【433】 ◎ 司馬 遼太郎 『新選組血風録 (1964/03 中央公論新社) ★★★★☆ (○ 大島 渚 (原作:司馬遼太郎) 「御法度 (1999/12 松竹) ★★★☆)

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新選組の"内実"? 一編ごとに引き込まれる。

新選組血風録 (1967年) (ロマン・ブックス).jpg1新選組血風録.png 新選組血風録2.jpg 新選組血風録3.jpg 御法度.jpg
新選組血風録 (1967年) (ロマン・ブックス)』『新選組血風録 (1964年)』(挿画:風間 完)『新選組血風録』角川文庫 〔旧版〕(カバー画:風間 完)『新選組血風録 (角川文庫)』〔新版〕(カバー画:蓬田やすひろ)「御法度 [DVD]」松田龍平

「前髪の惣三郎」.jpg 1962(昭和37)年に『燃えよ剣』を発表した司馬遼太郎が、同年5月から12月にかけて「小説中央公論」に発表した新選組を題材とした15編の短編で、これらの中に新選組の厳しい内部粛清を扱ったものが結構あり、間者(スパイ)同士で斬り合いをさせる話などは、戦争スパイ映画のような緊迫感があります。 

 また、映画と言えば、「前髪の惣三郎」のように、映画化されたものもあります(大島渚監督「御法度」。松田龍平が加納惣三郎を演じて映画デビュー作にして「キネマ旬報 新人男優賞」を受賞)。

新選組血風録 角川文庫.jpg 「燃えよ剣」よりも創作の入る余地は大きいはずですが(加納惣三郎も架空の人物だが、沖田総司の幼名が惣次郎)、鉄の掟に背いた者に待ち受ける粛清、隊士の間に流行した男色といった生々しいテーマを扱っているせいか、新選組の"内実"に触れたようなリアリティがあります。

 もちろんその他のテーマ、例えば近藤勇の愛刀「虎徹」にまつわるユーモアのある話とかもありますが...(アイロニカルに描いているところに、作者の近藤勇に対するシニカルな評価が窺えて興味深い)。

 個人的にはやはり、陰惨と言っていいほどの「内部粛清」にまつわる話が最も印象的で、閉鎖的な思想集団を想起させる面もあり、この作品がが好きになれない人の中には、多分この部分にひっかかりを覚えるためという人がいるのではないかと思うのですが、全体としてハードボイルド風の筆致であるため、各短編とも緊張感のある物語世界を醸し出していて、個人的には大いに引き込まれました。

 司馬遼太郎作品は、史実・想像・創作を織り交ぜて、あたかも作者がその時代、その場に行って見てきたかのように描いているものほど面白い!
 
(カバー画:蓬田やすひろ)

「御法度」1.jpg 映画「御法度」は、大島渚(1932-2013/80歳没)監督の13年ぶりの監督作品でしたが、結局この作品が遺作となりました。加納惣三郎を演じた松田龍平はこの作品が映画デビュー作であり、六番組組長井上源三郎が中心となる「三条蹟乱刃」もストーリーに組み込まれ、原作の国枝大二郎の役回りを加納惣三郎が代わりに務めています。近藤勇に映画監督の崔洋一(1949-2022/73歳没)、土方歳三にビートたけし(土方歳三は美男子ではなかったのか?近藤が二人いる感じ)、沖田総司に武田真治、加納惣三郎と出「御法度」2.jpg来てしまう田代彪蔵に浅野忠信。音楽は坂本龍一(1952-2023/71歳没)、美術は西岡善信(1922-2019/97歳没)、衣装はワダエミ(1937-2021/84歳没)。原作のラスト、惣三郎が田代を討ったのを見届け、土方と沖田が現場を離れる時に、沖田が「用を思い出した」と引き返したのはなぜか、映画では明け透けでない程度にその謎解きにはなっていたように思われ、「○」としました(第42回「ブルーリボン賞 作品賞」、第50回「芸術選奨」(大島渚監督)、第9回「淀川長治賞」、第1回「文化庁優秀映画賞」受賞、キネマ旬報ベスト・テン第3位)。

「御法度」大.jpg「御法度」●制作年:1999年●監督・脚本:大島渚●撮影:栗田豊通●音楽:坂本龍一●原作:司馬遼太郎(「前髪の惣三郎」「三条磧乱刃」)●時間:100分●出演:ビートたけし/松田龍平/武田真治/浅野忠信/崔洋一/坂上二郎/トミーズ雅/的場浩司/伊武雅刀/田口トモロヲ/神田うの/桂ざこば/吉行和子/田中要次/藤原喜明/寺島進/(ナレーター)佐藤慶●公開:1999/12●配給:松竹(評価:★★★☆)
松田龍平(加納惣三郎)/武田真治(沖田総司)・ビートたけし(土方歳三)
「御法度」011.jpg
松田龍平・浅野忠信(田代彪蔵)
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 【1969年文庫化・2003年改訂[角川文庫]/1975年再文庫化・1996年改訂[中公文庫]/1999年単行本改訂[中央公論新社]】

《読書MEMO》
●「油小路の決闘」伊藤甲子太郎についた篠原泰之進
●「芹沢鴨の暗殺」
●「長州の間者」間者同士で斬らせる新選組の恐怖
●「池田屋異聞」赤穂浪士脱落者子孫の山崎蒸(すすむ)
●「鴨川銭取橋」武田観柳斎の暗殺(斎藤一)
●「虎徹」近藤勇の愛刀(実は贋作)
●「前髪の忽三郎」加納忽三郎を巡る男色騒動(大島渚映画『御法度』の原作)
●「海仙寺党異聞」中倉主膳を介錯した長坂長十郎
●「弥兵衛奮迅」間者・富山弥兵衛の武士道
●「四斤山砲」大林兵庫というインチキ砲術師の新選組錯乱

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This page contains a single entry by wada published on 2006年9月 9日 23:18.

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