くことにした。しかし、笹一は昼間から酒を喰らうわ、幼い息子にちんちろりんを教えるわ、義母の風呂を覗くわで紘に迷惑をかけてばかり。堪忍袋の緒が切れた紘は笹一を追い出すが、数日後、笹一が酔ったサラリーマン(木下ほうか)に暴力を振るわれているのを助けたことから、再び家に連れてきてしまう。図々しい笹一はそれからも悪びれる風もなく、ただでさえ倒産が囁かれる会社が心配でならない紘の気持ちは休まることがない。そんなある日、笹一の振る舞いを見かねた紘の実家の母・公代が来て、紘は笹一との子ではなく、自分が浮気してできた子供だと告白する。その話に身に覚えのある笹一は、あっさりその事実を認めるが、紘の心中は複雑だ。ところが、その途端に笹一が倒れてしまう。医師(塚本晋也)の診断では、末期の肝硬変。笹一は入院生活を強いられ、彼を見舞う紘は、幼い頃に覚えた船乗りの歌を笹一が歌っているのを聞いて、彼が自分の父親にちがいない、と思うのだった。しばらくして、ついに紘の会社が倒産する―。

'98年公開の相米慎二(1948-2001/享年53)監督のホームドラマ的作品で、第73回(1999年度)「キネマ旬報ベストテン」第1位、第49回ベルリン国際映画祭「国際批評家連盟賞」受賞作品。原作は村上政彦『ナイスボール』('91年/福武書店)。証券会社勤務のサラリーマン(佐藤浩市)で、良家の娘(斉藤由貴)と結婚し、一人息子をもうけ、義母(藤村志保)と同居する、そんな主人公の家庭に、5歳の時に死別したと母(富司純子)から聞かされていた父(山崎努)が突然の闖入者としてやって来たという話です。
この、山崎努が演じる"父"老人がなかなか破天荒で人間臭く面白いです。末期の肝硬変だとわかって入院生活を余儀なくされた彼と佐藤浩市演じる息子が、病院の屋上で船乗りの歌を歌って親子であることを感じるシーンは、美しかったです。結局、母親・郁子(藤村志保)の証言によれば、血は繋がっていないが、5歳まで一緒にいたため幼児記憶がある、つまり「心の父親」であるということでしょう。
その「心の父親」笹一が息を引き取り、紘(佐藤浩市)は死に目に会うことは叶いませんでしたが、笹一のお腹に、彼がこっそり温めて孵化したチャボの雛を見つけます(雛の孵化に失敗するというシチュエーションも用意されていたそうだが、それだと、「あ、春」というタイトルにならないのでは)。紘の会社は倒産しますが(1997年11月に自主廃業した山一証券がモデルか)、紘は既に、笹一のように強く生きていける自信を彼から授かったように見えます。
ラストの笹一の遺体を荼毘に付した紘たちが、彼の遺灰を故郷の海に船に乗って撒くシーンも良かったです。妻・瑞穂(斉藤由貴)、義母・郁子(藤村志保)、母・公代(富司純子)、笹一の愛人(三林京子)の4人の女性が、強風の中、髪を振り乱して散骨している様はなぜか仄々(ほのぼの)とした気持ちにさせられ、ユーモラスでもあります。何となく亡くなった笹一が、紘に限らず後の人々に何かを遺したことが感じられるラストでした。


「あ、春」●制作年:1998年●監督:相米慎二●製作:中川滋弘●脚本:中島丈博●撮影:長沼六男●音楽:大友良英●原作:村上政彦「ナイスボール」●時間:100分●出演:佐藤浩市/山崎努/斉藤由貴/藤村志保/富司純子/三浦友和/三林京子/岡田慶太/村田雄浩/原知佐子/笑福亭鶴瓶/塚本晋也/河合美智子/寺田農/木下ほうか/掛田誠/余貴美子●公開:1998/12●配給:松竹●最初に観た場所:神田・神保町シアター(23-02-12)(評価:★★★★)



南北戦争が終り、解放された黒人奴隷のジョー(ロナルド・ネルソン)は、弟サム、従兄ルイ、叔父ボブの3人に再会した。彼らはニューオリンズから船に乗り故郷アフリカへ帰るはずが、メキシコ商人に騙されて香港行きの船に乗せられる。ある日、病気で死んだボムを残し、大嵐の中ボートで脱出を図った3人は駿河湾の庵原藩に助けられる。海郷亮勝(古谷一行)が藩主の庵原藩は、薩摩藩と幕府の中間に位置しているため、家老の石出九郎左衛門(財津一郎)は薩摩
か幕府のどちらにつくべきか悩んでいる。しかし亮勝はどこかうわの空。そんな時、黒人3人が流れ着いたとの一報が入る。亮勝は興味津々で彼らに会いたいと言うが、それを許そうとしない九郎左衛門は、医者の玄斎(殿山泰司)に作らせた眠り薬を使い、彼らを地下牢に閉じ込める。下手な篳篥を演奏するのが趣味の亮勝は、彼らは楽隊ではないかと玄斎から伝え聞き、何とか彼らと会うよう画策する。そして、念願を果たすや、音楽好きの亮勝は彼らの演奏するジャズの虜となり―。


岡本喜八監督の1986(昭和61)年公開作で、原作は筒井康隆の短編集『エロチック街道』('81年/新潮社)の1篇(文庫化後、映画化の際に書名が『ジャズ大名』に改められて表題作となった)。製作会社は大映、配給会社は松竹で、同年キネマ旬報ベストテンで10位となり、映画化困難といわれる筒井原作の映画では初のランクインとなっています。
藩主役の古谷一行と家老役の財津一郎のやり取りが楽しい。原作にある庵原藩の屋敷の特異な形状もしっかり再現されており、百畳敷以上の大広間(これが街道上に位置するため、伊勢参りや敗れた幕府軍、追う官軍などが行き来することになる)のセットは東宝スタジオに建てられ、音楽監督とプロデューサーを除くメ
インスタッフ全員が東宝から起用されたとのことです。
に、戦争なんて馬鹿らしいというメッセージが込められていたように思います。
昭和23年。ビルマ戦線から復員した重左こと宗重左衛門(真田広之)は、戦友の鬼庄こと鬼松庄一(佐藤浩市)と遊郭で再会し、仲間の伝次郎(堀弘一)と共に海賊して瀬戸内海を股にかけていた。ある日、三人が襲撃した船に洋子(安田成美)という名の少女が乗っており、鬼庄は彼女を色街に売って金を得ようとしていた。しかし重左は影のある彼女に惹かれ、鬼庄の計画を思いとどまらせることに成功する。洋子の嫁ぎ先は瀬戸内海を牛耳る新興やくざ・花万に捜索を依頼。そして、花万の番頭・火つけ柴(蟹江敬三)が五貫島に現われ、3日後に洋子を渡すように要求してきた。大分・竹田津の実家まで送り届けると洋子に約束した重左は、高松の元やくざ・阿波政(西村晃)に助けを求めに行くが、その間洋子は火つけ紫に連れ去られてしまう。闇ブローカーの岩テコ(平田満)から火つけ紫の妾の居場所を聞いた重左たちは、その女・千佳(今井美樹)を攫って人質交換を目論み、小型船の梵天丸で西枯木島にある火つけ紫の本拠地に乗り込むが―。
井筒和幸監督作で、荒れ狂う海の上での真田広之と佐藤浩市の活躍が観られます(この二人のW主演はある種"貴重映像"かも。「
今井美樹が唯一ヌードになった映画がこの作品とのことです。ホンダ・トゥデイのCM('85年)に出ていた彼女。個人的には、新車発表会で"ナマ今井美樹"見たこともあり思い入れがあったのですが、その彼女をこうした使い方をして大丈夫なのかなあと、当時思ったりもしました。しかしながら、今井美樹自身は、引き続きNEWトゥデイのCM('88年)にも'91年まで出ていて('93年に2代目イメージガール・牧瀬里穂にバトンタッチ)、その後も歌手、女優として幅広く活躍しています(1999年に布袋寅泰と結婚)。
井筒和幸監督自身は当時のことをどう振り返っているのかと思ったら、「日刊ゲンダイDIGITAL」の連載コラム(2020年9月26日配信)に《新人の今井美樹嬢を丸裸にさせたり、船上で尻をまくって海にオシッコさせたり、キスを何十回と連続でテークしたりした。彼女は耐えに耐えて夢中で演じた。熱い時代だった。今はキスも嫌う女優もどきがいる。ご清潔なものだ》と書いていて、この発言が今年['22年]になってツイッター民により引用・拡散されたことで物議を醸しているようです。
「ジャズ大名」●制作年:1986年●監督:岡本喜八●脚本:岡本喜八/石堂淑朗●製作:室岡信明●撮影:加藤雄大●音楽:筒井康隆/山下洋輔●原作:筒井康隆●時間:85分●出演:古谷一行/財津一郎/神崎愛/岡本真実 /殿山泰司/本田博太郎/今福将雄/小川真司/利重剛/ミッキー・カーチス/唐十郎 (友情出演)/ロナルド・ネルソン/ファーレズ・ウィテッド/レニー・マーシュ/ジョージ
・スミス/六平直政/山下洋輔(特別出演)/タモリ(特別出演)●公開:1986/04●配給:松竹(評価:★★★☆)●最初に観た場所:渋谷松竹(86-05-04)(評価:★★★☆)●併映:「犬死にせしもの」(井筒和幸)
男●音楽:武川雅寛(主題歌:桑名晴子)●原作:西村望「犬死にせしものの墓碑名」●時間:92 分●出演:真田広之/佐藤浩市/安田成美/平田満/堀弘一/梅津栄/今井美樹/風祭ゆき/水木薫/吉行和子/蟹江敬三/木之元亮/中村玉緒(特別出演)/西村晃/堤真一(チンピラ 役)●公開:1986/04●配給:松竹●最初に観た場所:渋谷松竹(86-05-04)(評価:★☆)●併映:「ジャズ大名」(岡本喜八)





借金まみれのディスコ・バーズのオーナー・万代(佐藤浩市)、男性相手のコールボーイ・三屋(本木雅弘)、元刑事・氷頭(根津甚八)、リストラされたサラリーマン・荻原(竹中直人)、パンチドランカーの元ボクサー・ジミー(椎名桔平)。社会から弾き出された5人は大胆にも暴力団・大越組の事務所から大金を強奪する計画を企て、辛くも成功する。しかし、ジミーを拷問し万代たち5人の仕業と突き止めた大越組は、二人組のヒットマン・京谷(ビートたけし)と柴田(木村一八)を雇って報復に出る―。
1995年に公開された石井隆監督による「スタイリッシュバイオレンス・アクション映画」作品とのこと。ヤクザの資金強奪計画を企てた男たちの壮絶な運命を描いています。当初の公開は8月中旬を予定していたのが、内容的に重いので夏場の番組として相応しくないとのことで9月公開になったそうです。
'95年度の「キネマ旬報ベストテン」でベスト10入りはしていませんが、「読者選出ベスト・テン」の方で4位にランクインしていて、この辺りも何となくわかる気がします。人気を受けてか、翌年に
は「GONIN2」('96年/松竹)が緒形拳、大竹しのぶ主演で撮られていますが、これはまったく別のストーリーです。
佐藤浩市、本木雅弘、竹中直人、そして殺し屋役のビートたけし等々の怪演が見られるのは貴重で、さらにその上に君臨するのが「
ストーリーが各々の破滅に向かっていくことは想像に難くなく、椎名桔平演じるジミーは恋人のナミィー(横山めぐみ(「
ただ、後半、竹中直人演じるリストラされたことを家族に言えないサラリーマンの荻原だけでなく、根津甚八演じる氷頭までが、離婚こそしてはいるが「家庭人」になっていて、愛する者が殺されるというシビアな状況に持ち込むための設定なのもしれませんが、切りたくても切れない家族の関係というか、スタイリッシュでなくなってきたような気がしました(ラストで本木雅弘演じる三屋の手に万代の遺骨があるが、誰に届けるつもりかと思ったら、シリーズ第3作で本作の正統派続編である「GONIN サーガ」では、万代にも妻子がいることが判明する)。

ビートたけしの殺し屋は、やっぱりビートたけしにしか見えない(笑)というのはありますが、一応は最後までバイオレンス・アクションではありました。そんな中、竹
中直人演じるサラリーマン荻原が、大金の強奪を終えて自宅に戻ってきたところだけはホラーだったなあ。「大仕事してきたんだよ~」とご機嫌で妻(夏川加奈子)と風呂に入るが...。この"ホラー"の場面が一番秀逸だったかも。ピアノをたしなむ荻原の娘を演じていたのは、当時10歳の栗山千明。彼女、初期はホラー専門だった? 
「GONIN」●制作
年:1995年●監督・脚本:石井隆●製作総指揮:奥山和由●撮影:佐々木原保志●音楽:安川午朗(挿入歌:ちあきなおみ「紅い花」)●時間:103分●出演:佐藤浩市(万代樹彦、ディスコ「Birds」のオーナー)/本木雅弘(三屋純一、金持ちの男相手のコールボーイを装い金を巻き上げている)/根津甚八(氷頭要、元刑事、現在は場末のキャバレー「ピンキー」にて用心棒)/椎名桔平(ジミー、元ボクサーで大越組のチンピラ、新
宿のバッティングセンターでも働いている)/竹中直人(荻原昌平、リストラされたサラリ
ーマン)/ビートたけし(京谷一郎、式根に雇われた殺し屋、一馬とはサディスティックな恋仲)/木村一八(柴田一馬、京谷の相棒兼恋人)/鶴見辰吾(久松茂、大越組の若頭)/横山めぐみ(ナミィー、ジミーの恋人。タイ出身で大越組にパスポートを奪われ売春婦をやっている) /永島敏行(大越組の組長)/室田日出男(式根、数々の暴力団を束ねる五誠会の会長)/永島暎子(早
紀、氷頭の元妻。右足に障害がある)/川上麻衣子(ぼったくりキャバレー「ピンキー」の摺れたホステス)/滝沢涼子(「ピンキー」のホステス)/五十嵐瑞穂(氷頭の娘)/夏川加奈子(萩原の妻)/栗山千明(荻原の娘。ピアノをたしなむ)/山田哲也(荻原の息子)/不破万作(ピンキーのマスター)/松岡俊介(式根専属ドライバー)/伊藤洋三郎(式根ボディーガード)/飯島大介(野本)/岩松了(トイレの男)/小形雄二(高速バス運転手)/津田寛治(暴力団組員)/渡辺真起子(ディスコの客)●公開:1995/09●配給:松竹●最初に観た場所:シネマブルースタジオ(21-07-28)(評価:★★★☆)

産業スパイ組織・AN通信の諜報員・鷹野(藤原竜也)と、相棒の田岡竹内涼真)。彼らには、24時間ごとにAN通信へ定期連絡しなければ爆死する爆弾を埋め込まれている。彼らは今ある太陽光エネルギーの開発技術に関する国際的な争奪戦の最中にいた。他国のスパイや各国の権力者たちと対峙する中、鷹野の商売敵のデイビッド・キム(ピョン・ヨハン)や謎の女AYAKO(ハン・ヒョジュ)らが暗躍する―。
原作はスパイ合戦がかなり複雑に入り組んでいて、読んだのは8年くらい前なので、映画を観ながらストーリーの細部を思い出せるかなあと思ったけれども、結果的には、映画を観てもよく分からなかった部分が多かったという感じです。
ただ、映画というものはアクションだけでは成り立たず、ドラマ部分がしっかりしていてこそ印象に残るものとなるはずですが、ドラマ部分がやや弱かったでしょうか。と言うより、見始めてから、何か違うなあと思ったら、鷹野の生い立ちを巡るシリーズ第2作『森は知っている』も取り入れて2作を1本にまとめ、今起きていることと鷹野の過去の、高校時代や子ども時代のこととが交互に出てくる構成でした。
この構成自体が悪いとは思わないですが、本2冊分を1作に詰め込んだことで犠牲になったのが、プロット部分の描写だったように思います。説明的になり過ぎて全体のテンポが悪くなるのを避けるために敢えてそうしたのかもしれませんが、内容が飛び飛びになってサスペンス的な要素が抜けてしまったように思います。原作を読まずに観た人は、おそらく話の展開についけなかったのではないでしょうか。その分、鷹野の子ども時代や学校時代の描写がしっかりしていればまだいいのですが、どの演技シーンも何となく"作った"感があってイマイチでした(鷹野の学校時代の想い人・菊池詩織を演じた南沙良は、目下「演技修行中」といったところか)。
でも、大人の俳優陣が頑張った迫真のアクションシーンが思ったより良かったので、評価は「○」にしておきます。原作を読んだとき、鷹野やAYAKOの役を演じきれる役者はあまりいないように思いましたが、藤原竜也は意外と健闘したのではないかと思います("動"だけでなく"静"の演技もできるのが大きい)。この人は、以前にNHKのドラマ「海底の君へ」('16年)で演じた、中学の時に受けたいじめの後遺症に苦しみ、15年後に開かれた同窓会で爆弾を手に元いじめっ子へ復讐しようとする青年役のような、トラウマかな何かを負って、心に暗~い陰を持つ人間の役が似合うように思います。泳ぎが苦手な所謂"金槌"だったらしいけれど、あのドラマの時も今回も〈水〉と格闘していました(泳げるようになった?)。
一方、AYAKOの役は、原作が出たころ巷では「ルパン三世」の峰不二子が相応しいとの声を聞きましたが(いきなりアニメに行っちゃうのか)、誰が演じるのかと思ったら、日本人女優ではなく、映画「王になった男」('12年/韓国)でイ・ビョンホンと共演したハン・ヒョジュでした(日本人で見つからなかったのか、デイビッド・キムを演じたピョン・ヨハンとセット売りだったのか。それにしても、映画そものものに対してもそうだが、俳優の発掘・育成においても、今や韓国の方が日本より圧倒的にお金をかけている)。でも、ハン・ヒョジュの役名は原作通りAYAKOのままだったので、韓国語訛りの日本語が気になりました。
「海底の君へ」●演出:石塚嘉●作:櫻井剛●制作統括:中村高志●音楽:大友良英●出演:藤原竜也/成海璃子/水崎綾女/市瀬悠也/忍成修吾/淵上泰史/落合モトキ/近藤芳正/神戸浩/モロ師岡/麿赤兒●放映:2016/2/20(全1回)●放送局:NHK
「太陽は動かない」●制作年:2020年●監督:羽住英一郎●製作:武田吉孝/大瀧亮/森井輝/小出真佐樹/古屋厚●脚本:林民夫●撮影:江崎朋生●音楽:菅野祐悟(主題歌:King Gnu「泡」)●原作:吉田修一『太陽は動かない』『森は知っている』●時間:110分●出演:藤原竜也/竹内涼真/ハン・ヒョジュ/ピョン・ヨハン/市原隼人/南沙良/日向亘/加藤清史郎/横田栄司/翁華栄/八木アリサ/勝野洋/宮崎美子/鶴見辰吾/佐藤浩市●公開:20211/03●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:TOHOシネマズ上野(スクリーン3)(21-03-06)(評価:★★★☆)

TOHOシネマズ上野



吉村正子(藤山直美)は尼崎の実家のクリーニング屋の二階でかけはぎの仕事をしている。妹の由香里(牧瀬里穂)は、正子とは性格も顔も真逆で、引き籠もりの正子に皮肉を言い馬鹿にする。ある日、正子の母・常子(渡辺美佐子)が仕事中に倒れ、急死する。ショックで葬儀の日も二階に籠りきりの正子に由香里の怒りは爆発し、正子を突き飛ばして
ずっと正子のことを恥ずかしいと思っていたと言う。翌日、風呂に浸かる正子。部屋には由香里の死体が転がっている。昨夜、言い争いの末、正子が殺してしまったのだ。香典を鞄に入れ、正子は家から逃げ出す。数日後の'95年1月17日、野宿する正子
を阪神・淡路大震災が襲う。離れて暮らす父親のもとへ向かうことにした正子は、道中、見知らぬ男(中村勘九郎)に襲われレイプされる。疲れ果てた正子は、行き着いたラブホテルで
支配人(正司照枝)に拾われ、そこで働くことになる。ラブホテルのオーナー・花田英一(岸部一徳)は正子を可愛がり、正子は仕事に馴染み始めが、ある日、英一は首を吊って死んでいた。警察を恐れた正子は逃げ出し、マスクで顔を隠して電車に乗る。その車中で池田(佐藤浩市)という男と同席、池田は正子に話しかけ、二人は楽しく会話する。池田はリストラされて実家に帰るのだと言う。別府駅で降りた池田を、妻と子供が待っていた。終点の大分まで行く予定だった正子も別府駅で降りる。そこで自殺を図ろうとしたが失敗し、中上律子(大楠道代)という女性に助けられる。律子はスナックのママで、正子を

そこでホステスとして働かせる。内気な正子だったが、働くうちに外交的になっていく。店からの帰途、正子は律子の弟・洋行(豊川悦司)と遭遇する。洋行は正子に、律子のことを頼むと言う。ある日、律子が同窓会で店にいない隙に、洋行は客の狩山(國村準)から金を得て、何も知らない正子の体を売る。正子は必死に抵抗するも、やがて諦め受け入れる。その後、何もなかったように働く正子。洋行が正子の部屋を訪れ、ヤクザは辞めたつもりだったのだがと呟き、彼はいなくなる。ある日、町中で正子は池田に再
会する。池田は辞めた会社の顧客データを抜き取っていて、それを脅しに会社から金を取ろうとしていた。そして、妻には逃げられ、息子と二人で暮らし
ていた。それを聞いた正子は、それでも池田のことが好きだった。ある日、洋行がヤクザに殺される。店を来た警察を見て、正子は逃げ出す。正子は池田に別れを告げ、電話で律子にも別れを告げる。心配する律子に、私の名前は吉村正子だと告げる。弟を亡くした律子は、それを聞いてもまだ正子のことを心配し、会いたいと言う。しかし、正子は別れを告げて話を切る。正子は離島へと逃げ、そこで暮らし始めるが、すでに追っ手は近くまで迫っていた―。
「どついたるねん」(1989)で「芸術選奨新人賞」を受賞した阪本順治監督の2000年作で、2000年度の日本国内の映画賞を多数受賞し、第46回「キネマ旬報日本映画ベスト・テン」では、日本映画ベスト・テン1位、読者選出日本映画ベスト・テン1位、監督賞(阪本順治)、主演女優賞(藤山直美)、助演女優賞(大楠道代)、脚本賞(阪本順治、宇野イサム)を獲得しています(第55回「毎日映画コンクール 日本映画大賞」、第25回「報知映画賞 作品賞」、第22回「ヨコハマ映画祭 作品賞」も受賞)。また、藤山直美はこの映画初主演であった「顔」の演技で、「キネマ旬報」主演女優賞のほか、「毎日映画コンクール」女優主演賞、「報知映画賞」最優秀主演女優賞、第22回「ヨコハマ映画祭」主演女優賞などを受賞しています。
逮捕されるまでの約15年に及ぶ逃走劇で知られる福田和子の事件をベースにしているとのことですが、福田和子は逃亡中に顔を整形していたことでも知られています。「顔」というタイトルから、藤山直美演じるこの映画の主人公も整形するのかなと思われがちですがそうではなく、事件と映画は別として捉えた方がいいかもしれません。
この彼女の変化が最も表れるのが彼女の表情であり(このビフォア・アフターの表情を演じ分ける藤山直美が上手い)、それゆえにこの映画のタイトルは「顔」なのではないかと思います。でも、整形しているわけではないので、その「顔」によって彼女は次第に迫る警察の捜査から逃げ続けなけらばならないのす。彼女が逃亡の過程で出会う人間が皆、誰も彼も一癖も二癖もあったり訳ありであったりして、ストーリー的には飽きさせません。コミカルな要素も多分に含まれていますが、藤山直美を使いつつ、コメディ映画にはならないようにしているという印象です(むしろ"重い"と言える)。
そもそも、彼女の妹役で序盤から登場の牧瀬里穂も、JR東海「
こうした中、断トツに存在感があったと思えたのは、スナックのママ役の大楠道代で、この映画で言えば渡辺美佐子に次ぐべテランであるだけのことはあります。別れを告げようとする主人公に、彼女が置かれている状況を察してか、「おなかが減ったらご飯食べて、またおなかが減ったらご飯食べて、遠くを見らんでいいの」と語りかけ、生き続けよと勇気づける場面は泣けました。電話で語るシーンでこれだけ観る側を引きこませるのはさすがです。
警察の捜査を巧みにかわし続けて15年間逃げ延びた福田和子は、石川県・能美市の和菓子屋の後妻の座に納まっていて、家が近所で当時小学生だった松井秀喜も客としてよく菓子を買いに来ていて、福田逮捕後のインタビューで「綺麗で愛想のいい奥さんだった」と語っているくらいですが(素性を知られないようにするため入籍を断り、事実上の内縁関係だったことで疑われることになった)、それに比べればこの映画の主人公はずっと"どんくさい"かもしれません(福田の逃亡劇は、2020年まで主だったものだけで6回テレビで〈実録ドラマ化〉乃至〈再現映像化〉され、大竹しのぶや寺島しのぶら"演技派"女優が福田を演じている)。
この映画を観ている時は、ラストは「太陽がいっぱい」的な終わり方になるのかなと思ったりもしたもので、最初観たときは「それにしてもこのラストはちょっとねえ」というのも正直ありましたが、ある意味「象徴的な終わり方」にしたということなのでしょう。乗れなかった自転車に乗れるようになった、というのとのリフレインだったと思います。これはこれでいいのかもしれないということで、評価は◎にしました。
阪本順治/宇野イサム●撮影:笠松則通●音楽:coba●時間:123分●出演:藤山直美/佐藤浩市/豊川悦司/大楠道代/國村準/牧瀬里穂/渡辺美佐子/中村勘九郎/岸部一徳/早乙女愛/内田春菊/中島陽典/川越美和/水谷誠伺/中沢青六/正司照枝/九十九一/黒田百合●公開:2000/08●配給:松竹(評価:★★★★☆) 








ピンク映画のキャメラマンであるべーやんこと小田辺子之助(西田敏行)は、妻で主演女優の奈津子(大楠道代)が自殺未遂し、撮影がストップし困り果てていた。たまたまロケ現場として借りた連れ込み宿の掃除婦・笑子(美保純)を強引に主演女優の代役に仕立てて、撮影を続行させる。しかし撮影中、監督(加藤武)は病気で倒れ、笑子は自分の田舎に墓参りに帰るので撮影は降りると言い出す。笑子の帰郷を逆手にとり、ロケ場所を笑子の故郷である福島の湯本に代え、その場その場で脚本を変えながら撮影していく―。(「ロケーション」)
「ロケーション」('84年)は、ピンク映画のスチールマンだった津田一郎の『ザ・ロケーション』('80年/晩声社)を原作に、ピンク映画づくりの現場を描き出したもので、森崎東監督は、映画作りの参考にするため、滝田洋二郎監督(あの、第81回アカデミー賞外国語映画賞受賞作「
まず、西田敏行演じるキャメラマンと、大楠道代演じるその女房の女優と、柄本明演じる脚本家の三角関係があり、映画の撮影が始まるや、主役の彼女が降りてしまい、やっと見つけた代役も逃げ出し、監督は入院するという始末で、カメラマンと竹中直人演じる助監督が中心になり、美保純演じる連れ込み旅館の掃除婦をヒロインに仕立てて撮影を続けるも、彼女が福島へ墓参りに帰ると言い出し、それを追ってロケに行くと、彼女の過去が一家心中、父親殺し、母親殺しと錯綜し、ロケ隊一行は映画の内容を変更して、彼女と母親(大楠道代・二役)の愛僧劇をドキュメンタリーのように撮影することになるといった具合。映画内映画のもともとのストーリーは、3人の男に襲われ海で溺死した母親の娘が男たちに復讐する設定だったので、随分と話が違っていきますが、これもこの映画の脚本の内なのでしょうか。
美保純が演じる笑子が、、最初の内は幼児体験の影響で
無口だったのが、ラストの方では大楠道代演じる母親と拮抗して互いの情念をぶつけあっており、美保純としては最高傑作ではないでしょうか。美保純と同様にそれまで主にピンク映画に出ていた竹中直人が、最初に一般映画に出演した作品でもあります。作品全体としても、「喜劇 女は男のふるさとヨ」('71年)などよりは上ではないでしょうか。
竹中直人/西田敏行/美保純
バーバラ(倍賞美津子)は15年前、19歳の時にコザ暴動で沖縄を離れたヌードダンサー。恋人の宮里(原田芳雄)は、原子力発電所の定期検査に携わる、所謂"原発ジプシー"だが、今は暴力団の手先に。バーバラは、元教師の野呂(平田満)と一緒に旅に出て、福井県で昔馴染み
のアイコ(上原由恵)と再会、彼女は頭の弱い娼婦で、足抜けを図ったためにヤクザに追われている。そんなアイコには、原発で働く安次
(泉谷しげる)という恋人がいたが、死んだという。ところが安次の墓に出向いたバーバラと野呂は、実は安次が生きていることを知る。安次は、原発事故で放射能を浴び、原発での事故のことを知っていることがばれるのを恐れ、死んだ
ふりをしていたのだ。アイコと安次は、"じゃぱゆきさん"マリア(ジュビー・シバリオス)と一緒に逃亡するが、暴力団
に見つかって殺されてしまう。アイコ殺しの罪を着せられそうになった宮里は、暴力団の戸張(小林稔侍)を猟銃で射殺、バーバラたちは、マリアをフィリピンに帰してやろうと密航を企て、それを阻止しようと、暴力団や悪徳刑事の鎧(梅宮辰夫)が港にやってくる。撃たれて息を引き取った宮里に代わって、バーバラは猟銃をぶっ放して追っ手を撃退。結局マリアの乗った船は、船長(殿山泰司)が油を積み忘れ止まってしまうが、最終的に彼女はフィリピンに送還されることに。移送される船上からバーバラの姿を見

つけたマリアは、アイコと安次のスローガンの言葉「溢れる情熱、みなぎる若さ、協同一致団結、ファイト!」と呼び掛ける―。(「党宣言」)
「ローケーション」の翌年に撮られたのが「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」('85年)ですが、森崎東監督のインタビューによれば、この作品の最初の構想では、原発内部の実態を暴露しようと教師ら多数の人質とともに立て籠もる男(原発ジプシー)の物語で、彼の要求で現場からの生中継が実現しそうになった時、突然天皇崩御の情報が入り、現場からの生中継が吹っ飛んでしまうという展開で、物語のオープニングでは犯人である主人公がトイレに入りながら天皇陛下の遺体を運ぶパレードがテレビで放映されている場面を見るという場面が用意されていたそうです(この映画の公開は1985(昭和60)年)。そして、その物語の主人公で立て籠もり犯のモデルは金嬉老だったそうです。
この映画の配役も、当初は平田満が演じた教師の役を原田芳雄が演じる予定だったといいます。しかし、原田芳雄が「俺に先生役は無理です」と監督に直訴し宮里を演じることになり、そのキャラクターも彼に合わせて変わっていったそうです。もちろん、野呂の役も平田に合わせて変えられたのでしょう。こうした、行き当たりばったり的な映画作りの手法は、完成度の高い作品を生み出すのには向いていないかもしれませんが、完成された芸術作品にはない、見るものを元気にするエネルギーを持つことあるとも思いました。

舞鶴に住む養護学校中学部3年生のサムこと大浜勇(浜上竜也)は重度の知的障害をもちながらも意外な記憶力を持つ。在日朝鮮人のハハこと金子澄子(倍賞美津子)は潜水夫のチチこと大浜守(原田芳雄)とサムの教育方針をめぐって対立し、現在は小学生の妹・チャルこと金子千春(守山玲愛)を連れて別居中である。そんなある日、サムとチャルが暴力団に拉致されてしまう。養護学校でサムを担任する桜井直子(肘井美佳)がサムたちの行方を追う―。(「ニワトリはハダシだ」)
森崎東監督の'04(平成16年)年度「芸術選奨」受賞対象となったこの作品においても、現代日本が抱える社会問題を詰め込められるだけ詰め込んで、その混沌とした中での猥雑で骨太な笑いから庶民の逞しさを描く構図になっています。20年近く経てもまったく枯れていないと言えば枯れていないと言えますが、相変わらずのごった煮感にはやや胃もたれがしそう(笑)。ただ、倍賞美津子、原田芳雄など森崎映画ならではの常連キャストの演技は安定感があってさすがであり、また養護学校教師役の肘井美佳の初々しい快活さも印象的でした(「時代屋の女房」の夏目雅子へのオマージュと思われる演技シーンがあった)。
「ロケーション」●制作年:1984年●監督:森崎東●製作:中川滋弘/赤司学文●脚本:近藤昭二/森崎東●撮影:水野征樹●音楽:佐藤允彦●原作:津田一郎●時間:99分●出演:西田敏
行/大楠道代/美保純/柄本明/加藤武/竹中直人/アパッチけん/大木正司/草見潤平/イヴ/パルコ/河原さぶ/殿山泰司/初井言榮/愛川欽也/乙羽信子/根岸明美/花王おさむ/和由布子/矢崎滋●公開:1984/09●配給:松竹●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(19-12-23)(評価:★★★★) 


「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」●制作年:1985年●監督:森崎東●製作:木下茂三郎●脚本:近藤昭二/森崎東/大原清秀●撮影:浜田毅●音楽:宇崎竜童●時間:105分●出演:倍賞美津子/原田芳雄/平田満/片石隆弘/竹本幸恵/久野真平/上原由恵/泉谷しげる/梅宮辰夫/河原さぶ/小林稔侍/唐沢民賢/左とん平/水上功治/小林トシエ/殿山泰司/ジュビー・シバリオス●公開:1985/05●配給:ATG●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(20-01-12)(評価:★★★★) 
美子/浜上竜也/守山玲愛/加瀬亮/李麗仙/岸部一徳/塩見三省/笑福亭松之助/柄本明/河原さぶ/不破万作/三林京子/露の五郎/眞島秀和●公開:2004/11●配給:ザナドゥー●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(20-01-27)(評価:★★★★) 

(●西田敏行は、「ロケーション」もそうだが、2011年公開の三谷幸喜脚本・監督作品第5作で深津絵里とW主演した「ステキな金縛り」(東宝)も懐かしい。落ち武者の幽霊が裁判の証言台に立つというシュールな設定だが、西田敏行の演技に深津絵里の演技達者ぶりが重なって、二人の掛け合いが愉しかった。相乗効果とはこういうことなのだろうと
思った。三谷幸喜監督作の中ではかなり面白い方ではないか。阿部寛、市村正親、唐沢寿明、中井貴一などオールキャスト。佐藤浩市は前作「ザ・マジックアワー」で演じた売れない役者の役で、篠原涼子は『THE有頂天ホテル」で演じたコールガール役でそれぞれカメオ出演。大泉洋に
至っては「勝訴を持つ男」としてエンドロールのみの出演という遊びがあった。西田敏行はもっと年齢がいってからの演技も見たかった。)
「ステキな金縛り」●制作年:2011年●監督・脚本:三谷幸喜●製作:前田久閑/土屋健/和田倉和利●撮影:山本英夫●音楽:佐藤允彦●時間:142分●出演:深津絵里/西田敏行/阿部寛/竹内結子/浅野忠信/草彅剛/市村正親/小日向文世/小林隆/KAN/木下隆行/山本亘/山本耕史/戸田恵子/浅野和之/生瀬勝久/梶原善/阿南健治/近藤芳正/佐藤浩市/深田恭子/篠原涼子/唐沢寿明/中井貴一/大泉洋(※エンドロールのみ出演)●公開:2011/10●配給:東宝(評価:★★★★)



「今現在」を「1970年11月25日」に置いて、三島(緒形拳)が自決した当日の起床からの経過を現在進行形でカラー・ドキュメンタリー風に描き、その「今現在」の時の流れをベースに、三島の幼少期から「楯の会」結成までの半生をモノクロームで描いた「フラッシュバック(回想)」シーンを交える一方、第1章「美(beauty)」で『金閣寺』、第2章「芸術(art)」で『鏡子の家(Kyoko's House)』、第3章「行動(action)」で『奔馬(Runaway Horses)』(『豊饒の海』第2部)の各作品をダ
イジェストで映像化しており、最後の第4章「文武両道(harmony of pen and sword)」で、三
島が市ヶ谷駐屯地に到着した場面から自決に至るまでを描いています。こうなるとかなり複雑な印象を与
えますが、回想部分はモノクロで、作品部分は「劇中劇」として極めて演劇的に作られているため(石岡瑛子(1938-2012/73歳没)が美術担当)、観ていてたいへん分かり易いものとなっています。
冒頭で、三島が母(大谷直子)や祖母(加藤治子)との特異な幼少期を経て、思春期から同性愛的指向を自覚したことなどを紹介、第1章では簡略化された『金閣寺』が劇中劇として描かれ、ドモリでコンプレックスの
塊のような学生(ある意味、三島のペルソナである)で金閣寺の住職になることを目指して修行する溝口(五代目 坂東八十助=十代目 坂東三津五郎)が、障害者でありながらをそれを逆手にとって高い階級の女を籠絡している柏木(佐藤浩市)と出会い、その

手ほどきで女性に接するも臆して何もできなかった後(ここでフラッシュバックで青年期の三島(利重剛)が病弱だったために戦争の徴兵を逃れ得たことなどが描かれる)、今度は老師(笠智衆)から施された
金で遊郭で遊女(萬田久子)を抱き、女に「どでかいことをする」と言うが、それは金閣寺を燃やすことだった―とい
うもの(ここで三島が自邸を出て「盾の会」のメンバーと市ヶ谷駐屯地へ向かうため車に乗り込む"現在"のシーンに切り替わり、更に今度は、モノクロで『潮騒』などの作品で作家として高い評価を得た頃の三島を描く)。 
第2章では『鏡子の家』を演劇化しており、原作では鏡子というある種"巫女"的な女性を軸に、恵まれた結婚をし将来が嘱望されるエリート会社員「清一郎」、拳闘家でボクシングで王座を獲る「俊
吉」、美貌の無名俳優でボディビルで鋼の肉体を得る「収」、天分豊かな童貞の日本画家で画壇での名声を博す「夏雄」の4人が登場しますが(それぞれが三島のペルソナと言える)、ここでは俳優の「収」(沢田研二)にフォーカスして、母親(左幸子)や恋人(烏丸せつこ)との関係を描いています(ここでまたモノクロのフラッシュバックになり、男とダ
ンスし―ダンス相手のモデルは美輪明宏か―同性愛者として美醜にこだわり、ボディビル
によって肉体改造に励む三島の姿が描かれる)。次に、ラーメン屋台のような所に収、俊吉(倉田保昭)、夏雄(
を結ばされ(その間、三島のセミヌード写真の撮影模様や出演した映画のポスターなどがフラッシュバックで入る)、母親にはいい役がついたと報告し、最後はピンク色の部屋でその清美に自分の肉体をマゾヒスティックに傷つけられている―(ここで市ヶ谷に向かう車中の三島と「盾の会」のメンバーのシーンに切り替わる)。
第3章は、『奔馬』の主人公・飯沼勲(永島敏行)を描いた劇中劇で、剣道3段の飯島青年が政界
の黒幕を倒すべく陸軍中尉(勝野洋)や同志らとクーデターを謀るという二・二六事件をモチーフにした原作通り
の展開で(フラッシュバックで日本刀を振るって剣術に精進する三島が描かれる)、彼が首謀者となって同じ学生仲間らと決行を誓い合いますが(そこでまた緒形拳演じる三島の歩んできた道のフラッシュバックで、「盾の会」の結成やその閲兵式の模様が描かれ、更に、'69年の東大全共闘との討論会の様子が描かれる)、事を起こす前に飯島らは逮捕され、飯島は聴取にあたった尋問官(池部良)に拷問してくれと
頼むが叶わない。その後、飯島は脱獄に成功し、政界の黒幕・蔵原(根上淳)を暗殺
すると、海を見渡す断崖へと直行し、暁の太陽を背に割腹自殺を図る―(ここでいきなり、映画「憂国」の切腹シーンを撮影中の三島のモノクロ・フラッシュバックになる。そして、映画「憂国」の完成記者会見の模様が入る)。
第4章は、これまで「今現在」として描かれてきた「1970年11月25日」の部分の続きで、三島らが市ヶ谷駐屯地に到着してから自決に至るまでが描かれており(間にフラッシュバックで「盾の会」の自衛隊体験入隊の模様が描かれる)、自決前のバルコニーでの演説をはじめ、「三
島事件」を克明に描いています(更に間に、ロッキードF104戦闘機に試乗した際の模様が描かれる)。最後に三島が切腹して雄叫びする場面に続いて、第1部から第3部の小説のラスト
シーンがワンカットずつ描かれ、『奔馬』の最後の一行のナレーションと共に、冒頭のタイトルバックにあった太陽が正面に昇っている風景でエンドロールとなります。なお、「フラッシュバック」で描かれる半生の挿話やナレーションには、自伝的小説『仮面の告白』や随筆『太陽と鉄』などからの引用が使用されています。
優として知られ、2013年のゴールデングローブ賞授賞式において、自身が同性愛者であることをほぼ公表したジョディ・フォスターが絶賛している)。主人公の三島の役は、最初は高倉健にオファー
されていたらしいのですが(高倉健はポール・シュレイダー脚本、シドニー・ポラック監督の「
ものの、ここまで三島の作品と人生を再現していれば立派なものだと思います(それが理解できるかどうかはまた別の問題として)。細かい点で事実と異なるとの指摘もあるようですが(第2章のフラッシュバックに写真集『薔薇刑』の撮影模様があるが、三島はこの映画のように撮影の際に自らカメラのアングルを指示するようなことはなく、完全に「被写体」に徹していたという当のカメラマン
結局、上映自体が遺族側の了解が得られず、作品は日本では劇場公開されなかったわけで、惜しいことです(同性愛を示唆する場面は結構あったが、それ以外に政治的な理由があったともされている)。長年ビデオ・DVD化されない「幻の作品」であっため、自分自身も、中身がよく分からないのでやや"色物"的な作品ではないかとの先入観が以前はありましたが、『三島由紀夫と一九七〇年』('10年/鹿砦社)付録として"ゲリラ・リリース"された米国版DVD(区の図書館で借りられた)で観てみると、映像も綺麗だし、演技陣も錚々たるメンバーであり、また、よく演出したものだと思いました。作家とその作品の関係性を描くという意味でも非常に大胆な試みであり、それは100%成功しているわけではないですが、分かり易いというだけでも評価できるのではないでしょうか。

稔 [第1章・金閣寺]坂東八十助/佐藤浩市/萬田久子/沖直美/高倉美貴/辻伊万里/笠智衆(米国版のみ) [第2章・鏡子の家]沢田研二/左幸子/烏丸せつこ/倉田保昭/横尾忠則/李麗仙/平田満 [第3章・奔馬]永島敏行/池部良/誠直也/勝野洋/根上淳/井田弘樹●米国公開:1985/10●DVD発売:2010/11●発売元:鹿砦社(『三島由紀夫と一九七〇年』附録)(評価:★★★★)



是枝裕和監督の「そして父になる」('13年/ギャガ)は、夫(福山雅治)と妻(尾野真千子)の間にいる6歳の一人息子が、実は出生時に子どもの取り違えがあって実の息子ではなかったことが判明し、そこから始まるその夫婦の苦悩と、取り違えられた子を育ててきたもう1つの夫婦(リリー・フランキー・真木よう子)とのやり取りを描いた作品(2014年「芸術選奨」受賞作)。
子どもの取り違えが判明してからその次にどういう手順になるのかがきっちり取材されていて、加えて、河瀬直美監督に見出され「萌の朱雀」('97年)でデビューしたd尾野真千子、「無名塾」出身の真木よう子、スピルバーグがその演技を絶賛したリリー・フランキーなど、演技陣も充実していました。
員賞(パルムドール、(審査員特別)グランプリに次ぐ賞)を受賞した作品ですが、国内では、尾野真千子、真木よう子の2人はそれぞれ第37回「日本アカデミー賞」の優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞を受賞、福山雅治、リリー・フランキーもそれぞれ優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞を受賞しています(電気屋夫婦の方が「最優秀」を獲っていることになる。因みに真木よう子は、同年の「さよなら渓谷」での最優秀主演女優賞とのW受賞)。
(●是枝裕和監督の「万引き家族」('18年)が、
ヌ国際映画祭
ったかあ。でも彼は「そして父になる」以上の演技だった。この映画、Amazon.comのレビューなどでみると「どこがおもしろいのか、わからない」という人も結構多いようだが、個人的には良かったと思った。「お父さん」「お母さん」と呼んでほしいと願う主人公の想いが核になっていて、終わり方も良
かった。家族っていなくなると切ないものである。これで、是枝監督にとって「家族」というのが大きなテーマであることがよく分かった。それでは小津安二郎や山田洋次と変わらないと思われるフシもあるかもしれないが、ステップファミリーを通して「家族」というものを描いているのが大きな特徴であり、「そして父になる
」からの流れで見ると繋がっている。ハッピーエンドにせず、問題投げかけ型で終わるのも同じ。今回は中流家庭ではなく、下流家庭(疑似家族)を描いている点で、明らかに小津安二郎の後期作品とも異なる。何となく是枝監督のスタンスが見えてきた気がする。パルム・ドールは、ベルギー移民の少女や若者の貧困を描いたダルデンヌ兄弟の作品が2度受賞しているなど、格差社
会を描いたものが近年では賞を獲り易い傾向にあり、「万引き家族」の受賞も意外性はなかった(「万引き家族」の翌年2019年には、ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」がパルム・ドール受賞。やっぱりという感じ)。因みに本作は、2019年・第13回アジア・フィルム・アワードも作品賞と作曲賞(細野晴臣)を受賞しているほか(この賞の作品賞受賞は日本映画では初)、
犬童一心、樋口真嗣共同監督の「のぼうの城」('12年/東宝)は、北条氏の支城で、周囲を湖に囲まれ浮城とも呼ばれる忍城(おしじょう)の領主・成田氏一門の成田長親(野村萬斎)と、その城を攻め落とそうとする豊臣方・石田三成(上地雄輔)の攻防を描いた作品で、2時間超ですがあまり長さを感じさせず、予想以上に面白かったです(この面白さは、和田竜氏の直木賞候補となった原作の面白さによるものではないかとも思うが、原作を読んでいないので、素直に「面白かった」としておきたい。台詞が一部、「○○的」など現代語になっているのが気になったが、脚本も原作者によるもの)。
歌舞伎や狂言の俳優が、日頃その世界で伝統芸能の継承・研鑽に励みつつも、現代劇や時代劇に出てすんなりそれにフィットした演技が出来てしまうのにはいつも感心させられますが、この映画の野村萬斎の場合、狂言の演技をそのまま成田長親のキャラに活かしていることにより、映画を自分の作品にしている点で、起用に充分応えているように思いました。また、近習の正木丹波守利英を演じた佐藤浩市の演技がオーソドックスな映画的演技であることも、対比的な効果を醸しているように思われます。この2人はそれぞれ第36回「日本アカデミー賞」の優秀主演男優賞、優秀助演男優賞を受賞しています。
ストーリー的には、最後は、北条氏の本城である小田原城が落城してしまうことから、支城を巡って争う理由がなくなり、これ以上は戦わずして成田氏は忍城を豊臣方・石田三成に明け渡すことになってしまうという点では、これもまた、アンチ・カタルシス的な作品と言えるかもしれません(M&Aで大企業に吸収される関係会社みたい)。それでも「こういう武将もいたのだ」という面白さによってさほどカタルシス不全を感じさせないのは、これはやはり、原作の目の付け所の良さに拠るものかと思われます。
僅か500の兵で2万の大軍から城を守り和議に持ち込んだというのはやはりスゴイことだと思われ、今までほとんど時代小説の素材になっていないのが不思議なくらい(風野真知雄の『水の城 いまだ落城せず』では主人公の成田長親は、際立った武勇や才覚はなく、捉えどころのない人物として描かれているそうだ)。近年の研究では、もともと水攻めに向かない城に対して水攻めに固執した秀吉のミスだったとの説が有力なようで、実戦経験の乏しい石田三成に配慮した作戦が裏目に出たのか。逆に三成が書状の中で「諸将は完全に水攻めと決め込んで全く攻め寄せる気がない」と嘆く事態となったわけですが、水攻めの決定に三成軍の武将たちのモチベーションががたんと低下する場面はこの作品の中でも描かれています。
敢えて長年二番館として営業してきた三茶シネマらしいラインアップを選んだらしい)。ラストショーと思って思い入れを込めて観た分、評価はやや甘くなっているかもしれません。昨年['13年]5月に亡くなった夏八木勲(1939-2013/享年73)が両方の作品に脇役で出ています('12年の秋から膵癌を患い、闘病を続けていた)。

「そして父になる」●英題:LIKE FATHER,LIKE SON●制作年:2013年●監督・脚本:是枝裕和●製作:亀山千広/畠中達郎/依田翼●撮影:瀧本幹也●音楽:松本淳一/森敬/松
原毅●時間:120分●出演:福山雅治/尾野真千子/真木よう子/リリー・フランキー/二宮慶多/黄升炫/中村ゆり/高橋和也/田中哲司/井浦新/ピエール瀧/大河内浩/風吹ジュン/國村隼/樹木希林/夏八木勲●公開:2013/09●配給:ギャガ●最初に観た場所:三軒茶屋シネマ(14-07-20)(評価:★★★★)●併映:「のぼうの城」(犬童一心/樋口真嗣)
風吹ジュン(野々宮のぶ子(良多の義母)) 
「万引き家族」●英題:SHOPLIFTERS●制作年:2018年●監督・脚本・原案:是枝裕和●製作:石原隆/依田巽/中江康人●撮影:近藤龍人●音楽:細野晴臣●美術:三ツ松けいこ●衣裳デザイン:黒澤和子●時間:120分●出演:リリー・フランキー/安藤サクラ/松岡茉優/池松壮亮/城桧吏/佐々木みゆ/高良健吾/池脇千鶴/樹木希林/緒形直人/森口瑤子/山田裕貴/片山萌美/柄本明/笠井信輔(ニュースキャスター)/三上真奈(ニュースキャスター)●公開:2018/06●配給:ギャガ(評価:★★★★☆)



「のぼうの城」●制作年:2012年●監督:犬童一心/樋口真嗣●製作:久保田修●脚本:和田竜●撮影:瀧本幹也●音楽:松本淳一/森敬/松原毅●時間:145分●出演:野村萬斎/榮倉奈々/成宮寛貴/佐藤浩市/山口智充/上地雄輔/前田吟/中尾明慶/尾野真千子/ピエール瀧/前田吟/山田孝之/平岳大/市村正親/西村雅彦/鈴木保奈美/平泉成/夏八木勲●公開:2012/11●配給:東宝●最初に観た場所:三軒茶屋シネマ(14-07-20)(評価:★★★★)●併映:「そして父になる」(是枝裕和)




地方都市の女子中学生たちが、学校のプールに夜中に泳ぎにやってきて、先に来ていた男子生徒にイタズラをするが、度が過ぎて溺死寸前の状態に追い込んでしまう。翌朝、ニュースでは台風の接近を告げていた―。
「台風クラブ」('85年/東宝=ATG)は、'85(昭和60)年の
く描き出した作品。女子中学生役の工藤夕貴が、中学生の日常とそこに潜む思春期の生理的・精神的危うさを演じて秀逸で、何か自分でそうしたものを観察でもしたかのような相米慎二監督の演出が際立っています。実際、女子中学生の私生活を「長回し」で写し撮っているような感じのシーンもあり、今ならば児童保護の名目で規制の対象になりそうな際どい場面もあって、更にストーリー的にも結構どろどろした出来事がありますが、そうしたことも含め、「観察対象」としての距離を置いて撮っているような感じもします。
一過、中学生たちは何事もなかったかのようにまた元気に学校に通い出す―でも実は、台風が来る前に比べぐっと大人に近づいているという、 "大人になるための出来事"を台風に絡めているところが旨く、また、女子中学生の方が男子よりも逞しく描かれているように思いました。人間の自律神経は気圧の変化には敏感で、酸素がたくさんある高気圧だと酸素ストレスで交感神経が緊張して体は興奮して元気になり、逆に雨や台風で低気圧が接近すると、副交感神経が優位に働いて、特に神経痛やリュウマチなどの持病がある人にとっては低気圧は不快感を増幅させるそうですが、思春期にある者の情緒不安定を引き起こすことについても何か科学的根拠があるんじゃないかなあ。
相米慎二(1948‐2001/享年53)監督は、薬師丸ひろ子(当時17歳)主演の「セーラー服と機関銃」('81年)の後に夏目雅子(当時25歳)主演の「
「台風クラブ」では三浦友和が不良っぽい教師役で出ていて、なかなか良かったです。三浦友和は、所謂「百恵・友和ゴールデンコンビ」と言われた作品群で1970年代に二枚目の俳優として10代に大変な人気がありましたが、その百恵・友和のゴールデン・コンビの第8作、大林宣彦監督、ジェームス三木脚本の「ふりむけば愛」('78年/東宝)を友達と観に行って、2人とも途中で眠くなりました。ただ、本作を契機に山口百恵と三浦友和は結婚に踏み切ることを決意したと言われています。2本立てで小原宏裕監督の「
所で料理をしている隣りの部屋でだらしなく寝転がってる三浦友和が、近よってきた恋人に足を絡ませ倒して抱きつく長回しなど、ダメさ加減がよく出ていました(ハードボイルド風よりよりこっちの方がいい)。個人的には、この作品こそが彼のイメージチェンジ作ではないかなと思います(イメチェンって、ただこれまでと違う役をやればいいというものでもなく、新たなキャラを確立させなければならないだけに難しい)。三浦友和はこの作品で、第10回報知映画賞助演男優賞を受賞しています。

一方、工藤夕貴の映画初出演は、この作品の前年の石井聰互監督の「逆噴射家族」('84年/ATG)で(当時13歳)、真面目で小心者のサラリーマン(小林克也)が長期ローンでやっとマイホームを建て、家族4人でそれなりの幸せ気分でいたところに(この家族が変人揃いで皆それぞれ勝手気儘というかバラバラなのだが、その1人が工藤夕貴演じる娘)、郷里からまた変な祖父(植木等)が舞い込んで来て家の中がおかしくなりだし、更にある日、このサラリーマン氏が自宅でシロアリの群れを発見して、マイホームが朽ちるのではとの不安に駆られ、シロアリ駆除に向けて大暴走するというものです。
小林よしのり氏(当時31歳)の原案だそうですが、映画としてはあくまでも石井聰互監督(当時27歳)の映画という感じで、DJ・小林克也の演技は役者並みだし、ちょっと狂い気味の妻役の倍賞美津子や、植木等の怪しい老人ぶりもいいです。
更には工藤夕貴の兄を演じた有薗芳記の電脳オタクぶりも、映画初出演ながら凄かった―ということで、工藤夕貴のぶっ飛び感も、これらに比べるとちょっと弱かったかも知れません("緊縛シーン"(?)に象徴されるように、彼らの被害者的立場という色合いが強い役柄のせいもあったが)。
「逆噴射家族」は海外の映画祭でもグランプリなどを獲っている作品ですが、狂気を描くことが目的化してしまっている面も感じられ、むしろ異価値・異文化的な面で海外に受
けたのではないかなあ。個人的には「台風
クラブ」の方がより好みでしょうか。
「台風クラブ」●制作年:1985年●監督:相米慎二●製作:宮坂進●脚本: 加藤裕司●撮影:伊藤昭裕●音楽:三枝成章●時間:85分●出演:工藤夕貴/三上祐一/大西結花
/三浦友和/佐藤充/寺田農/尾美としのり/鶴見辰吾/紅林茂/松永敏行/会沢朋子/小林かおり/きたむらあきこ/石井富/佐藤浩市(友情出演)●公開:1985/08●配給:東宝=ATG●最初に観た場所:有楽町スバル座(1985/8/31)●2回目:大井武蔵野館(1986/9/20)(評価:★★★★)●併映(2回目):「時代屋の女房」(森崎東) 
「ふりむけば愛」●制作年:1978年●監督:大林宣彦●製作:堀威夫/笹井英男●脚本:



「獣たちの熱い眠り」●制作年:1981年●監督:村川透●脚本:永原秀一●撮影:仙元誠三●
音楽:速水清司●原作:勝目梓●時間:111分●出演:三浦友和/風吹ジュン/なつきれい/宇佐美恵子/石橋蓮司/鹿内孝/峰岸徹/宮内洋/佐藤蛾次郎/阿藤海/安岡力也/草薙幸二郎/中丸忠雄/中尾彬/成田三樹夫/伊吹
吾郎/(以下、特別出演)吉行和子/池波志乃/来栖アンナ●公開:1981/09●配給:東映●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)(評価:★★)●併映:「吼えろ鉄
拳」(鈴木則文)


「逆噴射家族」●制作年:1984年●監督:石井聰互●製作:長谷川和彦/山根豊次/佐々木史郎●脚本:石井聰
亙/小林よしのり/神波史男●撮影:田村正毅●時間:106分●出演:小林克也/倍賞美津子/植木等/工藤夕貴/有薗芳記/岸野一彦/小海とよ子/緒方明/林崎巌/郷守信廣/井上欣
則/高橋佑奈/井手国弘/アレックス・アブラモフ●公開:1984/06●配給:ATG●最初に観た場所:池袋日勝文化劇場(85-11-04)(評価:★★★☆)●併映:「お葬式」(伊丹十三)



③池袋東急 ④池袋スカラ座 ⑮池袋日勝地下劇場 ⑬池袋日勝映画劇場 ⑭池袋日勝文化劇場







吉村昭(1927‐2006)の動物をモチーフとした小説4編(「海の鼠」「蝸牛」「鵜」「魚影の群れ」)を所収していますが、'73(昭和48)年の単行本刊行時、この中で最も長い冒頭作の「海の鼠」が本のタイトルだったのが、'83(昭和58)年の文庫化に際して、巻末の「魚影の群れ」が文庫タイトルになったのは、同年、映画「魚影の群れ」が公開されたことも関係しているでしょう。

拳はともかく、娘が夏目雅子(1957-1985/享年27)、妻が十朱幸代で、キレイ過ぎて猟師の家族に見えないのが難であるのと、原作にはない人情ドラマを盛り込み過ぎたために間延びし、ラストも少し変えてしまってあるのが今一つ好きになれない理由です。原作は、文庫本70ページほどの中篇で、映画のようにべとべとしておらず、男臭さと言うより、男の生き方の不器用さや侘びしさが滲む佳作です。

「魚影の群れ」●制作年:1983年●監督:相米慎二●脚本:田中陽造●撮影:長沼六男●音楽:三枝成章●テーマソング(唄):





ちくま文庫版は「川三部作」として、「泥の河」「
「泥の河」●制作年:1981年●監督:小栗康平●脚本:重森孝子●撮影:安藤庄平●音楽:毛利蔵人●原作:宮本
輝●時間:105分●出演:田村高廣/藤田弓子/朝原靖貴/桜井稔/柴田真生子/加賀まりこ/殿山泰司/芦屋雁之助/西山嘉孝/蟹江敬三/八木昌子/初音礼子●劇場公開:1981/01●配給:東映セントラル●最初に観た場所:日比谷・第一生命ホール(81-05-22)●2回目:池袋・テアトル池袋(82-07-24)(併映:「駅 STATION」(降旗康雄))●3回目:キネカ大森(85-02-02) (評価★★★★☆)
「道頓堀川」●制作年:1982年●監督:深作欣二●製作:織田明/斎藤守恒●脚本:野上龍雄/深作欣二●撮影:川又昂●音楽:若草恵(テーマ曲:上田正樹「哀しい色やねん」)●原作:宮本輝●時間:130分●出演:松坂
慶子/真田広之/佐藤浩市/古館ゆき/大滝秀治/渡瀬恒彦/山崎努/柄本明/カルーセル麻紀/加賀まりこ/名古屋章/片桐竜次/加島潤/成瀬正/岡本麗●劇場公開:1982/06●配給:松竹●最初に観た場所:吉祥寺松竹(82-07-04) (評価★★★) 真田広之(邦彦)・山崎努(喫茶店「リバー」のマスター・武内てつお)











ただ、アクション・サスペンス的である分、人物描写や人間関係の描き方が浅かったり類型的だったりで、映画にするならば、役者は大根っぽい人の方がむしろ合っているかも、と思いながら読んでました。結局のところ映画は織田祐二主演で、体を張った(原作にマッチした)アクションでしたが、演技の随所に「ダイハード」('88年/米)のブルース・ウィリスの"嘆き節"を模した部分があったように思ったのは自分だけでしょうか。
織田祐二はまあまあ頑張っているにしても、テロリスト役の佐藤浩市の演出が「
奥只見ダム(重力式ダム)
黒部ダム(アーチ式ダム)








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「壬生義士伝」●制作年:2003年●監督:滝田洋二郎●製作:松竹/テレビ東京/テレビ大阪/電通/衛星劇場●脚本:中島丈博●撮影:浜田毅●音楽:久石譲●時間:137分●出演:中井貴一/佐藤浩市/夏川結衣/中谷美紀/山田辰夫/三宅裕司/塩見三省/野村祐人/堺雅人/斎藤歩/比留間由哲/神田山陽/堀部圭亮/津田寛治/加瀬亮/木下ほうか/村田雄浩/伊藤淳史/藤間宇宙/大平奈津美●公開:2003/01●配給:東宝 (評価:★★☆)