「●賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●張藝謀 監督作品」 【1451】 張藝謀「紅いコーリャン」
「●「ヴェネツィア国際映画祭 金獅子賞」受賞作」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ
多分あちこちで見られただろう現実が、フィクションを掘り下げている。

「長江哀歌 (ちょうこうエレジー) [DVD]」
中国の大河・長江の三峡では、三峡ダム建設計画が進められていて、周辺の多くの町が湖底に沈みゆく運命にある。 山西省で炭鉱夫をする韓三明(ハン・サンミン)(韓三明(ハン・サンミン))は、16年前に別れた妻幺妹 (ヤオメイ)(馬礼珍(マー・リーチェン))と娘を探すために三峡の街・奉節(ほうせつ)にやってくる。知り得た住所を訪ねると、そこは既に湖底に沈んでいた。ヤオメイの兄を訪ねると、彼女は南の方で働いているがこの地にいればいずれ会えると言われ、その言葉を信じてこの街に留まることにする。仕事は、沈む街の建物解体作業で、その作業場で気の良いチンピラのと小馬哥(マーク)(周林(チョウ・リン))。と親しくなる。 時を同じくして、沈紅(シェン・ホン)(趙濤(チャオ・タオ))という看護師の女性が奉節の港に降り立つ。山西省から来た彼女は、三峡の工場に働きに出たまま2年も音信がない夫・郭斌(グォ・ビン)(李竹斌(リー・チュ
ウビン))を探している。 シェン・ホンは、夫グォ・ビンの友人の王東明(ワン・トンミン)(王宏偉(ワン・ホンウェイ))を訪ね、夫の今の職場に案内されるが夫は不在で、住民の立ち退きを強制する仕事をしているらしい。そして女性経営者といい仲らしいとの情報を得る。夫が経営しているという社交ダンス場に出向くと、そこは長江に架かる大橋が一望できる場所だった。 翌朝、シェン・ホンはグォ・ビンと再会を果たすが、夫の不倫に怒り心頭の彼女は夫を無視し、挙句「好きな人が出来て、その人と上海に行く」と言って離婚を切り出し、独り船に乗って三峡を離れる。 一方その頃、奉節で建物解体の仕事をしているサンミンは、親友のマークを解体現場の事故で失い遺体を長江に見送る。 その直後、サンミンは義兄からヤオメイの居場所が分かったという連絡を受け会いに行く。しかし、ヤオメイは義兄が作った多額の借金のカタとして、義兄に金を貸した船主の元で働かされているという。その船主の男に会い、連れて帰りたいと伝えるが、船主はそれなら貸した金を返せと要求する。サンミンは金を作るため山西省に戻って再び炭鉱で働くことを決意して、奉節の町を去る―。
賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の2006年作で、第63回「ヴェネツィア国際映画祭 金獅子賞(グランプリ)」受賞作。審査員長を務めたカトリーヌ・ドヌーヴは「金獅子賞を決めるのに時間はかからなかった」と述べています。また、その他にも、「アジア・フィルム・アワード 監督賞」「ロサンゼルス映画批評家協会賞 外国映画賞」などを受賞し、本邦でも2007年度・第81回「キネマ旬報ベスト・テン外国映画第1位」となっています。2009年の三峡ダム完成を控えて激変する中国の政治・経済・社会を反映させた作品で、三峡ダム工事では、その費用・便益効果よりも、国家メンツ&国威発揚のシンボルとして何が何でも完成させるというということが優先され、100万人を越える住人が移住を余儀なくされたといいます(三峡ダムにより水没する村を舞台にした映画に、 戴思杰(ダイ・シージエ)監督の「小さな中国のお針子」('02年/仏・中国)がある)。
物語の主人公は、山西省から奉節へやって来た2人の男女ですが、この2人は映画では互いに関係すること無く、全く別の2つの物語が展開していきます。つまり、1つは、16年前に別れた妻・幺妹 (ヤオメイ)(馬礼珍(マー・リーチェン))を捜すため、奉節にやって来た山西省の炭鉱
労働者・ 韓三明(ハン・サンミン)(韓三明(ハン・サンミン))の物語で、もう1つは、同じく山西省から、2年間音信不通となっている夫・ 郭斌(グォ・ビン)(李竹斌(リー・チュウビン))を捜すため奉節にやって来た 沈紅(シェン・ホン)(趙濤(チャオ・タオ))の物語です。この全く無関係な2つの物語を、同じ奉節を舞台として展開させていくことによって、三峡ダムの建設で沈んでいく街における人間の営みの儚さが伝わってきまし。また、古来より山水画の題材として描かれてきた壮大な長江の風景が、背景としてたびたび出てくるのが、その儚さを醸す上で効いています。
主人公たちが探す家族は、対照的な人生を歩んでいて、サンミンの妻子の実家はすでに水没し、彼女たちは、変貌する世界の末端に追いやられ、厳しい生活を強いられています。一方、シェン・ホンの夫は、大事業に強引に食い込んで利権を手にし、贅沢三昧の生活を送り、人が変わっています。多分あちことちで見られたであろう現実が映画の中に入り込んで、フィクションが掘り下げられているといった印象でした(当初はドキュメンタリー映画を撮るつもりだったようだ)。
ドラマ全体を、中国人の生活に欠かせない嗜好品である「烟」(タバコ)」「酒」「茶」「糖(アメ)」というタイトルで分割しているの興味深かったです。本来嗜好品は、日常的な次元で人と人を繋ぐものなのでしょうが、この映画に出てくる嗜好品は、彼らの孤立を象徴するかのように見えます。また、解体予定の建物がロケットのように飛んで場面など、シュールなシーンが3つぐらいあったでしょうか。実験的でもあります。
個人的には、サンミン が奉節で出会ったチンピラの小馬哥(マーク)(周林(チョウ・リン))が、「男たちの挽歌」('86年/香港)のチョウ・ユンファのファンで、映画での彼の動作のマネばかりしているのが可笑しかったですが、それだけに、あっさり事故で亡くなったのが寂しかったです(長江での水葬ってあるのかあ)。
「長江哀歌(エレジー)」●原題:三峡好人(英題:STILL LIFE)●制作年:2006年●制作国:中国●監督・脚本:賈樟柯(ジャ・ジャンクー)●製作:シュウ・ポンルー/ワン・ティアユン/チュウ・ジョン●撮影:余力為(ユー・リクウァイ)●音楽:林強(リン・チャン)●時間:113分●出演:趙濤(チャオ・タオ)/韓三明(ハン・サンミン)/李竹斌(リー・チュウビン)/王宏偉(ワン・ホンウェイ)/馬礼珍(マー・リーチェン)/周林(チョウ・リン)/ホァン・ヨン●日本公開:2007/08●配給:ビターズ・エンド=オフィス北野●最初に観た場所:シネマ ブルースタジオ(25-08-24)(評価:★★★★) font>
