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「羅生門」「切腹」との類似(オマージュ?)。映像美的には飽きさせないが、演出は大味に。

HERO~英雄~01.jpgHERO~英雄~ dvd.jpg  HERO~英雄~0.jpg
英雄 ~HERO~ スペシャルエディション [DVD]」章子怡(チャン・ツィイー)/梁朝偉(トニー・レオン)/李連杰(ジェット・リー)/陳道明(チェン・タオミン)/張曼玉(マギー・チャン)/甄子丹(ドニー・イェン)

hero_018.jpg 中国の戦国時代末期、後に始皇帝となる秦王(陳道明(チェン・タオミン))は刺客に狙われており、忠実な家臣を除いては常に百歩以内の距離には誰も近づけさせることはなかった。過去のとある一件以来、宮殿の中も刺客が人の中に紛れ込むことの無い様、宮殿の外を多くの衛兵が守りを固めているのとは対照的に、敢えてがらんどうにしていた。そんなある日、一本の槍と二本の剣を携えた無名(ウーミン)(李連杰(ジェット・リー))と呼ばれる名無しの男が刺客を倒したと告げ、宮殿にやってくる。槍と剣には、中国最強と言われる3人の刺客の名前が記されていた。そして彼は秦王の前で、槍の使い手・長空(チャンコン)(甄子丹(ドニー・イェン))、剣の使い手・残剣(ツァンジェン)(梁朝偉(HERO~英雄~ges.jpgHERO~英雄~s.jpgトニー・レオン)、残剣の恋人で同じく剣の使い手・飛雪(フェイシエ)(張曼玉(マギー・チャン))の3人の刺客を倒した経緯を語り始める。秦王は刺客を倒した褒美として無名に自分の側に近づくことを許すが、彼の話を聞いていくうちに不自然な何かに気付く―。

無名(ジェット・リー)/飛雪(マギー・チャン)・残剣(トニー・レオン)
如月(チャン・ツィイー)
HERO~英雄~05 チャン.jpg 2003年の張芸謀(チャン・イーモウ)監督による自身初の武術映画。台湾出身のアン・リー(李安)監督が、章子怡(チャン・ツィイー)らを起用して撮った「グリーン・デスティニー」('00年/中国・香港・台湾・米)で、トロント国際映画祭の最高賞「観客賞」や米アカデミー外国語映画賞を受賞したのに対抗したのでしょうか。こちらも、第53回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(アルフレード・バウアー賞)を受賞するなどしています(チャン・ツィイーはこの映画にも、密かに残剣に恋する鴛鴦鉞の使い手・如月(ルーユエ)の役で出ていて、本作は結局、ジェット・リー、ドニー・イェン、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイーによる「5剣士」の物語となっている)。

HERO~英雄~ 09.jpg ジェット・リー演じる無明が語る話に虚構があり、そのことに気付いた秦王に促されて、同一人物に関する話が何度か異なった話として彼の口から語られ、それらが何れも映像となっています。従って、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞作した、黒澤明監督の「羅生門」('50年/大映)の実質的な原作は芥川龍之介の「藪の中」ですが、それと似た感じの、あたかも「羅生門」に対するオマージュのような構成になっていることは、多くの人が指摘しています。

無名(ジェット・リー)・飛雪(マギー・チャン)

HERO~英雄~  .jpg 但し、個人的には、まず最初に似ているなあと思ったのは小林正樹監督の「切腹」('62年/松竹)で、秦王の前で無名が3人の刺客を倒した経緯を語るというのは、仲代達矢演じる津雲半四郎が、井伊家上屋敷に井伊家の3人の剣客の髷を持ってきて、家老・斎藤勘解由(かげゆ)(三國連太郎)に、無理矢理切腹させられた娘婿の仇である3人を斃した経緯を語るのとそっくりで、ラストもやや似ています(「秦王」と「家老」の物語における価値ポジションは、最終的に真逆のものとなるが)。「切腹」もカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞しているので、張芸謀監督も知っている作品であると思います(「切腹」へのオマージュも込められている(?))。

HERO~英雄~04.jpg 映像美的は飽きさせませんでした。「ストHERO~英雄~012.jpgーリーを色彩で語る」をコンセプトに、赤は無名の語る創作の世界、青は秦王の語る想像の世界、緑は実際にあった過去の世界、白は真実の現在と分けられ、それぞれの色HERO~英雄~03.jpgでエピソードが語られ、最後にやっと真相が明らかになるという構成は凝っていた思います。雨の中で闘うシーンや、池や砂漠での戦闘シーンなどもたいへん美しかったです。ワダエミ2.jpgカメラは「花様年華」('00年/香港)のクリストファー・ドイルが担当し、衣装は、黒澤明監督の「乱」('85年/東宝)で日本人女性初となるアカデミー賞(衣裳デザイン賞)を受賞したワダエミ(1937-2021/84歳没)が起用されています。

HERO~英雄~9s.jpg李陵・山月記22.jpg 刺客達のワイヤーアクションやCGなどによる超絶的な技に関しては、物理的法則に反しているとか言わないことがもう"お約束"なのでしょう。中島敦の短編に「名人伝」というのがあって(『李陵・山月記 (新潮文庫)』所収)、名人同士が矢を放ってひじりがぶつかり合うといった場面があり、こうした極端な表現も中国では伝統的なのかもしれません。
  
 
HERO~英雄~06.jpg 但し、武術映画で且つCGを駆使して大掛かりに見せた分、個々の役者の演技が背景に埋没してしまって大味になった印象を受けました。それまでの作品で素晴らしい演出力を見せてきた監督が、折角トニー・レオン、マギー・チャンといった繊細な演技が出来る俳優を揃えながら、ちょっと勿体ない気がします(この2人はウォン・カーウァイ(王家衛)監督の「花様年華」('00年/香港)のコンビでもある。そのウォン・カーウァイも、トニー・レオン、チャン・ツィイー主演の武術映画「グランド・マスター」('13年/香港・中国)を撮っている)。

 CGの魅力(技術力・低コスト性)に抗しきれないというのは、「ジュラシック・パーク」('93年/米)で、恐竜の全体像をマイケル・クライトンの原作よりうんと早く観客に見せてしまったスティーヴン・スピルバーグが辿った道と同じでしょうか。張芸謀監督は2006年に、2年後に開催される北京オリンピックの開会式および閉会式のチーフディレクターに就任、2年間映画製作をせず、2008年の北京オリンピック開会式および閉会式の演出を行いましたが、後に開会式の演出において打ち上げられた花火の多くが事前に用意されたCG映像だったことが明らかとなっています(因みに、北京オリンピック開会式の衣装は石岡瑛子(1938-2012/73歳没)が担当した)。


「HERO」(「HERO~英雄~」)●原題:英雄/HERO●制作年:2002年●制作国:香港・中国●監督:張芸謀(チャン・イーモウ)●製作:ビル・コン/張芸謀●脚本:李馮/張芸謀/王斌●撮影:クリストファー・ドイルHERO~英雄~ro02.jpg●音楽:譚盾(タン・ドゥン)●衣装デザイン:ワダ・エミ●時間:99分●出演:李連杰(ジェット・リー)/甄子丹(ドニー・イェン)/梁朝偉(トニー・レオン)/張曼玉(マギー・チャン)/章子怡(チャン・ツィイー)/陳道明(チェン・タオミン)●日本公開:2003/06●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★☆)
トニー・レオン/マギー・チャン/チャン・イーモウ/ジェット・リー/チャン・ツィイー/ドニー・イェン

グランド・マスター032.jpgグランド・マスター56.jpgトニー・レオンチャン・ツィイー
in「グランド・マスター」['13年/香港・中国]ウォン・カーウァイ(王家衛)監督
    
     
     
    
《読書MEMO》
"巨匠"監督の「武侠映画」個人的評価と受賞した主要映画賞
グリーン・デスティニー(00年/中・香・台・米).jpgアン・リー(李安)グリーン・デスティニー」('00年/中国・香港・台湾・米)★★★☆
 トロント国際映画祭「観客賞」アカデミー賞「外国語映画賞」ゴールデングローブ賞「外国語映画賞」インディペンデント・スピリット賞「作品賞」ロサンゼルス映画批評家協会賞「作品賞」香港電影金像奨「最優秀作品賞」
HERO~英雄~2002.jpg張藝謀(チャン・イーモウ)HERO」('02年/香港・中国)★★★☆
 ベルリン国際映画祭「銀熊賞(アルフレード・バウアー賞)」
グランド・マスター 2013.jpgウォン・カーウァイグランド・マスター」('13年/香港・中国)★★★
 アジア・フィルム・アワード香港電影金像奨「最優秀作品賞」
黒衣の刺客 2015 .jpg侯孝賢(ホウ・シャオシェン)黒衣の刺客」 ('15年/台湾・中国・香港)★★★
 カンヌ国際映画祭「監督賞」アジア・フィルム・アワード

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「花様年華」の監督らしいカンフー映画(伝記映画)になったが、詰め込み過ぎで焦点がぼけた。

グランド・マスター poster .jpgグランド・マスター dvd.jpg グランド・マスター .jpg
グランド・マスター [DVD]」チャン・ツィイー(中国)/トニー・レオン(香港)

 1930年代中国。中国南部広東佛山の武術家・葉問(イップ・マン)(トニー・レオン(梁朝偉))が四十歳の頃、佛山に北部東北の八卦掌の宗師(グランドマスター)・宮宝森(ゴン・パオセン)(ワン・チンシアン(王慶祥)がやって来る。引退を考えている宝森は「自分は北の技を南に伝えたので、今度は南の技を北に伝えて欲しい」と言い、自分に勝った南部の武術家を南の代表とすると告げる。南の武術家の中から選ばれた葉問はこれに応えて宝森の試しに合格し代表となるグランド・マスター 06.jpgも、宝森ととも佛山を訪れていた宝森の娘の宮若梅(ゴン・ルオメイ)(チャン・ツィイー(章子怡))がグランド・マスターs.jpg異を唱え、葉問に試合を申し込む。葉問は若梅と試合い、試合いを通じて二人は心を通わせて、若梅は葉問を認める。若梅は父と共に東北に帰り、葉問と若梅は手紙を交し合うようになる。やがて準備の整った葉問は東北を訪れようとした時、日中戦争が勃発する―。

チャン・ツィイー、ウォン・カーウァイ(第8回アジアン・フィルム・アワード授賞式)
映画「グランド・マスター」が7部門で受賞.jpgグランド・マスター59.jpg 2013年のウォン・カーウァイ(王家衛)監督映画で、2014年・第38回香港国際映画祭「アジア・フィルム・アワード(第8回)」において、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀女優賞(チャン・ツィイー)、最優秀音楽賞(梅林茂)など14部門中7部門で最優秀賞を受賞、2014年・第33回「香港電影金像奨」でも最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演女優賞、最優秀助演男優賞(マックス・チャン)を受賞した作品です。

葉問 ブルース・リー.jpg 原題は「一代宗師」。香港の武術家でブルース・リーの師匠でもあった葉問(よう もん、イップ・マン、1893-1972)がモデルで、この葉問をモデルにした映画には、ウィルソン・イップ監督、ドニー・イェン主演のイップ・マイップマン葉問.jpgン・シリーズ3作(「イップ・マン 序章」('08年/香港)、「イップ・マン 葉問」(10年/香港)、「イップ・マン 継承」('15年/香港))やハーマン・ヤオ監督、デニス・トー主演の「イップ・マン 誕生」('08年/香港)、同じくハーマン・ヤオ監督でアンソニー・ウォン主演の「イップ・マン 最終章」('13年/香港)などもあります(「イップ・マン 葉問」のエピローグで少年・李小龍(後のブルース・リー)が葉問を訪ねる場面がある)。
「イップ・マン 葉問」(10年/香港)

グランド・マスター03.jpg 「恋する惑星」('94年/香港)、「花様年華」('00年/香港)のウォン・カーウァイ監督が、同じくトニー・レオン主演でカンフー映画を撮ったらどうなるのだろうか、しかも今回の相手役は「初恋のきた道」('99年/中国)のチャン・ツィイーということで期待されましたが、いかにも「花様年華」の監督らしいカンフー映画(武術映画)になったかなという感じです。

グランド・マスター 09.jpg カンフー・アクションもありますが、しっとりとした美しい映像が続き、米雑誌「TIME」が発表した「2013年の映画ベスト10」では5位と高評価されたように、ウォン・カーウァイらしい映像美学が前面に出ています(1936年当時の娼館"金楼"のセットなどは凝っていた)。但し、欲を言えば、ストーリーの方をもう少し上手く作って欲しかったように思います。

グランド・マスター20a00.jpg 主要な役どころでは、ルオメイの父の敵役の馬三(マーサン)を演じたマックス・チャン(張晋)はカンフー俳優で(ウィルソン・イップ監督の「イップ・マン 継承グランド・マスター チャン・チェン.jpg」('15年/香港)にも出演している)、一線天(カミソリ)を演じたチャン・チェン(張震)は、台湾出身ですが(ウォン・カーウァイ監督の「ブエノスアイレス」('97年/香港)にも出演している)、中国武術・八極拳の全国大会で優勝経験もあり、トニー・レオンも、イップ・マンの最後の直弟子ダンカン・リョンから4年間にも及ぶ直接指導を受けたとのことです。それでもこの監督ですから、アクションを純粋に突き詰めただけの作品にならないことはほぼ予想通りでした。

チャン・チェン(張震)(一線天(カミソリ))

グランド・マスター チャン・チェン5.jpg しかし、結局は作品としてのテーマが、ルオメイの復讐劇だったのか、彼女の技の継承の問題だったのか、彼女のイップ・マンに対する恋心だったのか、あまりに沢山盛り込み過ぎて、やや焦点がぼけてしまった感じです。説明不足な所は説明不足で、チャン・チェン演じる一線天(カミソリ)などは、本筋の話とどう絡むのかが分かりにくかったです(日本に協力し満洲国奉天の協和会長となった敵役のマーサンに対して、中国国民党の特務機関所属の暗殺者として最前線にいたカミソリという対比か。最後は理髪店の店主になったようだが、床屋業の傍ら技を後世に伝えた?)。

グランド・マスター 07.jpg トニー・レオン演じるイップ・マンは、カンフーの技比べの場面でもいつも余裕の表情で、チャン・ツィイー演じるルオメイの十数年ぶりのグランド・マスター56.jpg告白を聴く時も穏やかな表情で、いくら抑制の効いた演技といっても、ちょっと現実ありえない?(好きな俳優なのでまあいいか)。チャン・ツィイーは、アン・リー(李安)監督 の「グリーン・デスティニー」('00年/中国・香港)の時からすれば、カンフーはかなり様になっている印象を受けました(「グリーン・デスティニー」の時は、いかにもワイヤーに吊られているという感じがしたが、あれから13年かあ)。

グランド・マスターed.jpg 男女が運命的に出会いその思いが行き違うのは、「花様年華」に似ているように思いますが、戦争に最も翻弄されたのは、韓国の人気女優・ソン・ヘギョ(宋慧敎)が演じた、先に東北に行って結局あとから来るはずだったイップ・マンと離れ離れになった妻の張永成(チャン・ヨンチェン)のようにも思えます。

 実際には葉問(イップ・マン)が1949年に香港に亡命した後、最初の2年間は大陸と香港の往来は自由であり、家族はしばしば葉問のもとを訪れていますが、1951年元日から大陸と香港の国境が突如封鎖され、家族に会えなくなった葉問は、その後1人の女性と暮らし始め、女性との間に息子を設けています。一方、1960年に妻の張永成が亡くなったのは映画にもある通りですが(彼女は佛山で亡くなっている)、1962年に長男と次男がともに香港へ密航し、父・葉問と再会を果たしています。葉問は1972年12月1日に、九龍・旺角通菜街の自宅で79歳で死去、その波瀾万丈の生涯を終えています。

 一応「伝記映画」ということになっているらしいです。ウィルソン・イップ監督、ドニー・イェン主演のイップ・マン・シリーズ3作の方が、カンフー映画としては面白いのかもしれないですが、こちらも「実話」を基にしたと謳いながら、どんどん史実から外れてきているので(イップ・マン・シリーズでは葉問の妻・張永成は夫と離別死しないなど)、共に葉問を主人公としながらも、片や「カンフー映画」、片や「伝記映画」ということで、バッティングはしないとの考えから作られた作品ではないでしょうか(ウォン・カーウァイ監督としては、自分は武侠映画でもここまで撮れるという自負の発露でもあったとは思うが)。

マギー・チャン/トニー・レオン花様年華」(2000)チャン・ツィイートニー・レオンHERO」(2002)
花様年華002.jpg トニー・レオン/チャン・ツィイー「HERO」(2002).jpg
チャン・ツィイー初恋のきた道」(1999)ミシェル・ヨー/チャン・ツィイーグリーン・デスティニー」(2000)
初恋のきた道 チャン011.jpg CROUCHING TIGER, HIDDEN DRAGON22.jpg

チャン・チェン(張震) in「ブエノスアイレス」(1997)/「グランド・マスター」(2013)
ブエノスアイレス チャン・チェン(張震).jpg グランドマスター チャン・チェン(張震).jpg

グランド・マスター  .jpgグランド・マスター3.jpg「グランド・マスター」●原題:一代宗師/THE GRANDMASTER●制作年:2013年●制作国:香港・中国●監督:ウォン・カーウァイ(王家衛)●製作:ウォン・カーウァイ/ジャッキー・パン・イーワン●脚本:ゾウ・ジンジ/シュー・ハオフォン/ウォン・カーウァイ●撮影:フィリップ・ル・スール●音楽:梅林茂/ナタニエル・グランド・マスター チャン・チェン2.jpgメカリー●時間:123分●出演:トニー・レオン(梁朝偉)/チャン・ツィイー(章子怡)/チャン・チェン(張震)/マックス・チャン(張晋)/ワン・チンシアン(王ソン・ヘギョとチャン・ツィイーt.jpg慶祥)/ソン・ヘギョ(宋慧敎)/チャオ・ベンシャン(趙本山)/ユエン・ウーピン(袁和平)(アクション指導も)●日本公開:2013/05●配給:ギャガ(評価:★★★)

ソン・ヘギョ(韓国)とチャン・ツィイー(中国)
2014年4月16日中国・北京の北京ホテルで開かれた2人が再共演した映画「太平輪〜THE CROSSING〜」(ジョン・ウー監督)の製作発表会で[韓流エンターテインメント]

 
 
   
《読書MEMO》
"巨匠"監督の「武侠映画」個人的評価[IMDb評価]と受賞した主要映画賞
グリーン・デスティニー(00年/中・香・台・米).jpgアン・リー(李安)グリーン・デスティニー」('00年/中国・香港・台湾・米)★★★☆[7.9]
 トロント国際映画祭「観客賞」アカデミー賞「外国語映画賞」ゴールデングローブ賞「外国語映画賞」インディペンデント・スピリット賞「作品賞」ロサンゼルス映画批評家協会賞「作品賞」香港電影金像奨「最優秀作品賞」
HERO~英雄~2002.jpg張藝謀(チャン・イーモウ)HERO」('02年/香港・中国)★★★☆[7.9]
 ベルリン国際映画祭「銀熊賞(アルフレード・バウアー賞)」
グランド・マスター 2013.jpgウォン・カーウァイグランド・マスター」('13年/香港・中国)★★★[6.5]
 アジア・フィルム・アワード香港電影金像奨「最優秀作品賞」
黒衣の刺客 2015 .jpg侯孝賢(ホウ・シャオシェン)黒衣の刺客」 ('15年/台湾・中国・香港)★★★[6.3]
 カンヌ国際映画祭「監督賞」アジア・フィルム・アワード

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全部CGにしなくとも、ワイヤーアクションでここまで撮れてしまうのかと感心。ラストはどう解釈する?
グリーン・デスティニー 2000.jpg  グリーン・デスティニー dvd.jpg   グリーン・デスティニー 01.jpg チャン・ツィイー
「グリーン・デスティニー」チラシ/「グリーン・デスティニー コレクターズ・エディション [DVD]
ミシェル・ヨー/チョウ・ユンファ
グリーン・デスティニー1.png 剣の名手として武林にその名を知られた李慕白(リー・ムーバイ)(チョウ・ユンファ〈周潤發〉)は、血で血を洗う江湖の争いに悩み、剣を捨てて引退することを決意、自身の名剣「青冥剣(グリーン・デスティニー)」を北京の鐵(ティエ)貝勒に寄贈するために、密かに恋心を抱いていた同門の弟子で、鏢局を営む兪秀蓮(ユイ・シューリン)(ミシェル・ヨー〈楊紫瓊〉)に託す。シューリンは剣を無事に北京のティエ宅に届けるものの、その夜、剣は何者グリーン・デスティニー3.jpgかに盗まれる。シューリンに続いて北京にやってきたムーバイは、剣を盗んだのは、リーの師匠を毒殺した仇の女性・碧眼狐(ジェイド・フォックス)(チェン・ペイペイ〈鄭佩佩〉)ではないかと考える。一方シューリンは、そこで結婚を間近に控えた貴族の娘の玉嬌龍(グリーン・デスティニー5.pngイェン・シャオロン)(チャン・ツィイー〈章子怡〉)と出会い義姉妹の契りを交わすが、賊と戦った時の印象から、剣を盗んだ賊とはそのシャオロンではないかと疑う。シューリンの読み通り、剣を盗んだのはシャオロンで、シャオロンに剣を教えたのはジェイド・フォックスだった。結婚を控えたシャオロンには恋をした過去があり、新疆でその地の賊・羅小虎(ロー・シャオフー)(チャン・チェン〈張震〉)と出会い、シャオロンとシャオフーは今も深く愛し合っていた―。

『グリーン・デスティニー』ー.jpg『グリーン・デスティニー』監督、アン・リー.jpg アン・リー〈李安〉監督による2000年の中国・香港・台湾・米国の合作作品で、原作は王度廬の武侠小説『臥虎蔵龍』ですが、五部作の第四部だけを映画化してもの。第73回アカデミー賞で英語以外の言語による作品でありながら作品賞ほか10部門にノミネートされ(監督、脚色、撮影、編集、美術、衣装デザイン、作曲、歌曲、外国語映画)、外国語映画賞など4部門を受賞しています。トロント国際映画祭の最高賞「観客賞」も受賞しており、トロント国際映画祭はアカデミーが公認している映画祭であるため、アカデミー作品賞ほかにノミネートされたものと思われます(ゴールデングローブ賞外国語映画賞、インディペンデント・スピリット賞及びロサンゼルス映画批評家協会賞の各「作品賞」も受賞)。

グリーン・デスティニー2.png アン・リー監督は「両岸三地の中国人が力を合わせた結果、中国文化をアメリカに持ち込むことができた」と言っていますが、因みに、アン・リー監督とチャン・チェンは台湾出身、チョウ・ユンファは香港出身、ミシェル・ヨーは中国系マレーシア人で彼女も主に香港で活躍、チャン・ツィイーは中国出身。中国武侠映画は中国人に深く浸透しているものの、中国圏以外ではそれまであまり知られておらず、中国圏では古いタイプの物語がアメリカや日本の観客の眼には新鮮に映り、関心を持って迎えられたという事情はあったかと思います。
ミシェル・ヨー
チョウ・ユンファ
 チョウ・ユンファ(「男たちの挽歌」('86年/香港グリーン・デスティニー 02.jpg)、「誰かがあなたを愛してる」('87年/香港))が演じたリー・ムーバイの役は、当初ジェット・リー〈李連杰〉(「少林寺」('82年/中国・香港))が演じる予定だったものが、妊娠した妻に付き添うために役を断ったためチョウ・ユンファに廻ってきたもので、チョウ・ユンファにはアクション映画のイメージはあっても武侠映画のイメージは無かっただけにやや意外だった感じも。実際、僅か3週間剣術の訓練をしただけで撮影に臨んだそうですが、持ち前の演技力もあってまあまあ絵になっているという感じでしょうか(中国圏におけるポピュラーな武侠映画と異なり、恋愛ドラマ部分のウェイトが大きくなっているというのもあるが)。
チャン・ツィイー vs.ミシェル・ヨー
グリーン・デスティニー 03.jpgチャン・ツィー・イー.jpg それ以上に意外だったキャスティングが、我儘お嬢様で実は武闘家のイェン・シャオロンを演じるチャン・ツィイー(「初恋のきた道)('99年/中国))で、この作品が映画主演第2作です(一応、チョウ・ユンファ/ミシェル・ヨーのペアが主演でチャン・チェン初恋の~1.JPG/チャン・ツィイーは"助演"ということになっているが、原題"臥虎藏龍"はチャン・チェン演じる羅小虎とチャン・ツィイー演じる玉嬌龍を指すと思われる)。それにしても、初主演作「初恋がきた道」との役どころの差が大きい!

グリーン・デスティニー 09.jpg007 ミシェル・ヨー.jpg 「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」('99年/英)でボンド・ガールに抜擢されているミシェル・ヨー演じるユイ・シューリンとの2度の対戦で、最初の対戦ではアクション女優とし大先輩格のミシェル・ヨーの顔ばかり映っていてチャン・ツィイーの方はスタントぽかったのが(ミシェル・ヨーはチャン・ツィイーに対し相当な対抗意識を持って撮影に臨んだらしい)、2度目の対戦ではチャン・ツィイーも互角に顔を見せています(シューリン(ミシェル・ヨー)は青冥剣を使うシャオロン(チャン・ツィイー)にいかなる戦法を用いても勝てないという設定になっていて、シャオロンは本人の能力以上に剣の力で強くなっているわけだ)。更に、中盤にはシャオロンは"一人暴徒"化し、終盤には竹林でチョウ・ユンファ演じるリー・ムーバイと剣を合わせることになりますが、中盤・終盤ともそれぞれちゃんと顔が映っています。全部CGにしなくとも、ワイヤーアクショングリーン・デスティニー 08.jpgでここまで撮れてしまうのかと感心する一方で、竹林のアクションシーンでは俳優達をずっと4,50フィートの高さに吊っていたというから、それなりの大変さはあったのでしょう。カメラマンのピーター・パウ〈鮑徳熹〉は、「あのようなアクションはハリウッドでは永遠に撮れないだろう。なぜなら、ハリウッドには、俳優を10フィート以上吊ってはいけないという規定があるから」と述べています。悪役・碧眼狐を演じたベテラン女優チェン・ペイペイさえも「今の武侠映画はCGを使えるのでとても便利だ」と言っているぐらいですから、こうした生身のアクションシーンはだんだん見られなくなるのではないでしょうか。
Wo hu cang long(2000)
グリーン・デスティニー 04.jpg 武侠映画のスタイルを取りながら、ストーリーとしては恋愛&ファンタジーといった感じですが、ラストで"ヒロイン"のイェン・シャオロンがWo hu cang long(2000).jpg橋の上からいきなり跳び降りたのは、最初観た時やや唐突感がありました。やはり、リー・ムーバイを救えなかったことに罪悪感があったのか。こうなると、せっかく再会できたロー・シャオフーも涙し(たように見える)、リー・ムーバイとユイ・シューリンの悲恋に続く「ダブル悲恋物語」ということになりますが、最後は飛び降りたのではなく"飛び立った"のであり、それは、ロー・シャオフーに伴われて草原に戻る決意を意味しているとの解釈もあるようです。こうした結末をぼかすやり方も、作品に含みを持たせる巧みさと言えるかもしれません。


チョウ・ユンファ(周潤發)in ジョン・ウー監督「男たちの挽歌」('86年/香港)/メイベル・チャン監督「誰かがあなたを愛してる」('87年/香港)
英雄本色 周潤發.jpg 秋天的童話1.jpg

CROUCHING TIGER, HIDDEN DRAGON.jpg「グリーン・デスティニー」●原題:臥虎藏龍/CROUCHING TIGER, HIDDEN DRAGON●制作年:2000年●制作国:中国・香港・台湾・米国●監督:アン・リー(李安)●製作:アン・リー/ビル・コン●脚本:ジェームズ・シェイマス/ツァイ・クォジュン/ワン・ホエリン●撮影:ピーター・パウ(鮑徳熹)●音楽:タン・ドグリーン・デスティニー アン・リー.jpgゥン/ヨーヨー・マ●原作:王度廬(ワン・ドウルー)「臥虎蔵龍」●時間:120分●出演:チョウ・ユンファ(周潤發)/ミシェル・ヨー(楊紫瓊)チャン・ツィイー(章子怡)チャン・チェン(張震)/チェン・ペイペイ(鮑徳熹)/ラン・シャン(郎雄)/リー・ファーツォン●日本公開:2000/11●配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント●最初に観た場所:渋谷東急(00-12-03)(評価:★★★☆)

左より、チャン・ツィイー(中国)、アン・リー監督(台湾)、ミシェル・ヨー(香港(中国系マレーシア人))

チャン・チェン(張震)ブエノスアイレス」(1997)/「グリーン・デスティニー」(2000)/「グランド・マスター」(2013)/「黒衣の刺客」(2015)
ブエノスアイレス チャン・チェン(張震).jpg 「グリーンディステニー」張しん.jpgグリーン・デスティニー5.png グランドマスター チャン・チェン(張震).jpg 黒衣の刺客ード.jpg

HERO~英雄~05 チャン.jpgグランド・マスター56.jpgチャン・ツィイー
in「HERO」['02年/香港・中国]張藝謀(チャン・イーモウ)監督

in「グランド・マスター」['13年/香港・中国]ウォン・カーウァイ(王家衛)監督


  
《読書MEMO》
"巨匠"監督の「武侠映画」個人的評価と受賞した主要映画賞
グリーン・デスティニー(00年/中・香・台・米).jpgアン・リー(李安)グリーン・デスティニー」('00年/中国・香港・台湾・米)★★★☆
 トロント国際映画祭「観客賞」アカデミー賞「外国語映画賞」ゴールデングローブ賞「外国語映画賞」インディペンデント・スピリット賞「作品賞」ロサンゼルス映画批評家協会賞「作品賞」香港電影金像奨「最優秀作品賞」
HERO~英雄~2002.jpg張藝謀(チャン・イーモウ)HERO」('02年/香港・中国)★★★☆
 ベルリン国際映画祭「銀熊賞(アルフレード・バウアー賞)」
グランド・マスター 2013.jpgウォン・カーウァイグランド・マスター」('13年/香港・中国)★★★
 アジア・フィルム・アワード香港電影金像奨「最優秀作品賞」
黒衣の刺客 2015 .jpg侯孝賢(ホウ・シャオシェン)黒衣の刺客」 ('15年/台湾・中国・香港)★★★
 カンヌ国際映画祭「監督賞」アジア・フィルム・アワード

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チャン・ツィイーの可憐さと終盤の畳み掛けるような感動を呼ぶ"効果"。

初恋のきた道 中国版.jpg初恋のきた道 dvd.jpg  初恋のきた道 チャン01.jpg 
初恋のきた道 [DVD]」 チャン・ツィイー(章子怡)

「初恋のきた道」 (99年/中国).jpg 都会で働くルオ・ユーシェン(孫紅蕾(スン・ホンレイ))は、父の急死の知らせを受け故郷である中国華北部の小さな山村、三合屯(サンヘチュン)へ帰郷する。老いた母は悲嘆にくれるばかりで、遺体は町の病院に安置されたまま。母が遺体を担いで帰る昔ながらの葬式をすると言い張るが、村は老人と初恋のきた道 写真.jpg子供ばかりで遺体の担ぎ手がいない。母はまた、棺に掛ける布も自分が織ると言い張った。そんな母の姿を見つめる中、ユーシェンはふと一枚の写真に目がとまる。結婚直後の若き日の父と母が並んだ写真。母は赤い服を着ている。彼は村の語り草ともなった、若き日の父(鄭昊(チョン・ハオ))と母(章子怡(チャン・ツィイー))の恋愛物語を思い出す―。

 張藝謀(チャン・イーモウ)監督の1999年作品で、後に日本で「幸せ三部作」と呼ばれるようになる3作の第1弾「あの子を探して」('99年)に続く第2弾にあたる作品です(第3弾は「至福のとき」('00年))。前作はヴェネチア国際映画祭で「秋菊の物語」('92年)に次いで2度目の金獅子賞(グランプリ)を受賞し、この作品も第50回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞。主人公の母親の娘時代を演じたチャン・ツィイー(1979年生まれ)は19才で本作の主役に抜擢されてデビュー、張藝謀作品ではベルリン国際映画祭金熊賞の「紅いコーリャン」('87年)での鞏俐(コン・リー、1965年生まれ)以来の話題の新人となりましたが、コン・リーが当時21歳で力強いヒロインを演じたのに対し、こちらは2歳若い分、可憐で一途なヒロイン像となっている感じでしょうか(因みに、第50回ベルリン国際映画祭の審査員長はコン・リー)。

初恋のきた道 チャン03.jpg 「紅いコーリャン」の時と違うのは、「紅いコーリャン」の頃は張藝謀の監督作品は中国国内では上映禁止だったのに、この「初恋のきた道」の頃には中国政府にも受け入れられるようになっていたということで、張監督はその後2008年の北京オリンピックの開会式および閉会式のチーフディレクターを任されるまでになり、これを体制に取り込まれた《堕落》と見る向きもあるようです。確かにそうした見方もあるかと思いますが(一応、この作品の中にも文化大革命批判が見られるが、それまでの同監督の作品ほどには先鋭的ではない。それでも中国のある年代の人が観れば暗い時代を思い出さずにはいられないだろうが)、そうした政治的なことはともかく、「紅いコーリャン」でみせた骨太の演出とダイナミックな映像美はこの作品でも充分に堪能できるかと思います。

初恋のきた道 チャン02.jpg 主人公が出てくる現在の部分はモノクロで、若き日の父と母のラブストーリーの部分はカラー(主人公は語り手となる)。2人の恋愛物語において、村に教師としてやった来た父と母の関係は、正確には教師と生徒ではなく、教師とただの村の娘というそれ以上に開きがあるものでしたが、それでも憧れの先生に猛烈にアタックをかけるチャン・ツィイーがいい(田舎娘らしいドン臭い走り方が"効果"的?)。その恋愛は、政治的理由で何年も会えないという過酷なものでしたが、障壁があればあるほど想いが強まるという意味では、ある種、"王道的"乃至"定番的"に描かれている恋物語のようにも思いました(同監督の「菊豆<チュイトウ>」('90年)のような"毒"を含んだ作品ではない)。

初恋のきた道 02.jpg 終盤モノクロの現在に話が戻って、かつての教え子たちが遠方からも含め百人ほども集って棺を担ぎ、誰も報酬を受け取らないというというのがスゴイ。吹雪の雪道を黙々と歩むその姿は感動的ですが、彼らは主人公にとっては知らない人ばかりだったという―。地方に留まり40年教師を続けた父親の偉大さがここにきて主人公の視点から浮彫りになり、そう言えば、若き日の父の話で母との恋愛の部分は映像化されていたのに対し、父の教える様子は「声が良かった」という母の述懐を主人公が語るといった間接表現になっていて実際のその姿の映像が無かったのが、逆にこの葬送シーンでの感動を引き起こす"効果"に繋がっていたように思います(因みに現在の母親を演じたのは女優ではなく素人)。

初恋のきた道04.jpg これで終わらないのがこの監督のスゴイところ。父の棺は今は使われていない古井戸の傍に運ばれて埋められ、それは父が教えていた学校のすぐ傍。つまり、雪が積もっていて初めはよく分からなかったけれども、父の教え子たちが棺を担いだ葬送の道程はまさに母親にとって「初恋のきた道」であって、ここにきて母親が遺体を担いで"帰る"昔ながらの葬式を望んだ理由が浮き彫りになります。

Wo de fu qin mu qin(1999).jpg そして更に最後に、父の意向に反して教師の職を継がなかった主人公が、そのことを父は残念がっていて一度でもいいから教壇に立って欲しがっていたしそれは自分の願いでもあるという母の意向を汲み、都会に帰る日となった翌朝、取り壊し前の古い教室で子供達を集め1時間だけ授業を開き、そこで父が初めてこの教壇に立った時に読んだ文章と同じ文章を読むという―この親孝行がこれまた感動的。

 やがてモノクロの主人公とカラーの若き日の父が重なり(これは母親からの視点か)、と思ったら、今度はそれを見つめるモノクロの母親がカラーの娘時代へと。エンディングは、子供達と行く若き父とそれを追う若き母―。映像の使い方というものを知り尽くしている感じで、とりわけ終盤は畳み掛けるような"効果"の連続でした。但し、演出の力によって小手先感が無くなっており、仮にそういう"効果"が後から窺えたとしても、分析する前に感動させられてしまっているという感じでしょうか。まあ、いい映画ってそういうものですが。
Wo de fu qin mu qin(1999)

初恋のきた道 06.jpgチャン・ツィイー.jpg 可憐な演技を見せたチャン・ツィイーは、次回作「グリーン・デスティニー」('00年/中国・香港・台湾・米国)がアカデミー外国語映画賞を受賞し、一気にスターダムに駆け上がることとなります。

チャン・ツィイー(章子怡) 

初恋のきた道 タイトル.jpg「初恋のきた道」●原題:我的父親母親/THE ROAD HOME●制作年:1999年●制作国:中国●監督:張芸謀(チャン・イーモウ)●製作:趙愚(ツァオ・ユー)●脚本:鮑十(パオ・シー)●撮影:侯咏(ホウ・ヨン)●音楽:三宝(サンパオ)●原作:鮑十(パオ・シー)●時間:89分●出演:章子怡(チャン・ツィイー)/鄭昊(チョン・ハオ)/孫紅雷(スン・ホンレイ)/趙玉蓮(チャオ・ユエリン)●日本公開:2000/12●配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント●最初に観た場所:渋谷・Bunkamura ル・シネマ2(01-05-13)(評価:★★★★)
Bunkamura ル・シネマ1.jpgBunkamura ル・シネマ内.jpgBunkamura ル・シネマ2.jpgBunkamuraル・シネマ1・2 1989年9月、渋谷道玄坂・Bunkamura6階にオープン

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