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トキワ荘に集った才能豊かな面々を描くとともに、自伝になっていて、貴重な記録。

![トキワ荘の青春 [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%83%88%E3%82%AD%E3%83%AF%E8%8D%98%E3%81%AE%E9%9D%92%E6%98%A5%20%5BDVD%5D.jpg)
『章説-トキワ荘の青春 (中公文庫)』['18年]/『章説・トキワ荘・春』['81年]/『トキワ荘の青春―ぼくらの漫画修行時代 (講談社文庫 い 43-1)』['86年]/「トキワ荘の青春 [DVD]」
『章説・トキワ荘・春』['96年]『章説 トキワ荘の春 (石ノ森章太郎生誕70年叢書シリーズ)』['08年]

石ノ森章太郎(1938-1998/60歳没)が、豊島区椎名町トキワ荘に集まった漫画家との熱き日々を自らの視点から描いたエッセイ。寺田ヒロオ、藤子不二雄(藤本弘・安孫子素雄)、鈴木伸一、森安直哉、つのだじろう、園山俊二、赤塚不二夫、横田徳男、長谷邦夫、水野英子らにまつわる笑いと涙の交友録です。
'81(昭和56)年9月に刊行された『章説・トキワ荘・春』(講談社)の改題で、著者が生前に「仕掛け的には、順番をこう変えてもいいかもなぁ...」と語っていた記憶を辿り、森プロとの協議で、章立ての順序等が原本より再構成・編集されているとのことです。この間に文庫『トキワ荘の青春―ぼくらの漫画修行時代』('86年/講談社文庫)、単行本『章説・トキワ荘・春』('96年/風塵社)、単行本『章説 トキワ荘の春』('08年/清流出版・石ノ森章太郎生誕70年叢書シリーズ)が刊行されていますが、底本が同じなので内容も基本的には同じです(風塵社版の『章説・トキワ荘・春』には、プロローグにまんが版「トキワ荘物語」が加えられている)。
トキワ荘に集った才能豊かな面々を著者の視点から描いていて、同時に著者の自伝になっています(プロローグと終わりの方に、著者と3歳違いで23歳で亡くなった姉の話が出てくるのが切ない)。しかし、著者は高校生時代から漫画雑誌に連載漫画を画いていたというから、その才能はスゴイ。最初は上京して別の所に住んでいたのが、途中からトキワ荘へ。結局、最後一人になるまでトキワ荘に残った漫画家になりました。
冒頭に挙げたトキワ荘の「青春の仲間たち」では、園山俊二が、『がんばれゴンベ』を「毎日小学生新聞」でリアルタイムで読んだ自分としては懐かしいです。「新漫画党」唯一の大学卒(早稲田大学の漫画研究会出身)でしたが、トキワ荘の「半住人」だったと。結局「がんばれゴンベ」は1958年から1992年まで、通算連載回数は9775回となりましたが、肝臓癌で1993年1月20日に57歳で死去したのが惜しまれます(手塚治虫も石ノ森章太郎も60歳で亡くなっている。漫画家ってどうして長生きしないのか)。
石ノ森章太郎の赤塚不二夫、長谷邦夫との交流は、赤塚不二夫の『赤塚不二夫の名画座面白館』('89年/講談社)でも見ることができます。
そのほかに、手塚治虫はもちろんのこと、高井研一郎や高橋留美子、つげ義春といった人々も登場し、著者が「一度きりのサラリーマン生活」を経験した「東映動画」では、「天才」の異名を取ったアニメーターの月岡貞夫などとも仕事をしたのだなあ、これは知らなかった。全編を通して貴重な記録でもあると思います。

トキワ荘について書かれた書籍は当事者によるものも含め数多くあり、また、アニメやドキュメンタリー、ドラマなどにもなっていますが、映画では、昨年['21年]四半世紀ぶりにデジタルリマスター版で公開された、市川準(1948-2008/59歳没)監督の「トキワ荘の青春」('96年)があります(「ロッテルダム国際映画祭」招待作品。1996年キネマ旬報ベストテン第7位、読者選出第7位)。
映画は、トキワ荘におけるリーダー的存在であった寺田ヒロオが主人公であり、その寺田ヒロオを本木雅弘が演じています。コミカルな描写もありますが、自身が理想とする「子供たちに理想を教える漫画」と、雑誌編集者が要求する「商業主義漫画」との間で思い悩む寺田ヒロオの姿などが描かれていて、全体に盛り上がりを抑えた物静かなトーンの作品となっており、それが、ラストで寺田ヒロオが黙ってトキワ荘を去るという結末に繋がっていきます。
視点としては、藤子不二雄の自伝的漫画作品『まんが道』(藤子不二雄によるシリーズとしては最長連載作品で、シリーズの連載は'13年に完結するまで43年間続いた)に近いかなという気がしますが(寺田ヒロオを頼もしくて理想的な先輩として描いている)、この映画の原案は、梶井純の『トキワ荘の時代―寺田ヒロオのまんが道』('93年/ちくまライブラリー、'20年/ちくま文庫)です。
阿部サダヲ(藤本弘(藤子・F・不二雄))/鈴木卓爾(安孫子素雄(藤子不二雄Ⓐ))
当時はまだ無名に近かった自主映画・小劇団関係者で、後年人気スターや映画監督となった俳優が多く起用されていて、安孫子素雄(藤子不二雄Ⓐ)に鈴木卓爾(後に「ゲゲゲの女房」('10年)を監督)、藤本弘(藤子・F・不二雄)に阿部サダヲ(映画デビュー3年目、当時25歳)、石森章太郎にさとうこうじ(映画デビュー作)、赤塚不二夫に大森嘉之、森安直哉に古田新太(映画デビュー翌年・当時31歳)、鈴木伸一に生瀬勝久(映画デビュー作・当時35歳)などを配しています。
結局、寺田ヒロオは後に漫画の筆を折ることになり、本書でも著者が「寺さんの"絶筆宣言"はショックだった。漫画がひどくなる。もう書きたくない」というのが理由だったとありますが、やがてトキワ荘時代のメンバーとの交流も絶ったのは謎です(本人は後に病気が原因と語ったという)。晩年は一人自宅の庭の離れに籠って、母屋に住む家族ともほとんど会話しなかったそうで、1992年9月24日に61歳で亡くなっています。
映画では、若い新進映画化の台頭に(ただし、石森章太郎・藤子不二雄らが早くに売れっ子漫画家となったのに対し、赤塚不二夫・森安直哉らはなかなか芽が出なかった風に描かれている)、本木雅弘が演じる寺田ヒロオが徐々に時流から取り残されていっているように描写されているともとれます(断定的ではないが)。個人的には、『スポーツマン金太郎』をリアルタイムで読んだ(と言っても「少年サンデー」連載終了後、学年誌に連載されたダイジェスト版の方だが)世代ですが、その頃からこの人の漫画は、ちょっとレトロな感覚があったように思われ、やはり、作風が時代に合わなくなったことが筆を折る理由になったのではないかと思います。

因みに、石森章太郎者と3歳違いで23歳で亡くなった姉は、映画にも上京した弟のことを思い遣る女性としてとして登場します(演:安部聡子)
映画「トキワ荘の青春」で舞台挨拶する赤塚不二夫(後ろは藤子不二雄Ⓐ氏)['96年/日刊スポーツ」
「トキワ荘の青春」●英題:TOKIWA:THE MANGA APARTMENT●制作年:1996年●監督:市川準●製作:塚本俊雄/里中哲夫●脚本:市
川準/鈴木秀幸/森川幸治●撮影:小林達比古/田沢美夫●音楽:清水一登/れいち●原案:梶井純『トキワ荘の時代』●時間:110分●出演:本木雅弘/鈴木卓爾/阿部サダヲ/さとうこうじ/大森嘉之/古田新太/生瀬勝久/翁華栄/松梨智子/北村想/安部聡子/土屋良太/柳ユーレイ/桃井かおり/原一男/向井潤一/広
岡由里子/内田春菊/きたろう
/時任三郎●公開:1996/03●配給:カルチュア・パブリッシャーズ●最初に観た場所:神保町シアター(10-09-13)(評価:★★★☆)
桃井かおり(藤本弘(藤子・F・不二雄)の母)

【1981年単行本[講談社(『章説・トキワ荘・春』)]/1986年文庫化[講談社文庫(『トキワ荘の青春―ぼくらの漫画修行時代』)]/2018年再文庫化[中公文庫(『章説 トキワ荘の青春』)]】




明治末期、大徳寺雪雄(本木雅弘)は、大徳寺医院の跡取りとして医師の地位と名誉、そして美しい記憶喪失の妻りん(りょう)を手にした充実した日々を送っていた。ところが、大徳寺家で不審な出来事が続き、彼の父・茂文(筒井康隆)と母・(藤村志保)が謎の死を遂げる。そんなある日雪雄は庭を散歩していると、自分と瓜ふたつの男に襲われ、古井戸に投げ捨てられた。彼を井戸に落とした男・捨吉(本木雅弘、二役)は、何くわぬ顔をして雪雄に成りすまし、大徳寺
家の当主に収まった。捨吉は井戸の中の雪雄に、二人は実は双生児であり、捨吉は両親に捨てられて貧民窟で育ったのだと惨めな生い立ちを語り、復讐のため両親の死に関わったのだと打ち明ける。さらに、貧民窟では、りんと恋仲であったことを話す。捨吉は、井戸の中の雪雄に最低限の飲食物を与え、奇妙な関係を続ける。一方、りんも今の雪雄は捨吉ではないかと気付くが、成りすました捨吉はシラを切り続ける。必死の思いで井戸を脱した雪雄と捨吉は争い、捨吉は死に至る。生還した雪雄は、りんと新たな絆を結び、かつては蔑み、忌避していた貧民窟への往診を行う医師となっていた―。


因みに、自分そっくりな存在(ドッペルゲンガー)との遭遇によってアイデンティティが揺らぐというモチーフの文学作品(ドッペルゲンガー小説)の嚆矢はエドガー・アラン・ポーの「ウィリアム・ウィルソン」(1839)で、こちらはオムニバス映画「
江戸川乱歩の原作とはずいぶん違う話になってはいますが、江戸川乱歩作品の雰囲気は出ていたように思います。登場人物が全員眉を剃っていて、それだけで乱歩的な雰囲気が出てしまうのが不思議ですが、全体を通しても映像的に成功していて、塚本晋也監督ならではの作品になっているように思いました。
ただし、原作はどちらかと言うとホラー怪談ではなくミステリ―であり、井戸に捨てられた兄(映画で言えば雪雄の立場になるが)は上から土を盛られてもう甦ることはなく、弟である自分(捨吉の立場?)は兄の指紋を採取しておいて、それを利用して強盗殺人を犯すのですが、犯行現場にゴム手袋に写し取った兄の指紋を遺しておいたので、自分の指紋と一致するはずがなく、自分は絶対に安全だったはずが―。
乱歩の初期作品に多く見られる比較的軽い感じのミステリ―といったところでしょうか。映画は、完全に塚本晋也風ホラーで(貧民窟時代の捨吉やりょうらのメイクは「鉄男」のイメージを一部踏襲している)、浅野忠信がパンク風な格好で出てくるほか、田口トモロヲ、麿赤兒、竹中直人、石橋蓮司といった癖のある役者が癖のある演技を見せます。しかしながら、それらを凌駕して余るのが、雪雄・捨吉兄弟の二役を演じた元木雅弘の怪演ではなかったかと思います。原作より映画の方が上です。

「双生児-GEMINI-」●制作年:1999年●監督・脚本:塚本晋也●製作:中澤敏明/古里靖彦●撮影:森下彰生●音楽:久石譲●原作:石川忠●時間:84分●出演:本木雅弘/りょう/藤村志保/筒井康隆/もたいまさこ/石橋蓮司/麿赤兒/竹中直人/浅野忠信/田口トモロヲ/村上淳/内田春菊/今福将雄/大方斐紗子/広岡由里子/猪俣由貴/溝口遊/金守珍●公開:1999/09●配給:東宝(評価:★★★★)

借金まみれのディスコ・バーズのオーナー・万代(佐藤浩市)、男性相手のコールボーイ・三屋(本木雅弘)、元刑事・氷頭(根津甚八)、リストラされたサラリーマン・荻原(竹中直人)、パンチドランカーの元ボクサー・ジミー(椎名桔平)。社会から弾き出された5人は大胆にも暴力団・大越組の事務所から大金を強奪する計画を企て、辛くも成功する。しかし、ジミーを拷問し万代たち5人の仕業と突き止めた大越組は、二人組のヒットマン・京谷(ビートたけし)と柴田(木村一八)を雇って報復に出る―。
1995年に公開された石井隆監督による「スタイリッシュバイオレンス・アクション映画」作品とのこと。ヤクザの資金強奪計画を企てた男たちの壮絶な運命を描いています。当初の公開は8月中旬を予定していたのが、内容的に重いので夏場の番組として相応しくないとのことで9月公開になったそうです。
'95年度の「キネマ旬報ベストテン」でベスト10入りはしていませんが、「読者選出ベスト・テン」の方で4位にランクインしていて、この辺りも何となくわかる気がします。人気を受けてか、翌年に
は「GONIN2」('96年/松竹)が緒形拳、大竹しのぶ主演で撮られていますが、これはまったく別のストーリーです。
佐藤浩市、本木雅弘、竹中直人、そして殺し屋役のビートたけし等々の怪演が見られるのは貴重で、さらにその上に君臨するのが「
ストーリーが各々の破滅に向かっていくことは想像に難くなく、椎名桔平演じるジミーは恋人のナミィー(横山めぐみ(「
ただ、後半、竹中直人演じるリストラされたことを家族に言えないサラリーマンの荻原だけでなく、根津甚八演じる氷頭までが、離婚こそしてはいるが「家庭人」になっていて、愛する者が殺されるというシビアな状況に持ち込むための設定なのもしれませんが、切りたくても切れない家族の関係というか、スタイリッシュでなくなってきたような気がしました(ラストで本木雅弘演じる三屋の手に万代の遺骨があるが、誰に届けるつもりかと思ったら、シリーズ第3作で本作の正統派続編である「GONIN サーガ」では、万代にも妻子がいることが判明する)。

ビートたけしの殺し屋は、やっぱりビートたけしにしか見えない(笑)というのはありますが、一応は最後までバイオレンス・アクションではありました。そんな中、竹
中直人演じるサラリーマン荻原が、大金の強奪を終えて自宅に戻ってきたところだけはホラーだったなあ。「大仕事してきたんだよ~」とご機嫌で妻(夏川加奈子)と風呂に入るが...。この"ホラー"の場面が一番秀逸だったかも。ピアノをたしなむ荻原の娘を演じていたのは、当時10歳の栗山千明。彼女、初期はホラー専門だった? 
「GONIN」●制作
年:1995年●監督・脚本:石井隆●製作総指揮:奥山和由●撮影:佐々木原保志●音楽:安川午朗(挿入歌:ちあきなおみ「紅い花」)●時間:103分●出演:佐藤浩市(万代樹彦、ディスコ「Birds」のオーナー)/本木雅弘(三屋純一、金持ちの男相手のコールボーイを装い金を巻き上げている)/根津甚八(氷頭要、元刑事、現在は場末のキャバレー「ピンキー」にて用心棒)/椎名桔平(ジミー、元ボクサーで大越組のチンピラ、新
宿のバッティングセンターでも働いている)/竹中直人(荻原昌平、リストラされたサラリ
ーマン)/ビートたけし(京谷一郎、式根に雇われた殺し屋、一馬とはサディスティックな恋仲)/木村一八(柴田一馬、京谷の相棒兼恋人)/鶴見辰吾(久松茂、大越組の若頭)/横山めぐみ(ナミィー、ジミーの恋人。タイ出身で大越組にパスポートを奪われ売春婦をやっている) /永島敏行(大越組の組長)/室田日出男(式根、数々の暴力団を束ねる五誠会の会長)/永島暎子(早
紀、氷頭の元妻。右足に障害がある)/川上麻衣子(ぼったくりキャバレー「ピンキー」の摺れたホステス)/滝沢涼子(「ピンキー」のホステス)/五十嵐瑞穂(氷頭の娘)/夏川加奈子(萩原の妻)/栗山千明(荻原の娘。ピアノをたしなむ)/山田哲也(荻原の息子)/不破万作(ピンキーのマスター)/松岡俊介(式根専属ドライバー)/伊藤洋三郎(式根ボディーガード)/飯島大介(野本)/岩松了(トイレの男)/小形雄二(高速バス運転手)/津田寛治(暴力団組員)/渡辺真起子(ディスコの客)●公開:1995/09●配給:松竹●最初に観た場所:シネマブルースタジオ(21-07-28)(評価:★★★☆)


チェロ奏者の小林大悟(本木雅弘)は、所属していた楽団の突然の解散を機にチェロで食べていく道を諦め、妻・美香(広末涼子)を伴い、故郷の山形へ帰ることに。さっそく職探しを始めた大悟は、"旅のお手伝い"という求人広告を見て面接へと向かう。しかし旅行代理店だと思ったその会社の仕事は、"旅立ち"をお手伝いする"納棺師"というものだった。社長の佐々木生栄(山崎努)に半ば強引に採用されてしまった大悟。世間の目も気になり、妻にも言い出せないまま、納棺師の見習いとして働き始める大悟だったが―。
2008年公開の滝田洋二郎監督作で、脚本は映画脚本初挑戦だった放送作家の小山薫堂。第32回「日本アカデミー賞」の作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞(本木雅弘)・助演男優賞(山崎努)・助演女優賞(余貴美子)・撮影賞・照明賞・録音賞・編集賞の10部門をを独占するなど多くの賞を受賞しましたが(第63回「毎日映画コンクール 日本映画大賞」、第33回「報知映画賞 作品賞」、第21回「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」も受賞)、その前に第32回モントリオール国際映画祭でグランプリを受賞しており、更に日本アカデミー賞発表後に第81回米アカデミー賞外国語映画賞の受賞が決まり、ロードショーが一旦終わっていたのが再ロードにかかったのを観に行きました(2009年(2008年度)「芸術選奨」受賞作。脚本の小山薫堂は第60回(2008年)「読売文学賞」(戯曲・シナリオ賞)、本木雅弘と映画製作スタッフは第57回(2009年)「菊池寛賞」を受賞している)。
主演の本木雅弘のこの映画にかけた執念はよく知られていますが、"原作者"に直接掛け合ったものの、原作者から自分の宗教観が反映されていないとして「やるなら、全く別の作品としてやってほしい」と言われたようです。もともとは、本木雅弘が20歳代後半に藤原新也の『メメント・モリ―死を想え』('83年/情報センター出版局)を読み、インドを旅して、いつか死をテーマにしたいと考えていたとのことで、まさに「メメント・モリ」映画と言うか、いい作品に仕上がったように思います(結局、原作者も一定の評価をしているという)。
特に、前半部分で主人公が"納棺師"の仕事の求人広告を旅行代理店の求人と勘違いして面接に行くなどコメディタッチになっているのが、重いテーマでありながら却って良かったです(逆に後半はややベタか)。技術的な面や宗教性の部分で原作者に限らず他の同業者からも批判があったようですが、それら全部に応えていたら映画にならないのではないかと思います。こうした仕事に注目したことだけでも意義があるのではないかと思いますが(ジャンル的には"お仕事映画"とも言える)、米アカデミー賞の選考などでは、同時にそれが作品としてのニッチ効果にも繋がったのではないでしょうか(アカデミーの外国語映画賞が、前3年ほど政治的なテーマや背景の映画の受賞が続いていたことなどラッキーな要素もあったかも)。
Wikipediaに「地上波での初放送は2009年9月21日で21.7%の高視聴率を記録したが、2012年1月4日の2回目の放送は3.4%の低視聴率」とありましたが、2回目の放送は日時が良くなかったのかなあ。こうした映画って、ブームの時は皆こぞって観に行くけれど、時間が経つとあまり観られなくなるというか、《無意識的に忌避される》ことがあるような気がしなくもありません。そうした傾向に反発するわけではないですが、個人的には、最初観た時は星4つ評価(○評価)であったものを、最近観直して星4つ半評価(◎評価)に修正しました(ブームの最中には◎つけにくいというのが何となくある?)。「メメント・モリ」映画の"傑作"と言うか、むしろ"快作"と言った方が合っているかもしれません。
滝田洋二郎監督は元々は新東宝で成人映画を撮っていた監督で、初めて一般映画の監督を務めた「コミック雑誌なんかいらない!」('86年/ニュー・センチュリー・プロデューサーズ)でメジャーになった人です。個人的には、鹿賀丈史、桃井かおり主演の夫婦で金儲けに精を出す家族を描いた「木村家の人びと」('88年/ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画)を最初
に観て、部分部分は面白いものの、全体として何が言いたいのかよく分からなかったという感じでした(ぶっ飛び度で言えば、石井聰互監督の「
また、滝田洋二郎(1955年生まれ)監督は、'81(昭和56)年、「痴漢女教師」で監督デビュー後、'82(昭和57)年2本、'83(昭和58)年4本、'84(昭和59)年8本と倍のペースでメガホンを取り、"邦ピン・ニューエンタテイメントの旗手"などと称され(「ニューエンタテイメントの旗手としてピンクの枠を超える29歳」「シティロード」1985年4月号)、成人映画の監督として話題作を連発し耳目を集めましたが(森崎東監督はピンク映画の撮影現場を舞台にした「
寂れたポルノ映画館で自身が犯した強姦殺人事件の時効を待ちつつ映写技師として働く勝三(大杉漣)は、都会の人混みに紛れることで気付かれないようにしていた。ある日、上映中の映画「密写 連続暴姦」の中に、過去自分が起こした強姦殺人事件とそっくりな場面が写っていた。何故だ! 一方、自分が7歳の時に目の前で殺された姉(織本かおる)の復讐をするために犯人の男を必死に捜す妹・冬子(織本かおる、二役)。犯人の手掛かりは現場に落ちていた映画のフィルムを繋げる特殊なテープであり、きっと映画関係者に違いないと思い、シナリオを勉強して姉の殺害シーンを盛り込んだシナリオを書き、同僚の山崎千代子(竹村祐佳)の名で発表、それが映画化されたらきっと犯人の目に止まると考えていた。そして、その目論見は当たり―。
個人的には、自由が丘の「自由ヶ丘劇場」で観ましたが、仄聞していた通りピンク映画と言うよりサスペンス映画でした(勿論ピンク映画でもあるが)。凝った構成と人物描写、脚本に緻密に伏線を張り巡らせていて(ただし、張り巡らせている割には長さが60分しかないため説明不足の箇所があり、評価は△。今や"滝田洋二郎研究"ための作品か)、本作は第5回「ズームアップ映画祭」作品賞と監督賞、第5回「ピンクリボン賞主演」男優賞(大杉漣)を受賞しています(もちろん、当時は大杉漣(1951-2018/66歳没)はまだ一部の人しか知らない無名俳優)。滝田洋二郎監督に限らず、
「おくりびと」●制作年:2009年●監督:滝田洋二郎●製作:中沢敏明/渡井敏久●脚本:小山薫堂●撮影:浜田毅●音楽:久石譲●時間:130分●出演:本木雅弘/広末涼子/山崎努/杉本哲太/峰岸徹/余貴美子/吉行和子/笹野高史/山田辰夫/橘ユキコ/飯森範親/橘ゆかり/石田太郎/岸博之/大谷亮介/諏訪太郎/星野光代/小柳友貴美/飯塚百花/宮田早苗/白井小百合●公開:2008/09●配給:松竹●最初に観た場所:丸の内ピカデリー3(09-03-12)(評価:★★★★☆)




丸の内松竹(丸の内ピカデリー3) 1987年10月3日「有楽町マリオン」新館5階に「丸の内松竹」として、同館7階「
ン、1996年6月12日~「丸の内ブラゼール」、2008年12月1日~「丸の内ピカデリー3」) (「丸の内ルーブル」は2014年8月3日閉館)
「木村家の人びと」●制作年:1988年●監督:滝田洋二郎●脚本:一色伸幸●撮影:志賀葉一●音楽:大野克夫●原作:
谷俊彦●時間:113分●出演:鹿賀丈史/桃井かおり/岩崎ひろみ/伊崎充則/柄本明/木内みどり/風見章子/小西博之/清水ミチコ/中野慎/加藤嘉/木田三千雄/奥村公延/多々良純/露
原千草/辻伊万里/今井和子/酒井敏也/鳥越マリ/池島ゆたか/上田耕一/江森陽弘/津村鷹志/竹中
直人/螢雪次朗/ルパン鈴木/山口晃史/三輝みきこ/小林憲二/野坂きいち/江崎和代/橘雪子/ベンガル●劇場公開:1988/05●配給:東宝 (評価★★★)
「秘密」●制作年:1999年●監督:滝田洋二郎●製作:児玉守弘/田上節郎/進藤淳一●脚本:斉藤ひろし●撮影:栢野直樹●音楽:宇崎竜童●原作:東野圭吾●時間:119分●出演:広末涼子/小林薫/岸本加世子/金子賢/石田ゆり子/伊藤英明/大杉漣/山谷初男/篠原ともえ/柴田理恵/斉藤暁/螢雪次朗/國村隼/徳井優/並樹史朗/浅見れいな/柴田秀一●劇場公開:1999/09●配給:東宝 (評価★★★☆).jpg)
「壬生義士伝」●制作年:2003年●監督:滝田洋二郎●製作:松竹/テレビ東京/テレビ大阪/電通/衛星劇場●脚本:中島丈博●撮影:浜田毅●音楽:久石譲●時間:137分●出演:中井貴一/佐藤浩市/夏川結衣/中谷美紀/山田辰夫/三宅裕司/塩見三省/野村祐人/堺雅人/斎藤歩/比留間由哲/神田山陽/堀部圭亮/津田寛治/加瀬亮/木下ほうか/村田雄浩/伊藤淳史/藤間宇宙/大平奈津美●公開:2003/01●配給:東宝 (評価:★★☆)
「連続暴姦」●制作年:1983年●監督:滝田洋二郎●脚本:高木功●撮影:佐々木原保志●時間:60分●出演:織本かおる/大杉漣/麻生うさぎ/螢雪次朗/佐々木裕美/伊藤正彦/末次真三郎/竹村祐佳/早川祥一●公開:1983/10●配給:新東宝●最初に観た場所:自由ヶ丘劇場(84-04-15)(評価:★★★)●併映:「神田川淫乱戦争」(黒沢清)/「女子大生・教師の目の前で」(水谷俊之)


1995年8月8日、最新鋭の超巨大ヘリ《ビッグB》が、突然動き出し、子供を一人乗せたまま、福井県にある原子力発電所「新陽」の真上に静止した。遠隔操縦によるハイジャックという手口を使った犯人は〈天空の蜂〉と名乗り、"全国すべての原発の破棄"を要求、従わなければ、大量の爆発物を搭載したヘリを原子炉に墜落させると宣言する。機内の子供の父
親であり《ビッグB》を開発したヘリ設計士・湯原(江口洋介)と、原子力発電所の設計士・三島(本木雅弘)は、上空に取り残された子供の救出と、日本消滅の危機を止めるべく奔走するが、政府は原発破棄を回避しようとする。燃料が尽きてヘリが墜落するまで残された時間は8時間―。その頃愛
知県では、《ビッグB》と原発を開発した錦重工業本社に、家宅捜索が入っていた。総務課に勤める三島の恋人・赤嶺(仲間由紀恵)は、周囲に捜査員たちが押し寄せる中、密かに恋人の無事を祈る。一方、事件現場付近で捜査にあたる刑事たちは、《ビッグB》を奪ったと思われる謎の男・雑賀(綾野剛)の行方を追う―。
分かりにくかったように思われ、138分は少し長く感じられたでしょうか。全部アクションシーンで撮るわけにもいかないでしょうが、ドラマ部分がちょっとダルく感じられ、むしろ、三島と雑賀の繋がりなど、プロットに関わる部分をもっとしっかり描いて欲しかったように思います(結果として、やはり、やや大味だったというところか)。
江口洋介、本木雅弘は初共演ということで、まずまずの"競演"ぶりでしたが、ややオーバーアクション気味のところもあって、逆にイマイチ胸に響かない面も。更には、綾野剛、仲間由紀恵などの演技も何となくワンパターンに感じられ、むしろ、刑事役の手塚とおる、落合モトキなどの"脇の脇"の演技が光ったかも。ラストで、湯原の子供が自衛官(向井理)になっていて2011年3月13日、東日本大震災の2日後に現地で支援活動任務に服しているという設定は、当然のことながら原作には

ありません。自衛隊のリクルートも兼ねたシーンかと思いきや、自衛隊はこの映画には協力していないようです。自衛隊どころか、川崎重工業 富士重工業といった国産ヘリコプター・メーカーも協力しておらず(協力はエアバス社)、やはり、国からの受注企業は原発は危険というイメージが伴う作品には協力出来ないのでしょう(原発で頑張っている人も描いているのだけど)。
ラスト近くで、仮に《ビッグB》が原子炉建屋に墜落して建屋が壊れても格納容器までは壊れないだろうという犯人の読みが明かされていたように思いましたが(その理屈に従って、緊急時の格納容器内への避難を提案している場面が既にあった)、むしろ、使用済み核燃料庫の上に墜落する方が危険であるならば、ヘリ落下の際にリモコンで位置をずらすのも、落下に要する時間が数秒しかないということからみて、それなりに危険なのではないでしょうか。
「天空の蜂」●制作年:2014年●監督:堤幸彦●製作:大角正/木下直哉/古川公平/坂本健/宮本直人●脚本:楠野一郎●撮影:唐沢悟●音楽:リチャード・プリン●原作:東野


1番館:234席



就職先も決まっていた教立大学4年の秋平(本木雅弘)は、ある日、卒論指導教授の穴山(柄本明)に呼び出され、授業に一度も出席しなかったことを理由に、卒業と引き換えに穴山が顧問をする相撲部の試合に出るよう頼まれる―。
何故そんなに面白かったのかを考えるに、劇画チックではあるけれど、スポ根モノとしては極めてオーソドックな展開で、観る側に充分なカタルシス効果を与えると共に、きっちりした取材の跡が随所に窺えること、何よりもそのことが大きな理由ではないかと思いました。
同じく周防監督の「Shall We ダンス?」('96年/東宝)も、充分な取材の跡が感じられ、内容的にみても、多くの賞を受賞し(第70回「キネマ旬報ベスト・テン」第1位作品)、ハリウッド映画としてリメイクされるぐらいですからそう悪くはないのですが、この監督のカタルシス効果の編成方法が大体見えてきてしまったというのはある...。
但し、草刈民世を(演技的には無理させないで)キレイに撮っているなあという感じはして、外国の映画監督でもそうですが、ヒロインの女優が監督の恋愛対象となっている時は、女優自身の魅力をよく引き出しているということが言えるのでは。
因みに「Shall we ダンス?」は、第20回「日本アカデミー賞」において史上最多の13冠を獲得しています。主要7部門に限っても、最優秀作品賞、 最優秀監督賞、 最優秀脚本賞(周防正行)、最優秀主演男優賞(役所広司)、最優秀主演女優賞(草刈民代)、最優秀助演男優賞(竹中直人)、最優秀助演女優賞(渡辺えり子)と7冠全て制覇して他の作品の共同受賞さえ許さなかったのは('09年現在)この作品だけです(残り6冠は、音楽・撮影・証明・美術・録音・編集。残るは新人賞や外国作品賞だから、実質完全制覇と言っていい)。「キネマ旬報ベスト・テン」第1位のほか、「毎日映画コンクール 日本映画大賞」「報知映画賞 作品賞」「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」も受賞しています。「シコふんじゃった。」がこれらに加えて受賞した「ブルーリボン賞 作品賞」は受賞していませんが、英「ロンドン映画批評家協会賞 作品賞」、米「ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 外国語映画賞」など、海外で賞を受賞しています(2004年にアメリカにて「Shall We Dance?」のタイトルで、リチャード・ギア、ジェニファー・ロペス、スーザン・サランドンらが出演するアメリカ版のリメイク作品が製作された)。
「シコふんじゃった。」●制作年:1991年●監督・脚本:周防正行●撮影:栢野直樹●音楽:周防義和/おおたか静流●時間:105分●出演:本木雅弘/清水美砂/柄本明/竹中直人/水島かおり/田口浩正/六平直政/宝井誠明/ロバート・ホフマン/梅本律子/松田勝/宮坂ひろし/村上冬樹/桜むつ子/片岡五郎/佐藤恒治/みのすけ●公開:1992/01●配給:東宝(評価:★★★★☆)

「Shall We ダンス?」●制作年:1996年●監督・脚本:周防正行●製作:徳間康快●撮影:栢野直樹●音楽:周防義和/おおたか静流●時間:136分●出演:役所広司/草刈民代/竹中直人/田口浩正/徳井優/宝井誠明/渡辺えり子/柄本明/原日出子/草村礼子/森山周一郎/本木雅弘/清水美砂/上田耕一/宮坂ひろし/井田州彦/田中英和/峰野勝成/片岡五郎/大杉漣/石山雄大/本田博太郎/香川京子/田中陽子/東城亜美枝/中村綾乃/石井トミコ/川村真樹/松阪隆子/馬渕英俚可●公開:1996/01●配給:大映(評価:★★★☆)
