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時間の経過とともにだんだん佳作に思えてきた(年齢のせい?)。 脇役陣が結構しっかりしてた。

「帰らざる日々 [DVD]」永島敏行/浅野真弓/竹田かほり/江藤潤

早朝の新宿駅、飯田行き急行に乗りこむ野崎辰雄(永島敏行)。父・文雄の突然の訃報が作家を志していた辰雄に6年振りの帰郷を促したのである。―1972年、夏、辰雄の母、加代(朝丘雪路)は若い女のもとに走った夫・文雄(草薙幸二郎)と別居し母一人子一人の生活を送っていた。高校三年だった辰雄は溜り場の喫茶店の真紀子(浅野真弓)に思いを寄せていた。そんな辰雄の前に真紀子と親しげな同じ高校の隆三(江藤潤)が現われた。マラソン大会があった日、辰雄は隆三に挑んだが、デッドヒー
トの末、かわされてしまう(実は隆三はズルしていたのだが)。数日後、辰雄の気持を知った隆三は、辰雄をからかうが、隆三と真紀子がいとこ同志とも知らず、むきになる辰雄に隆三は次第に好意を持つようになる。卒業後、東京に出ようと思う辰雄、学校をやめて競輪学校に入る夢を持つ隆三、そして真紀子の三人は徐々に友情を深めていく。夏休み、盆踊りのあった晩、辰雄と隆三は真紀子が中村(中尾彬)という妻のいる男と交際しており、既に子供を宿していると知らされ、裏切られた気持で夜の街を彷徨い歩く。翌日、二日酔でアルバイトをしていると、隆三が辰雄を助けようとして足に大怪我を負ってしまい、彼の競輪への夢も潰える。飯田に近づくと、辰雄は見送りに来ていた同棲中の螢子(根岸とし江)が列車に乗っているのを見つけた。それは彼の母に会いたい一心の行為であり、結局辰雄は螢子を連れていくことになる。飯田に着くと、父は隆三の運転する車で轢死したことを知らされる。隆三も重傷を負っており、昏睡状態の彼を前に、辰雄は6年前の苦い思い出を噛み締めるる。父の葬儀の夜、真紀子が北海道に渡ったことを知らされる。翌朝、かつて隆三と走った道を歯を食い締って走る辰雄と、その後を自転車で追う螢子の姿があった―。
藤田敏八(1932‐1997/享年65)監督の1978(昭和53)年公開作で、中岡京平の原作「夏の栄光」は第3回「城戸賞」を受賞(1979年4月、第2回「日本アカデミー賞」で最優秀脚本賞に最年少の23歳でノミネート)、映画も1978年・第2回「山路ふみ子映画賞」を受賞し、1978年度 第52回キネマ旬報ベストテンで「読者選出日本映画ベスト・テン第1位」となっています。
脚本家 中岡京平トークショ-/シネマ・ウエーブ・イイダ創立10周年スペシャル・イベント(2012年9月29日|会場:センゲキシネマズ)
キャバレーのボーイをしている青年を演じた永島敏行(1956年生まれ)は、同年「サード」('78年/ATG)で映画初主演したばかりで、江藤潤(1951年生まれ)の方が「祭りの準備」('75年/ATG)で先に主演したりしているせいか、一応、この作品の主演ということになっているようですが、どちらが主人公かと言えば、永島敏行が演じる野崎辰雄青年の方です。かつて江藤潤が演じた「祭りの準備」の主人公と同じく作家(脚本家)志望と言うことで、中岡京平の自伝的要素が織り込まれているのでしょう(中岡京平は3歳の頃に長野県飯田市に転居し、高校卒業後に上京、アルバイトの傍ら、独学でシナリオを習得したという)。
物語は1978年26歳の現在から、1972年18歳の高校3年の夏を振り返りつつ、舞台も現在の東京から高校時代の長野県飯田に向かいそこで終わるという構成で、これを'79年に名画座で観た時は、70年代の鬱屈した時代の雰囲気が肌に合わなかったせいか、それほどいいと思わなかったのですが、テレビの深夜枠で放送されたのを再見したりするうちに、時間の経過とともにだんだん佳作に思えてきて、今回、43年ぶりに映画館でちゃんと観てみると、そうした時代が懐かしく思えて、しかも、ラストはちょっと泣けました(年齢のせい?)。
若い男の子が年上の女性に惹かれるって、よくあるパターンだなあ。永島敏行演じる主人公の辰雄が思いを寄せる喫茶店のウェートレス・真紀子を演じたのは浅野真弓(1957年生まれ)。彼女ほどの美人であればなおさらのことでしょう(NHKの少年ドラマシリーズ「タイム・トラベラー」('71年)(原作:筒井康隆)でヒロインを演じていた島田淳子という少女が後の浅野真弓だとかなり後になって知ったが、'84年にミュージシャンの柳ジョージと結婚し、芸能界から引退した)。
辰雄は、中学校の同級生の由美が自分のことを好いてくれているのに、その気持ちには応えてあげれない。そのくせ、二人きりになると手を出してしまうのだが、これは由美の方が誘ったのか。
竹田かほり(1958年生まれ)は、この由美のような役をやるの(上手いと言うよりも)向いていたなあ(彼女は、同じ年['78年]からの「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」('78年)を1作目とするにっかつ「桃尻娘シリーズ」で人気を得、松田優作主演の日本テレビのドラマ「探偵物語」('79-'80年)では、ナンシー・チェニーと共にマスコット的な役割として出ていた
が、こちらも'82年にミュージシャンの甲斐よしひろと結婚し、芸能界から引退した)。


「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」(竹田かほり・亜湖)
「探偵物語」(竹田かほり・倍賞美津子・ 松田優作・ナンシー・チェニー)
'80年に根岸季衣と改名する前の根岸とし江が出ていて(1954年生まれ、女優としては現時点['22年]でも完全に現役で、一方で、反原発運動もやっている)、辰雄の母親役の朝丘雪路はスナックのママらしく、由美の母親役の吉行和子(1935年生まれ、この人も女優としては現時点['22年]で現役)は小料理屋の女将しく、その愛人役の中村敦夫は男気あるヤクザらしく、真紀子を孕ませた中村役の中尾彬はプレイボーイらしく、小松方正は公金横領の末に地方に逃げて最後に首を吊る男らしく(笑)―と、脇役陣が結構しっかりした映画だったと改めて思いました。
因みに、テーマ曲の「帰らざる日々」は、作詞した谷村新司曰く、この曲は「女の子が睡眠薬を飲んで、電話越しに自死していく様子を歌った歌」とのこと。確かにそういう内容の歌詞です(最初はブレイク前のアルフィー(THE ALFEE)に提供するつもりで作ったのが、坂崎幸之助が「ちょっと僕らには重い」と辞退したという)。'76年にリリースされていて、'78年に映画「帰らざる日々」の主題歌に採用され、同年に再ヒットしています(同年、西城秀樹がカバーし、後に研ナオコ、ピーター、柏原芳恵もカバーした)。
竹田かほり
「帰らざる日々」●制作年:1978年●監督:藤田敏八●製作:岡田裕●脚本:藤田敏八/中岡京平●撮影:前田米造●音楽:アリス(主題歌「帰らざる日々」作詞・作曲:谷村新司
)●原作:中岡京平●時間:99分●出演:江藤潤/永島敏行/朝丘雪路/根岸とし江(根岸季衣)/浅野真弓/竹田かほり/中村敦夫/中尾彬/吉行和子/小松方正/草薙幸二郎/丹波義隆/加山麗子/阿部敏郎/高品正広/深見博/加山麗子/日夏たより●公開:1978/08●配給:日活●最初に観た場所:飯田橋・ギンレイホール(79-05-23)●2回目:神田・神保町シアター(22-08-28)(評価:★★★★)●併映(1回目):「八月の濡れた砂」/「赤い鳥逃げた?」(藤田敏八)
谷村 新司(たにむら・しんじ)
シンガーソングライター。2023年10月8日、心不全のため死去。74歳。3月に腸炎の手術受けていた。アリス(谷村、堀内孝雄、矢沢透)のリーダー。

中尾 彬(なかお・あきら)
俳優。2024年5月16日、心不全のため死去。81歳。妻の池波志乃が最期を看取った。映画「内海の輪」「本陣殺人事件」に主演。


ギンレイホール 1974年1月3日飯田橋にオープン 2022年11月27日閉館


南北戦争が終り、解放された黒人奴隷のジョー(ロナルド・ネルソン)は、弟サム、従兄ルイ、叔父ボブの3人に再会した。彼らはニューオリンズから船に乗り故郷アフリカへ帰るはずが、メキシコ商人に騙されて香港行きの船に乗せられる。ある日、病気で死んだボムを残し、大嵐の中ボートで脱出を図った3人は駿河湾の庵原藩に助けられる。海郷亮勝(古谷一行)が藩主の庵原藩は、薩摩藩と幕府の中間に位置しているため、家老の石出九郎左衛門(財津一郎)は薩摩
か幕府のどちらにつくべきか悩んでいる。しかし亮勝はどこかうわの空。そんな時、黒人3人が流れ着いたとの一報が入る。亮勝は興味津々で彼らに会いたいと言うが、それを許そうとしない九郎左衛門は、医者の玄斎(殿山泰司)に作らせた眠り薬を使い、彼らを地下牢に閉じ込める。下手な篳篥を演奏するのが趣味の亮勝は、彼らは楽隊ではないかと玄斎から伝え聞き、何とか彼らと会うよう画策する。そして、念願を果たすや、音楽好きの亮勝は彼らの演奏するジャズの虜となり―。


岡本喜八監督の1986(昭和61)年公開作で、原作は筒井康隆の短編集『エロチック街道』('81年/新潮社)の1篇(文庫化後、映画化の際に書名が『ジャズ大名』に改められて表題作となった)。製作会社は大映、配給会社は松竹で、同年キネマ旬報ベストテンで10位となり、映画化困難といわれる筒井原作の映画では初のランクインとなっています。
藩主役の古谷一行と家老役の財津一郎のやり取りが楽しい。原作にある庵原藩の屋敷の特異な形状もしっかり再現されており、百畳敷以上の大広間(これが街道上に位置するため、伊勢参りや敗れた幕府軍、追う官軍などが行き来することになる)のセットは東宝スタジオに建てられ、音楽監督とプロデューサーを除くメ
インスタッフ全員が東宝から起用されたとのことです。
に、戦争なんて馬鹿らしいというメッセージが込められていたように思います。
昭和23年。ビルマ戦線から復員した重左こと宗重左衛門(真田広之)は、戦友の鬼庄こと鬼松庄一(佐藤浩市)と遊郭で再会し、仲間の伝次郎(堀弘一)と共に海賊して瀬戸内海を股にかけていた。ある日、三人が襲撃した船に洋子(安田成美)という名の少女が乗っており、鬼庄は彼女を色街に売って金を得ようとしていた。しかし重左は影のある彼女に惹かれ、鬼庄の計画を思いとどまらせることに成功する。洋子の嫁ぎ先は瀬戸内海を牛耳る新興やくざ・花万に捜索を依頼。そして、花万の番頭・火つけ柴(蟹江敬三)が五貫島に現われ、3日後に洋子を渡すように要求してきた。大分・竹田津の実家まで送り届けると洋子に約束した重左は、高松の元やくざ・阿波政(西村晃)に助けを求めに行くが、その間洋子は火つけ紫に連れ去られてしまう。闇ブローカーの岩テコ(平田満)から火つけ紫の妾の居場所を聞いた重左たちは、その女・千佳(今井美樹)を攫って人質交換を目論み、小型船の梵天丸で西枯木島にある火つけ紫の本拠地に乗り込むが―。
井筒和幸監督作で、荒れ狂う海の上での真田広之と佐藤浩市の活躍が観られます(この二人のW主演はある種"貴重映像"かも。「
今井美樹が唯一ヌードになった映画がこの作品とのことです。ホンダ・トゥデイのCM('85年)に出ていた彼女。個人的には、新車発表会で"ナマ今井美樹"見たこともあり思い入れがあったのですが、その彼女をこうした使い方をして大丈夫なのかなあと、当時思ったりもしました。しかしながら、今井美樹自身は、引き続きNEWトゥデイのCM('88年)にも'91年まで出ていて('93年に2代目イメージガール・牧瀬里穂にバトンタッチ)、その後も歌手、女優として幅広く活躍しています(1999年に布袋寅泰と結婚)。
井筒和幸監督自身は当時のことをどう振り返っているのかと思ったら、「日刊ゲンダイDIGITAL」の連載コラム(2020年9月26日配信)に《新人の今井美樹嬢を丸裸にさせたり、船上で尻をまくって海にオシッコさせたり、キスを何十回と連続でテークしたりした。彼女は耐えに耐えて夢中で演じた。熱い時代だった。今はキスも嫌う女優もどきがいる。ご清潔なものだ》と書いていて、この発言が今年['22年]になってツイッター民により引用・拡散されたことで物議を醸しているようです。
「ジャズ大名」●制作年:1986年●監督:岡本喜八●脚本:岡本喜八/石堂淑朗●製作:室岡信明●撮影:加藤雄大●音楽:筒井康隆/山下洋輔●原作:筒井康隆●時間:85分●出演:古谷一行/財津一郎/神崎愛/岡本真実 /殿山泰司/本田博太郎/今福将雄/小川真司/利重剛/ミッキー・カーチス/唐十郎 (友情出演)/ロナルド・ネルソン/ファーレズ・ウィテッド/レニー・マーシュ/ジョージ
・スミス/六平直政/山下洋輔(特別出演)/タモリ(特別出演)●公開:1986/04●配給:松竹(評価:★★★☆)●最初に観た場所:渋谷松竹(86-05-04)(評価:★★★☆)●併映:「犬死にせしもの」(井筒和幸)
男●音楽:武川雅寛(主題歌:桑名晴子)●原作:西村望「犬死にせしものの墓碑名」●時間:92 分●出演:真田広之/佐藤浩市/安田成美/平田満/堀弘一/梅津栄/今井美樹/風祭ゆき/水木薫/吉行和子/蟹江敬三/木之元亮/中村玉緒(特別出演)/西村晃/堤真一(チンピラ 役)●公開:1986/04●配給:松竹●最初に観た場所:渋谷松竹(86-05-04)(評価:★☆)●併映:「ジャズ大名」(岡本喜八)





平田家は主・周造(橋爪功)と妻・富子(吉行和子)、長男・幸之助(西村雅彦)と妻・史枝(夏川結衣)とその息子二人、次男・庄太(妻夫木聡)と3世代で同居をする家族。周造は妻・富子の誕生日であることを忘れていたことに気付き、彼女に何か欲しいものはないかと尋ねてみると、何と離婚届を突き付けられる。思わぬ事態に呆然とする中、金井家に嫁いだ長女・成子(中嶋朋子)が夫・泰蔵(林家正蔵)が骨董趣味で購入した皿を誤って割ったことで泰蔵と口論となり、別れたいと泣きついてくる。彼女を追ってきた泰蔵の言い訳を聞いているうちに苛ついた周造は、思わず自分たちも離婚の危機にあることをぶちまける。それを聞いて長男・長女夫婦は、次男の庄太を交え、長男の息子二人抜きの大人だけによる「家族会議」を開くことに。事情を知らない庄太が、恋人の憲子(蒼井優)を親兄弟に紹介しに実家に来たものだから、成り行きで憲子も「家族会議」に参加することになったが、周造が途中で卒倒して離婚どころか会議できる状態でなくなった―。
山田洋次(1931年生まれ)監督の2016年公開作で、小津安二郎監督の「
となります。「東京物語」の方はこの他に、三男・平山敬三(大坂志郎[国鉄マン])、次女・平山京子(香川京子[小学校教員])がいますが、「東京家族」には無いので、五人兄弟を三人兄弟に減らしたことにな
ります。また、小林稔侍(周造の旧友・沼田)も「東京家族」と同じ役で出演していますが、これに該当する「東京物語」の役は、東野英治郎が演じた「沼田」でしょう。さら
に、風吹ジュン(居酒屋の女将・加代)も「東京家族」と同じ役で出演していますが、これに該当する「東京物語」の役は、桜むつ子が演じたおでん屋の女将だと思われます(桜むつ子は「東京暮色」「彼岸花」「秋日和」でも飲み屋の女将やマダム役で出演している)。
「東京家族」では、「東京物語」で原節子が演じた紀子役を蒼井優が演じた間宮紀子が引き継いでいましたが、この「家族はつらいよ」では、橋爪功が演じる周造が自宅の居間で小津の「東京物語」を観ている場面があって(「男はつらいよ」のDVDもテレビの傍にあったが)、あの有名な原節子と笠智衆の会話シーンと原節子が泣くシーンが映し出され、さらに「東京家族」同様、映画の終盤で蒼井優演じる憲子(「東京家族」では「紀子」)と橋爪功演じる周造の直接会話シーンがあるため、ここでも蒼井優に原節子的なものを被せているのが感じられました。
ただ、蒼井優演じる憲子が、紛糾する平田家の「家族会議」を羨ましいと言うので、皆が不思議がって理由を訊くと、子どもの頃に両親のいきなりの離婚を経験していたというのは、ちょっとあざとさも感じました。蒼井優は「
「東京家族」と同じ感覚で観るのではなく、「寅さんシリーズ」を観るのと同じ感覚で向き合った方が良かったのか(次回作からはそうなったが)。もっとも、「東京家族」('13年)の方も、オリジナルの小津版「東京物語」(個人的評価は★★★★☆)の良さに負うている部分が大きいので、純粋に一つの作品として評価するのが難しい面はあるのですが...。広島側の舞台を、オリジナルの尾道から島(豊田郡大崎上島)に移すことで"故郷(ふるさと)"感を
醸すなどの工夫はされていますが、大家族の崩壊が1つのテーマだった「東京物語」に比べると、「東京家族」の方は5人兄弟を3人兄弟に減らしたことでその部分の色合いは弱まっていると言うか変質しており、家族が離散していく寂しさよりも、むしろタイトル通り、家族のやっかいさ(やっかいなものとして扱われる家族)が前面に出ていたように思いました。ただ、山田監督が敬愛する小津監督の代表作のリメイクということもあって、東日本大震災による公開延期と主演の老夫婦の配役変更(当初は菅原文太と市原悦子の予定だったのが、橋爪功と吉行和子に変更)を経ながらも、丁寧な演出のもとに撮られていたように思います。
「東京家族」のイメージポスターおよび「家族はつらいよ」シリーズのタイトル題字とポスターを
怒りを露わにするという騒動がありました。あれは決着したのでしょうか。
「家族はつらいよ」●制作年:2016年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/平松恵美子●製作:大角正●撮影:近森眞史●音楽:久石譲●原作:山田洋次●時間:113分●出演:橋爪功/吉行和子/西村雅彦(西村まさ彦)/夏川結衣/中嶋朋子/林
家正蔵/妻夫木聡/蒼井優/風吹ジュン/小林稔侍/中村鷹之資/丸山歩夢/徳永ゆうき/笹野高史/笑福亭鶴瓶●公開:2016/03●配給:松竹(評価:★★★☆)
「東京家族」●制作年:2013年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/平松恵美子●製作:秋元一孝●撮影:近森眞史●音楽:久石譲●原作:山田洋次●時間:146分●出演:橋爪功/吉行和子/西村雅彦(西村まさ彦)/夏川結衣/中嶋朋子/林家正蔵/妻夫木聡/蒼井優/風吹ジュン/小林稔侍/茅島成美/柴田龍一郎/丸山歩夢/荒川ちか●公開:2013/01●配給:松竹(評価:★★★★)



吉行 和子(よしゆき かずこ)女優
「


渋谷の「協栄家政婦会」に所属する家政婦・河野信子(市原悦子)は、他人の家庭を次々と見て回り、その家の不幸を発見するのを愉しみとしていた。外見から見てこの上ない幸せな家庭だと思っても、必ず不幸は存在している...。信子は青山に住む大学教授・稲村達也(柳生博)の家に派遣されたが、体裁屋で二重性格の妻・春子(吉行和子)、出来損ない揃いの三人の子供を始めとして、その内実、家族がばらばらであることを見抜く―。
原作で起きる多くの出来事をどれくらいドラマに反映させることができるかとなあと思いましたが、出てくる順番は原作と異なるものの、夫の不倫や老母の負傷事故、熱海でのチフス事件、最後の主人公が被る仕打ちなど、結局、全部反映させていたように思います。原作の持ち味も損なわず、脚本が良く出来ていたように思います。
それと、原作では最後には信子自身が災厄に遭うという、因果応報的ともとれる結末で終わっていて(文庫新装版解説のエッセイストの酒井順子氏は、逆にこのことでホッとさせられると書いていて、ナルホドと思った)、ドラマもその通りではあるのですが、ドラマではその後、耳のケガもが癒ないいちから意気揚々と家政婦紹介所を出発し、新たな派出先の門前に立って大声で「ごめんくださいまし。家政婦紹介所から参りました
tが」と叫ぶ信子の姿で終わっています(後のシリーズ化に繋げる意味で、この付け加えられたラストシーンの意義は大きい。それとも最初からシリーズ化を考えていた?)
原作「熱い空気」は1966年にフジテレビで望月優子主演で、1979年にTBS「東芝日曜劇場」で森光子、長門裕之主演(監督:鴨下信一/プロデューサー:石井ふく子)でドラマ化されていて、市原悦子版が3回目のド
ラマ化でしたが、「家政婦は見た!」シリーズ化によってあまりに市原悦子の役柄が嵌ってしまったせいか、その後ずっとドラマ化されなかったところ、テレビ朝日系で2012年12月に「松本清張没後20年・ドラマスペシャル 熱い空気」として米倉涼子主演でドラマ化されました。信子と稲村家の結末は、原作と異なるドラマオリジナルの展開となっているようですが、個人的には未見です。


昭和11年、田舎から出てきた純真な娘・布宮タキ(黒木華)は、東京郊外に建つモダンな赤い三角屋根の小さな家で暮らす一家の元で女中として働き始める。若く美しい奥様の時子(松たか子)、家の主人で玩具会社に勤める平井雅樹(片岡孝太郎)、5歳になる息子の恭一とともに穏やかな日々を送っていたある日、雅樹の部下で板倉正治(吉岡秀隆)という青年が現れ、時子の心は揺れていく。タキは複雑な思いを胸に、その行方を見つめ続ける。それから60数年後、晩年のタキ(倍賞千恵子)が大学ノートに綴った自叙伝を読んだタキの親類・荒井健史(妻夫木聡)は、それまで秘められていた真実を知る―。
2010(平成22)年上半期・第143回直木賞を受賞した中島京子の原作『小さいおうち』の映画化作品で、当時82歳の山田洋次監督は、本作が通算82作目となるとのこと。昭和初期からの時代を背
景に、赤い屋根の小さな家で起きた密やかな"恋愛事件"を巡る物語で、時子役を松たか子、晩年のタキを倍賞千恵子が演じましたが、若き日のタキに扮した黒木華(「クラシックな顔立ち」が決め手となり起用されたという)が、第64回ベルリン国際映画祭で
本作は、黒木華が演じる「女中」タキ、松たか子が演じる「奥様」時子、吉岡秀隆演じる「青年」板倉の三人が主要登場人物で、タキの視点で語る時子と板倉の不倫関係が物語の中心になりますが、ネットでの映画評の中には、この三人が三角関係にあり、それゆえにタキは、出征することになった板倉に会いに行こうとする時子に、板倉と会う代わり、板倉の方から訪ねるよう手紙を書かせておきながら、その時子の手紙を板倉に渡さなかったのだという解釈のものがありました(中には、タキと板倉はすでに肉体関係があり、時子を裏切ったという思いから、二人は生涯結婚をせずに通したのだというのもあった)。
老齢となったタキが、甥っ子の健史に今書き綴っている回想録を読まれていることを意識しているため、タキが回想録に書いていることが必ずしもすべて本当ではないという可能性はもともとあったわけですが、三人が三角関係にあったというのはちょっと穿ち過ぎた見方のように思いました。個人的は、タキは、自分が奉公する平井家の崩壊を見たくなかったということが、手紙を板倉に渡さなかった理由かと思いましたが、そうした極端
な説に出くわすと、ちょっとこれでは理由としては弱いかなとも思ってしまいます(自信なさ過ぎ?)。
ところが、原作を読むと、タキの時子への思いが滔々と綴られていて、それだけでは「奥様」に憧れる「女中」というだけにすぎないのですが、時子の友人で婦人誌(女性誌)の編集者であるいわば職業婦人(キャリアウーマン)の女性が、そういう関係もあっていいと言って、タキと時子が精神的な同性愛関係にあることを示唆していました。従って、この同性愛論は、原作を読んだ人から出てきたのではないかと思います。映画だけではわからないように思いました。というか、「山田洋次監督は同性愛の物語を男女の不倫物語に確信犯的に改変してしまった」と言っている人もいます。
映画では、板倉は時子に会わずに出征し(時子からみれば会えずに終わり)、それはタキが時子からの手紙を板倉に渡さなかったためで、そのことをタキは一生悔やみ続け、未開封の手紙を生涯持ち続けるととれる作りになっていますが、原作では、板倉は出征のため弘前に行く前に"小さいおうち"にやって来て時子と話をし、その間タキは庭仕事をしていたと回想録にあります(それでこの小さな恋愛事件は終わったと)。実際にはタキは板倉に手紙を渡さなかったため、板倉がやってくるはずはなく、この部分はタキがによるウソの記述ということいなります。映画では、板倉が最後に"小さいおうち"にやって来た〈偽エピソード〉を描くと"映像のウソ"になるため描いてはいませんでした。原作では、最後に健史は、渡されなかった手紙を見つけ、タキの回想録にあるその日の記録は虚偽であると知って、タキは時子に恋をしていたのかもしれないと悟ります。
「小さいおうち」●制作年:2014年●監督:山田洋次●脚本:平松恵美子/山田洋次●撮影:近森眞史●音楽:久石譲●原作:中島京子「小さいおうち」●時間:137分●出演 松たか子/黒木華/片岡孝太郎/吉岡秀隆/妻夫木聡/倍賞千恵子/橋爪功/吉行和子/室井滋/中嶋朋子/林家正蔵/ラサール石井/あき竹城
/松金よね子/螢雪次朗/市川福太郎/秋山聡/笹野高史/小林稔侍/夏川結衣/木村文乃/米倉斉加年●公開:2014/01●配給:松竹(評価:★★★☆) 






チェロ奏者の小林大悟(本木雅弘)は、所属していた楽団の突然の解散を機にチェロで食べていく道を諦め、妻・美香(広末涼子)を伴い、故郷の山形へ帰ることに。さっそく職探しを始めた大悟は、"旅のお手伝い"という求人広告を見て面接へと向かう。しかし旅行代理店だと思ったその会社の仕事は、"旅立ち"をお手伝いする"納棺師"というものだった。社長の佐々木生栄(山崎努)に半ば強引に採用されてしまった大悟。世間の目も気になり、妻にも言い出せないまま、納棺師の見習いとして働き始める大悟だったが―。
2008年公開の滝田洋二郎監督作で、脚本は映画脚本初挑戦だった放送作家の小山薫堂。第32回「日本アカデミー賞」の作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞(本木雅弘)・助演男優賞(山崎努)・助演女優賞(余貴美子)・撮影賞・照明賞・録音賞・編集賞の10部門をを独占するなど多くの賞を受賞しましたが(第63回「毎日映画コンクール 日本映画大賞」、第33回「報知映画賞 作品賞」、第21回「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」も受賞)、その前に第32回モントリオール国際映画祭でグランプリを受賞しており、更に日本アカデミー賞発表後に第81回米アカデミー賞外国語映画賞の受賞が決まり、ロードショーが一旦終わっていたのが再ロードにかかったのを観に行きました(2009年(2008年度)「芸術選奨」受賞作。脚本の小山薫堂は第60回(2008年)「読売文学賞」(戯曲・シナリオ賞)、本木雅弘と映画製作スタッフは第57回(2009年)「菊池寛賞」を受賞している)。
主演の本木雅弘のこの映画にかけた執念はよく知られていますが、"原作者"に直接掛け合ったものの、原作者から自分の宗教観が反映されていないとして「やるなら、全く別の作品としてやってほしい」と言われたようです。もともとは、本木雅弘が20歳代後半に藤原新也の『メメント・モリ―死を想え』('83年/情報センター出版局)を読み、インドを旅して、いつか死をテーマにしたいと考えていたとのことで、まさに「メメント・モリ」映画と言うか、いい作品に仕上がったように思います(結局、原作者も一定の評価をしているという)。
特に、前半部分で主人公が"納棺師"の仕事の求人広告を旅行代理店の求人と勘違いして面接に行くなどコメディタッチになっているのが、重いテーマでありながら却って良かったです(逆に後半はややベタか)。技術的な面や宗教性の部分で原作者に限らず他の同業者からも批判があったようですが、それら全部に応えていたら映画にならないのではないかと思います。こうした仕事に注目したことだけでも意義があるのではないかと思いますが(ジャンル的には"お仕事映画"とも言える)、米アカデミー賞の選考などでは、同時にそれが作品としてのニッチ効果にも繋がったのではないでしょうか(アカデミーの外国語映画賞が、前3年ほど政治的なテーマや背景の映画の受賞が続いていたことなどラッキーな要素もあったかも)。
Wikipediaに「地上波での初放送は2009年9月21日で21.7%の高視聴率を記録したが、2012年1月4日の2回目の放送は3.4%の低視聴率」とありましたが、2回目の放送は日時が良くなかったのかなあ。こうした映画って、ブームの時は皆こぞって観に行くけれど、時間が経つとあまり観られなくなるというか、《無意識的に忌避される》ことがあるような気がしなくもありません。そうした傾向に反発するわけではないですが、個人的には、最初観た時は星4つ評価(○評価)であったものを、最近観直して星4つ半評価(◎評価)に修正しました(ブームの最中には◎つけにくいというのが何となくある?)。「メメント・モリ」映画の"傑作"と言うか、むしろ"快作"と言った方が合っているかもしれません。
滝田洋二郎監督は元々は新東宝で成人映画を撮っていた監督で、初めて一般映画の監督を務めた「コミック雑誌なんかいらない!」('86年/ニュー・センチュリー・プロデューサーズ)でメジャーになった人です。個人的には、鹿賀丈史、桃井かおり主演の夫婦で金儲けに精を出す家族を描いた「木村家の人びと」('88年/ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画)を最初
に観て、部分部分は面白いものの、全体として何が言いたいのかよく分からなかったという感じでした(ぶっ飛び度で言えば、石井聰互監督の「
また、滝田洋二郎(1955年生まれ)監督は、'81(昭和56)年、「痴漢女教師」で監督デビュー後、'82(昭和57)年2本、'83(昭和58)年4本、'84(昭和59)年8本と倍のペースでメガホンを取り、"邦ピン・ニューエンタテイメントの旗手"などと称され(「ニューエンタテイメントの旗手としてピンクの枠を超える29歳」「シティロード」1985年4月号)、成人映画の監督として話題作を連発し耳目を集めましたが(森崎東監督はピンク映画の撮影現場を舞台にした「
寂れたポルノ映画館で自身が犯した強姦殺人事件の時効を待ちつつ映写技師として働く勝三(大杉漣)は、都会の人混みに紛れることで気付かれないようにしていた。ある日、上映中の映画「密写 連続暴姦」の中に、過去自分が起こした強姦殺人事件とそっくりな場面が写っていた。何故だ! 一方、自分が7歳の時に目の前で殺された姉(織本かおる)の復讐をするために犯人の男を必死に捜す妹・冬子(織本かおる、二役)。犯人の手掛かりは現場に落ちていた映画のフィルムを繋げる特殊なテープであり、きっと映画関係者に違いないと思い、シナリオを勉強して姉の殺害シーンを盛り込んだシナリオを書き、同僚の山崎千代子(竹村祐佳)の名で発表、それが映画化されたらきっと犯人の目に止まると考えていた。そして、その目論見は当たり―。
個人的には、自由が丘の「自由ヶ丘劇場」で観ましたが、仄聞していた通りピンク映画と言うよりサスペンス映画でした(勿論ピンク映画でもあるが)。凝った構成と人物描写、脚本に緻密に伏線を張り巡らせていて(ただし、張り巡らせている割には長さが60分しかないため説明不足の箇所があり、評価は△。今や"滝田洋二郎研究"ための作品か)、本作は第5回「ズームアップ映画祭」作品賞と監督賞、第5回「ピンクリボン賞主演」男優賞(大杉漣)を受賞しています(もちろん、当時は大杉漣(1951-2018/66歳没)はまだ一部の人しか知らない無名俳優)。滝田洋二郎監督に限らず、
「おくりびと」●制作年:2009年●監督:滝田洋二郎●製作:中沢敏明/渡井敏久●脚本:小山薫堂●撮影:浜田毅●音楽:久石譲●時間:130分●出演:本木雅弘/広末涼子/山崎努/杉本哲太/峰岸徹/余貴美子/吉行和子/笹野高史/山田辰夫/橘ユキコ/飯森範親/橘ゆかり/石田太郎/岸博之/大谷亮介/諏訪太郎/星野光代/小柳友貴美/飯塚百花/宮田早苗/白井小百合●公開:2008/09●配給:松竹●最初に観た場所:丸の内ピカデリー3(09-03-12)(評価:★★★★☆)




丸の内松竹(丸の内ピカデリー3) 1987年10月3日「有楽町マリオン」新館5階に「丸の内松竹」として、同館7階「
ン、1996年6月12日~「丸の内ブラゼール」、2008年12月1日~「丸の内ピカデリー3」) (「丸の内ルーブル」は2014年8月3日閉館)
「木村家の人びと」●制作年:1988年●監督:滝田洋二郎●脚本:一色伸幸●撮影:志賀葉一●音楽:大野克夫●原作:
谷俊彦●時間:113分●出演:鹿賀丈史/桃井かおり/岩崎ひろみ/伊崎充則/柄本明/木内みどり/風見章子/小西博之/清水ミチコ/中野慎/加藤嘉/木田三千雄/奥村公延/多々良純/露
原千草/辻伊万里/今井和子/酒井敏也/鳥越マリ/池島ゆたか/上田耕一/江森陽弘/津村鷹志/竹中
直人/螢雪次朗/ルパン鈴木/山口晃史/三輝みきこ/小林憲二/野坂きいち/江崎和代/橘雪子/ベンガル●劇場公開:1988/05●配給:東宝 (評価★★★)
「秘密」●制作年:1999年●監督:滝田洋二郎●製作:児玉守弘/田上節郎/進藤淳一●脚本:斉藤ひろし●撮影:栢野直樹●音楽:宇崎竜童●原作:東野圭吾●時間:119分●出演:広末涼子/小林薫/岸本加世子/金子賢/石田ゆり子/伊藤英明/大杉漣/山谷初男/篠原ともえ/柴田理恵/斉藤暁/螢雪次朗/國村隼/徳井優/並樹史朗/浅見れいな/柴田秀一●劇場公開:1999/09●配給:東宝 (評価★★★☆).jpg)
「壬生義士伝」●制作年:2003年●監督:滝田洋二郎●製作:松竹/テレビ東京/テレビ大阪/電通/衛星劇場●脚本:中島丈博●撮影:浜田毅●音楽:久石譲●時間:137分●出演:中井貴一/佐藤浩市/夏川結衣/中谷美紀/山田辰夫/三宅裕司/塩見三省/野村祐人/堺雅人/斎藤歩/比留間由哲/神田山陽/堀部圭亮/津田寛治/加瀬亮/木下ほうか/村田雄浩/伊藤淳史/藤間宇宙/大平奈津美●公開:2003/01●配給:東宝 (評価:★★☆)
「連続暴姦」●制作年:1983年●監督:滝田洋二郎●脚本:高木功●撮影:佐々木原保志●時間:60分●出演:織本かおる/大杉漣/麻生うさぎ/螢雪次朗/佐々木裕美/伊藤正彦/末次真三郎/竹村祐佳/早川祥一●公開:1983/10●配給:新東宝●最初に観た場所:自由ヶ丘劇場(84-04-15)(評価:★★★)●併映:「神田川淫乱戦争」(黒沢清)/「女子大生・教師の目の前で」(水谷俊之)


地方都市の女子中学生たちが、学校のプールに夜中に泳ぎにやってきて、先に来ていた男子生徒にイタズラをするが、度が過ぎて溺死寸前の状態に追い込んでしまう。翌朝、ニュースでは台風の接近を告げていた―。
「台風クラブ」('85年/東宝=ATG)は、'85(昭和60)年の
く描き出した作品。女子中学生役の工藤夕貴が、中学生の日常とそこに潜む思春期の生理的・精神的危うさを演じて秀逸で、何か自分でそうしたものを観察でもしたかのような相米慎二監督の演出が際立っています。実際、女子中学生の私生活を「長回し」で写し撮っているような感じのシーンもあり、今ならば児童保護の名目で規制の対象になりそうな際どい場面もあって、更にストーリー的にも結構どろどろした出来事がありますが、そうしたことも含め、「観察対象」としての距離を置いて撮っているような感じもします。
一過、中学生たちは何事もなかったかのようにまた元気に学校に通い出す―でも実は、台風が来る前に比べぐっと大人に近づいているという、 "大人になるための出来事"を台風に絡めているところが旨く、また、女子中学生の方が男子よりも逞しく描かれているように思いました。人間の自律神経は気圧の変化には敏感で、酸素がたくさんある高気圧だと酸素ストレスで交感神経が緊張して体は興奮して元気になり、逆に雨や台風で低気圧が接近すると、副交感神経が優位に働いて、特に神経痛やリュウマチなどの持病がある人にとっては低気圧は不快感を増幅させるそうですが、思春期にある者の情緒不安定を引き起こすことについても何か科学的根拠があるんじゃないかなあ。
相米慎二(1948‐2001/享年53)監督は、薬師丸ひろ子(当時17歳)主演の「セーラー服と機関銃」('81年)の後に夏目雅子(当時25歳)主演の「
「台風クラブ」では三浦友和が不良っぽい教師役で出ていて、なかなか良かったです。三浦友和は、所謂「百恵・友和ゴールデンコンビ」と言われた作品群で1970年代に二枚目の俳優として10代に大変な人気がありましたが、その百恵・友和のゴールデン・コンビの第8作、大林宣彦監督、ジェームス三木脚本の「ふりむけば愛」('78年/東宝)を友達と観に行って、2人とも途中で眠くなりました。ただ、本作を契機に山口百恵と三浦友和は結婚に踏み切ることを決意したと言われています。2本立てで小原宏裕監督の「
所で料理をしている隣りの部屋でだらしなく寝転がってる三浦友和が、近よってきた恋人に足を絡ませ倒して抱きつく長回しなど、ダメさ加減がよく出ていました(ハードボイルド風よりよりこっちの方がいい)。個人的には、この作品こそが彼のイメージチェンジ作ではないかなと思います(イメチェンって、ただこれまでと違う役をやればいいというものでもなく、新たなキャラを確立させなければならないだけに難しい)。三浦友和はこの作品で、第10回報知映画賞助演男優賞を受賞しています。

一方、工藤夕貴の映画初出演は、この作品の前年の石井聰互監督の「逆噴射家族」('84年/ATG)で(当時13歳)、真面目で小心者のサラリーマン(小林克也)が長期ローンでやっとマイホームを建て、家族4人でそれなりの幸せ気分でいたところに(この家族が変人揃いで皆それぞれ勝手気儘というかバラバラなのだが、その1人が工藤夕貴演じる娘)、郷里からまた変な祖父(植木等)が舞い込んで来て家の中がおかしくなりだし、更にある日、このサラリーマン氏が自宅でシロアリの群れを発見して、マイホームが朽ちるのではとの不安に駆られ、シロアリ駆除に向けて大暴走するというものです。
小林よしのり氏(当時31歳)の原案だそうですが、映画としてはあくまでも石井聰互監督(当時27歳)の映画という感じで、DJ・小林克也の演技は役者並みだし、ちょっと狂い気味の妻役の倍賞美津子や、植木等の怪しい老人ぶりもいいです。
更には工藤夕貴の兄を演じた有薗芳記の電脳オタクぶりも、映画初出演ながら凄かった―ということで、工藤夕貴のぶっ飛び感も、これらに比べるとちょっと弱かったかも知れません("緊縛シーン"(?)に象徴されるように、彼らの被害者的立場という色合いが強い役柄のせいもあったが)。
「逆噴射家族」は海外の映画祭でもグランプリなどを獲っている作品ですが、狂気を描くことが目的化してしまっている面も感じられ、むしろ異価値・異文化的な面で海外に受
けたのではないかなあ。個人的には「台風
クラブ」の方がより好みでしょうか。
「台風クラブ」●制作年:1985年●監督:相米慎二●製作:宮坂進●脚本: 加藤裕司●撮影:伊藤昭裕●音楽:三枝成章●時間:85分●出演:工藤夕貴/三上祐一/大西結花
/三浦友和/佐藤充/寺田農/尾美としのり/鶴見辰吾/紅林茂/松永敏行/会沢朋子/小林かおり/きたむらあきこ/石井富/佐藤浩市(友情出演)●公開:1985/08●配給:東宝=ATG●最初に観た場所:有楽町スバル座(1985/8/31)●2回目:大井武蔵野館(1986/9/20)(評価:★★★★)●併映(2回目):「時代屋の女房」(森崎東) 
「ふりむけば愛」●制作年:1978年●監督:大林宣彦●製作:堀威夫/笹井英男●脚本:



「獣たちの熱い眠り」●制作年:1981年●監督:村川透●脚本:永原秀一●撮影:仙元誠三●
音楽:速水清司●原作:勝目梓●時間:111分●出演:三浦友和/風吹ジュン/なつきれい/宇佐美恵子/石橋蓮司/鹿内孝/峰岸徹/宮内洋/佐藤蛾次郎/阿藤海/安岡力也/草薙幸二郎/中丸忠雄/中尾彬/成田三樹夫/伊吹
吾郎/(以下、特別出演)吉行和子/池波志乃/来栖アンナ●公開:1981/09●配給:東映●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)(評価:★★)●併映:「吼えろ鉄
拳」(鈴木則文)


「逆噴射家族」●制作年:1984年●監督:石井聰互●製作:長谷川和彦/山根豊次/佐々木史郎●脚本:石井聰
亙/小林よしのり/神波史男●撮影:田村正毅●時間:106分●出演:小林克也/倍賞美津子/植木等/工藤夕貴/有薗芳記/岸野一彦/小海とよ子/緒方明/林崎巌/郷守信廣/井上欣
則/高橋佑奈/井手国弘/アレックス・アブラモフ●公開:1984/06●配給:ATG●最初に観た場所:池袋日勝文化劇場(85-11-04)(評価:★★★☆)●併映:「お葬式」(伊丹十三)



③池袋東急 ④池袋スカラ座 ⑮池袋日勝地下劇場 ⑬池袋日勝映画劇場 ⑭池袋日勝文化劇場







出世の見込みも無く、妻にも離婚された警察官の男は、原宿のロックンロール族に狂って家を出た娘がたまに金をせびりに男の住まう団地の十階を訪ねた時だけは甘い父親になるが、それ以外では酒とギャンブルとセックスに浸る虚無的で堕落し切った暮らしぶりで、元妻への慰謝料や毎月の養育費、バーのツケやギャンブルの借金に追われ、ついには昇進試験の勉強のためにサラ金から借金して購入したパソコンを団地の窓から放り投げ、そのまま郵便局へ駆け込み強盗を図る―。
「十階のモスキート」('83年/ATG)は崔洋一監督のデビュー作で、映画としての作りは粗く、主人公の警察官の短絡行動にはただ呆れるばかりであるはずであるのに、何か観ていて身につまされるようなリアルな痛々しさを感じるのはなぜでしょうか。
若松孝二監督の「水のないプール」('82年/東映セントラル)などで既に俳優としても注目されていた内田裕也が、経済的に追い詰められることで徐々に精神的にも追い詰められていく主人公を好演していて、最後はちょっとシュールな感じですが、こうした現実感覚を喪失しているようなヤケクソ気味の犯罪は、最近はたまにあったりするのではないでしょうか。(内田裕也/小泉今日子(映画デビュー作))

デビュー間もない小泉今日子が、内田裕也の娘の女子高校生役で登場するほか(この映画が上映される少し前に流行っていた"竹の子族"の少女役)、漫才師の横山やすし(1944-1996)が競艇場の観客役でカメオ出演し、更にはビートたけしがこれもチョイ役ながら競艇の予想屋の役で出てきますが、ビートたけしは存在感充分でした(この人、役者としては"脇"で出た方がいいような...)。
後に「月はどっちに出ている」('93年/シネカノン)で国内の映画賞を総なめにする
崔監督ですが(「月はどっちに出ている」は第67回「キネマ旬報ベスト・テン」の第1位になったほか、「毎日映画コンクール 日本映画大賞」「ブルーリボン賞 作品賞」「報知映画賞 作品賞」「芸術選奨」などを受賞)、在日コリアンのタクシー運転手とフィリピーナの恋を軸に描いたこの作品は、在日外国人の日常をコミカルに描いていて細部の描写も冴えていたように思います(原作は梁
石日の自伝的小説『タクシー狂騒曲』)。また、岸谷五朗や絵沢萠子をはじめ役者陣も良く、有薗芳記の「ホソ」は特に秀逸、ルビー・モレノも多くの演技賞を受賞しましたが、これは監督の演出力のお陰だったのではないかと。(岸谷五朗/ルビー・モレノ)

「十階のモスキート」●制作年:1983年●監督:崔洋一●製作:結城良煕●脚本:内田裕也/崔洋一●撮影:森勝●音楽:大野克夫●時間:108分●出演:内田裕也/アン・ルイス/吉行和子/中村れい子/小泉今日子/ビートたけし/宮下順子/小林稔侍/風祭ゆき/阿藤海/安岡力也/横山やすし/清水宏/下元史朗/ 鶴田忍/梅津栄/佐藤慶/仲野茂/高橋



「月はどっちに出ている」●制作年:1993年●監督:崔洋一●製作:李鳳宇/青木勝彦●脚本:内田裕也/崔洋一●撮影:藤澤順一●音楽:佐久間正英●原作/梁石日「タクシー狂操曲」●時間:108分●出演:岸谷五朗/ルビー・モレノ/絵沢萠子/小木茂光/遠藤憲一/有薗芳記/麿赤児/國村隼/芹沢正和/金田明夫/内藤陳/古尾谷雅人/萩原聖人●公開:1993/11●配給:シネカノン(評価:★★★★)





1962(昭和37)年に『燃えよ剣』を発表した司馬遼太郎が、同年5月から12月にかけて「小説中央公論」に発表した新選組を題材とした15編の短編で、これらの中に新選組の厳しい内部粛清を扱ったものが結構あり、間者(スパイ)同士で斬り合いをさせる話などは、戦争スパイ映画のような緊迫感があります。
「燃えよ剣」よりも創作の入る余地は大きいはずですが(加納惣三郎も架空の人物だが、沖田総司の幼名が惣次郎)、鉄の掟に背いた者に待ち受ける粛清、隊士の間に流行した男色といった生々しいテーマを扱っているせいか、新選組の"内実"に触れたようなリアリティがあります。
映画「御法度」は、大島渚(1932-2013/80歳没)監督の13年ぶりの監督作品でしたが、結局この作品が遺作となりました。加納惣三郎を演じた松田龍平はこの作品が映画デビュー作であり、六番組組長・井上源三郎が中心となる「三条蹟乱刃」もストーリーに組み込まれ、原作の国枝大二郎の役回りを加納惣三郎が代わりに務めています。近藤勇に映画監督の崔洋一(1949-2022/73歳没)、土方歳三にビートたけし(土方歳三は美男子ではなかったのか?近藤が二人いる感じ)、沖田総司に武田真治、加納惣三郎と出
来てしまう田代彪蔵に浅野忠信。音楽は坂本龍一(1952-2023/71歳没)、美術は西岡善信(1922-2019/97歳没)、衣装はワダエミ(1937-2021/84歳没)。原作のラスト、惣三郎が田代を討ったのを見届け、土方と沖田が現場を離れる時に、沖田が「用を思い出した」と引き返したのはなぜか、映画では明け透けでない程度にその謎解きにはなっていたように思われ、「○」としました(第42回「ブルーリボン賞 作品賞」、第50回「芸術選奨」(大島渚監督)、第9回「淀川長治賞」、第1回「文化庁優秀映画賞」受賞、キネマ旬報ベスト・テン第3位)。
「御法度」●制作年:1999年●監督・脚本:大島渚●撮影:栗田豊通●音楽:坂本龍一●原作:司馬遼太郎(「前髪の惣三郎」「三条磧乱刃」)●時間:100分●出演:ビートたけし/松田龍平/武田真治/浅野忠信/崔洋一/坂上二郎/トミーズ雅/的場浩司/伊武雅刀/田口トモロヲ/神田うの/桂ざこば/吉行和子/田中要次/飯島大介/ 伊藤洋三郎/藤原喜明/菅田俊/寺島進梅/梅垣義明/青山知可子(ナレーター)佐藤慶●公開:1999/12●配給:松竹(評価:★★★☆)

