「●侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT⇒「●侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品」 【2628】 侯孝賢 「悲情城市」
「●「アジア・フィルム・アワード」受賞作」の インデックッスへ 「●「香港電影金像奨 最優秀作品賞」受賞作」の インデックッスへ 「●トニー・レオン(梁朝偉) 出演作品」の インデックッスへ 「●章子怡(チャン・ツィイー)出演作品」の インデックッスへ「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ
昔の日本の田舎を思わせるノスタルジックな雰囲気。人と人との距離感の変化の描き方が上手い。


「冬冬(トントン)の夏休み」ポスター]
小学校を卒業し終えた冬冬(トントン)(王啓光(ワン・チークァン))は、妹の婷婷(ティンティン)(李淑楨(リー・ジュジェン))と一緒に入院する母(丁乃竺(ティン・ナイチュー))を見舞った後、父(楊徳昌(エドワード・ヤン))が看病に忙しいので、叔父の昌民(陳博正(チェン・ボーチョン))に連れられ、母方の祖父がいる銅羅に夏休みを過ごしに行く。途中の駅で冬冬と妹は叔父と離れ離れになってしまうが、なんとか銅羅駅に到着する。駅前で叔父を待つ間、冬冬は村の子供・阿正國(顔正國(イエン・チョンクオ))らと知り合う。叔父・叔母とは無事会い、医師である厳格な祖父(古軍(グー・ジュン))のいる診療所に辿り着く。村の子供たちと川に泳ぎに行くが、婷婷は男の子ばかりの仲間には入れてもらえず、怒って近くに脱ぎ捨ててあった彼らの服を川に流してしまう。少年たちは裸で家に帰る羽目になったが、裸のまま飼牛を追った阿正國が行方不明になる。冬冬らが木登りしていると、風変わりな女、寒子(ハンズ)(楊麗音(ヤン・リーイン))に出会う。昆虫採集に出掛けた時に昼寝の男を襲う強盗二人組を目撃してしまう。ある日、昌民は恋人の碧雲(林秀玲(リン・シウリン))が妊娠したことで祖父に叱られ、家を飛び出す。男の子たちから仲間はずれにされた婷婷は列車に轢かれそうになったところを寒子に助けられ、彼女を慕うようになる。寒子は雀捕りの男に孕まされ、村人は彼女が子供を生むことに反対するが、彼女の父親は生ませたがった。ひっそりと結婚した昌民と碧雲の住まいを訪れた冬冬はそこで以前の強盗事件の犯人に会う。通報によって犯人を匿った昌民が警察に捕まる。祭の日、入院中の母の容態が悪いと知らせが入る。祖父は祖母(梅芳(メイ・ファン))と母のいる台北に行こうとするが、そんな時、寒子は婷婷が拾った小鳥を巣に戻そうとして、木から落ち意識を失う。台北行きを取り止め看病に当たる祖父。翌日、寒子は意識を取り戻す。母の容態も良くなったとの知らせも入ってくる。祖父は勘当していた昌民を許す。台北から迎えに来た父と一緒に、冬冬は阿正國らに、婷婷は寒子に別れを告げて村を出て行く―。
「冬冬(トントン)の夏休み」ポスター['25年7月]
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の1984年作で、1984年・第6回「ナント三大陸映画 金の気球賞(最優秀作品賞)」受賞作。2016年および2025年にそれぞれデジタル・リマスター版でリバイバル公開。監督自らの少年時代の体験をモチーフにした作品の一本で、他作品は過去を舞台にしているが、当作は製作当時の時代設定だそうです。原作・脚本の朱天文(チュー・ティエンウェン)の母方の祖父の家で、実際に医院だった日本家屋がロケ地として使われ、外省人の父親と本省人(客家系)の母親を持つ朱天文の体験が元になっているとのことです(二人の少年時代の経験が混ざっているということか)。
冒頭の小学校の卒業式で「仰げば尊し」が流れたり(歌詞はもちろん中国語)、トントンの母方の実家に畳があったりして(台湾風と日本風の複合家屋か)、田園風景など全体に昔の日本の田舎の風景と似ており、ノスタルジックな雰囲気があります。個人的にも、70年代終わりに台湾の北部と南部、'93年に北部・南部・中部をそれぞれ旅行したため、その中間ぐらいかあと、懐かしさがありました。
エピソードの描き方、とりわけトントンと阿正國ら村の子供たちとの交流(亀レースとか)、妹のティンティンと村の女・寒子(ハンズ)との心の通い合いなど、人と人との距離感の変化の描き方が上手いと思いました。特に、列車に轢かれそうになったティンティンをハンズが救ってからの二人の距離感の縮まり方は急激で、精神障害があると思われるハンズへの見方も変わります(ある種シャーマン的。でも、スズメを巣に戻そうとして木から落っこちるが)。でも、そんなこと(ハンズのティンティンに対する命の恩人的行為)があったとは誰も知らないし、最後別れ際にティンティンの呼びかけにハンズが応えないのも、却って余韻があってよかったかもしれません。
振り返れば、何も無さそうな田舎で結構いろいろな事件が起きているわけで、それらを村のコミュニティや肉親・家族らで解決していっている感じでした。しかし、そのコミュニティや家族は、当時としては当たり前だったのだろうけれども、現代から見れば封建的であったりして(でもその中に親の娘に対する思いなどもあったりして)、その辺りも懐かしさの一つの要因かもしれません。
叔父とその結婚に反対する祖父との狭間で、結婚式に叔父の側からはトントンだけしか出席していないのがちょっと可笑しいです(そのことを夏休みの日記に書いている(笑))。ある意味、トントンが大人社会の亀裂の架け橋となっていることを象徴するような役回りで、最後に祖父が叔父を許す予兆だったようにも思えました(用事を言いつけるついでに勘当を解くというのもいい)。
祖母を演じた梅芳(メイ・ファン)は侯孝賢作品の常連で、「童年往事 時の流れ」('86年)、「恋恋風塵」('86年)、「悲情城市」('00年)、「黒衣の刺客」('15年)などにも出演。兄妹の父親役で、「牯嶺街少年殺人事件」('91年)、「エドワード・ヤンの恋愛時代」('94年)、「カップルズ」('96年)、「ヤンヤン 夏の想い出」('00年)などで知られる映画監督の楊徳昌(エドワード・ヤン)(1947-2007/59歳没)が友情出演しています。
楊徳昌(エドワード・ヤン)(友情出演)
「冬冬の夏休み -デジタルリマスター版- [DVD]」
「冬冬(トントン)の夏休み」●原題:(英題:A SUMMER AT GRANDPA`S)●制作年:1984 年●制作国:台湾●監督・脚本:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)●製作:張華坤(ジャン・ホアクン)●撮影:陳坤厚(チェン・クンホウ)●原作・脚本:朱天文(チュー・ティエンウェン)●時間:98分●出演:王啓光(ワン・チークァン)/李淑楨(リー・ジュジェン)/古軍(グー・ジュン)/梅芳(メイ・ファン)/陳博正(チェン・ボーチョン)/林秀玲(リン・シウリン)/楊麗音(ヤン・リーイン)/顔正國(イエン・チョンクオ)/丁乃竺(ティン・ナイチュー)/楊徳昌(エドワード・ヤン)●日本公開:1990/08●配給:フランス映画社●最初に観た場所:新宿武蔵野館(25-08-19)(評価:★★★★) font>
