2024年10月 Archives

「●宇宙学」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3539】 レス・ジョンソン 『人類は宇宙のどこまで旅できるのか

最新の知見をわかりやすく(易しく)解説。併せ読むことで多角的・相互補完的に理解できる。

最強に面白い! ! 宇宙の終わり.jpg最強に面白い 宇宙の終わり.jpg   文系のための東大の先生が教える 宇宙の終わり.jpg
ニュートン式 超図解 最強に面白い! ! 宇宙の終わり』['22年]『ニュートン超図解新書 最強に面白い 宇宙の終わり』['24年]/『やさしくわかる! 文系のための東大の先生が教える 宇宙の終わり (文系シリーズ) 』['23年]

 2冊とも「宇宙の終わり」についてわかりやすく(と言うより易しく)解説した本で、監修者が同じであるため、ほぼ似たような流れと結論になっており、イラストを多く入れたり、対話形式で分りやすかったりするので、読みながら相互に知識を補完し合うとよいと思いました(『ニュートン式 超図解 最強に面白い! ! 宇宙の終わり』の方は今年['24年]「ニュートン超図解新書」('23年創刊)にて新書化された)。

最強に面白い! ! 宇宙の終わり2.jpg 『ニュートン式 超図解 最強に面白い! ! 宇宙の終わり』の方の流れで行くと、まず第1章で、「地球と太陽の死」について述べています(いきなりという感じだが)。60億年後に太陽は膨張を開始し、今の170倍の「赤色巨星」になりますが、その時太陽に飲み込まれるのは水星と金星までで、現在の地球の軌道までくるものの地球の軌道もその頃は大きくなっているため、その時には地球は飲み込まれないと。ただし、太陽はいったん現在の10倍程度の大きさまで戻った後、82年億後に太陽が再膨張し、現在の200倍から600倍の大きさになって、今度は地球も飲み込まれるとのことです。そして太陽もやがて小さくなって白色矮星となり、あとはゆっくり冷えて輝きを失った残骸となると。

 第2章では、「天体の時代の終わり」について述べています。天の川銀河は39億年後にアンドロメダ銀河と合体して1つの楕円銀河になり、これら銀河団に属する銀河は数百億年から1000億年以内に1つに纏まって球状の巨大天体になると。ただし、宇宙が膨張を続けるためその巨大天体は宇宙の中で孤立し、やがて新しい星も生まれなくなって10兆年後には銀河は暗くなり、宇宙は輝きを失うと。ただ、ブラックホールや中性子星はまだ残っていて、10の20乗年後に銀河の中心のブラックホールが巨大化し、すべての天体を飲み込むと。そのブラックホールも、10の100乗年後には飲み込むものが無くなって「蒸発」してしまうとのことです。

 第3章では、「宇宙の終わりと生まれ変わり」について述べています。宇宙の未来を決めるのはダークエネルギーですが、そのダークエネルギーがよく分かってないらしいです。宇宙の未来も不確定で、緩やかな膨張、膨張から収縮へ転じる、膨張がこれまでより加速する、の3パターンが考えられると。第2章までは「緩やかな膨張」を前提に書かれていて、これだと最後には宇宙は素粒子だけが飛び交うだけの世界になり、その素粒子も、ブラックホールが蒸発した10の100乗年後には密度がゼロに近づくと(「10の100乗年後」というのがなかなかイメージしづらいが)。そこから後は、宇宙が生まれ変わるとの説を主張する研究者もいるようです。以下、宇宙が収縮に転じた場合、膨張がこれまでより加速した場合についても予測していますが、いずれも終末を迎えるシナリオのようです。

 第4章では、宇宙が長い年月を経て終末を迎えるのではなく、「突然死」する可能性についてもみていきます。それは、10の数百乗年に1回の確率で起こると言われる「真空崩壊」という現象によるもので、このあたりになると完全に理論物理学の世界で、イメージするのも難しいです。解説自体は数式など使わず易しい言葉で書かれているのですが(笑)。


 『やさしくわかる! 文系のための東大の先生が教える 宇宙の終わり』の方は、先生と生徒の授業(対話)形式で進められ、第1章(1時間目)では宇宙の「はじまり」から説き起こしていますが、第2章(2時間目)で「天体時代の終わり」(「地球と太陽の死」を含む)、第3章(3時間目)で「宇宙の終わり」を扱い、流れとしてはほぼ同じで、第3章で真空崩壊まで解説しています。

ざっくりわかる宇宙論 s.jpg 先にも述べたように、流れは同じですが、それぞれ違った表現や図・イラストを用いているため、併せ読むことで多角的・相互補完的に理解できる取り合わせかと思います。個人的には、宇宙の終焉に関しては、竹内 薫 著『ざっくりわかる宇宙論』('12年/ちくま新書)以来の久しぶりの復習になりました(同書の宇宙の終焉の予測は宇宙が「加速膨張」する前提に立っているが、本書の「緩やかな膨張」論も「緩やかに加速膨張する」ことを意味しており、結末は基本的には本書と同じである)。

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「星間旅行」「系外惑星移住」。宇宙と人類の叡智に思いを馳せるロマン本。

『人類は宇宙のどこまで旅できるのか.jpg『人類は宇宙のどこまで旅できるのか』.jpg スペースシップ.jpg 恒星間宇宙船イメージ図
人類は宇宙のどこまで旅できるのか: これからの「遠い恒星への旅」の科学とテクノロジー』['24年]
「宇宙トラベルガイド」.jpg『人類は宇宙のどこまで旅できるのか』0.jpg 未来の「星間旅行」はどのようなものとなるのかをNASAテクノロジストの物理学者が考察した本です(原題は「宇宙トラベルガイド」)。読んでみて、星間旅は想像以上に困難だと思いましたが、想像しなければ実現もできないということでしょう。
Les Johnson『A Traveler's Guide to the Stars』['22年]

『人類は宇宙のどこまで旅できるのか』2.jpg まず、宇宙は想像以上に大きいことを思い知らされます。最も近い恒星ケンタウルス座アル『人類は宇宙のどこまで旅できるのか』1.jpgファ星に行くのに、高速の10分の1のスピードで行っても40年かかります(「距離」問題)。したがって「星間旅行」は数十年から数百年かかるミッションとならざるを得ず、そのことによって様々な課題が浮上します。電源をどう確保するか、通信手段はどうするか、といった問題もあると指摘しています。さらには、推力を得るためのエネルギーはどうするか(「エネルギー」問題)。星間旅行にかかる時間が人の一生よりはるかに長いという問題もあります(「時間」問題)。ただし、NASAの研究者グループの間では、星間旅行は「奇説」ではなくなっているとのことです。

 もう1つ、宇宙探査や星間旅行において浮上するのが倫理的な問題で、例えば、地球での人類の生存が危ぶまれる状況になって、自分たちの"ゆりかご"を地球外に拡げるにしても、そこで太陽以外の恒星を公転する系外惑星を見つけ、そこに開拓地を作ることは、その星に生息するすべての生物を支配することにもなりかねず、果たしてそうしたことが許されるのかという問題もあるとのことです(大航海時代の帝国の植民地支配に喩えられている)。

恒星間宇宙船.jpg 星間旅行はロボットに旅させる手もあるが、やはり人間が行かないと本来の目的は達成できない。そうすると巨大な「ワールドシップ宇宙船」での生活はどのようなものになるのか。1回の移住は1万人が妥当ではないかとしています。ワールドシップは円筒形で大きさは直径500~600メートル、長さは3~5キロメートル程度になると(もやっとした話ではなく、とことん具体的であるのが本書の良さ)。ただし、ワールドシップ内で生まれた子どもの権利の問題にも触れています(倫理で簡単に白黒つけられる問題ではないとしているが)。

 先に挙げた幾つかの問題の内、ロケットのエネルギーの問題はかなり大きな問題のようで、核エネルギー(分裂・融合)、電磁エネルギー、光子ロケットなど、さらには「反物質」まで、様々な可能性を探っています。例えば、太陽帆で推進する宇宙船というのは実現可能ですが、太陽からエネルギーを得る静電セイルなども同じですが、太陽から離れすぎるとやはり使えません。星間宇宙船の設計に関しても、先に挙げた電源確保や通信の問題、放射線被曝問題、水・酸素、食糧、重力など様々な問題があるとのことです。

 そこで、ここから先はSF的にもなりますが、「スター・トレック」みたいに(日本で言えば「宇宙戦艦ヤマト」みたいに)光より早く移動する(時空をワープする)「ワープ航法」というものも検討の俎上に上げています。コレ、数学的には可能だが物理学的にはわからないそうです。ワームホールを抜けていくというSF的な話も出てきますが、これも、物理学者である著者によれば、理論的には単純なことのようです(でも、それが可能かどうかは分かっていない)。

スペースコロニーのイメージ図(Wikipediaより)
スペースコロニーの概念図.jpg 本書の予測によれば、星間旅行をする最初の有人宇宙船を我々が打ち上げるのは西暦3000年以降になり、宇宙船1機が目的地に達するのに約500年かかるとすると(凍結した胎児を大量に搭載し、目的地に着いて解凍するということも考えられるという)、人間が近隣の多くの恒星系(系外惑星)に移住しているのは西暦10000年頃のことだろうと。ただし、これは、銀河の歴史からすれば"一瞬"であるとしています。

 最後に、宇宙人(地球外知的生命体)が地球に来ているとして、どうしてそれを発見できないかという疑問については、地球が進化し続けた46憶年のうち、我々が宇宙船を開発してまだ100年も経っておらず、相手にも同じことが言えるわけで、相手が先に星間宇宙船で地球に来ていたとしても、6500万年間栄えた恐竜の時代と、それに比べ極々短い人類繁栄の時代のどの時期に地球に辿り着くかという確率の比較からすると、今現在、異星人が地球に来ている可能性は低いとしています(この説は以前にもどこかで読んで納得した覚えがある)。

ざっくりわかる宇宙論 s.jpg ともあれ、面白かったです。宇宙のスケールの大きさや、人類の叡智の可能性に思いを馳せることができる、ロマンに満ちた本でした。以前読んだ、竹内 薫 著『ざっくりわかる宇宙論』('12年/ちくま新書)では、最も近いケンタウルス座アルファ星域に行くにしても光速で4年、マッハ30の宇宙船で光速の3万倍、12万年もかかるため、ワームホールでも見つけない限り難しいのではないかとしていましたが、NASAにはこうしたことを真剣に考えている(マッドではない)サイエンティストがいるのだなあ。

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「●橋本 忍 脚本作品」の インデックッスへ

力作。名作脚本成立の経緯を("藪の中"的なものを含め)興味深く知ることができた。

鬼の筆.jpg鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折』['23年]

 2024(令和6)年・第55回「大宅壮一ノンフィクション賞」受賞作。

 歴史的傑作とされる数々の映画作品のシナリオを生み出した脚本家・橋本忍 (1918-2018/享年100)の評伝。著者が生前に行った9回、十数時間にわたるインタビューと、関係者への取材、創作ノートをはじめ遺族から託された膨大な資料をもとに、映画人の「真実」に迫っていきます。

 もともとは新潮社の月刊誌「新潮45」に連載する目的で始まった橋本忍への取材が、橋本の体調不良などもあって休載している間に雑誌そのものが廃刊になり、ただし文藝春秋に引き継がれ雑誌「文藝春秋」に掲載、編集部の人事異動によって歴代9人の編集者を経て完成に日の目を見たもの。個人的には著者の文章はコラムで読むことが多いのですが、こうして評伝として纏まったもの(全480ページ)を読むと、改めてその筆力に打たれ、力作であると思うとともに、著者が日本大学大学院博士課程を修了した芸術学博士、つまり、かつて学究の徒であっことに思い当たります。

 ただし、難しいことが論文調に書いてあるのではなく、橋本忍が脚本を書き始めることになったきかっけから始まって(師匠は伊丹万作(1900-1946)だったのかあ。修行時代に会社勤めをしながら師事した)、最初の脚本作「羅生門」から、以下、作品ごとにその出来上がった経緯を事実に沿って解説しています。そしてこれが、世間にはほとんど知られていないと思われる驚くべきことの連続で、読み物としても興味深く、時に刺激的なものとなっています。

羅生門dvd.jpg 最初の「羅生門」('50年)は、橋本忍が、夏目漱石は何度も映画化されているが芥川龍之介は映画化されていないことに目を付けて、芥川の「藪の中」を脚本化したが(3日で書き上げたとのこと)、病気療養中の暇潰しに書いたもので、自分でも映画化されるとは思ってなかったとのことです。それが黒澤明の目にとまり、長さ的に足りなかったので「羅生門」と併せて尺を長くしたとのこと。ただ、このアイデアは、黒澤は自著『蝦蟇の油』で自分の発案としていますが、橋本忍の自著『複眼の映像』では、自分が「羅生門」を入れたらどうかと言ったら、黒澤はきょとんとして、じゃあ「羅生門」を入れてあんた書き直して、と言われたという、まさに「藪の中」のような話(笑)。以下、どの作品においても、このような「藪の中」的な食い違いが少なからず出てきます(それだけ、著者が丹念に記録や証言を追っているといことでもある)。

生きる 映画.jpg 同じく黒澤が監督した「生きる」('52年)についても、これは橋本と黒澤明・小国英雄と共同脚本になっていますが、小国はトルストイの『イワン・イリッチの死』が黒澤のアイデアの原点としていますが、橋本の書いた脚本はそこから大きく離れた内容となっていて、これも黒澤のアイデアなのか橋本の創作なのかよくわからないようです(アプローチは原作と異なるが、テーマは原作と通底している点は橋本らしいとも)。

「七人の侍」.jpg蜘蛛巣城 1957 (1).jpg切腹 1962 dvd.jpg張込み 映画 dvd.jpgzero1b.jpg黒い画集 あるサラリーマンの証言 ポスター.jpgsunanoutuwa12.jpg「日本沈没」1973.jpg八甲田山 1977.jpg 以下、黒澤の「七人の侍」('54年)や「蜘蛛巣城」('57 年)、小林正樹次監督の「切腹」('62年)、松本清張の原作作品の「張込み」('58年)、「ゼロの焦点」('61年)、「黒い画集 あるサラリーマンの証言」('60年)、「砂の器」('60年)、超大作である「日本沈没」('73年)、「八甲田山」('77年)など、自分が観た映画に纏わる脚本成立の様々な裏話が興味深く読め、観ていない作品も見たくなりました。

 映画ではどうしても監督や役者に目がいきがちですが、作品の雰囲気のかなりの部分は脚本家が作り上げているとも言えるかもしれません。その割には、日本一の脚本家と言われる橋本忍でさえ、どの作品の脚本を書いたのかあまり知られなかったりするのではないでしょうか。そうした意味でも、脚本家に焦点を当てた本書は良かったと思います。

「鬼の筆」刊行記念 戦後最大の脚本家・橋本忍 名作選+春日太一トーク&サイン会(横川シネマ)
鬼の筆 トークサイン会.jpg

《読書MEMO》
●目次
序 鬼の詩
一 山の章
二 藪の章~『羅生門』
三 明の章~『生きる』『七人の侍』
四 離の章~『蜘蛛巣城』『夜の鼓』『女殺し油地獄』『風林火山』
五 裁の章~『真昼の暗黒』『私は貝になりたい』
六 冴の章~『切腹』『仇討』『侍』『日本のいちばん長い日』『上意討ち』『首』
七 血の章~『張込み』『ゼロの焦点』『人斬り』『黒い画集 あるサラリーマンの証言』『砂の器』
《特別インタビュー》山田洋次の語る、師・橋本忍との日々
八 計の章~『人間革命』
九 雪の章~『八甲田山』
十 犬の章~『八つ墓村』『幻の湖』
十一 鬼の章~『愛の陽炎』『旅路 村でいちばんの首吊りの木』『鉄砲とキリスト』『天武の夢』
橋本忍 脚本映画一覧

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「東京人」としては約30年ぶりの「映画館」特集。手元に置いておきたい。

東京映画館クロニクル01.jpg東京映画館クロニクル02.jpg
東京人2022年12月号 特集「東京映画館クロニクル」なつかしの名画座から令和のミニシアターまで』['22年]

東京映画館クロニクル04.jpg 月刊「東京人」は1986年に〈都市を味わい、都市を批評し、都市 を創る〉をキャッチフレーズに創刊された雑誌です。東京の歴史・文化・風俗・建築物・文学・風景など「東京」という舞台が生み出すさまざまな事象を、毎号の特集で探っていきましたが、この号の特集「東京映画館クロニクル」では、並木坐、日比谷映画劇場、大井武蔵野館、岩波ホールなど懐かしの映画館を貴重な写真とともに振り返るとともに、ラピュタ阿佐ヶ谷、シネマ・チュプキ・タバタ、ポレポレ東中野など現代の特色あるミニシアターの最前線を紹介しています。「東京人」における「映画館」の大特集はおよそ30年ぶりだそうです。

 図版では、銀座・新宿・渋谷・池袋といった4大エリア別「思い出の映画館イラストマップ」が良かったです。東京映画館クロニクル03.jpg今は無い映画館の写真も貴重です。また、川本三郎氏(過去に編集委員としてこの雑誌に係わっている)、青木圭一郎氏(『昭和の東京 映画は名画座』)をはじめ、"映画観愛"に溢れる人たちが文章を寄せています。川本氏が中学生の時いちばんよく行ったのが、家から歩いて5分ぐらいのところにあった阿佐ヶ谷オデヲン座だそうです。神保町シアターが好きで、近年では何と言っても「芦川いずみ特集」が大ヒットだとも述べています(芦川いずみは'23年にも再特集された)。

 この特集が組まれたきっかけは、2022年7月29日の岩波ホール閉館がひとつあるのではないかと思われます。閉館する月の中旬に映画館の写真集で知られる中馬聡氏が撮った写真と文が掲載されています。これまでの上映作品のフライヤー(チラシ)が壁面に並び、閉館が近いことを感じさせます。
東京映画館クロニクル05.jpg

 その次に、正木香子氏の文と尾田信氏の写真で、ギンレイホールの手描き看板を描いていた菅原克也さんという職人さんが紹介されていますが、ギンレイホールもこの特集雑誌の刊行に合わせるかのように、11月27日に閉館することが決まっていました(記事では"一時閉館"となっており、ホームページでは"閉館"としながらも移転再開については交渉継続中となっていた)。最終上映日にここで「マリー・ミ―」「君を想い、バスに乗る」の二本立てを観ました。
東京映画館クロニクル06.jpg

 大井武蔵野館、中野武蔵野ホールにそれぞれ関係が深い人の取材記事も良かったです。以前、大井町に久しぶりに行きましたが、どこが映画跡地かよくわかりませんでした(今は、消えた映画館をマップで位置表示するサービスがあるので、それで分かるかも)。

 ムックではないため、保存版とまで言えるかどうかはともかく、手元に置いておきたい特集でした。

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「人は死ぬ」が霊魂は生き続けると考える方が、人生は豊かになるのではないかという本。

人は死なない.jpgおかげさまで生きる (幻冬舎文庫).jpgおかげさまで生きる (幻冬舎文庫)』['17年]

人は死なない-ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索』['11年] 

 現役のER医師である著者が、生と死が行き交う日々の中で、数々の不思議な体験を通して大いなる力や神・魂の存在について思索した本。

 第1章では、自身が医師になった理由や、生と死の現場を見て来て、人は必ずこの世を去るものだと実感しながらも、容態が急変して亡くなる人もいれば予想を超えて命を繋ぐ人もいること、現代医学に限界がある一方で、気功などの不思議な世界を自身も体験したことなどが綴られています。

 第2章では、神は在るかということを問うています。著者自身は医師として科学主義の道を歩んできたが、科学主義も万能ではなく、物質領域を扱う自然科学に対して、精神の領域を扱う知の領域として宗教があるとしています。以下、三大宗教をはじめとする世界の宗教や日本の宗教について考察し、さらには、生命の神秘、宇宙の神秘に想いを馳せ、宗教における「神」とは、人知を超えたすべてを知る「大きな力」であり、自身はそれを「節理」と呼ぶとしています。

 第3章では、著者自身の体験も含め、非日常的な事例、現在の自然科学では説明できない、言うならば霊的な領域に関する事例を紹介しています。ここでは、自分の中に他者が入り込んでしまった人や、自分の「死」を見つめる経験(所謂「体外離脱体験」)をした人の話、さらには著名な登山家メスナーの不思議な体験が紹介されたり、登山を趣味とする著者自身の墜落事故と二度目の滑落事故の際の不思議な体験が語られています。

 いずれも実に不思議な話ですが、極め付けは、著者の父親の晩年と母親の晩年、そして母親が亡くなった際の話(孤独死だった)に続く、母親との「再会」の話です。つまり、霊媒師のような人を通して、著者が亡くなった母親と対話(交霊)したという話で、「そちらでお父さんに会ったの?」「お父さんには会わないわ」とか、かなり具体的です。やはり実際にこうした経験をしたことが、著者が「霊性」というものに思索をめぐらす契機になったのでしょう。

 第4章では、過去に「霊」について研究した人々を紹介し、スピリチュアリズムとは何か、スピリチュアリズムにおける霊魂と体の概念や近代スピリチュアリズムの系譜などを解説しています。

 最後の第5章では「人は死なない」という章題のもと、人知を超えた大いなる力(節理)と生の連続性、そしてそれを認識した上で人はいかに生きるかを述べています。ここでは「現代の霊性」というものについて考察し、「利他」という考えに到達し、著者の仕事である救急医療における利他の実践を追求するとし、「人は死ぬ」が霊魂は生き続ける、という意味で「人は死なない」として、本書を締め括っています。

 読んでみて、「現代の霊性」というものを「生きるための知恵」として著者が捉えていることが窺えました。あとがきにもありますが、「人間の知識は微々たるものであること、節理と霊魂は存在するのではないかということ、人間は節理によって生かされ霊魂は永遠である、そのように考えれば日々の生活思想や社会の捉え方も変わるのではないか」というのが本書のモチーフです。

矢作 直樹.jpg Amazonのレビューに「本書の一番のポイントは、現役の東大医学部の教授の著者が「霊」の存在を確信し「人は死なない」と言い切った点にある」としたものがありましたが、「人は死なない」と声高に言っているのではなく、人はもっと自分が「死ぬ」という事実をしっかり見つめる必要があるとした上で、「人は死ぬ」が霊魂は生き続けると考える方が人生は豊かになるのではないかと投げかけている本であると、個人的にはそのように受けとめました。スピリチュアリズムって無碍に否定するものでもないと教えてくれる、その意味で得るところがあった本でした。


人は死なない-ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索-』['11年/バジリコ]
医師が考える死んだらどうなるのか?: 終わりではないよ、見守っているよ』['13年/PHP研究所]
悩まない---あるがままで今を生きる』['14年/ダイヤモンド社]
身軽に生きる』['20年/海竜社]

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