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キャラクター別・作品別データベースとして読める。「オールスター忠臣蔵」映画が廃れた理由は...カネ。


『臣蔵入門 映像で読み解く物語の魅力 (角川新書)』['21年]
浄瑠璃や歌舞伎にはじまり、1910年の映画化以降、何度も何度も作られ続ける「忠臣蔵」。実は時代によってその描かれ方は変化しており、忠臣蔵の歴史を読み解けば、日本映像の歴史と、作品に投影された世相が見えてくると、映画史研究家である著者は言います(こちらも、前に取り上げた山本博文『東大教授の「忠臣蔵」講義』(角川新書)と同じく12月刊行(笑))。
第1章で、「忠臣蔵」の概要です。6つの見せ場(①松の廊下、②大評定、祇園一刀茶屋、④大石東下り、⑤南部坂雪の別れ、⑥討ち入り)や三大キャラクター(①大石内蔵助、②吉良上野介、③浅野内匠頭)について、映像作品において感動的なドラマとして描く際のポイントなども含め解説、さらに、「忠臣蔵」が愛された理由を、①役者の番付、②関係性萌え、③風刺性、④群像劇として、の4つの点から述べています。
大河ドラマ「赤穂浪士」('64年/NHK)
第2章では、「忠臣蔵」が世につれどのように変遷してきたかを、①江戸時代=庶民たちの反逆、②国家のために利用される「忠君」、③「義士」から「浪士」へ~『赤穂浪士』(大佛次郎)、④GHQの禁令と戦後の「忠臣蔵」~「赤穂城」「続・赤穂城」('52年/東映)、⑤東映の「赤穂浪士」('56年/東映)、⑥大河ドラマ「赤穂浪士」('64年/NHK)、⑦悪役を主役に!~「元禄太平記」('64年/NHK)('75年/NHK)、⑧悩める大石~「峠の群像」('82年/NHK)、⑨ドロドロの人間模様~「元禄繚乱」('99年/NHK)、⑩TBSの三作~「女たちの忠臣蔵」「忠臣蔵・女たち・愛」('87年/TBS、橋田壽賀子脚本)、「忠臣蔵」('90年/TBS、池端俊作脚本)、⑪「決算!忠臣蔵」('19年/松竹)という流れで追っています。
第3章は「忠臣蔵」のキャラキター名鑑で、どのようなキャラクターをどいった役者たちが演じてきたかが紹介されれいます。A.四十七士の中からは、堀部安兵衛(剣豪)、不破数右衛門(豪傑)、赤垣源蔵(飲んだくれ)、岡野金右衛門(誠実な二枚目)など9名、B.脱落者として、大野九郎兵衛ら4名、C.脇役として、立花右近、脇坂淡路守ら6名、吉良方として、千坂兵部ら4名、女性たちとして、大石りくら4名が取り上げられています。
「忠臣蔵 天の巻・地の巻」('38年/日活)
第4章は、「オールスター忠臣蔵」の系譜を辿っています。A.戦前編で「忠臣蔵 天の巻・地の巻」('38年/日活)や「元禄忠臣蔵 前編・後編」('41年・'42年/松竹)など3作を、B.「東映三部作」として、「赤穂浪士 天の巻・地の巻」('56年/東映)、「赤穂浪士」('61年/東映)などを3作を、C.松竹、大映、東宝の動向として、「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」('54年/松竹)、「忠臣蔵」('58年/大映)、「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」('62年/東宝)など4作を紹介、さらに、D.その後の2本として、70年代に作られた「赤穂城断絶」('78年/東映)、90年代に作られた「四十七人の刺客」('94年/東宝)を紹介、章の最後、E.として、「赤穂浪士」('64年/NHK)から始まるテレビの動向を追い、「大忠臣蔵」('71年/NET(現・テレビ朝日))など9作を取り上げています。
「元禄忠臣蔵 前編・後編」('41年・'42年/松竹)/「忠臣蔵」('58年/大映)/「赤穂浪士」('61年/東映)

「大忠臣蔵」('71年/NET(現・テレビ朝日))

第5章では「外伝の魅力」として、A.「外伝名作五選」として「薄桜記」('59年/大映)などテレビドラマを含め5作を挙げ、さらに、B.「後日談」として、「最後の忠臣蔵」('04年/NHK、'10年/ワーナーブラザーズ)など3作を紹介しています(このあたりは、取り上げていくとキリがないのではないか。自分が観た範囲内でも、「韋駄天数右衛門」('33年/宝塚)や「赤垣源蔵」('38年/日活)のような一人の義士をフューチャーしたものや、「珍説忠臣蔵」('53年/新東宝)のようなパロディなども昔からあったし)。
「物語の見所、監督、俳優、名作ほか、これ一冊で『忠臣蔵』のすべてがわかる」というキャッチですが、確かに、という感じ。第3章がキャラクター別にどういう役者がその役を演じたか、第4章が作品別にどういう役者が出ていたか、という、両方で言わばクロスデータベースになっていて、それがコンパクトに纏まっているのがいいです(今まで意外とこの手の本は無かったのでは)。
映像における「忠臣蔵」の"盛衰記"ともとれますが、「オールスター忠臣蔵」映画って、先に挙げた高倉健主演の「四十七人の刺客」('94年/東宝))が最後なのだなあ(第4章)。ドラマも、大河ドラマでは五代目中村勘九郎主演の「元禄繚乱」('99年/NHK)が今のところ最後で(第2章)、ドラマ全体では田村正和主演の「忠臣蔵 その男 大石内蔵助」('10年/テレビ朝日)が、「オールスター忠臣蔵」ドラマとしては、今のところ最後だそうです(第4章)。
かつては「勧進帳」と並ぶ"国民的ネタバレ映画"であり、また確実に観客動員数(&視聴率)を見込めるキラーコンテンツであった「忠臣蔵」ですが、そんな「忠臣蔵」がなぜ廃れてしまったのかというと、「忠臣蔵」を作るというのはかなりの大プロジェクトであり、今作られなくなった大きな理由はまさにそこに在って、作る力(カネ)がない、つまり、「忠臣蔵」が廃れたのではなく、「忠臣蔵」を撮れる力が映画会社が無くなったということだとのことで、納得しました! (観たいと思っている人は多くいるのでは)。巻末に作品名、俳優名などの索引が付いているのは親切です。



また、「南部坂雪の別れ」で、搖泉院はその日南部坂の屋敷には居なかったとか(ただし、上京した際に挨拶には行っている)。大石内蔵助が屋敷内に冠者がいるのを察して、義士たちの血判状を携えるも、搖泉院には真意を明かさず、逆に西国への士官を仄めかして怒りを買って屋敷を去り、後で内蔵助の携えたものが血判状であったことが判明して、搖泉院が内蔵助を追いやったことを悔いるというお決まりのシーンが創作であることは想像に難くないですが、そもそも居なかったとは...。




そのほかには、討ち入りに同行し、討ち入りを終えたばかりの義士たちに聴き取りをした佐藤條右衛門とか(本書にもあるように、平成になって見つかった目撃談「佐藤條右衛門一敞覚書」は、当夜の四十七士のことやその親類縁者のことがいろいろ書かれており、奇跡の大発見と言われて発見当時ニュースにもなった。さらに、本書刊行年である平成14年の1月に全文が初めて活字化され、より一層その資料的価値が着目されるようになった。ただし、佐藤條右衛門の存在は以前から知られており、三船敏郎が大石内蔵助を演じた民放初の大河ドラマ「大忠臣蔵」('71年/NET[現テレビ朝日])では、既にその佐藤條右衛門を田中春男が演じており、渡哲也が演じるその従兄にあたる堀部安兵衛と別れの盃を交わしている)、
故郷山鹿の日輪寺に赤穂義士遺髪塔を建立。生涯、義士の供養を行ったという。民放大河ドラマ「大忠臣蔵」では志村喬が堀内伝右衛門を演じた)とか。
「大忠臣蔵」●監督:土居通芳/村山三男/西山正輝/古川卓己/柴英三郎●脚本:高岩肇/土居通芳/宮川一郎/池田一朗/柴英三郎●プロデューサー:勝田康三(NET)/西川善男●音楽:
純/矢吹寿子/新克利/伊藤榮子/中丸忠雄/河野秋武/石田太郎/田村正和/
子/東郷晴子/木村博人/宮浩之/田口計/浅野進治郎/小栗一也/本郷淳/永井秀明/矢野宣/信欣三/徳永礼子/川野耕司/近藤準/湊俊一/川口節子/鈴木治夫/伊藤清美/市川中車(急逝に伴い吉良上野介役を実弟の小太夫に交代)/市川小太夫/
本耕一/佐々木孝丸/清水一郎/山崎直樹/宇佐美淳也/見明凡太郎/上月晃/高松英郎/堀田真三/相原巨典/原鉄/

[1段目]中村錦之助(脇坂淡路守)/渡哲也(堀部安兵衛)/江原真二郎(片岡源五右衛門)/伊藤雄之助(大野九郎兵衛)/加藤嘉(
「

。居酒屋、夜鷹ソバ売り、按摩、飴売り等々に身をやつして吉良邸を窺う一方、主謀の大石(古川緑波)は祇園で放蕩三昧の体(てい)を装う。美男子の
自分に参った娘お艶(星美智子)の父が吉良邸出入りの大工頭梁・平兵衛(柳家金語楼)と知って色仕掛で邸の設計図を持ち出させた岡野(木戸新太郎)は、やがてお艶に真の愛情を感じた。吉良の悪徳いよいよ加わり、晴山が街頭演説でさかんにアジるものの、所詮は庶民の非力さ。そんな中、商人・亜茶兵衛(花菱アチャコ)の支援もあって、やがて討入りも迫り、岡野はお艶を訪れるが、一切を知った平兵衛は「もっと強く抱きつけ!」とお艶を煽るのだった。討入り成功。晴れ上った江戸の空の下で晴山は首尾整った赤穂義士伝を滔々として弁じ立てる―。
1953(昭和28)年公開の斎藤寅次郎監督作。古川緑波、伴淳三郎、柳家金語楼、横山エンタツ、花菱アチャコ、木戸新太郎、堺駿二、清水金一などの喜劇人が総出演しています。互いに共演の多い面子ですが、古川緑波、伴淳三郎、柳家金語楼、横山エンタツ、花菱アチャコらを一つの作品で観られるのは、この作品ぐらいではないでしょうか。
川路龍子(浅野内匠頭を演じる役者)
横山エンタツは吉良の間者の役(加藤茶に雰囲気が似てるなあ)。一方、花菱アチャコ演じる義侠心の商人・天野屋利兵衛ならぬ天野屋亜茶兵衛は、「天野屋利兵衛は男でござる」ならぬ「何言うてまんねん。亜茶兵衛は男でござる」を連発。「南部坂雪の別れ」もあり(瑤泉院・花井蘭子、戸田局・清川虹子)、岡野金右衛門(木戸新太郎・通称キドシン)とお艶(星美智子)の「岡野絵図面取り」もしっかり織り込まれています(お艶の父親で大工・平兵衛役の柳家金語楼の演技とギャグが楽しめる)。
討ち入り場面も本格的で、腰元たちが応戦に出てくるのは忠臣蔵では珍しいと思われます。腰元集団に囲まれ苦戦するのは堺俊二演じる村松喜兵衛。また、清水金一(通称シミキン)演じる清水一角の二刀流での奮闘ぶりもなかなかのものでした。一方で、討ち入りの装束に野球選手のような背番号が入っていたり、討入りの間、大石(古川緑波)が屋台で悠々とそばを15杯も食べていたりするのが可笑しいです。上野介が米の買占めや高利貸しなど悪行を働いて江戸庶民を苦しめたというのが映画の設定で、その上野介
(伴淳三郎が役者と本物の二役)が赤穂浪士を怖れて身代わりを雇い、それが冒頭の上野介を演じた役者ということで、討入りで最後に大石らの前に二人の上野介が引っ張り出されることになり(特撮を駆使)、どっちが本物かというお遊びもあります。
でも、前半部分で、浪士たちが密かに討入りを志す中、間十次郎(清川荘司)が病身の妻てい(月丘千秋)に本当のことを言えず、仇討ちなど今時流行らない、奉公先が決まったと嘘をついて、夫が亡君の仇を討つと信じていた妻がそれを裏切られた思いで、自分の子どもに「お前のお父様はもうこの世にはいません」というシーンはシリアスだったなあ(ここだけ観ると、全然コメディに見えない)。その分、ラストの討ち入り後の引き上げシーンでの十次郎と妻子の再会シーンはぐっとくるわけですが、このラストシーンは、その前に、大石と亜茶兵衛、岡野とお艶、戸田局と兄・小野寺十内の再会があって、最後に間十次郎と妻子の再会をもってきているところが上手いなあと思いました(その後、沿道の人に酒を振舞われ、がぶ飲みする不破数右衛門がちらっと見えたりする)。
コメディはしっかり作るべきところはしっかり作ってこそ面白くなるという、その見本と言える作品でした。気軽に楽しめる佳作だと思います。花井蘭子(瑶泉院)、月丘千秋(間十次郎の妻・てい)、相馬千恵子(苅藻太夫)、市丸(一力の太夫)、川路龍子(浅野内匠頭)、深川清美(大石主税)、野上千鶴子(間者おりう)と美女がいっぱい出てくるのもいいです。戸田局役の清川虹子でさえキレイ(笑)。義士の一人・横川勘平役の田端義夫が江戸の町をギターで流し、エンタツ・アチャコのダラダラ漫才も少しだけ見られます。
「珍説忠臣蔵」●制作年:1953年●監督:斎藤寅次郎●脚本:八住利雄●撮影:友成達雄●音楽:服部正●時間:87分●出演:古川緑波/伴淳三郎/柳家金語楼/横山エンタツ/花菱アチャコ/木戸新太郎/堺駿二/清水金一/阿部九洲男/清川荘司/田崎潤/花井蘭子/月丘千秋/相馬千恵子/市丸/田端義夫/川路龍子/一竜斎貞山/清川虹子/野上千鶴子/中村是好●公開: 1953/01●配給:新東宝(評価:★★★★)


。しかし、撮影終了後の同年3月6日、京都市上京区の牧野本宅で編集中に出火して大量のネガフィルムと牧野本宅が全焼、残存部分が編集されての封切りでした(討入りの場面は、同じキャストによるマキノ雅弘監督の「間者」より挿入)。太平洋戦争の戦禍で多くの日本映画のフィルムが四散消滅する中、松田春翠(1925-1987/62歳没)が発掘し、数本のポジフィルムより編集・復元、1968(昭和43)年、マキノ省三を偲ぶ40年忌と無声映画鑑賞会の10周年記念公開用に再製作されたものです(弁士:松田春翠)。
ていました。内匠頭に切腹の沙汰が下ったことを告げる早馬が赤穂城へ向かう―と、ここまでが前編なので、前の方が相当に重いとも言えます。
本作に脇坂淡路守(内匠頭に切られた上野介にわざとぶつかって服の袖に血をつけ、「紋所を血で汚すは」と一括、扇で上野介の額を打つ)の役で出演した嵐長三郎(のちの嵐寛寿郎)は、伊井を「うぬぼれ、度がすぎてますわ。ロケで金屏風立てて小便しよるんダ、アホクサイやら腹が立つやら、指差して笑ろうたら付人に見つかって告げ口された」「ここで思い入れあって大石泣くという芝居ダ。ちっとも泣かしまへん。ああ肝芸で心で耐えているんやなと見ていると、キャメラ・パンして離れてからクククーッ、と拳を眼に持っていきよる。写ってへんがな」と酷評し、自身がマキノプロ退社を決意した理由に、伊井の尊大さとそれを許した省三らスタッフの対応にあったと語っています。因みに、この作品にお目附・服部市郎右衛門(四十七士が仇討を成就して泉岳寺行こうとした際に、両国橋で行く手を塞ぎ、行き方を示唆)役で出た片岡千恵蔵も一緒にマキノプロを退所しているので、相当ひどかったのでしょう。
伊井の勝手な演技に悩まされたマキノ省三自身もこの作品を失敗作とみなしていたらしく、牧野邸火事の際、「『忠臣蔵』は焼けて良かったと」と語ったとされています。代わって省三の妻・知世子が陣頭指揮を執り、残ったフィルムを編集させて、同月14日には公開にこぎつけたとのことです。![[実録忠臣蔵]-s.jpg](http://hurec.bz/book-movie/%5B%E5%AE%9F%E9%8C%B2%E5%BF%A0%E8%87%A3%E8%94%B5%5D-s.jpg)
「忠魂義烈 実録忠臣蔵」●制作年:1928年●製作総指揮・監督:マキノ(牧野)省三●脚本:山上伊太郎/西条照太郎●撮影:田中十三ほか●時間:80分 / 64分(再編集版)●出演:伊井蓉峰/諸口十九/市川小文治/勝見庸太郎/月形龍之介/中根龍太郎/嵐長三郎(嵐寛寿郎)/片岡千恵蔵/片岡市太郎/杉狂児/中根龍太郎 /マキノ正博/小島陽三/松本時之助/中村東之助/小岩井昇三郎/山本礼三郎/金子新/市川小莚次/松村光男/荒木忍/川田弘道/菊波正之助/秋吉薫 /中田国義/若松文男/静間静之助/梅田五郎/守本専一/大味正徳/斉藤俊平/児島武彦/大谷万六/都賀清司/松尾文人/都賀一司/津村博/尾上松緑/藤井六輔/大国一郎/マキノ正美/児島武彦/嵐冠/染井達郎/松村光男/嵐冠吉郎/原田耕造/大味正徳/柳妻麗三郎/中村東之助/松本熊夫/西郷昇/南部国男/木村猛/森清/大谷鬼若/橘正明/嵐長三郎/星月英之助/矢野武夫/市川小文治/豊島龍平/小岩井昇三郎/東郷久義/佐久間八郎/英まさる/坂本二郎/沢村錦之助/武井龍三/天野刃一/八雲燕之助/鈴木京平/市川谷五郎/川島清/藤岡正義/牧光郎/有村四郎/小金井勝/松坂進/市原義雄/マキノ登六/久賀龍三郎/潮龍二/マキノ梅太郎/大谷万六/徳川良之助/守本専/荒尾静一/高山久/嵐冠三郎/尾上延三郎/玉木悦子/花岡百合子/石川新水/マキノ智子/松浦築枝/渡辺綾子/住ノ江田鶴子/三保松子/河上君江/水谷蘭子/岡島艶子/鈴木澄子/大林梅子/五十川鈴子/都賀静子/広田昴/玉木潤一郎/大岡怪童/大国一郎●公開: 1928/03●配給:マキノキネマ(評価:★★★)![元禄忠臣蔵 前後編[VHS].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E5%85%83%E7%A6%84%E5%BF%A0%E8%87%A3%E8%94%B5%E3%80%80%E5%89%8D%E5%BE%8C%E7%B7%A8%5BVHS%5D.jpg)

浅野内匠頭(五代目嵐芳三郎)は江戸城・松の廊下で吉良上野介(三桝萬豐)に斬りつけたかどにより切腹を命じられる。さらに浅野が藩主を務める赤穂藩はお家取り潰しとなってしまう。赤穂藩では国を守るために戦うか、あるいは主君に殉じて切腹をするか、意見が真っ二つに分かれた。家老の大石内蔵助(四代目河原崎長十郎)は、幕府に城を明け渡すことにする。上野介を討つため、内蔵助は主君の妻である瑶泉院に別れを告げる。その他の赤穂浪士も家族と別れ、続々と大石のもとに集まった。討ち入りを終え吉良の首を討ち取った大石は、泉岳寺にある浅野の墓を訪れる。その後、大石ら浪士たちに切腹の命が下る―。
1941年12月に前編が公開され、翌年2月に後篇が公開された溝口健二監督による3時間43分の大型時代劇。劇作家の真山青果(1878-1948)による新歌舞伎派の演目「元禄忠臣蔵」を、原健一郎と依田義賢が共同で脚色し、厳密な時代考証、実物大の松の廊下をはじめとする美術、ワンシーンワンカットの実験的手法を用いた流麗なカメラワークなどによって、それまでの「忠臣蔵もの」とは全く異なる作品に仕上げています。映画はいきなり江戸城内松の廊下で浅野内匠頭(嵐芳三郎)が吉良上野介(三桝萬豐)に斬かかる場面から始まります(まるで御所のようなセットのスケールの大きさ!)。事件後、上野介が沙汰無しで、内匠頭が切腹との御下知を伝える使者に対し、多門伝八郎(小杉勇)が、内匠頭が斬りつけようとした時に、吉良が損得のために脇差に手をかけなかったことを、侍として風上にも置けない人物だと批判しています(これは明らかに創作だろうなあ)。
また、内蔵助(河原崎長十郎)を幼馴染みの井関徳兵衛(板東春之助)が訪ね、一緒に籠城に加えてくれと申し出る話があります。内蔵助は思うところがあってその申し出を拒絶し、家臣たちに対し開城を宣言します。その夜、内蔵助は帰宅途中で息子と共に自害した徳兵衛を見つけ、徳兵衛の死に際に、内蔵助はその本心を打ち明けます。
内蔵助は浅野家再興が正式に潰えると、時機到来とばかりに吉良邸に乗り込む準備をして、浅野内匠頭の未亡人・瑶泉院(三浦光子)に別れの挨拶に行きますが、外部に情報が漏れるのを怖れ、瑶泉院に本心を打ち明けられず、彼女の怒りを買ってしまう。密偵に悟られないよう、自分の詠んだ歌と称し、服差包みを瑶泉院に仕えるお喜代(山路ふみ子)に渡して去る。昼間の内蔵助の態度が気に掛かり眠れずにいた瑶泉院が服差包みを開けると中に連判状が―と、この「南部坂雪の別れ」は通常の「忠臣蔵もの」と同じですが、すぐそこに吉良への討ち入り成功の知らせが届き、画面は、討ち入りを果たして、泉岳寺の亡き主君の墓へ報告に向かう内蔵助ら義士一行に切り替わるといった流れです。
が本心なのか吉良邸の情報が欲しかっただけなのかを確かめるため会おうと、身の回りを世話をする小姓に擬して接近しますが、内蔵助に女だと見抜かれます(高峰三枝子は誰が見ても女性にしか見えないが(笑))。それでも、十郎左衛門の懐におみのの琴の爪が忍ばせてあることを知った彼女は喜び、これから切腹の場に向かおうとする十郎左衛門と最期の面会を果たします(こんなことが可能とは思えないが、ここはお話)。
討ち入りの場面がなく、セリフも堅苦しくてあまり人気のある作品ではないですが、前半は忠とは何か?義とは何か? 武士とは何か? をとことん問う価値観の「論争劇」的な展開であり、内蔵助が、浅野大学頭を立ててのお家再興願いが叶えば、仇討ちの大義がなくなることに苦悩する場面があったりします。一方、討ち入りシーンが無いまま迎えた終盤は、高峰三枝子演じるおみのにフォーカスした、溝口健二お得意の「女性映画」であったように思いました。
また、この磯貝十郎左衛門と女性の悲恋物語は、諸田玲子が『四十八人目の忠臣』('11年/毎日新聞社)として小説に描いており、NHKの「土曜時代劇」枠で「忠臣蔵の恋~四十八人目の忠臣」('16年~'17年・全

菅原文太(肥後国熊本藩藩主・細川越中守綱利(内蔵介らがお預けとなった細川家の当主))



「元禄忠臣蔵 前編・後編」●英題:The 47 Ronin●制作年:1941・42年●監督:溝口健二●製作総指揮・総監督:白井信太郎●脚本:原健一郎/依田義賢●撮影:杉山公平●音楽:深井史郎●原作:真山青果●時間:(前編)111分/(後編)112分●出演:(前進座)四代目河原崎長十郎/三代目中村翫右衛門/四代目中村鶴蔵/五代目河原崎國太郎/坂東調右衛門/助高屋助蔵/六代目瀬川菊之丞/市川笑太郎/橘小三郎/市川莚司(加東大介)/市川菊之助/中村進五郎/山崎進蔵/市川扇升/市川章次/市川岩五郎/坂東銀次郎/生島喜五郎/山本貞子/(松竹京都)海江田譲二/坪井哲/風間宗六/和田宗右衛門/竹内容一/征木欣之助/梅田菊蔵/大川六郎/村時三郎/大河内龍/松永博/大原英子/岡田和子/(第一協団)河津清三郎/浅田健三/(フリー)三桝萬豐/島田敬一/(新興キネマ)市川右太衛門/加藤精一/荒木忍/梅村蓉子/山路ふみ子/(松竹大船
)高峰三枝子/三浦光子/(その他)五代目嵐芳三郎/山岸しづ江/四代目中村梅之助/三井康子/市川進三郎/坂東春之助/中村公三郎/坂東みのる/六代目嵐德三郎/筒井德二郎/川浪良太郎/大内弘/羅門光三郎/京町みち代/小杉勇/清水将夫/山路義人/玉島愛造/南光明/井上晴夫/大友富右衛門/賀川清/粂譲/澤村千代太郎/嵐敏夫/市川勝一郎/滝見すが子●公開:(前編)1941/12/(後編)1942/02●配給:松竹(評価:★★★★)



従来は「武士の倫理観」という視点で分析されがちだった「忠臣蔵」を、その倫理観の陰に隠れて見過ごされがちな「経済的側面」から分析した本。主君の刃傷事件によって藩がお取り潰しになった際、旧藩士はどの程度の退職金を得たのか、浪人生活の苦しさとは具体的にどのようなものだったのか、生活費に窮した時はどうしたかなどについて書かれています。好評だった前著『これが本当の「忠臣蔵」』('12年4月/小学館101新書―江戸検新書)から、「忠臣蔵」の経済・財政面にフォーカスし、深堀りしたものとも言えます。
新潮ドキュメント賞を受賞した歴史学者・磯田道史氏の『武士の家計簿-「加賀藩御算用者」の幕末維新』('03年/新潮新書)が、森田芳光監督、堺雅人主演で「武士の家計簿」('10年/松竹)として7年超しで映画化され、同じように小説ではない本書もこの度、「殿、利息でござる!」('16年/松竹)(これも原作は磯田道史氏)の中村義洋監督、堤真一主演で「決算!忠臣蔵」('19年/松竹)として7年超しで映画化されました(中村義洋監督自身による小説化作品がある)。
嫁入り持参金)だったようです。この「軍資金」が討入りの計画・準備・実行にどのように使われたかが『預置候金銀受払書』に沿って諸々解説されているのが本書の中核となっています。そして、最終的な使用内訳は、次の通りとなっています。
映画化作品は、堤真一演じる大石内蔵助に加えて、岡村隆史演じる(本書にもその名がある)勘定人・矢頭(やとう)長助をダブル主人公にし、諸経費を現在の金額に置き換えて、その時々でいくらかかったかをユーモラスに分かりやすく解説していました。内蔵助が武器輸送に際して危機に陥る「大石東下り」の段もなければ、瑤泉院が内蔵助と別れた後でその真意を知る「南部坂雪の別れ」の段もない「忠臣蔵」ですが、そうした後世の作り話はこの際入れなくて正解でした(石原さとみが瑤泉院を演じていて、討ち入り直前に内蔵助の勘定報告は目にするが、袱紗に包んだ紙包みを開けるとそこには「討入同志連名血判状」の題字が...といった「忠臣蔵」お決まりのシーンはない)。
ずっとコメディタッチできていたので、個人的には、途中で矢頭長助を大石内蔵助の代わりに死なせることをしなくてもよかったのではないかと思います(絶叫型の演技が多い中で、岡村隆史のぽつりぽつりと喋る演技は効いていた。矢頭長助をヒーローにしないと気が済まなかったのか?)。史実では矢頭長助は病に伏して1702(元禄15)年9月に45歳で亡くなっており、その年の討入りには息子の矢頭教兼(のりかね)が加わっています(教兼が切腹した時の年齢が18歳で、四十七士の中では大石主悦の16歳に次いで若かった。美少年とされ、討入り後い世間に「義士の中に男装の女がいた」という噂話が流れたとも伝わる)。
映画では"討入りプロジェクト"は終盤、討入り装備費の試算の段階で、あの武器も必要、この防具も必要と喧々諤々やっているうちに赤字見通しになり(つまり資金不足になったということ)、それが、吉良上野介が確実に在宅している日が事前情報として分かったことで、討入りが当初予定より3カ月早まり、それだけ家賃等生計維持費が浮くことになって、何とか「予算内で」討入りができるようになったという流れになっていますが、先の軍資金の資質配分を映画と突き合わせてみると、討入り装備費は全体の2%弱で、その前の旅費・江戸逗留費などの支出の方がずっと大きかったことがわかります。この支出配分を念頭に置いて映画を見てみるのも、なかなか面白いのではないかと思います。
「決算!忠臣蔵」●制作年:2019年●監督・脚本:中村義洋●製作:池田史嗣/古賀俊輔中居雄太/木本直樹●撮影:相馬大輔●音楽:髙見優●時間:125分●出演:堤真一/岡村隆史/濱田岳/横山裕/荒川良々/妻夫木聡/大地康雄/西村まさ彦/木村祐一/小松利昌/沖田裕樹/橋本良亮/寺脇康文/千葉雄大/桂文
珍/村上ショージ/板尾創路/滝藤賢一/笹野高
史/竹内結子/西川きよし/石原さとみ/阿部サダヲ●公開:2019/11●配給:松竹●最初に観た場所:新宿ピカデリー(19-12-16)(評価:★★★☆)●併映(同日上映):「

山本 博文(東京大学史料編纂所 教授)(1957-2020.3.29/63歳没)


(上巻)元禄太平に勃発した浅野内匠頭の刃傷事件から、仇討ちに怯える上杉・吉良側の困惑、茶屋遊びに耽る大石内蔵助の心の内が、登場人物の内面に分け入った迫力ある筆致で描かれる。虚無的な浪人堀田隼人、怪盗蜘蛛の陣十郎、謎の女お仙ら、魅力的な人物が物語を彩り、鮮やかな歴史絵巻が華開く―。(下巻)二度目の夏が過ぎた。主君の復讐に燃える赤穂浪士。未だ動きを見せない大石内蔵助の真意を図りかね、若き急進派は苛立ちを募らせる。対する上杉・吉良側も周到な権謀術数を巡らし、小競り合いが頻発する。そして、大願に向け、遂に内蔵助が動き始めた。呉服屋に、医者に姿を変え、江戸の町に潜んでいた浪士たちが、次々と結集する―。[新潮文庫ブックカバーあらすじより]
大佛次郎(1897-1973)の歴史時代小説で、1927(昭和2)年5月から翌年11月まで毎日新聞の前身にあたる「東京日日新聞」に岩田専太郎の挿絵で連載された新聞小説です。1928(昭和3)年10月に改造社より上巻が発売されるや15万部を売り切って当時としては大ベストセラーとなり、中巻が同年11月、下巻が翌年8月に刊行されています。
しょうか。'61年版の片岡千恵蔵が自身4度目の大石内蔵助を演じた「赤穂浪士」では、堀田隼人(大友柳太郎)はともかく、蜘蛛の陣十郎はもう登場しません。但し、1964年の長谷川一夫が内蔵助を演じたNHKの第2回大河ドラマ「赤穂浪士」では、堀田隼人(林与一)も蜘蛛の陣十郎(宇野重吉)も隠密のお仙(淡島千景)も出てきます。


この大佛次郎の小説が作者の大石内蔵助や赤穂浪士に対する見解が多分に入りながらも"オーソドックス(正統)"とされるのは、その後に今日までもっともっと変則的な"忠臣蔵"小説やドラマがいっぱい出て
「赤穂浪士」(NHK大河ドラマ)●演出:井上博 他●制作総指揮:合川明●脚本:村上元三
●音楽:

田村高廣 NHK大河ドラマ出演歴

元禄14年3月、江戸城勅使接待役に当った播州赤穂城主・浅野内匠頭(市川雷蔵)は、日頃から武士道を時世遅れと軽蔑する指南役・吉良上野介(滝沢修)から事毎に意地悪い仕打ちを受けるが、近臣・堀部安兵衛(林成年)の機転で重大な過失を免れ、妻あぐり(山本富士子)の言葉や国家老・大石内蔵助(長谷川一夫)の手紙により慰められ、怒りを抑え役目大切に日を過す。しかし、最終日に許し難い侮辱を受けた内匠頭は、城中松の廊下で上野介に斬りつけ、無念にも討
ち損じる。幕府は直ちに事件の処置を計るが、上野介贔屓の老中筆頭・柳沢出羽守(清水将夫)は、目付役・多門伝八郎(黒川弥太郎)、老中・土屋相模守(根上淳)らの正論を押し切り、上野介は咎めなし、内匠頭は即日切腹との処分を下す。内匠頭は多門伝八郎の情けで家臣・片岡源
右衛門(香川良介)に国許へ遺言を残し、従容と死につく。赤穂で悲報に接した内蔵助は、混乱する家中の意見を籠城論から殉死論へと導き、志の固い士を判別した後、初めて仇討ちの意図を洩らし血盟の士を得る。その中には前髪の大石主税(川口浩)と矢頭右衛門七(梅若正二)、浪々中を馳せ参じた不破数右衛門(杉山昌三九)も加えられた。内蔵助は赤穂城受取りの脇坂淡路守(菅原謙二)を介して浅野家再興
の嘆願書を幕府に提出、内蔵助の人物に惚れた淡路守はこれを幕府に計るが、柳沢出羽守は一蹴する。上野介の実子で越後米沢藩主・上杉綱憲(船越英二)は、家老・千坂兵部(小沢栄太郎)に命じて上野介の身辺を警戒させ、兵部は各方面に間者を放つ。内蔵助は赤穂退去後、京都山科に落着くが、更に浅野家再興嘆願を兼ねて江戸へ下がり、内匠頭後室・あぐり改め瑤泉院を訪れる。瑤泉院は、仇討ちの志が見えぬ内蔵助を責める侍女・戸田局(三益愛子)とは別に彼を信頼している。内蔵助はその帰途に吉良方の刺客に襲われ、多門伝八郎の助勢で事なきを得るが、その邸内で町人姿の岡野金右衛門(鶴田浩二)に引き合わされる。伝八郎は刃傷事件以来、陰に陽に赤穂浪士を庇護していたのだ。一方、大石襲撃に失敗した千坂兵部は清水一角(田崎潤)の報告によって並々ならぬ人物と知り、腹心の女るい(京マチ子)を内蔵助の身辺に間者として送る。江戸へ集った急進派の堀部安兵衛らは、出来れば少人数でもと仇討ちを急ぐが、内蔵助は大義の仇討ちをするには浅野家再興の成否を待ってからだと説く。半年後、祇園一力茶屋で多くの遊女と連日狂態を示す内蔵助の身辺に、内蔵助を犬侍と罵る浪人・関根弥次郎(高松英郎)、内蔵助を庇う浮橋(木暮実千代)ら太夫、仲居姿のるいなどがいた。内蔵助は浅野再興の望みが絶えたと知ると、浮橋を身請けして、妻のりく(淡島千景)に離別を申渡す。長子・主税のみを残しりくや幼い3人の子らと山科を去る母たか(東山千栄子)は、仏壇に内蔵助の新しい位牌を見出し、初めて知った彼の本心にりくと共に泣く。るいは千坂の間者・
小林平八郎(原聖四郎)から内蔵助を斬る指令を受けるがどうしても斬れず、平八郎は刺客を集め内蔵助を襲い主税らの剣に倒れる。機は熟し、内蔵助ら在京同志は続々江戸へ出発、道中、近衛家用人・垣見五郎兵衛(二代目中村鴈治郎)は、自分の名を騙る偽者と対峙したが、それを内蔵助と知ると自ら偽者と名乗
って、本物の手形まで彼に譲る。江戸の同志たちも商人などに姿を変えて仇の動静を探っていたが、吉良方も必死の警戒を続け、しばしば赤穂浪士も危機に陥る。千坂兵部は上野介が越後へ行くとの噂を立て、この行列を襲う赤穂浪士を一挙葬る策を立てるが、これを看破した内蔵助は偽の行列を見送る。やがて、赤穂血盟の士47人は全員江戸に到着し、決行の日は後十日に迫るが、肝心の吉良邸の新しい絵図面だけがまだ無い。岡野金右衛門は同志たちから、彼を恋する大工・政五郎(見明凡太朗)の娘お鈴(若尾文子)を利用してその絵図を手に入れるよう責められていて、決意してお鈴に当る。お鈴は小間物屋の番頭と思っていた岡野金右衛門を初めて赤穂浪士と覚ったが、方便のためだけか、恋してくれているのかと彼に迫り、男の真情を知ると嬉し泣きしてその望みに応じ、政五郎も岡野金右衛門の名も聞かずに来世で娘と添ってくれと頼む。江戸へ帰ったるいは、再び兵部の命で内蔵助を偵察に行くが、内蔵助たちの美しい心と姿に打たれる彼女は逆に吉良家茶会の日を14日と教える。その帰途、内蔵助を斬りに来た清水一角と同志・大高源吾(品川隆二)の斬合いに巻き込まれ、危って一角の刀に倒れたるいは、いまわの際にも一角に内蔵助の所在を偽る。るいの好意とその最期を聞いた内蔵助は、12月14日討入決行の檄を飛ばす。その14日、内蔵助はそれとなく今生の暇乞いに瑤泉院を訪れるが、間者の耳目を警戒して復讐の志を洩らさ
ず、失望する瑤泉院や戸田局を後に邸を辞す。同じ頃、同志の赤垣源蔵(勝新太郎)も実兄・塩山伊左衛門(竜崎一郎)の留守宅を訪い、下女お杉(若松和子)を相手に冗談口をたたきながらも、兄の衣類を前に人知れず別れを告げて飄々と去る。勝田新左衛門(川崎敬三)もまた、実家に預けた妻と幼児に別れを告げに来たが、舅・大竹重兵衛(志村喬)は新左衛門が他家へ仕官すると聞き激怒し罵る。夜も更けて瑤泉院は、侍女・紅梅(小野道子)が盗み出そうとした内蔵助の歌日記こそ同志の連判状であることを発見、内蔵助の苦衷に打たれる。その頃、そば屋の二階で勢揃いした赤穂浪士47人は、表門裏門の二手に分れ内蔵助の采
配下、本所吉良邸へ乱入。乱闘数刻、夜明け前頃、間十次郎(北原義郎)と武林唯七(石井竜一)が上野介を炭小屋に発見、内蔵助は内匠頭切腹の短刀で止めを刺す。赤穂義士の快挙は江戸中の評判となり、大竹重兵衛は瓦版に婿の名を見つけ狂喜し、塩山伊左衛門は下女お杉を引揚げの行列の中へ弟を探しにやらせお杉は源蔵を発見、大工の娘お鈴もまた恋人・岡野金右衛門の姿を行列の中に発見し、岡野から渡された名札を握りしめて凝然と立ちつくす。一行が両国橋に差しかかった時、大目付・多門伝八郎は、内蔵
助に引揚げの道筋を教え、役目を離れ心からの喜びを伝える。その内蔵助が白雪の路上で発見したものは、白衣に身を包んだ瑤泉院が涙に濡れて合掌する姿だった―。[公開当時のプレスシートより抜粋]
1958(昭和33)年に大映が会社創立18年を記念して製作したオールスター作品で、監督は渡辺邦男(1899-1981)。大石内蔵助に大映の大看板スター長谷川一夫、浅野内匠頭に若手の二枚目スター市川雷蔵のほか鶴田浩二、勝新太郎という豪華絢爛たる顔ぶれに加え女優陣にも京マチ子、山本富士子、木暮実千代、淡島千景、若尾文子といった当時のトップスターを起用しています。当時、赤穂事件を題材とした映画は毎年のように撮られていますが、この作品は、その3年後に作られた同じく大作である松田定次監督、片岡千恵蔵主演の「
それぞれ大石内蔵助と吉良上野介を演じています(こちらは大佛次郎の『赤穂浪士』が原作)。また、「赤穂浪士」が「大石東下り」の段で知られる立花左近に大河内傳次郎を配したのに対し、こちら「忠臣蔵」は立花左近に該当する垣見五郎兵衛
に二代目中村鴈治郎を配しており、長谷川一夫が初代中村鴈治郎の門下であったことを考えると、兄弟弟子同士の共演とも言えて興味深いです。但し、この場面の演出は片岡千恵蔵・大河内傳次郎コンビの方がやや上だったでしょうか。
この作品は、講談などで知られるエピソードをよく拾っているように思われ(このことが伝説的虚構性を重視しているということになるのか)、先に挙げた内蔵助が武士の情けに助けられる「大石東下り」や、同じく内蔵助がそれとなく瑤泉院を今生の暇乞いに訪れる「南部坂雪の別れ」などに加え、赤垣源蔵が兄にこれもそれとなく別れを告げに行き、会えずに兄の衣服を前に杯を上げる「赤垣源蔵 徳利の別れ」などもしっかり織り込まれています。赤垣源蔵役は勝新太郎ですが、この話はこれだけで「
を演じています。こちらの話ももう少し詳しく描いて欲しかった気もしますが、勝田新左衛門の舅・大竹重兵衛(演じるのは志村喬)のエピソード(これも「赤穂義士銘々伝」のうちの一話になっている)などは楽しめました(志村喬は戦前の喜劇俳優時代の持ち味を出していた)。

「婦人画報」'64年1月号(表紙:山本富士子)
滝沢修(吉良上野介)・市川雷蔵(浅野内匠頭)



「忠臣蔵」●制作年:1958年●監督:渡辺邦男●製作:永田雅一●脚本:渡辺邦男/八尋不二/民門敏雄/松村正温●撮影:渡辺孝●音楽:斎藤一郎●時間:166分●出演:長谷川一夫/市川雷蔵/鶴田浩二/勝新太郎/川口浩/林成年/荒木忍/香川良介/梅若正二/川崎敬三/北原義郎/石井竜一/伊沢一郎/四代目淺尾奥山/杉山昌三九/葛木香一/舟木洋一/清水元/和泉千
太郎/藤間大輔/高倉一郎/五代千太郎/伊達三郎/玉置一恵/品川隆二/横山文彦/京マチ子/若尾文子/山本富士子/淡島千景/木暮実千代/三益愛子/小野道子/中村玉緒/阿井美千子/藤田佳子/三田登喜子/浦路洋子/滝花久子/朝雲照代/若松和子/東山
千栄子/黒川弥太郎/根上淳/高松英郎/花布辰男/松本克平/二代目澤村宗之助/船越英二/清水将夫/南條新太郎/菅原謙二/南部彰三/春本富士夫/寺島雄作/志摩靖彦/竜崎一郎/坊屋三郎/見明凡太朗/上田寛/小沢栄太郎/田崎潤/原聖四郎/志村喬/二代目中村鴈治郎/滝沢修●公開:1958/04●配給:大映(評価:★★★★)


江は知る由もない。これが、ラストシーンで、千鶴江が、本懐を遂げ泉岳寺に向かう四十七士の隊列の中にもしやと思ったその源蔵を見つけるという場面で効いてきます。源蔵の姿をを追いかける千鶴江は、雪で思うように歩けないため下駄を脱ぎ捨てて裸足で追う―暫く千鶴江の足元だけ映して彼女の心の昂ぶりを表しているのは上手いと思いました。
し、源蔵が彼女に「西国のさる大名に召し抱えられた」と言伝(ことづて)するのも講談と同じです(この言葉は大石内蔵助が浅野内匠頭の妻・瑤泉院に対して「味方を欺く」ために使ったものと重なることから、源蔵自身が"内蔵助"の再現となっている)。また、源蔵が次に兄と会えるのはお盆の頃かとおすぎに言うのは、これはつまり自身が亡くなった後の"新盆"を意味しており、これは映画では定番のようです(「

五代将軍綱吉治下、江戸市内に立てられた高札の「賄賂は厳禁のこと」の項が墨黒々と消され、犯人とおぼしき浪人・堀田隼人(大友柳太朗)が目明し金助(田中春男)に追われるが、堀部安兵衛(東千代之介)に救われる。赤穂五万石の当主・浅野内匠頭(大川橋蔵)は、勅使饗応役を命ぜらるが、作法指南役の吉良上野介(月形龍之介)は、内匠頭が賄賂
を贈らないため事毎に意地の悪い仕打ちをする。勅使登城当日、度重なる屈辱に耐えかね、松の廊下で上野介に刃傷に及ぶ。内匠頭は命により即日切腹、浅野家は改易に。赤穂城代・大石内蔵助(片岡千恵蔵)のかつての親友で、上野介の長子・綱憲(里見浩太朗)を当主とする上杉家の家老・千坂兵部(市川右太衛門)は、上野介お構いなしとの片手落ちの幕府の処断に心痛する。兵部は清水一角(近衛十四郎)に命じ、腕ききの浪人者を集め、上野介の身辺を守らせ、隼人も附人の一人となる。兵部は妹の仙(丘さとみ)に内蔵助らの動静をさぐることを命じ、隼人も赤穂に赴く。内蔵助は、同志に仇討ちの意志を
伝えて城を明け渡すと、京都山科に居を構えて祇園一力で遊蕩の日々を送り、妻子とも離別する。世の誹りの中、兵部だけは内蔵助の心中を知る。内蔵助は立花左近を名乗って東下りするが、三島の宿で本物の立花左近(大河内傳次郎)と鉢合わせになり、左近の情ある計らいで事無きを得る。内蔵助は討入り前に瑶泉院(大川恵子)を訪れ、言外に今生の別れを告げると、元禄14年12月14日雪の中、本所松坂町の吉良邸に討入る―。
松田定次監督による1961年の東映創立10周年記念作品。東映は同監督の1956年製作の東映創立5周年記念作品「赤穂浪士 天の巻・地の巻」、1959年製作の"東映発展感謝記念"「忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻」に続くオールスター・キャストの忠臣蔵映画であり、「赤穗浪士 天の巻・地の巻」などと同じく、大佛次郎(1897-1973/享年75)の、昭和初期に「東京日日新聞」に連載、1928年改造社より刊行の小説『
たのに対し、こちらは小国英雄の脚本。「赤穗浪士 天の巻・地の巻」の時は大石内蔵助を市川右太衛門が、浅野内匠頭を東千代之介が、立花左近を片岡千恵蔵、堀部安兵衛を堀雄二が演じていたのに対し、こちらは大石内蔵助を3年前の「忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻」の時と同じく片岡千恵蔵が(片岡千恵蔵は「
の人物を、「赤穗浪士 天の巻・地の巻」の時に続いて
演じています(この役は過去に大河内傳次郎や片岡千恵蔵も演じている)。因みに吉良上野介も、「赤穗浪士 天の巻・地の巻」の時に続いて月形龍之介が演じています。
豪華俳優陣がそれぞれに相応しい役を演じているという印象を受け、オーソドックスに作られたものの中では完成度はまずまず高いのではないでしょうか。まあ、大友柳太朗が演じる堀田隼人は完全に架空の人物であるし、千坂兵部(実在)も赤穂事件の2年前(1700年)に既に没していたことが後に判明しているため、"オーソドックス"というのはあくまでも大佛次郎の小説『赤穗浪士』をベースとして考えた場合ということになり、マキノ正博/池田富保監督の「
この大佛次郎原作・松田定次監督版の場合、やはり何と言っても大友柳太朗が演じる堀田隼人の存在が特徴的で、「賄賂は厳禁のこと」と書かれた立札に落書きし(この話は原作には無い)、賄賂を受け取っている吉良上野介を揶揄することで、浅野内匠頭の吉良上野介への怒りを単なる"私憤"の域に止めず"公憤"の域にまで引き上げ、観客が浅野内匠頭に同情しやすい状況を作り出す役割を果たしているように思います。でも、結局隼人自身は、浪士たちに共感を覚えながらも自らを浪士たちに同化しきれないことを悟って、スパイ同士の関係から恋仲になった仙の下へ戻って行きます。映画からは隼人が自らが抱える虚無を克服できなかったことが窺えますが、原作では後日譚として隼人と仙は心中したとなっています(原作では仙は兵部の妹でも何でもない非血縁者)。
あとは目立ったのは、浅野内匠頭のことを心配していた中村錦之助(萬屋錦之介)演じる脇坂淡路守。吉良上野介ごときで命を落とすのは惜しいと内匠頭に辛抱を説き、浅野家臣には上野介への付け届をもう少し配慮しろとの実践的アドバイスをしています(この人の言うことを聞いていれば赤穂事件は起きなかった?但しこの話も原作には無い)。しかし、遂に刃傷事件が起きてしまって悔しがり、松の廊下を搬送される吉良にわざと(?)ぶつかって「我が家の紋所を不浄の血でけがすとはなにごとぞ!無礼者!」と言って吉良上野介を扇子でしたたか打ち据えます(この話も原作には無い)。でもこれはまあ立花左近の"勧進帳"(大石東下り)と併せて定番と言えば
定番です。むしろ、市川右太衛門演じる上杉家の家老・千坂兵部
後半の目立ちぶりが顕著だったかも。千坂兵部は内蔵助と旧知の関係になっていて(原作には無い設定)、なぜか内蔵助が立花左近と鉢合わせになった三島の宿にまで出没し、内蔵助と目と目だけの"会話"。最後は、父親の危機に馳せ参じようとする上野介の長子・綱憲(里見浩太朗)を上杉家のためだと言って(世間は皆、赤穂浪士側を支持していますとの殆ど観客向けのような説明の仕方がスゴイけれど)命を張って押しとどめます(原作では赤穂浪士討ち入りの時点で千坂兵部は国元に戻されているため、この場面も無い)。
松方弘樹(1942年生まれ、デビュー2作目で当時18歳)が大石内蔵助の息子・大石主税役で出ていて、討ち入り前に元服しますが(実在の大石主税は当時15歳ぐらいか)、討ち入った先に近衛十四郎(松方弘樹の実父)が演じる二刀流の剣豪・清水一角がいるという取り合わせが興味深いです(清水一角は歌舞伎で使われた名前で、本名は清水一学(実在))。"親子出演"で、親子を敵味方にしてしまったのだなあ。近衛十四郎の剣戟がちらっと見られるのはいいです(松方弘樹の方はまだ、ただ出ているだけ程度の存在か)。
く、後に吉良上野介も演じるがここでは忠義の家臣)も良かったです。オールスター映画ですが、ストーリーは概ね定番です(但し、改めて振り返ると、大佛次郎の原作と比べても細部においては「無い無い尽くし」であるため、「(原作をベースに考えれば)オーソドックス」の"オーソドックス"には?マークがつくが)。そうした意味では、個々の役者を楽しむ映画かもしれません。長谷川一夫主演の「
郎/水野浩/中村時之介/北龍二/明石潮/清川荘司/吉田義夫/星十郎/沢村宗之助/戸上城太郎/阿部九洲男/加賀邦男/長谷川裕見子/花柳小菊/青山京子/千原しのぶ/木暮実千代/大
河内傳次郎/近衛十四郎/山形勲/薄田研二/進藤英太郎/大友柳太朗/月形龍之介/市川右太衛門●公開:1961/03●配給:東映(評価:★★★☆)






元禄14年、勅使饗応役に任命された赤穂藩主・浅野内匠頭(片岡千恵蔵)は、指南役の吉良上野介(山本嘉一)の度重なる嫌がらせに堪忍袋の緒が切れ、江戸城中の松の廊下で吉良に斬りつけるという刃傷沙汰に及ぶ
。内匠頭は切腹、浅野家は断絶を命じられ、大石内蔵助(阪東妻三郎)はじめ家臣たちは城を明け渡す。浪士となった彼らは、敵や世間の目を欺きながら、仇討ちの機会を窺う。遂に翌15年12月14日、吉良邸への討ち入りを決行す―。
1938年公開作。日本映画の父と謳われたマキノ省三(1878-1929/享年50)が1928年に畢生の大作として制作した「
ストーリーがオーソッドクスで、それゆえに「決定版」とか「ベストオブ忠臣蔵映画」などとも言われる作品です。特徴的なのは、ストーリーを追いながらも、名場面はあたかも歌舞伎のようにじっくり撮っている点で、配役も、主役の阪東妻三郎は大石内蔵助のみを演じていますが、同じく主役級の片岡千恵蔵が浅野内匠頭と立花左近、嵐寛寿郎が脇坂淡路守と清水一角、月形龍之介が原惣右衛門と小林平八郎というようにあとの主要な10人の俳優は一人二役であり、これも歌舞伎の手法を模しているのかもしれません。嵐寛寿郎は血で家紋を汚した吉良上野介を打ち据えた浅野家シンパの播磨龍野藩主・脇坂淡路守(嵐寛寿郎は「忠魂義烈 実録忠臣蔵」でもこの役を演じている)と二刀流の剣豪で討ち入りで亡くなった吉良家の用心棒の一人・清水一角の両方を演じ、月形龍之介に至っては討ち入った四十七士の一人(原惣右衛門)と討ち入られて奮戦しながらも亡くなった吉良家家臣の一人(小林平八郎)の両方を演じていることになります。
現在残っているプリントは、昭和31年12月12日再公開時のもので、初公開時19巻だったものが12巻となっているため、本作を「総集編」とも呼びますが、大河ドラマの年末「総集編」ほどの端折り様ではないですが、明らかにあってもよさそうな場面が無いのがやや残念。そんな中、印象に残るのは、後半「地の巻」の立花左近のエピソードでしょうか。
討ち入り決行を決意した内蔵助がいよいよ江戸へ下るとき、武器を輸送する際に関所で咎められないよう、立花左近の名を語って虎の尾を踏む思いで道中行くも、本物の立花左近がやはり品物を輸送中で、二組は東海道・鳴海宿で偶々同宿になってしまい、しかし立花左近は内蔵助たちを主君の仇討ちをせんとする赤穂浪士と察して、自分の方が偽物だと言って本物の身分証(道中手形)を偽物だからそちらで破棄してくれと言って渡すという、所謂「大石東下り」の段です。
これを阪東妻三郎の大石内蔵助と片岡千恵蔵の立花左近が差しの演技で演じていて(内蔵助の家臣らは部屋の外に密かに待機し思わぬ展開に涙を流す)、互いに貫禄充分です(片岡千恵蔵は前半の浅野内匠頭よりも後半のこの立花左近の方が似合っている)。手形を見せろと言われて阪妻・内蔵助が差し出したものは実は白紙で、これを黙認する千恵蔵・立花左近という図は、歌舞伎の「勧進帳」における武蔵坊弁慶と富樫左衛門の図と同じで、この時BGMで流れるのも「勧進帳」です。
もう1つの見せ場は、ほぼそれに続く、浅野長矩の妻・瑤泉院(星玲子)と阪妻・内蔵助の遣り取りで(所謂「南部坂雪の別れ」の段)、京都で放蕩生活をしてきた内蔵助を瑤泉院は吉良方を欺くための所為であろうと問うたのに対し、内蔵助はこれを頑なに否定し、討ち入りは諦めたと言ったため、瑤泉院が怒ってしまうというもの。内蔵助は戸田の局(沢村貞子)にある巻物を託して辞去しますが、吉良の間者である腰元(大倉千代子)がこれを盗み出し、それが見つかって取り押さえられて、取り返した巻物は戸田の局が瑤泉院に届けるが、内蔵助への怒りが収まらない瑤泉院はそれを投げつける―すると、巻物の紐がほどけて現れたのは内蔵助をはじめとする浪士たちの血判状だったというもの。叩きつけられた巻物がほどけて転がっていき、それが血判状であることが明らかになるという見せ方が旨いと思いました(このパターン、後の「忠臣蔵」映画やテレビドラマで何度も踏襲された)。
「忠臣蔵 天の巻・地の巻(総集編)」●制作年:1938年●監督:マキノ正博(天の巻)/池田富保(地の巻)●製作:根岸寛一/藤田平二●脚本:山上伊太郎(天の巻)/滝川紅葉(地の巻)●撮影:石本秀雄(天の巻)/谷本精史(地の巻)●音楽:西梧郎(天の巻)/白木義信(地の巻)●時間:102分(現存)●出演:阪東妻三郎/片岡千恵蔵/嵐寛寿郎/小林平八郎/尾上菊太郎/澤村國太郎/沢田清/河部五郎/市川百々之助/原健作/香川良介/志村喬/市川小文治/団徳麿/磯川勝彦/市川正二郎/瀬川路三郎/田村邦男/葉山富之輔/尾上桃華/尾上華丈/楠栄三郎/島田照夫/仁礼功太郎/石川秀道/藤川三之祐/久米譲/林誠之助/阪東国太郎/大崎史郎/若松文男/志茂山剛/近松龍太郎/市川猿昇/小池柳星/沢村寿三郎/轟夕起子/原駒子/大倉千代子/中野かほる/衣笠淳子/比良多恵子/香住佐代子/小松みどり/滝沢静子/小杉勇/江川宇礼雄/山本嘉一/杉狂児/滝口新太郎/高木永二/北龍二/広瀬恒美/見明凡太朗/山本礼三郎/吉谷久雄/星ひかる/吉井莞象/花柳小菊/
黒田記代/村田知栄子/星玲子/沢村貞子/近松里子/悦ちゃん/宗春太郎/市川小太夫●公開:1938/03/31●配給:日活京都(評価:★★★☆)

粗忽者の不破数右衛門(羅門光三郎)はある日、仇討ちの兄妹を救う。だが、肝心の仇を取り逃がしてしまい、その仇そっくりの武士を誤って斬ってしまう。しかも、斬った相手が浅野家の悪評高い家老・大野九郎兵衛(矢野伊之助)の息子であることが判明。愕然とし死を覚悟する数右衛門だったが、大殿・浅野内匠頭(阪東太郎)は、自ら手打ちにすると公言しながらも、秘密裡に数右衛門を生かして逃がす。月日は流れ三年後、赤穂城下を離れていた数右衛門はお家の大事を知り、質草になっていた鎧櫃(よろいびつ)を強引に取り戻して、韋駄天走りで赤穂を目指す―。
1933(昭和8)年公開の後藤岱山監督による人情話あり、仇討ありの痛快講談調時代劇で、活弁トーキー版ビデオで鑑賞(弁士は澤登翠(さわみどり)氏。90年代に録音されたものか)。赤穂四十七士のうち、堀部安兵衛や赤垣源蔵(赤埴源蔵)と並んで人気の高い不破数右衛門を主人公にした作品で、「不破数右衛門」というタイトルの映画だけでこの作品の前に7作作られています(但し、何れもフィルムが現存せず)。赤穂浪士の中でも討ち入りで大活躍したとされていますが、その一方で、お人好しで粗忽者だったというイメージも、既に定着済みだったかも。
主演は当時の大衆映画のスター羅門光三郎(1901- 没年不詳、1963年まで活動)で、作家・中島らものペンネームの由来である俳優としても知られますが、その芸名の苗字「羅門」は1925年版「
身の危険を悟った権太夫は息子の一角(阿部九州男、二役)に初めて正体を打ち明けて仕事を手伝わせるが、権太夫を仇と狙う若侍・宇家田輝雪(近衛十四郎、俳優・松方弘樹の父)が現れて―。
かなり現代風な話の作りになっているように思え、しかも、一角が偶然知り合った輝雪と別れ、輝雪が入っていった家に何だか見覚えがあるかと思ったら「何だ、わしのウチか」と言うところのなどは喜劇風であるし(輝雪は何と仇先に居候していた)、贋金作りの一味の矢尻師・旦庵(横山文彦)を一角は成敗するも、その娘・早苗(小町美千代)は一角に惹かれているというところなどは悲恋物語風と、何でもありのてんこ盛り。播磨萬心を斬って父の仇討ちを果たし、贋金作り一味を暴いた功績からお家再興となった25歳独身の一角は、輝雪から妻を娶る必要があろうと示唆されますが、さすがに早苗と一緒になるところまでは描かれていません。但し、この2人の微妙なやり取りが大ラスにきます。もし、一角が早苗と結ばれれば、輝雪、一角とも仇の娘と結ばれることになるので、ストーリー的には収まりいいのですが、話が出来過ぎか?
日本映画傑作全集「剣光桜吹雪」(嵐寛寿郎)・「柘榴一角」(阿部九洲男)・「鞍馬天狗黄金地獄」(嵐寛寿郎)・「尊王攘夷」(大河内伝次郎)・「韋駄天数右衛門」(羅門光三郎)
「韋駄天数右衛門」●制作年:1933年●監督:後藤岱山●脚本・原作:波多野理一●撮影:小柳京之助●時間:57分●出演:羅門光三郎/静田二三夫/阪東太郎/矢野伊之助/市川竜男/金子文次郎/市川花紅/加藤義夫/豊島竜平/菊地双三郎/鳴戸史郎/原駒子/三原珠子●公開:1933/12●配給:宝塚キネマ(評価:★★★☆)
「柘榴一角」●制作年:1941年●監督:白井戦太郎●脚本:湊邦三●撮影:広川朝次郎●音楽:杉田良造●原作:白井喬二●時間:111分●出演:阿部九州男/
近衛十四郎/琴糸路/大乗寺八郎/水原洋一/大瀬恵二郎/遠山龍之助/雲井三郎/泉春子/久野あかね/小町美千代/谷定子/橘喜>久子/小柳みどり/大山デブ子/春野美葉子/水川八重子●公開:1941/01●配給:大都映画(評価:★★★)
近衛十四郎(父)
松方弘樹(子)

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山本博文 東京大学史料編纂所教授/略歴下記).jpg)




因みに、個人的にこれまでに接した「四十七士」モノ(忠臣蔵)のパロディで、一番ぶっ飛んじゃっていると思ったのは、小説ではなく外国映画で、「ベルリン忠臣蔵」('85年/西独)というもの。
体は、実は日本で柔道の修行したドイツ人で(なんだ、留学生みたいなものか。マスクをつけていても、見れば日本人でないことはすぐわかってしまうのだが)、最後には、日本からやってきた忍者と戦います(かなり強引な展開)。
監督はすごく日本贔屓の人だそうですが、ストーリーも衣装も殺陣もメチャクチャなのに(しかも時折ヘン何な日本語が出てくる)、監督自身は大真面目、本気でヒーロー物を撮っているつもりみたいで、そのギャップで笑えるという珍品。


