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森崎東監督によるシリーズ第3作。言われているほどには前の路線を外していないが...。



「第3作 男はつらいよ フーテンの寅 HDリマスター版 [DVD]」
旅先で病気になってしまい、宿の女中(悠木千帆)に親兄弟があるのか心配された寅次郎(渥美清)は、とらやの人びとの写真を見せ、ついさくらを「奥さん」、満男を「自分の赤ちゃん」、おばちゃん・おいちゃんを「おふくろとおやじ」と見栄を張ってしまう。久々に故郷柴又に帰ってきた寅次郎を見合い話が待っていた。本人もすっかりその気になったが、相手の駒子(春川ますみ)は寅次郎と旧知の仲であり、しかも旦那持だった。寅次郎は、駒子の妊娠も知らずに旦那が浮気したと聞くや、二人の仲を取り持つために一肌脱ぐ。しかし、二人のための結婚式や新婚旅行まがいの宴会やハイヤーの代金をとらやに請求したことが原因で、おいちゃん(森川信)と大ゲンカして
しまい、いたたまれなくなった寅次郎は再び旅に出る。旅先の伊勢・湯の山温泉で腹を下した寅次郎は、便所を借りに温泉宿・もみじ荘に入り浸り、そこの女将・お志津(新珠三千代)の同情を買って宿に泊めてもらう。未亡人のお志津に惚れ込んた寅次郎は、宿代がないことを理由にもみじ荘に居着くようになり、住み込みの番頭として一生懸命働く。お志津の弟・信夫(河原崎建三)となじみの芸者・染奴(香山美子)との仲を取り持つことに奔走してお志津に感謝され、お志津の小さな女の子を可愛がるあまり風邪を引いてお志津に看病してもらって、寅次郎は有頂天になる。しかし、寅次郎の知らないところで、お志津には再婚を考えている相手(高野真二)がいたのだった―。
1970年1月公開の「男はつらいよ」シリーズの3作目で、今回は前作に代わって山田洋次監督から、山田洋次監督の助監督出身で(ただし4歳年長)、第1作やテレビ版の脚本にも参加した森崎東が監督し、山田洋次は当時、本作はもういいと思っており脚本(原作)のみ書いています。ただし、山田洋次監督はその後、この森崎東が監督した第3作と、小林俊一が監督した第4作に違和感を覚えて第5作で監督に復帰、以降、最後まで他人に監督させることはなかったことになります。
森崎東の監督としての個性は山田洋次とは対照的で、薄味(山田)と濃い味(森崎)、柔と剛、洗練さと野暮ったさとはよく言われているところですが、個人的には、原作が山田洋次監督であることもあってか、言われているほどには第1作、第2作の雰囲気を大きく外してはいないように思いました(細部にこだわりを持つ人は、また異なる印象を持つのだろうが)。
ストーリー的には、おいちゃん・おばちゃんが湯の山温泉を訪れた際、寅次郎が働いている宿に泊まり、寅と出会う(さらにマドンナのお志津の存在を知る)という設定になっていて、お志津がとらやを一度も訪れていないことも含め、旅先の寅次郎が中心の話になっており、さくら役の倍賞千恵子の出番は非常に少ないのが特徴でしょうか。
あとは、自分なりに"細部"を突き詰めていくと、おいちゃんと喧嘩したり(まあ、これはシリーズの他の作品でもあることが、この回のはかなり激しくやり合い、それが原因で寅次郎は再び旅に出ることになる)、染奴の中風にかかった父・清太郎(花沢徳衛)が元テキ屋であるということで、寅次郎の将来を暗示するかのように見えてしまったりするのがやや暗かったりします。駒子と再び一緒になった夫が、寅次郎からの電話をプツリと切ってしまうあたりもちょっと冷たい感じがしました。
森崎東監督の演出は、シリーズ第4作「新・男はつらいよ」の監督・小林俊一とは相通じるものがあるかもしれません(小林俊一は山田洋次と共にこの作品に脚本参加している)。定番である「寅次郎の失恋」も、山田流では哀愁が漂う切ない雰囲気ですが、森崎・小林流だと、寅次郎の勘違いが際立っていて、可哀そうなのは同じですが、やや乾いた感じでした。暗い部分と明るい部分でバランスをとっていて、結局、前作に比べ「雰囲気を大きく外してはいない」という個人的感想に至ったのですが、観る人によって山田洋次監督版とは「大きく異なる」という人がいても納得です(細部を見ていけば必然的にそういうことになる)。
「男はつらいよ フーテンの寅」●制作年:1970年●監督:森崎東●脚本:山田洋次/小林俊一/宮崎晃●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●原作:山田洋次●時間:90分●出演:渥美清/新珠三千代(東宝)/倍賞千恵子/香山美子/河原崎建三/前田吟/春川ますみ/三崎千恵子/野村昭子/悠木千帆/佐々木梨里/高野真二/左卜全(特別出演)/佐藤蛾次郎/太宰久雄/晴乃ピーチク/晴乃パーチク/森川信/笠智衆/花沢徳衛●公開:1970/01●配給:松竹●最初に観た場所:神田・神保町シアター(23-02-02)(評価:★★★☆)
悠木千帆(樹木希林)/渥美清


幕末時代の海坂藩。優れた剣技を生かされることなく毒見役の職を務める小侍の三村新之丞(木村拓哉)は、毒味の仕事の最中倒れ、城内は藩主の暗殺未遂の疑いで騒然となるが、原因はつぶ貝の貝毒と判明。城内は落ち着きを取り戻したものの
、御広敷番頭の樋口作之助(小林稔侍)は責任を取らされ切腹の運びとなる。三日後に意識を取り戻した新之丞は、自分の
目が見えなくなっていることに気がつく。妻・加世(檀れい)は医師の玄斎(大地康雄)を頼るが、彼は「新之丞の目はもう治らない」と告げる。視力を失ったかわりに、他の感覚に鋭さが増し、加世の化粧の臭い等から男の影を感じ取る。最初に加世に関する話を持ってきたのは
従妹の波多野以寧(桃井かおり)だった。ある場所、加世を見たという噂を持ち込んだのだ。その場所が武家の妻女が夜分出入りすべき町ではなかった。視力を失って以来、久方ぶりに新之丞は剣の稽古をした。だが、以
で前と勝手が違う。最初は戸惑いを覚えることが多かった。ある時、新之丞は徳蔵(笹野高史)に加世の尾行を命じた。その結果、噂は本当だったのが判明した。相手は新之丞の上司・島村藤弥(坂東三津五郎)。新之丞はそうなった経緯を加世に問いただし、離縁を申し伝えた。その後、新之丞は同僚の加賀山(近藤公園)からあることを聞かされる―。
山田洋次の監督の「
原作は「たそがれ清兵衛」、「隠し剣 鬼の爪」と同じく藤沢周平の短編であり。短編集『隠し剣 秋風抄』('81年/文藝春秋)の中の一編である「盲目剣谺返し」(昭和55年発表)です(「隠し剣 鬼の爪」の原作と同じシリーズということになる)。文庫本で50ページ弱の話であるため、映画では少しだけ話を膨らませている部分があります。
木村拓哉は頑張っている印象でしたが、SMAP(スマップ)の先入観があるせいか、ちょっと軽い感じも。原作の良さ、山田洋次監督の演出力、そして何より徳蔵を演じた笹野高史、加世を演じた檀れい、剣の師匠・木部孫八郎を演じた緒形拳など周囲の多くの俳優陣(桃井かおりや小林稔侍もいる)に助けられていたように思います(笹野高史はこの演技で第30回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞)。作品自体の個人的評価は、「たそがれ清兵衛」★★★☆、「隠し剣 鬼の爪」★★★★に対して、その間くらいでしょうか(一応、★★★★としたが、やや甘いか)。世評が高い「たそがれ清兵衛」が自分の中ではそう高い評価ではないのは、映画館等でリアルタイムで観なかったせいもあるかもしれません(こうしたことはよくある)。
そう言えば、緒形拳は前作「隠し剣 鬼の爪」では、主人公(永瀬正敏)の親友の妻(高島礼子)を騙して寝とってしまう家老の役(敵役)で、つまりこの作品における坂東三津五郎が演じる島村と似たような、いわば悪役でしたが、今回は主人公の剣の師匠で、主人公の「武士の一分」の意を汲む人物の役でした。「隠し剣 鬼の爪」で主人公の剣の師匠役を演じた舞踏家の田中泯は、その前作「たそがれ清兵衛」では、上意討ちにより主人公に斃される役だったので、前作で敵役だと、次は主人公を助ける役とかが回ってくるのかも。坂東三津五郎も、山田洋次監督の次の作品「
「武士の一分」●制作年:2006年●監督:山田洋次●製作:久松猛朗●脚本:山田洋次/平松恵美子/山本一郎●撮影:長沼六男●音楽:冨田勲●原作:藤沢周平●時間:121分●出演:木村拓哉/檀れい/笹野高史/坂東三津五郎/小林稔侍/緒形拳/岡本信人/左時枝/綾田俊樹/桃井かおり/赤塚真人/近藤公園/歌澤寅右衛門/大地康雄●公開:2006/10●配給:松竹(評価:★★★★)

若いサラリーマン葉室正巳(小坂一也)と職場の元同僚の妻・明子(葵京子)は、あちこちから借金して二階家を建てた。二階を他人に貸して返済しようという計画だが、今いる小泉夫婦(平尾昌章(昌晃)・関千恵子)は賄い付の下宿代を2カ月ためているので、気弱な葉室夫婦の間で
は時々波風が立った。やっとの思いで催促すると、目下失業中という返事。正巳は自分が勤めている会社の守衛の職に小泉を推薦した。暫くして、葉室家に、豊橋在住の長兄・鉄平(野々浩介)と喧嘩して出てきた母とみ(高橋とよ)が泊まった。小泉夫妻と親しくなったとみは、二階に遊びに行くので正巳には面白くなかった。折角世話した守衛の勤めを怠けていると聞いた時、堪忍袋の緒が切れる。バットを手
に立退きを迫ると、小泉らの態度がガラッと変った。彼らは下宿荒しの常習犯だったのだ。下宿代を踏み倒して小泉らが引っ越し、とみも帰って葉室家は平和に。次の間借人の来島夫婦(永井達郎・瞳麗子)は評論家だというが、銭湯が嫌いだ
から風呂を作ってくれと10万円渡すほどの豪勢ぶり。風呂が出来た日、とみが再び飛び出してきた。次兄・信哉(穂積隆信)ら三兄弟が集って母の身の振り方について家族会議が開かれたが結論は出ず、とみは鉄平に引き取られた。鉄平から家を建てる時借りた20万円の返済を迫られた正巳は、やむなく来島に借りて返済した。その直後、正巳は週刊誌を見て、来島が500万円を拐帯して逃亡した犯人と知る。正巳らは煩悶した。警察に訴えるにしても30万円は返さねばならず、知らぬ顔をしているのも口止料を貰ったようで気が咎めた。クリスマスの晩、正巳らを来島夫婦は招待して幸せそうに踊る。正巳らは複雑な気持でいた。そして翌日、彼らは自首する。30万円の借金はどうなるのか―。
1961年公開の山田洋次(1931年生まれ)監督時の初監督作品で、原作は多岐川恭が1961年に発表した短編小説。山田監督の師匠の野村芳太郎が「いい推理小説があるよ。これを捻ると喜劇になるぜ。ぼくが脚本を書くよ」と監督をやるよう勧めたそうです。新人監督に新人キャメラマンでは危なっかしいとのことで、キャメラも技術もベテランが担当し、助監督ですら先輩で、彼らが「洋ちゃん、こうしなさいよ」と助けてくれたそうです。主演の小坂一也は当時すでにロカビリーのスターで、新妻役の葵京子は当時デビューしたてでしたが山田監督が抜擢したようです。上映時間が56分とそう長くない間尺の中に二組の間借り人に纏わる話があり、展開がテンポ良かったです(もう一組くらい話を盛り込んで、オムニバス風の構成にしても良かったくらい)。
まあ、その二組のどちらもが困った間借り人で、それに振り回される主人公の夫婦はいい迷惑で気の毒なばかりでしたが、最後にちょっと救いがあったでしょうか。結局、風呂を作る切っ掛けになったのも、評論家(偽物だった)の来島夫婦が言い出したことだったし。二人が来島夫妻が出所した時に返済するつもりで、毎月積み立ててゆくことを決意するという終わり方も、ある意味、こつこつ働いて慎ましやかながらもより良い生活を目指すという、良き"庶民"の姿を描いたと言えるかもしれません。
また、長男宅にいた母親(小津安二郎作品でお馴染みの高橋とよ)が三男のところへ転がり込んできて、小泉夫妻(実は下宿荒しの常習犯だった)と花札に興じたり、1カ月以上も長居して夫婦を悩ますというのは、小津安二郎の「
「二階の他人」●制作年:1961年●監督:山田洋次●製作:今泉周男●脚本:野村芳太郎/山田洋平●撮影:池田正義●音楽:久石譲●原作:多岐川恭●時間:56分●出演:小坂一也/葵京子/高橋とよ/野々浩介/穂積隆信/峰久子/平尾昌章(昌晃)/関千恵子/永井達郎/瞳麗子/山本幸栄/水木凉子/須賀不二男/水上令子/白川慶子/末永功●公開:1961/12●配給:松竹(評価:★★★☆)
平尾昌晃(1937-2017/79歳没)

平田家は主・周造(橋爪功)と妻・富子(吉行和子)、長男・幸之助(西村雅彦)と妻・史枝(夏川結衣)とその息子二人、次男・庄太(妻夫木聡)と3世代で同居をする家族。周造は妻・富子の誕生日であることを忘れていたことに気付き、彼女に何か欲しいものはないかと尋ねてみると、何と離婚届を突き付けられる。思わぬ事態に呆然とする中、金井家に嫁いだ長女・成子(中嶋朋子)が夫・泰蔵(林家正蔵)が骨董趣味で購入した皿を誤って割ったことで泰蔵と口論となり、別れたいと泣きついてくる。彼女を追ってきた泰蔵の言い訳を聞いているうちに苛ついた周造は、思わず自分たちも離婚の危機にあることをぶちまける。それを聞いて長男・長女夫婦は、次男の庄太を交え、長男の息子二人抜きの大人だけによる「家族会議」を開くことに。事情を知らない庄太が、恋人の憲子(蒼井優)を親兄弟に紹介しに実家に来たものだから、成り行きで憲子も「家族会議」に参加することになったが、周造が途中で卒倒して離婚どころか会議できる状態でなくなった―。
山田洋次(1931年生まれ)監督の2016年公開作で、小津安二郎監督の「
となります。「東京物語」の方はこの他に、三男・平山敬三(大坂志郎[国鉄マン])、次女・平山京子(香川京子[小学校教員])がいますが、「東京家族」には無いので、五人兄弟を三人兄弟に減らしたことにな
ります。また、小林稔侍(周造の旧友・沼田)も「東京家族」と同じ役で出演していますが、これに該当する「東京物語」の役は、東野英治郎が演じた「沼田」でしょう。さら
に、風吹ジュン(居酒屋の女将・加代)も「東京家族」と同じ役で出演していますが、これに該当する「東京物語」の役は、桜むつ子が演じたおでん屋の女将だと思われます(桜むつ子は「東京暮色」「彼岸花」「秋日和」でも飲み屋の女将やマダム役で出演している)。
「東京家族」では、「東京物語」で原節子が演じた紀子役を蒼井優が演じた間宮紀子が引き継いでいましたが、この「家族はつらいよ」では、橋爪功が演じる周造が自宅の居間で小津の「東京物語」を観ている場面があって(「男はつらいよ」のDVDもテレビの傍にあったが)、あの有名な原節子と笠智衆の会話シーンと原節子が泣くシーンが映し出され、さらに「東京家族」同様、映画の終盤で蒼井優演じる憲子(「東京家族」では「紀子」)と橋爪功演じる周造の直接会話シーンがあるため、ここでも蒼井優に原節子的なものを被せているのが感じられました。
ただ、蒼井優演じる憲子が、紛糾する平田家の「家族会議」を羨ましいと言うので、皆が不思議がって理由を訊くと、子どもの頃に両親のいきなりの離婚を経験していたというのは、ちょっとあざとさも感じました。蒼井優は「
「東京家族」と同じ感覚で観るのではなく、「寅さんシリーズ」を観るのと同じ感覚で向き合った方が良かったのか(次回作からはそうなったが)。もっとも、「東京家族」('13年)の方も、オリジナルの小津版「東京物語」(個人的評価は★★★★☆)の良さに負うている部分が大きいので、純粋に一つの作品として評価するのが難しい面はあるのですが...。広島側の舞台を、オリジナルの尾道から島(豊田郡大崎上島)に移すことで"故郷(ふるさと)"感を
醸すなどの工夫はされていますが、大家族の崩壊が1つのテーマだった「東京物語」に比べると、「東京家族」の方は5人兄弟を3人兄弟に減らしたことでその部分の色合いは弱まっていると言うか変質しており、家族が離散していく寂しさよりも、むしろタイトル通り、家族のやっかいさ(やっかいなものとして扱われる家族)が前面に出ていたように思いました。ただ、山田監督が敬愛する小津監督の代表作のリメイクということもあって、東日本大震災による公開延期と主演の老夫婦の配役変更(当初は菅原文太と市原悦子の予定だったのが、橋爪功と吉行和子に変更)を経ながらも、丁寧な演出のもとに撮られていたように思います。
「東京家族」のイメージポスターおよび「家族はつらいよ」シリーズのタイトル題字とポスターを
怒りを露わにするという騒動がありました。あれは決着したのでしょうか。
「家族はつらいよ」●制作年:2016年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/平松恵美子●製作:大角正●撮影:近森眞史●音楽:久石譲●原作:山田洋次●時間:113分●出演:橋爪功/吉行和子/西村雅彦(西村まさ彦)/夏川結衣/中嶋朋子/林
家正蔵/妻夫木聡/蒼井優/風吹ジュン/小林稔侍/中村鷹之資/丸山歩夢/徳永ゆうき/笹野高史/笑福亭鶴瓶●公開:2016/03●配給:松竹(評価:★★★☆)
「東京家族」●制作年:2013年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/平松恵美子●製作:秋元一孝●撮影:近森眞史●音楽:久石譲●原作:山田洋次●時間:146分●出演:橋爪功/吉行和子/西村雅彦(西村まさ彦)/夏川結衣/中嶋朋子/林家正蔵/妻夫木聡/蒼井優/風吹ジュン/小林稔侍/茅島成美/柴田龍一郎/丸山歩夢/荒川ちか●公開:2013/01●配給:松竹(評価:★★★★)



吉行 和子(よしゆき かずこ)女優
「


幕末、東北・海坂藩の平侍・片桐宗蔵(永瀬正敏)は、母(倍賞千恵子)と妹の志乃(田畑智子)、女中のきえ(松たか子)と、貧しくも笑顔の絶えない日々を送っていた。やがて母が亡くなり、志乃ときえは嫁入りしていく。心中は寂しいが武士としての筋目を守り、日々を過ごす宗蔵。海坂にも近代化の波は押し寄せつつあり、藩では英国式の教練が取り入れられ始めていた。ある雪の日、宗蔵は3年ぶりにきえと再会する。大きな油問屋の伊勢屋に嫁して幸せに暮らしているとばかり思っていたきえの、青白くやつれた横顔に心を傷めた宗蔵。志乃の口からきえが嫁ぎ先で酷い扱いを受けて寝込んでいることを知り、宗蔵は武士の面目や世間体を忘れ去って走り出していた。伊勢屋を訪れた宗蔵は、陽のあたらない板の間に寝かされ、やつれ果てたきえを見ると、自分で背負い家に連れ帰る。回復したきえと共に暮らし始め、宗蔵は心の安らぎを覚える。だが、世間の目は二人が同じ家に暮らすことを許さなかった。宗蔵はきえを愛している自分と、彼女の人生を捻じ曲げている自身の狡さに悩む。きえも身分の前に伝えられない気持ちを抱え、気づかない振りをして目をそらしてきた。そんな時、藩に大事件が起きた。宗蔵と同じく藩の剣術指南役・戸田寛斎(田中泯)の門下だった狭間弥市郎(小澤征悦)が謀反を企んだ罪で囚われ、さらに牢を破って逃げ出したのだ。宗蔵は、逃亡した弥市郎を斬るよう、家老・堀将監(緒形拳)に命じられる。そうすれば、狭間と親しかったお前の疑いも晴れると。かつて狭間は門下の中でも随一の腕前であった。しかしある時を境に宗蔵に抜かれ、それを宗蔵が戸田より授かった秘剣「鬼の爪」によるものだという不満を抱いていた。
狭間の妻・桂(高島礼子)からの、躰を宗蔵に捧げることを引き換えした夫の命乞いを拒んだ宗蔵は、不条理さを感じつつも藩命に従い、狭間との真剣勝負に挑む。そして宗蔵は師より新たに伝授されていたもう一つの秘剣「龍尾返し」を用い、「鬼の爪」を振るうことなく狭間を倒す。深手を負った狭間は「龍尾返し」を「卑怯な騙し技」と罵りながら、失意の中で鉄砲隊に撃たれて死んだ。しかし戦いのあと、家老の堀が夫の助命嘆願に来た狭間の妻を騙し、辱め、彼女を死に追いやった。その所業を知るに及び、遂に「鬼の爪」が振るわれる―。
宗蔵が狭間弥市郎との対決では使わなかった秘剣「鬼の爪」がどのようなものか、最後まで関心が持たれましたが(原作では狭間弥市郎は、それが知りたいがために、自分の討ち手に宗蔵を指名する)、最後に振るわれたそれは、一騎討の際に使うようなものではなく完全な暗殺剣で、動作としては"居合"っぽい感じでした。ただ、使うのは日本刀ではなく、匕首のようなもので(原作でも匕首となっている)、体外出血しないということで、千枚通しのようなものかとも思いましたが、そうなると、仇の堀将監
役の緒形拳がかつて演じた「
映画では宗蔵は禄を返上して町人になる決意をしますが、これは映画のオリジナルで、原作では、下級武士ではあるものの、武士の身分のまま、きえに求婚します。野外ではなく自宅で、お茶飲んでから(笑)プロポーズ。「知っているとおりの軽輩の家だから、やかましいことはいらん」と言うと、きえが泣き出しそうな顔で、「旦那さま...私には、親の決めた人がおります」と打ち明けたため、きえを他の男にやることなど出来ないと思った宗蔵は、「ま、わしにまかせろ」と。まあ、映画の方が現代的かも(映画はほとんど現代劇になってしまっていると言えなくもないが)。
「隠し剣 鬼の爪」●制作年:2004年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:長沼六男●音楽:冨田勲●原作:藤沢周平●時間:131分●出演:永瀬正敏/松たか子/小澤征悦/吉岡秀隆/田畑智子/高島礼子/田中泯/田中邦衛/倍賞千恵子/小林稔侍/神戸浩/光本幸子/松田洋治●公開:2004/10●配給:松竹(評価:★★★★)

結婚してすぐに夫を亡くし、小さな薬局を営みながら、女手一つで娘の小春(蒼井優)を育てた姉・吟子(吉永小百合)と、役者としての成功を夢み、無為に歳を重ねてしまった風来坊の弟・鉄郎(笑福亭鶴瓶)。鉄郎は姉・吟子の夫の十三回忌の席で酔っ払って大暴れし、親類中の鼻つまみ者となっていた。以後10年近く吟子との連絡も途絶えていたが、娘のように可愛がっていた姪の小春が結婚することをたまたま知り、披露宴に駆けつけた。歓迎されざる客を追い返そうとする親類
を吟子は取りなし、鉄郎に酒は一滴も飲まないと約束させて披露宴に参加させた。しかし鉄郎は目の前に置かれた酒の誘惑に抵抗できず、あっさりと約束を破ったばかりか酔っぱらって大騒ぎを演じ、披露宴を台無しにしてしまう。その事件は、後に小春の結婚が破綻する一因ともなる。結婚式での乱行に激怒した親類らが次々と絶縁を決め込む中、ただ一人、吟子だけは鉄郎の味方だったが、その吟子も、ある事件をきっかけについに鉄郎に絶縁を言い渡してしまう。鉄郎は悪態を吐いて出て行くが、 このときすでに鉄郎は死の病に取り付かれていた―。
山田洋次(1931年生まれ)監督の2010年1月30日公開作で、同年2月11日開催の第60回ベルリン国際映画祭でクロージング上映されて、この時、山田洋次監督は特別功労賞に当たるベルリナーレ・カメラ賞を受賞しています(日本人では過去、2000年に市川崑監督、2001年に熊井啓監督の2名が受賞)。前作「
「
映画は、前作「母べい」よりもっと"べた"になった感じがしなくもないですが、昔はこういう映画をあまり評価しなかったけれど、最近はいいなあと思うようになって、これは年齢のせいでしょうか? 批判しようと思ったらいくらでもできるのですが、山田洋次監督に山田洋次的でないものを求めても仕方がないという気がするといのもあります。
でも、鉄郎が亡くなった後のラストで、小春(蒼井優)の亨(加瀬亮)との結婚式を前にして、加藤治子(1922-2015)演じる母のボケからくる「あの変わり者の弟を呼んであげないとかわいそうだ」という言葉に絡めて、小春の結婚式に鉄郎はもう来ることないという現実が吟子を涙ぐませる場面にはさすがにほろっときました(このシーンが一番。笑福亭鶴瓶もラッシュうを観て「涙が出ましたわ」「あのラストは最高」と言っている)。小春の最初の結婚式に鉄郎がきて、式をぶち壊しにしてしまったこととの対比で、上手いなあと思いました。亡くなった人って、こういう時にふっと今そこにいるかのように目に浮かぶのだろなあ。
吉永小百合は、33歳の女性をやつれ感を出しながら演じた「母べえ」の時よりもさらに綺麗になっている感じ。笑福亭鶴瓶は、最後の方は、朝7時に起きてサウナスーツで走って、サウナに1時間くらい入って、水も飲まずにボクシングを9ラウンドまでやって減量したそうですが、その努力もさることながら、演技の方で魅せることも忘れてなかったように思います。
「おとうと」●制作年:2010年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/平松恵美子●撮影:近森眞史●音楽:冨田勲●原作:幸田文●時間:126分●出演:吉永小百合/笑福亭鶴瓶/蒼井優/加瀬亮/小林稔侍/森本レオ/芽島成美/ラサール石井/佐藤蛾次郎/池乃めだか/田中壮太郎/キムラ緑子/笹野高史/小日向文世/横山あきお/近藤公園/石田ゆり子/加藤治子●公開:2010/01●配給:松竹(評価:★★★★)


昭和15年(1940年)の東京、野上家ではユーモアを愛する父・滋(坂東三津五郎)の考えからか家族に「べえ」をつけるのが習慣になっていて、母親・佳代(吉永小百合)のことを「母(かあ)べえ」父親のことを「父(とお)べえ」と呼んでいた。娘の初子(初べえ)(志田未来)と照美(照べえ)(佐藤未来)は、その二人の愛に包まれて育ち、家庭は平穏だった。だが日中戦争の激化とともに国情は変化し、帝国大学出身のドイツ文学者で反戦思想をもっていた父が治安維持法違反の思想犯として投獄され、暮らしが一変する。残された三人はそれでも父を信じ、陰膳をして待っている。やがて母の故郷・山口から警察署長をしている祖父・久太郎(中村梅之助)が上京してきて「恥をかかせた」と、佳代を厳しく罵る。それでも、彼女らの家を温かい目で見つめる人々が去来する。父のかつての教え子で小さな出版社に勤めていた山崎徹(浅野忠信)は、不器用だが優しい性格で初子と照美に親しまれ、「山ちゃん」の愛称で野上家に欠かせない存在となる。父がいつ帰れるか見通しが立たないため、母は隣組長の世話で小学校の代用教員として一家の家計を支え始める。帰宅すれば深夜まで家の雑事に追われる。時折、父の妹で画家を目指す叔母・久子(檀れい)が手伝いにきてくれる。夏休みの間だけ、「招かれざる客」叔父の仙吉(笑福亭鶴瓶)が奈良から上京してくる。変わり者の仙吉はデリカシーのない発言をして思春期を迎えた初子に嫌われるが、自由奔放な姿は佳代の心を癒し、金の指輪を母にと山崎に託して帰る(戦後、自身の予言通り吉野の山で野垂れ死にしていた)。ふみ(左時枝)と再婚した久太郎が上京してきて、思想犯となった父との離婚を命じ、できなければ自害しろ、勘当だと迫るが母の心は少しも揺るがない。母が倒れ、山崎が飛んでくるが、疲労からの病気だった。夏になり、海水浴に行くが山崎が溺れそうになり、母が助ける。秋になり、久子に山崎と結婚しないの?と尋ねる佳代に、山崎は佳代に恋心を抱いていることを告げて故郷に帰る。昭和16(1941)年12月8日、太平洋戦争が勃発。昭和17年の正月に父が獄死という電報が来て、その後にクリスマスに書いた父の手紙が届く。追い打ちをかけるように、近眼で左の耳が聞こえない山崎にも赤紙が届く。3年後に終戦。久子は広島で被爆して亡くなっていた。山崎の戦友がきて、南方の海に消えた山崎の最後の言葉を伝える。美術教師となった照美(戸田恵子)が初子(倍賞千恵子)が医師として勤める病院に入院している母の容態が悪化したと聞いて駆けつける。「もうすぐ父べえに会えるね」というと、母は「あの世でなんか会いたくない、生きている父べえに会いたい」と悲痛な言葉を呟く―。
山田洋次(1931年生まれ)監督の2008年監督作で、第58回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門出品作。原作は映画スクリプターの野上照代(1927年生まれ)。黒澤明監督の「羅生門」にスクリプターとして参加し、以降、全黒澤作品に関わった人です。1984年の読売女性ヒューマン・ドキュメンタリー大賞に「父へのレクイエム」という題名で応募され(当初は57歳になって54歳で亡くなった父のことを書いたので「年下の父へ」という題だった)、優秀賞を受賞。山路ふみ子功労賞も併せて受賞しています。2007年12月、翌年の映画公開を前に、中央公論新社から『母べえ』として、単行本として刊行されています。
原作にある作者による挿画は、映画化が決まってから母べいのイメージや出来事の状況を可視化するものとして描かれたのでしょうが、これがいい味を出していて、映画でもその通りのシーンがいくつも出てきます。映画は、1940(昭和15)年から翌年、昭和16年までの太平洋戦争開戦前までの1年間の、思想統制が強まっていく時代の流れと市井の人々の生活の変化がよく描かれていて、昭和16年12月8日にいきなり"戦時"になったわけではないことが伝わってきました。
吉永小百合(1945年生まれ)の配役は、山田洋次監督がすぐに思い浮かび、吉永小百合も原作を読んでこの役をとても演りたいと思ったものの年齢的に躊躇していたところ、当時の母親はみな疲れていたんだという山田洋次監督の説得で決まったようです。それにしても、62歳で33歳の役、しかも浅野忠信(当時35歳)演じる山崎青年に恋心を抱かせるという設定が見ていてそう不自然でないのがスゴイ。原作にはない山崎の戦死(彼は泳げないので泳ぎが得意な戦友に先ほどの言葉を託す)の伏線として、山崎が母子と海水浴に行って溺れる場面がありますが、それを泳いで助けにいくのが吉永小百合演じる母べいでした(さすが2000年・第1回「ベストスイマー賞」受賞者! 着衣水泳でも本領発揮! )。
第58回ベルリン国際映画祭の公式上映を前に赤じゅうたんを歩く吉永小百合。奥は山田洋次監督と原作者の野上照代(2008年2月13日)(スポニチ)
父べえの獄死は原作通りで、羽振りの良かった叔父の仙吉(笑福亭鶴瓶)が自らの予言通り吉野の山で野垂れ死にしたというエピソードは原作通りですが、叔母・久子(壇れい)も帰郷後に原爆死、山崎も戦死し、しかも映画の最後に後日譚として母べいの死をもってきているので、「みんな死んでしまった」という、「死」の色合いが濃い映画になっていたようにも思います(山崎の「忍ぶ恋」の映画でもあった)。でも、(母べいの最期の言葉も含め)個人的にはそれで良かったように思います。






柳田桐子(倍賞千恵子)は高名な大塚欽三(滝沢修)の法律事務所を今日も訪れたが、返事は冷たい拒絶の言葉だった。熊本の老婆殺しにまきこまれた兄・正夫(露口茂)のために、上京して足を運んだ桐子は、貧乏人の惨めさ
を思い知らされる。「兄は死刑になるかも知れない!」と激しく言った桐子の言葉を、何故か忘れられない大塚は、愛人・河野径子(新珠三千代)との逢瀬にもこの事件が頭をかすめた。熊本の担当弁護士から書類をとり寄せた大塚は、被害者の
致命傷が後頭部及び前額部左側の裂傷とあるのは、犯人が左利きではなかったかという疑問を抱く。数日後、桐子の名前で「兄が
一審で死刑判決を受けたまま二審の審議中に獄中で病死した」と知らされる。「僕が断ったからこんな結果になったとでも言っているみたいだね」と苦笑しながらも、事件のことが気にかかった大塚は、熊本から事件の資料を取り寄せる。兄の死後、上京した桐子はバー「海草」のホステスとなる。そして店の客の記者・阿部(近藤洋介)から「大塚が事件の核心を握ったらしい」と聞かされる。ある日桐子は同僚のホステス信子(市原悦子)から恋人・杉田健一(川津祐介)の監視を頼まれた。ある夜、尾行中の桐子は、健一が本郷のしもた屋で何者かに殺害された現場に来合わせた。そこには大塚の愛人・径子も来ていて、慌てて桐子に証言を
頼み去っていく。桐子は径子が落とした手袋を健一の死体の血だまりに残すと、本来の証拠品である健一の兄
貴分・山上(河原崎次郎)のライターをバッグにしまう。径子は殺人容疑者として逮捕され、大塚の社会的地位も危ぶまれた。大塚は証拠品のライター提出と、正しい証言を求めて桐子の勤める店に足を運んだ。そんなある夜、桐子はライターを返すと大塚をアパートに誘い、ウイスキーをすすめて強引に関係を迫った。翌日桐子は担当検事に「大塚から偽証を迫られ、暴行された」と処女膜裂傷の診断書を添えて訴えた―。

このややエキセントリックとも思える女性・桐子に役をどう魅力的に演じるかはなかなか難しい挑戦だったと思いますが、当時23歳の倍賞千恵子はそれを見事に自然体でこなしていて、いいと思います。皇居の前を桐子が歩くシーンは、脚本にはなく山田洋次監督が現場で考えたものですが、山田洋次監督は倍賞千恵子を「ただ歩いているというのが軽やかにできる人」と賞賛しています。
特に滝沢修の演技は観ていて飽きさせません。桐子が自分の家に大塚弁護士を招き入れて酔わせるシーンがありますが、倍賞千恵子は、だんだん顔を赤くして額に筋を立てて酔っていく滝沢修の演技がすごかったと言い、ただの水を飲んでいるのによくそこまで演じられると、名優の芝居に引き込まれたそうです。
山田洋次監督は、倍賞千恵子の演技も滝沢修に伍して素晴らしかったとしていますが(山田洋次監督は渥美清と倍賞千恵子を「二人の天才」と呼んでいる)、滝沢修が倍賞千恵子をリードした面もあったのではないでしょうか。倍賞千恵子は当時、三点倒立して集中力を鍛えることに凝っていて、毎朝それをして撮影所に入ったそうですが、それでも滝沢修とシーンはたいへんで、胃痛で具合が悪くなり、夜中に撮影が終わって救急病院に行ったら、腎臓結石だと言われたそうです。
冒頭、桐子が熊本(原作では桐子はK市在住)から一昼夜かけて東京へ向かうシーンは、野村芳太郎監督の「
画では、桐子は最後に九州の阿蘇の火口口に現れ、次に、船の上から河野径子の潔白を証明する証拠物件であるライターを海に投げ捨てます。これは、結局、最後まで桐子は大塚弁護士を許さなかったということを念押ししているようにも思えました。
原作は何度もテレビドラマ化されていますが、ドラマの方は、桐子が最後、ライターを新聞記者に渡したり('83年/大竹しのぶ版)、検察局に送って、挙句の果てには疑いの晴れた弁護士の愛人・径子は妻と離婚した大塚弁護士と一緒になる(
崎千恵子/井川比佐志/大町文夫/菅原通済/河原崎次郎/逢初夢子/金子信雄●公開:1965/05●配給:松竹(評価:★★★★☆)


バブル景気時の1990年7月、東京の居酒屋でアルバイトをしている浅野哲夫(永瀬正敏)は、母の一周忌で帰った故郷の岩手でその不安定な生活を父の昭男(三國連太郎)に戒められる。その後、居酒屋のアルバイトを辞めた哲夫は下町の鉄工所にアルバイトで働くようになる(後に契約社員へ登用)。製品を配達しに行く取引先で川島征子(和久井映見)という美しい女性に好意を持つ。哲夫の想いは募るが、あるとき彼女は聴覚に障害があることを知らされる。当初は動揺する哲夫だったが、それでも征子への愛は変わらなかった。翌年の1月に上京してきた父に、哲夫は征子を紹介する。彼は父に、征子と結婚したいと告げる―。
いい映画だと思いました。原作は短編で、哲夫の家族は登場せず(従って、哲夫が母の一周忌で帰省する場面で、その際に兄弟・家族関係を明らかにするといった描写もない)、哲夫が日雇い労働をしていたのが、より安定した仕事を求めて伸銅品問屋に臨時社員として就職するところから始まります。そして、仕事を通して知り合った川島征子に好意を抱き、不器用ながらもアプローチする中で彼女が聾唖者であること知って、この恋を貫こうと決意するところで終わるので、映画で言えば、哲夫が「それがどうしたっていうんだ!いいではねぇか!」と心中で叫ぶところで終わっていることになり、あとは原作の後日譚ということになります。
戦友会の集まりに出るために哲夫の父・昭男が上京し、哲夫の兄の家に泊まるりますが、哲夫の生活が心配な昭男は哲夫の元を訪れます。外食でもしようと哲夫を誘う昭男でしたが、哲夫は断り自宅で料理するため昭男とスーパーへ買い物に。そして、哲夫の部屋で昭男は哲夫から征子を紹介されます。耳の聞こえない征子のためにFAXを購入している哲夫。哲夫から、征子と真面目に付き合っていて、結婚することを告げられる昭男。いくら反対したって無駄だからと昭男に言う哲夫。昭男は征子に向かって「本当にこの子と一緒になってくれるのですか?」と訊き、頷く征子を見て「有難う。有難う」と感謝する。哲夫に対しては「もしお前がこの子の事を傷つけるようなことがあれば、俺はこの子の両親の前で腹を切らなきゃならないからな」と覚悟を問い、哲夫は当たり前だと答える―。いい場面だったなあ。仲睦まじい二人を見て昭男が素直に喜び、心配していた哲夫が立派になっていることに胸を撫でおろす様がいいです。
こうして息子のことを気に掛ける父と、一人暮らしになった父をどうするかに悩む哲夫の兄夫婦や姉などが描かれますが、どちらかと言うと後者の方が色合いが強く、誰の世話にもならないと言い張る父親に周囲が戸惑っているといった感じです。それでも、一番ふらふらしていたように見えた息子・哲夫の成長を見届けて、昭男自身は安心して息子が買ったファックスを持ってまた岩手に戻っていく―。ああ、核家族社会における親離れ・子離れの話で、山田洋次監督が「家族」('70年)以来追求し続けてきたテーマの映画だったのだなあと思いました。
さらに言えば、田中隆三演じる息子長男とはまともに話ができないけれども、原田美枝子演じる血縁関係のないその嫁とはしみじみと本音で語り合えるというのは、これはもう小津安二郎の「
三國連太郎の自然な演技もさることながら、賞を総嘗めした永瀬正敏は、実際いい演技でした。この映画での高評価を機に、テレビドラマにはあまり出ず、映画出演を専らとする、言わば"映画
俳優"になっていったのではないでしょうか(日本にはあまりいないタイプ。浅野
忠信あたりが後継者か)。和久井映見もとても感じが良かったです。彼女も、この作品からちょうど30年を経た今年['21年]のNHK大河ドラマ「青天を衝け」で吉沢亮演じる渋沢栄一の母・渋沢ゑい役を演じるなど、息の長い女優になってきました。
あと、鉄工所のおっさん役のをいかりや長介や、トラック運転手タキさん役の田中邦衛をはじめ、
に「
脱退後に出演した「
「息子」●制作年:1991年●監督:山田洋次●製作:中川滋弘/深澤宏●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:松村禎三●原作:椎名誠「倉庫作業員」●時間:121分●出演:三國連太郎/永瀬正敏/和久井映見/田中隆三/原田美枝子/浅田美代子/山口良一/浅利香津代/ケーシー高峰/いかりや長介/田中邦衛/梅津栄/佐藤B作/レオナルド熊/松村達雄●公開:1991/10●配給:松竹(評価:★★★☆)


昭和11年、田舎から出てきた純真な娘・布宮タキ(黒木華)は、東京郊外に建つモダンな赤い三角屋根の小さな家で暮らす一家の元で女中として働き始める。若く美しい奥様の時子(松たか子)、家の主人で玩具会社に勤める平井雅樹(片岡孝太郎)、5歳になる息子の恭一とともに穏やかな日々を送っていたある日、雅樹の部下で板倉正治(吉岡秀隆)という青年が現れ、時子の心は揺れていく。タキは複雑な思いを胸に、その行方を見つめ続ける。それから60数年後、晩年のタキ(倍賞千恵子)が大学ノートに綴った自叙伝を読んだタキの親類・荒井健史(妻夫木聡)は、それまで秘められていた真実を知る―。
2010(平成22)年上半期・第143回直木賞を受賞した中島京子の原作『小さいおうち』の映画化作品で、当時82歳の山田洋次監督は、本作が通算82作目となるとのこと。昭和初期からの時代を背
景に、赤い屋根の小さな家で起きた密やかな"恋愛事件"を巡る物語で、時子役を松たか子、晩年のタキを倍賞千恵子が演じましたが、若き日のタキに扮した黒木華(「クラシックな顔立ち」が決め手となり起用されたという)が、第64回ベルリン国際映画祭で
本作は、黒木華が演じる「女中」タキ、松たか子が演じる「奥様」時子、吉岡秀隆演じる「青年」板倉の三人が主要登場人物で、タキの視点で語る時子と板倉の不倫関係が物語の中心になりますが、ネットでの映画評の中には、この三人が三角関係にあり、それゆえにタキは、出征することになった板倉に会いに行こうとする時子に、板倉と会う代わり、板倉の方から訪ねるよう手紙を書かせておきながら、その時子の手紙を板倉に渡さなかったのだという解釈のものがありました(中には、タキと板倉はすでに肉体関係があり、時子を裏切ったという思いから、二人は生涯結婚をせずに通したのだというのもあった)。
老齢となったタキが、甥っ子の健史に今書き綴っている回想録を読まれていることを意識しているため、タキが回想録に書いていることが必ずしもすべて本当ではないという可能性はもともとあったわけですが、三人が三角関係にあったというのはちょっと穿ち過ぎた見方のように思いました。個人的は、タキは、自分が奉公する平井家の崩壊を見たくなかったということが、手紙を板倉に渡さなかった理由かと思いましたが、そうした極端
な説に出くわすと、ちょっとこれでは理由としては弱いかなとも思ってしまいます(自信なさ過ぎ?)。
ところが、原作を読むと、タキの時子への思いが滔々と綴られていて、それだけでは「奥様」に憧れる「女中」というだけにすぎないのですが、時子の友人で婦人誌(女性誌)の編集者であるいわば職業婦人(キャリアウーマン)の女性が、そういう関係もあっていいと言って、タキと時子が精神的な同性愛関係にあることを示唆していました。従って、この同性愛論は、原作を読んだ人から出てきたのではないかと思います。映画だけではわからないように思いました。というか、「山田洋次監督は同性愛の物語を男女の不倫物語に確信犯的に改変してしまった」と言っている人もいます。
映画では、板倉は時子に会わずに出征し(時子からみれば会えずに終わり)、それはタキが時子からの手紙を板倉に渡さなかったためで、そのことをタキは一生悔やみ続け、未開封の手紙を生涯持ち続けるととれる作りになっていますが、原作では、板倉は出征のため弘前に行く前に"小さいおうち"にやって来て時子と話をし、その間タキは庭仕事をしていたと回想録にあります(それでこの小さな恋愛事件は終わったと)。実際にはタキは板倉に手紙を渡さなかったため、板倉がやってくるはずはなく、この部分はタキがによるウソの記述ということいなります。映画では、板倉が最後に"小さいおうち"にやって来た〈偽エピソード〉を描くと"映像のウソ"になるため描いてはいませんでした。原作では、最後に健史は、渡されなかった手紙を見つけ、タキの回想録にあるその日の記録は虚偽であると知って、タキは時子に恋をしていたのかもしれないと悟ります。
「小さいおうち」●制作年:2014年●監督:山田洋次●脚本:平松恵美子/山田洋次●撮影:近森眞史●音楽:久石譲●原作:中島京子「小さいおうち」●時間:137分●出演 松たか子/黒木華/片岡孝太郎/吉岡秀隆/妻夫木聡/倍賞千恵子/橋爪功/吉行和子/室井滋/中嶋朋子/林家正蔵/ラサール石井/あき竹城
/松金よね子/螢雪次朗/市川福太郎/秋山聡/笹野高史/小林稔侍/夏川結衣/木村文乃/米倉斉加年●公開:2014/01●配給:松竹(評価:★★★☆) 








この間たまたま観たシリーズ第27作「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」('81年)では、寅さんが瀬戸内海のどこかの島で一人で夏物ワンピース(俗に言うアッパッパ)を売っているシーンと(ここで初めてマドンナと出会う)、東大阪市の石切神社の参道で"バイ"しているシーンがありましたが(ここで偶然マドンナと再会する)、参道に露店を出すときはやはり、地元の親分に対して口上を述べたということになるのでしょうか。ヤクザへの連想を避けるために、そうしたシーンを山田洋次監督は敢えてシリーズでは殆ど取り扱っていない気もします(テキヤの生活が最もよく描かれているのは森崎東監督によるシリーズ第3作「男はつらいよ フーテンの寅」('70年)だと言われている)。
この「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」のマドンナ役は松坂慶子(撮影時28歳)で(寅さんは参道で「水中花」を売っていた)、松坂慶子はこの作品で第5回「日本アカデミー賞」最優秀主演女優賞など多数の賞を受賞しています。個人的には"演技力"より"美貌"がもたらした賞のように思われなくもないですが、この頃の松坂慶子はこの後に「


「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」●制作年:1981年●監督:山田洋次●製作:島津清/佐生哲雄●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●時間:104分●出
演:渥美清/松坂慶子/倍賞千恵子/三崎千恵子/太宰久雄/前田吟/下條正巳/吉岡秀隆(シリーズ初登場)/正司照江/正司花江/笑福亭松鶴/関敬六/大村崑/笠智衆/初音礼子/芦屋雁之助●公開:1981/08●配給:松竹(評価:★★★☆)


シリーズ第11作「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」のマドンナ・リリー(浅丘ルリ子)が再登場。葛飾柴又の"とらや"で、寅次郎(渥美清)の帰省が遅いことを皆が心配しているところへリリーが訪れ、寿司屋の亭主と離婚した彼女は、再びドサ回りの歌手をしているという。寅次郎に会えなかったことを残念がるリリー。その寅次郎は青森で、通勤途中不意に蒸発したくなったというサラリーマン・兵頭謙次郎(船越英二)と出会う。自由な生き方に憧れるという兵頭に手を焼く寅次郎だった
が、そこで偶然にも、青森に来ていたリリーと再会、寅次郎とリリーは兵頭も巻き込んで北海道へと向
かう。ごろ寝や啖呵売もこなして楽しい道中となるが、小樽に着いた兵頭はどうしても彼の初恋の人に会いたいと言う。その女性・信子(岩崎加根子)は夫を亡くし女手一つで子供を育てており、懸命に生きる姿を見た兵頭はいたたまれなくなる。そんな彼の複雑な心中をめぐって寅次郎とリリーは対立し、ついには喧嘩別れしてしまう
。やがて柴又に帰ってきた寅次郎だが、リリーとの一件を悔やんで表情は沈んだまま。そこへひょいとリリーが現れ、リリーもまたあの一件を悔やんでおり、二人はあっという間に寄りを戻す。リリーとすっかりいい仲になった寅次郎だが、その仲睦ましさが近所でも噂になり始めた時、さくらは寅次郎がこのままリリーと結ばれればいいと思うようになる―。
1975(昭和50)年8月公開のシリーズ第15作で、第11作「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」('73年)以来の再登場。以後、第25作「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」('80年)、渥美清(1928-1996/享年68)の遺作となった第48作「男はつらいよ 寅次郎紅の花」('95年)と通算4回、松岡リリーという同一キャラクターでマドンナ役を務めたことになります。満男のマドンナとしてシリーズ終盤に出演した後藤久美子の5回を除いて、寅次郎のマドンナとしては、竹下景子の3回を超えて最多となっていますが、むしろ同じキャラクター(歌子)で2回登場した吉永小百合が比較の対象となるでしょうか。4回は傑出していると思います。
この「寅次郎相合い傘」は、男女の機微を浮き彫りにしつつ余韻を残して終わるラストもいいですが(寅次郎とリリーは恋人同士である以上に、むしろ友情で結ばれた"同志"に近かったのか)、この1本の作品の中に、シリーズを通しての名シーンと言われ、よく「名場面ベスト10」などで挙げられるシーンが2か所もあり、それぞれ「寅のアリア」「メロン騒動」と呼ばれています。
「寅のアリア」は、リリーをキャバレーまで送った寅次郎が、そのあまりの環境の劣悪さに驚き、「俺にふんだんに銭があったら」と大ステージで歌い上げるリリーの姿を、さくらたちに臨場感たっぷりに想像で語るもので、スタッフによれば、後日リリー役の浅丘ルリ子がこのシーンを見て涙したとのことです(倍賞千恵子著『お兄ちゃん』('97年/廣済堂出版)。渥美清の本領発揮というか、山田洋次監督は渥美清に初めて会った頃、彼が語る的屋の口上を聞いてこの人は天才だと思ったそうですが、こうしたところでその力を引き出しているのはスゴイと思いました。
「メロン騒動」は、寅次郎に世話になったと兵頭から高級メロンを貰ったとらやの面々が切り分けて食べ始めたところへ寅次郎が外から戻って来て、寅次郎の分を勘定に入れ忘れていたこ
とに気付いた一同が大慌てで場を取り繕う様に、とらやの連中は心が冷たいと激しくなじる寅次郎に対し、リリーが核心を
突いた言葉で寅次郎を一喝してしまうという場面ですが、こちらは、浅丘ルリ子の演技が渥美清のそれに拮抗した場面であるとも言え、大袈裟に言えば、シリーズを通してそれまで憧れの対象でしかなかったマドンナの位置づけを、主体的な存在にパラダイム変革させた場面でもあったかと思います。
浅丘ルリ子は最近またNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の寿桂尼役やテレビ朝日系ドラマ「やすらぎの郷」への出演で注目されていますが、もともと演技も歌も上手い方だと思います。歌の方は20曲以上シングルを出した後に、「
リリーが仕事で歌う場末の酒場のうらぶれた様子は、寅次郎の口から語らせるものの映像化せず、一方で、リリーが別の女性と同居する狭いアパートに相手方の男が来て彼女がそこにおれなくなる場面は映像化しており、その辺りのリアリティの出し方の加減が上手いと思いました。あまり全部隠してしまうとリアリティが湧かないし、あまり見せ過ぎると暗くなり過ぎるし...(シリーズ全作を通して観ると、この加減に失敗しているものも幾つかある)。
サラリーマン・兵頭を演じた船越英二の演技も手堅く、兵頭に纏わるサイドストーリーもまずまずでしょうか。ただ、失踪事件をモチーフにした野村芳太郎監督(松本清張原作)の「
因みに、冒頭にある、映画館でうたた寝しながら寅次郎が見る夢は、前年['74年]12月日本公開の「シンドバッド 黄金の航海」('73年/米)のパロディだそうですが(統一劇場と米倉斉加年、上條恒彦がノンクレジットで友情出演している)、個人的には、こちらもまた当時より一昔前の、小野田嘉幹監督の「

「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」●制作年:1975年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●時間:91分●出演:渥美清/浅丘ルリ子/船越英二/倍賞千恵子/下條正巳/三崎千恵子/太宰久雄/佐藤蛾次郎/吉田義夫/岩崎加根子/久里千春/早乙女愛/中村はやと/宇佐美ゆふ/村上記代/光映子/秩父晴子/米倉斉加年(ノンクレジット)/上條恒彦(ノンクレジット)/谷よしの/笠智衆●公開:1975/08●配給:松竹(評価:★★★★)

和田 誠
このシリーズは、映画の中の名セリフを取り上げて、リレー方式というか連想方式的に一定サイクル話を繋いでいっていますが(それと、勿論のことだが、イラストとの組み合わせ)、著者によれば、日本映画の方がセリフに関する記憶が少なく、洋画においてスパーインポーズで読んだものの方が記憶に残っているとのことです(そういうものかもしれないなあ)。

その代りのお楽しみとして、毎回違った"マドンナ"が登場するパターンになったということなのでしょう。初代マドンナは昨年['13年]食道癌で亡くなった光本幸子でした。また、著者が矛盾を指摘する「俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ」という主題歌の歌詞はもともとTV版用に作られたものですが、映画版の第2作からは別の歌詞に差し替えられています。
第1作は、黒澤明監督映画の重鎮俳優・志村喬(諏訪飈一郎役)が出演し、さくらの披露宴のシーンで小津映画の重要俳優・笠智衆(御前様役)と同じ画面に収まっているというのが珍しいかもしれません(黒澤監督の「
第1作がヒットして、山田洋次監督が松竹
「


「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」●制作年:1935年●監督:山中貞雄●脚本:三村伸太郎●潤色:三神三太郎●撮影:安本淳●音楽:西梧郎●原作:林不忘●時間:92分●出演:大河内傳次郎/喜代三/沢村国太郎/山本礼三郎/鬼頭善一郎/阪東勝太郎/磯川勝彦/清川荘司/高勢実乗/鳥羽陽之助/宗春太郎/花井蘭子/伊村理江子/達美心子/深水藤子●公開:1935/06●配給:日活(評価:★★★★☆)
「男はつらいよ 〈シリーズ第1作〉」●制作年:1969年●監督・原作:山田洋次●脚本:山田
洋次/森崎東●製作:上村力●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●時間:91分●出演:渥美清/倍賞千恵子/光本幸子/笠智衆/志村喬(特別出演)/森川信/前田吟/津坂匡章/佐藤蛾次郎/関敬六

志賀真津子/津路清子/村上記代/石井愃一/市山達己/北竜介/川島照満/水木涼子/谷よしの/●公開:1969/08●配給:松竹(評価:★★★★)









長崎沖・伊王島の炭鉱労働者・風見精一(30歳)(井川比佐志)は、炭鉱閉山で転職を余儀なくされ、自らの夢であった北海道での牧場経営に乗り出したいと願う。妻の民子(25歳)(倍賞千恵子)は当初反対するが、長男(3歳)長女(1歳)の子供2人を連れて一緒に入植することに。精一の父である源蔵(65歳)(笠智衆)を広島県福山市に住む次男の力(前田吟)と同居させる予定だったが、訪ねてみると力の家は源蔵を同居させる状態になく、民子が精一と源蔵を説得し一緒に北海道へ向かうことに。家族5人はまず大阪へ向かい、そこで開催直後の大阪万博を見物に出かけ、その日の内に新幹線に乗り込み東京へ。
東京駅から上野駅に移動し、更に青森行きの夜行に乗る予定だったが、子2人のうち赤ん坊の方の様子が急変、上野の旅館に入り病院を探すが手遅れで死んでしまう。荼毘に付すために東京に2泊し、精一と民子が夫婦喧嘩をする険悪なムードの中、家族は夜行で青森に向かい、青函連絡船で函館に、それからまた長い列車の旅を経てやっと中標津に辿り着く。翌日、近所の人達が歓迎会を開いてくれた時、「炭坑節」を気持ちよく歌った源蔵は、その夜布団の中で静かに息を引き取る―。
え、その中で消えていく命もあれば新たに生まれる命もあるという、今思えばそういう作品だったのだなあと(年齢がいって観ると、段々いい作品に思えてくる...)。
全体にドキュメンタリータッチで撮られていて、演技陣は難しい演技を強いられていたのではないかと思いましたが、この夫婦は旅程でしばしば険悪な雰囲気になる(これだけツライ目に合えば愚痴も出るか)その加減にリアリティがあり、その中でも倍賞千恵子の演技は秀逸。
この作品を見ていると、倍賞千恵子は「男がつらいよ」シリーズがあんなに長く続かなければ、もっと違った作品に出る機会もあったのではないかという気もしましたが、「故郷」('72年)、「同胞(はらから)」('75年)、「遙かなる山の呼び声」('80年)などシリーズの合間に撮られた山田洋次作品に主演しています。この内、「家族」「故郷」「遙かなる山の呼び声」での役名は同じ"民子"であるため、小津安二郎監督が原節子を"紀子"という役名で起用した紀子3部作(「晩春」('49年)、「麦秋」('51年)、「東京物語」('53年))に対して「民子3部作」と呼ばれ(「遙かなる山の呼び声」の舞台は"家族"が目指した中標津)、また、漢字2文字の作品とし
て「家族」「故郷」「同胞」を山田・倍賞コンビの3部作と呼ぶこともあるようです。
「家族」●制作年:1970年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/宮崎晃●撮影:高羽哲夫●音楽:佐藤勝●時間:106分●出演:井川比佐志/倍賞千恵子/木下剛志/瀬尾千亜紀/笠智衆/前田吟/富山真沙子/竹田一博/池田秀一/塚本信夫/松田友絵/花沢徳衛/森川信/ハナ肇とクレージーキャッツ/渥美清/松田友絵/春川ますみ/太宰久雄/梅野泰靖/三崎千恵子●公開:1970/10●配給:松竹●最初に観た場所(再見):京橋・フィルムセンター(10-01-21)(評価:★★★★)



'81年刊行の第1集は、チャップリン作品から始まり、「
映画の解釈が深く、第1集では「
また、山田洋次監督の「幸福の黄色いハンカチ」('77年/松竹)を、「これを見て、ヤクザ映画の輝ける悲運のヒーローだったあの健さんが、幸せの健さんへと堕落したとみる人はよっぽど幸せなマイホームパパ」とし、この話は「嘘」を描いてもっともらしいところが秀逸なのであり、「山田監督は人情でなぜ悪いと居直っていますが、これはあくまで愛の神話であって、人情の神話ではありません」と断言、「健さんのヤクザ映画にみられた禁欲的フ
ェミニズムは、ここでは一夫一妻制のエロチシズムに見事に変質しています」という読み解きも興味深く、他にも、娯楽映画なども含め、新たな視点に気づかせてくれる解説が多くあり、映画評論としても第一級のものであるように思えます。
「禁じられた遊び」●原題:JEUX INTERDITS●制作年:1952年●制作国:フランス●監督:ルネ・クレマン●脚本:ジャン・オーランシュ/ピエール・ポスト●撮影:ロバート・ジュリアート●音楽:ナルシソ・イエペス●時間:86分●出演:ブリジッド・フォッセー/ジョルジュ・プージュリー/スザンヌ・クールタル/リュシアン・ユベール/ロランヌ・バディー/ジャック・マラン●日本公開:1953/09●配給:東和●最初に観た場所:早稲田松竹 (79-03-06)(評価:★★★★☆)●併映:「鉄道員」(ピエトロ・ジェルミ)
「生きる」●制作年:1952年●監督:黒澤明●製作:本木莊二郎●脚本:黒澤明/橋本忍/小国英雄●撮影:中井朝一●音楽:早坂文雄●原作:レフ・トルストイ「イワン・イリッチの死」●時間:143分●出演:志村喬/小田切みき/金子信雄/関京子/浦辺粂子/菅井きん/丹阿弥谷津子/田中春男/千秋実/左ト全/藤原釜足/中村伸郎/渡辺篤/木村功/伊藤雄之助/清水将夫/南美江/阿部九洲男 /宮口精二/加東大介/山田巳之助●日本公開:1952/10●配給:東宝●最初に観た場所:大井武蔵野館 (85-02-24) (評価★★★★)●併映「隠し砦の三悪人」(黒澤明)

「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」●制作年:1978年●監督:山田洋次●製作:名島徹●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:佐藤勝●原作:
渥美清(新得警察署の警察官・渡辺勝次)
「シェーン」●原題:SHANE●制作年:1953年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・スティーブンス●音楽:ヴィクター・ヤング●原作:ジャック・シェーファー「シェーン」●時間:118分●出演:アラン・ラッド/ヴァン・ヘフリン/ジーン・アーサー/ブランドン・デ・ワイルド/ジャック・パランス/ペン・ジョンスン/エドガー・ブキャナン/エミール・メイヤー●日本公開:1953/10●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-12-20) (評価★★★☆)●併映:「駅馬車」(ジョン・フォード)
「エデンの東」●原題:EAST OF EDEN●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督・製作:エリア・カザン●脚本:ポール・オスボーン●撮影:テッド・マッコード●音楽:レナード・ローゼンマン●原作:ジョン・スタインベック●時間:115分●出演:ジェームズ・ディーン/ジュリー・ハリス/レイモンド・マッセイ/バール・アイヴス●日本公開:1955/10●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:池袋文芸坐(79-02-18)(評価:★★★☆)●併映:「理由なき反抗」(ニコラス・レイ)
「JAWS/ジョーズ」●原題:JAWS●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:デイヴィッド・ブラウン/リチャード・D・ザナック●脚本:ピーター・ベンチュリー/カール・ゴッドリーブ●撮影:ビル・バトラー●音楽:ジョン・ウィリアムズ
●原作:ピーター・ベンチュリー●時間:124分●出演:ロイ・シャイダー/ロバート・ショウ/リチャード・ドレイファス/カール・ゴットリーブ/マーレイ・ハミルトン/ジェフリー・クレイマー/スーザン・バックリーニ/ジョナサン・フィレイ/クリス・レベロ/ジェイ・メロ●日本公開:1975/12●配給:CIC●最初に観た場所:新宿ローヤル (82-12-28) (評価★★★★)



「たそがれ清兵衛」は2002年に山田洋次監督によって映画化され、同監督初の時代劇でしたが、第76回キネマ旬報ベスト・テンの第1位に選ばれるなど多くの賞を受賞しました(「毎日映画コンクール 日本映画大賞」「ブルーリボン賞 作品賞」「報知映画賞 作品賞」「山路ふみ子映画賞」「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」など作品賞を総嘗めした)。
清兵衛と朋江の相互の切ない想いの描き方は感動的でしたが、原作はもっと軽い感じだったという印象。但し、意図せずに上意討ちの討ち手に選ばれてしまうというのは原作通りで、真田広之と田中泯の殺陣シーンはなかなかリアリティがありました。こうした、テレビ時代劇などにある従来のお決まりの殺陣シーンとは違った演出ばかりでなく、時代考証も細部に行き届いているようで、山田洋次監督の初時代劇作品への意気込みが感じられ、真田広之、宮沢りえの演技も悪くなかったです(真田広之、宮沢りえそれぞれ日本アカデミー賞・最優秀主演男優賞・女優賞を受賞。映画デビュー作の田中泯は最優秀助演男優賞、新人俳優賞のW受賞)。
でも、恋愛を描いたことで、完全に原作とは別物の作品になった印象もありました。話の枠組みを岸恵子(壮齢となった清兵衛の娘)の語りにする必要もなかったし(岸恵子は「男はつらいよ 私の寅さん」('73年/松竹)以来の山田洋次監督作品への出演)、その語りによるエピローグで清兵衛を戊辰戦争で死なせる必要も無かった―更に言えば、どうせここまで改変するならば、2人を結婚させず悲恋物語にしても良かったように思います。
「たそがれ清兵衛」●制作年:2002年●製作:大谷信義/萩原敏雄/岡素之/宮川
人助八」●時間:129分●出演:真田広之/宮沢りえ/田中泯/小林稔侍/大杉漣/吹越満/深浦加奈子/神戸浩/伊藤未希/橋口恵莉奈/草村礼子/嵐圭史/岸惠子/中村梅雀/赤塚真人/佐藤正宏/桜井センリ/北山雅康/尾美としのり/中村信二郎/丹波哲郎
/佐藤正宏/水野貴以●劇場公開:2002/11●配給:松竹(評価★★★☆)
[右写真]小林稔侍/宮沢りえ/山田洋次監督/真田広之/丹波哲郎
かつて旅回りの役者だった喜八(渥美清)は、一人娘の小春(有森也実)と二人で長屋暮らし。小春は浅草「帝国館」で人気の売り子として働いていた。ある日、小春の噂を聞きつけた映画監督の小倉(すまけい)がスカウトに来たことで
、小春は女優への道に。小春は見学に行った撮影現場で看護婦の役を与えられたが、いきなりのことで散々な結果となる。意気消沈した小春は女優を諦めようとするが、思いを寄せる助監督の島田(中井貴一)が説得し、大部屋女優として歩み始めた―。
1986年公開の「松竹大船撮影所」50周年記念作品で、1920(大正9)年から大船に移転する1936(昭和11)年まで映画を作り続けた「松竹蒲田撮影所」が舞台。製作の契機としては、松竹映画の象徴である「
脚本に井上ひさし、山田太一が加わる力の入れ様で、「蒲田行進曲」をライバル視しつつも「蒲田行進曲」に出ていた松坂慶子や平田満まで出ているオールスターキャスト、「男はつらいよ」シリーズの製作を1回飛ばしてこちらに注力しているので、渥美清、倍賞千恵子、前田吟、下條正巳、三崎千恵子、笠智衆、佐藤蛾次郎など「男はつらいよ」のレギューラーが総出演(当時15歳の吉岡秀隆は、倍賞千恵子と前田吟の夫婦の間の子の役で、役名もそのまま「満男」)、すまけい、笹野高史、美保純など凖レギューラー、毎回ノンクレット出演の出川哲朗も含め「男はつらいよ」から全員引っ越してきたという感じです。
一方で、浅草の映画館の売り子からスター女優になる主役の「田中小春」役を「
松坂慶子が演じる、突然の逐電で主役を降板し、小春にチャンスをもたらすことになる川島澄江は、岡田嘉子(1902-1992)がモデル(1927(昭和2)年3月27日、主役を務める「椿姫」(村田実監督)の相手役であった竹内良一との失踪事件を起こした。小津安二郎監督の「
岸部一徳が演じる緒方監督は小津安二郎(1903-1963)監督を明確にモデルにしており、その演出の様子まで再現していますが、小津の演出を知る笠智衆がその岸部一徳の演技を"語り下ろ
し"の自著『
渥美清のキャラクターは、小津安二郎監督の「


「キネマの天地」●英題:FINAL TAKE-THE GOLDEN DAYS OF MOVIES●制作年:1986年●監督:山田洋次●製作:野村芳太郎●脚本:山田洋次/井上ひさし/山田太一/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●時間:135分●出演:渥美清/中井貴一/有森也実/すまけい/岸部一徳/堺正
章/柄本明/山本晋也/なべおさみ/大和田伸也/松坂慶子/津嘉山正種/田中健/美保純/広岡瞬/レオナルド熊/山城新伍/油井昌由樹/アパッチけ(中本賢)/光石研/山田隆夫/石井均/笠智衆/桜井センリ/山
内静夫/桃井かおり/木の実ナナ/下條正巳/三崎千恵子/平田満/財津一郎/石倉三郎/ハナ肇/佐藤蛾次郎/松田春翠/関敬六/倍賞千恵子/前田吟/吉岡秀隆/笹野高史/ 出川哲朗(ノンクレジット)/(以下、特別出演)9代目松本幸四郎/藤山寛美●公開:1986/08●配給:松竹●最初に観た場所:神保町シアター(24-04-05)(評価:★★★☆)
神保町シアター
岸部一徳(緒方監督(小津安二郎がモデル))/柄本明(佐伯監督)/松坂慶子(川島澄江(岡田嘉子がモデル))/すまけい(小倉金之助監督)/9代目松本幸四郎(城田所長(城戸四郎がモデル))/笠智衆(小使トモさん)/桃井かおり(彰子妃殿下)/倍賞千恵子(ゆき)/前田吟(ゆきの亭主・弘吉)