【3693】 ◎ 張藝謀(チャン・イーモウ) (原作:蘇童(スー・トン)) 「紅夢」 (91年/中国・香港) (1992/04 東宝東和) ★★★★☆

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コン・リーが奇麗。物語的には悲惨だが、美的には張藝謀作品の頂点にある作品。

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紅夢 [DVD]」['25年]鞏俐(コン・リー)
紅夢1991.jpg 1920年代の中国、 19歳の女学生・頌蓮(スンリェン)(鞏俐(コン・リー))は、父親が亡くなった後実家が没落したため、陳佐千(馬精武(マー・チンウー))という富豪の第四夫人として嫁ぐことを余儀なくされた。彼の大邸宅に嫁入りした際には王室の様な待遇で、気持ちの良い足マッサージを受けた。屋敷の主人は、夜になり彼女の部屋に泊まる時門前に赤い提灯を掲げた。しかし頌蓮はすぐに全ての妾たちが同様の贅沢な待遇を受けていることに気づいた。紅夢02.jpg主人は毎日どの妾の家で夜を過ごすかを決めるとその家の前に赤い提灯を灯し、その妾は足マッサージを受け、食事を決定したり、下僕達の尊敬と服従を得ることができたのだ。やがて、友情を築いたと思っていた第二夫人・卓雲(ヅォユン)(曹翠芬(ツァオ・ツイフェン))からの裏切りや、屋敷に出入りする医者と不倫をしていた第三夫人・梅珊(メイサン)(何賽飛(ホー・ツァイフェイ))への凄惨な罰を目の当たりにし、主人の寵愛を巡る戦いの中で憔悴した頌蓮は次第に正気を失い、常軌を逸した行動に出るようになる―。

紅夢01.jpg 「紅いコーリャン」('87年)、「菊豆<チュイトウ>」('90年)に続く1991年公開の張芸謀(チャン・イーモウ)監督、鞏俐(コン・リー)主演作で、後にコン・リー主演の「紅いコーリャン」、そしてこれもコン・リー主演の「上海ルージュ」('95年)と共に張芸謀監督の「紅三部作」と呼ばれるようになります。第48回「ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞」受賞作品。台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督が製作総指揮を務め、香港や日本のスタッフも参加するなど、国境を越えたコラボレーションにより成った作品ですが、何故か本邦では長らくDVD化がされませんでした。2024年12月、「張芸諜 チャン・イーモウ 艶やかなる紅の世界」と題した特集上映にて、HDレストア版でリバイバル公開され、2025年にDVDがリリースされました。

 貧困から抜ける為に男性社会の中に囲い込まれる女性たちの話ですが、自分の意志で自由に行動できるわけもなく、昔からの掟が絶対。とりわけ夫人らに求められるのは男子を生むこと。その女性たちの間でも妬み・嫉みがあり、唯一優しそうにしてくれていた女性が、実はいちばん腹黒だったという...。

紅夢04.jpg 25歳で19歳の学生を演じているコン・リーが違和感なく奇麗です。彼女が正気を失っていく様は痛々しいですが、ストーリーや時代背景は今とあまりに差がありすぎるため、個人的には、「時代に抑圧された女性を描いた映画」的視点と言うよりは、背景部分は男尊女卑の"象徴"として捉え、単に女性たちの物語として映画を観ました。確かに、封建制度下における女性に対する抑圧を可視化した作品ではありますが、例えばこの「赤い提灯」のシステムは、原作である蘇童(スー・トン)の小説『妻妾成群』には無く、張芸謀監督の創作であるようです。監督は当時のインタビューで、中国の家父長制の深刻さを訴えており、本作は中国国内で上映禁止の措置を受けています。それだけ今日的・普遍的問題を示唆しているということなのでしょう。

紅夢03.jpg 単に女性たちの物語として観たと書きましたが、人物の悲劇的運命の造形は多角的に行われいて、各人の諸要素が互いに呼応し合うことで、作品全体の悲劇的雰囲気が高められているように思いました。とりわけ、元名妓であった第三夫人・梅珊(メイサン)の末路は悲惨で、気晴らしに屋上でかつて馴染んだ戯曲を歌っていた、その屋上で処刑されてしまったというのは皮肉です(ほとんどホラー)。これが主人公・頌蓮(スンリェン)に与えた衝撃は大きく、スンリェンの精神崩壊の火付けとなったように思われました。悲劇を美しく視覚化する張芸謀監督の美学的設計無くしては、なかなか味わおうという気にはなれない作品かもしれません。女学生から女へと変貌していくコン・リーの美しさも堪能でき、物語的には悲惨ですが、美的には張藝謀作品の頂点にある作品かもしれません(この頃の張芸謀はスゴかった)。

「紅夢」●原題: 大红灯笼高高挂(英:RAISE THE RED LANTERN)●制作年:1991年●制作国:中国・香港●監督:張藝謀(チャン・イーモウ)●製作:邱復生(チュウ・フウション)●脚本:倪震(ニイ・ゼン)●撮影:趙非(チャオ・フェイ)●音楽:趙季平(チャオ・チーピン)●原作:蘇童(スー・トン)『妻妾成群』●時間:125分●出演:鞏俐(コン・リー)/何賽飛(ホー・ツァイフェイ)/馬精武(マー・チンウー)/曹翠芬(ツァオ・ツイフェン)/周琦(チョウ・チー)/孔琳(コン・リン)/金淑媛(チン・スウユエン)/丁惟敏(ティン・ウェイミン )/曹増銀(ツァオ・ゾンイン)/崔志剛(ツォエ・チーガン)/初暁(ツゥ・シャオ)/徐薇(シュー・ウェイ)●日本公開:1992/04●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋・新文芸坐(25-01-29)(評価:★★★★☆)

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This page contains a single entry by wada published on 2026年1月23日 06:41.

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