「●ビリー・ワイルダー監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT⇒ 【2418】 ワイルダー 「シャーロック・ホームズの冒険」
「●マリリン・モンロー 出演作品」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」のインデックッスへ「○都内の主な閉館映画館」のインデックッスへ(ACTミニシアター)
検閲に脚本をズタズタにされながらも、ワイルダーの洒落たセリフとモンローの演技力でもってる「七年目の浮気」。

「七年目の浮気 [Blu-ray]」 映画スチール写真 「お熱いのがお好き(特別編) [DVD]
」
妻子を避暑に送り出した出版社に勤める中年サラリーマンのリチャード(トム・イーウェル)が、
自分のアパートの階上にマリリン・モンローそっくりの美女(モンロー)が引っ越してきたことを知って浮気の虫が疼き、彼女を映画に誘ったり、冷房のきいた涼しい部屋を提供して浮気を試みる―。
マリリン・モンローは、このビリー・ワイルダー監督の「七年目の浮気」(原題:The Seven Year Itch、1955年)の頃は精神状態が不安定で、撮影時にはうつ状態になることが多く(コメディ映画を撮っているのにそれはマズイ)、セットでは集中力を欠いてセリフを忘れてしまい、撮影に遅れてくることも少なくなかったとのことです。更に、撮影期間中のジョー・ディマジオとの離婚により(この映画が離婚の一因になったとも言われる)、精神状態はますます悪化し、モンローの遅刻は頻度を増して、映画の完成が予定より遅れたそうです。
Photo by Documentary photographer George Zimbel

因みに、例の地下鉄の風でスカートがまくれ上がるシーンは、深夜1時からの屋外ロケ撮影にもかかわらず数百人ものカメラマンや数千人とも言われる野次馬が集まったため、歓声や野次などの雑音がマイクに入り過ぎて本編では使われず、結局スタジオでセットで撮影し直したとのことです。但し、屋外ロケは、最初から映画の宣伝だけのためだったとの内輪話もあります。夫のディマジオは屋外ロケ撮影に立ち会って不快感を露わにしており、二人の離婚はその2週間後でした。この撮影が離婚の契機となったとすれば、罪作りな話かも。
Marilyn Monroe on location, "The Seven Year Itch", New York City 1954
(左上及び左写真は屋外ロケの際に報道カメラマンなどが撮ったもの、その右の写真はスタジオ内での撮影模様(左はモンローに演技をつけるビリー・ワイルダー監督))。
スタジオ撮影でもモンローのセクシーさはとどまるところを知らなかったせいなのか(笑)、実際の作品の中では顔だ
けのショットと足だけのショットに分かれてしまっています(映画スチール写真とも異なる映像になっている)。
こうした撮り直しやショットの分割は、制作中に米国映倫の規制圧力により映画会社から撮影現場に修正要請が入り、脚本の中の際どいシーンが次々カットされるなどし、そうしたことの一環として
、地下鉄シーンでのスカート内の露出も最低限に抑えたということのようです(脚本には不貞行為の場面はなかったが、サラリーマン氏が自分のベッドでモンローのヘアピンを見つける描写など不貞を連想させるシーンは、映倫からの検閲を受けると考えた会社側がワイルダーに削除を命じたりした)。
モンローは同監督の「お熱いのがお好き」(原題:Some Like It Hot、1959年)の撮影の際にも精神不安定のために遅刻を繰り返しますが、トミー・カーティスとジャック・レモンがほぼ全編を通じて女装で登場する話であったため、ワイルダー監督がどぎつさを緩和するためにモノクロにしたのが、当然カラー作品だと思っていたモンローには気に入らなかったというのが元々あったようです。撮影中にちょっとでも気に障ることがあると助監督に当たり散らしたりなどして、「撮影現場でのトラブルの原因は99%はモンローにあった」と現場関係者に言わしめたほどでした。
共演のトミー・カーティスはモンローとのキスシーンについて「ヒトラーとキスしたようなものだ
」とコメントしています(トミー・カーティス本人は後にこの発言を否定している)。一方、もう一人の共演者ジャック・レモンは催眠術の名手であり、ロケ宿泊地のホテルでその技法により彼女を催眠誘導してリラクゼーションに導き、何とかクランクアップに漕ぎ着けたという話もあります(藤本正雄『催眠術入門』('67年/カッパ・ブックス)など)。

興味深いのは、モンローのおかげですったもんだした撮影であったにも関わらず、それぞれ作品が公開されると、「七年目の浮気」の方は興業収入1,200万ドルの大ヒットを記録して、モンローの演技は批評家と観客の両方から高く支持され、彼女は更なる人気を博し(日本でも'55年11月の「テアトル東京」オープンの杮落とし上映がこの作品だった)、また「お熱いのがお好き」ではその演技でゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を獲得、名実ともに大女優の地位を築き上げていることで、「お熱いのがお好き」では撮り直しをする度に演技が良くなっていき、撮影が終了して帰りかける頃には、彼女が誰よりも元気であったと言います。
「七年目の浮気」でもそんな感じだったのではなかったのでしょうか。元が舞台劇であるにも関わらず、先に述べたように検閲予防のため脚本がズタズタにされた作品で、初めて観た時の個人的評価はそう高くはなかったのですが(脚本も演出も「お熱いのがお好き」の方が上か)、今観ると、この作品は、ワイルダーの洒落たセリフと「モンローの演技力」でもってるような気がして、当初の評価に星1個分プラスしました。
そういえば、イラストレーターの和田誠氏も、『お楽しみはこれからだ』で結構モンローを取り上げていたのではなかったかなあ。まあ、和田誠氏はビリー・ワイルダーがそもそも好きだからなあ。今、探してみたら『お楽しみはこれからだ PART3―映画の名セリフ』('80n年/文藝春秋)で、モンローが「大アマゾンの半魚人」('54年)を観た後の感想を言ったセリフ「半魚人は可哀そう。顔は怖いけれど悪者じゃないわ。愛情を求めているのよ」というのを取り上げていました。
『お楽しみはこれからだ〈part 3〉―映画の名セリフ (1980年)』
ワイルダー監督はモンローを使っての撮影が終わる度に、彼女の情緒不安定と我儘にはもう懲り懲りしたと周囲に漏らしながらも、結局のところ彼女のコメディエンヌとしての才能は高く評価していたようで、三度(みたび)彼女を使って次回作を撮ることを考えていたといいますが、彼女の死によってそれは実現しませんでした。
モンローの演技力については、錚々たる映画スターを輩出した俳優養成所「アクターズ・スタジオ」を主宰していたリー・ストラスバーグが、モンローとマーロン・ブランドが、彼の門下で最も優れた才能の持ち主であると言っていたそうです(亀井俊介 『アメリカでいちばん美しい人―マリリン・モンローの文化史』('04年/岩波書店))。
「七年目の浮気」の最後は、件(くだん)のサラリーマン氏は自らが妻を愛していたことを再認識するというコメディ映画らしい無難なオチですが、セックスシンボルとして多くの男性を魅了する一方で、"正妻"となるには落ち着きが悪く、彼女自身はいつまでたっても安定した境遇を得られないという、公私の両面に渡ってモンローに合致したヒロイン像だったように思います(ラストのモンローはやや寂しげか)。また、クレジットでモンローの役に名前が無く、単に「ザ・ガール」となっていることから、この女性自体が主人公のサラリーマン氏の妄想ではないかという見方もあるようです(川本三郎氏など)。
「七年目の浮気」●原題:THE SEVEN YEAR ITCH●制作年:1955年●制
作国:アメリカ●監督:ビリー・ワイルダー●製作:ビリー・ワイルダー/チャールズ・K・フェルドマン●脚本:ビリー・ワイルダー/ジョージ・アクセルロッド●撮影:ミルトン・クラスナー●音楽:アルフレッド・ニューマン●原作:ジョージ・アクセルロッド●時間:
105分●出演:マリリン・モンロー/トム・イーウェル/イヴリン・キース/ソニー・タフツ/オスカー・ホモルカ/マルグリット・チャップマン/ロバート・ストラウス●日本公開:1955/11●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(84-01-14)(評

価:★★★☆)●併映:「フロント・ページ」(ビリー・ワイルダー)/「アラビアのロレンス」(デビッド・リーン)/「せむしの仔馬」(イワノフ・ワーノ)/「雪の女王」(レフ・アタマノフ) 高田馬場(西早稲田)ACTミニシアター 1970年代開館。2000(平成12)年3月26日活動休止・閉館。
「七年目の浮気 特別編 [DVD]」

「お熱いのがお好き」●原題:SOME LIKE IT H
OT「お熱いのがお好き〈特別編〉 [DVD]」●制作年:1959年●制作国:アメリカ●監督:ビリー・ワイルダー●製作:ビリー・ワイルダー/チャールズ・K・フェルドマン●脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド●撮影:ミルトン・クラスナー●音楽:アルフレッド・ニューマン●原作:ロバート・ソーレン●時間:120分●出演:マリリン・モンロー/トニー・カーティス/ジャック・レモン/ジョージ・ラフト/パット・オブライエン/ジョー・E・ブラウン/ジョージ
・E・ストーン/ジョアン・ショーリー/ビリー・グレイ●日本公開:1959/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(84-02-25)(評価:★★★☆)●併映:「鉄道員」(ピエトロ・ジェルミ)/「カビリアの夜」(フェデリコ・フェリーニ)/「フェリーニの監督ノート」(フェデリコ・フェリーニ)/「聖メリーの鐘」(レオ・マッケリー)/「ふくろうの河」(ロベール・アンリコ)/「(チャップリンの)ノックアウト」(チャールズ・アヴェリー)
作品はモノクロ



うつ病の治療を受けていたマーティンが射殺死体で発見される。自殺を装っていたが体内から薬物が検出され、バーナビーは他殺の線で捜査を開始、マーティンが通っていた病院の、バーナビーの知り合いの女性院長ジェーンを訪ねるが、その後病院の関係者が次々と殺される―。
のがこのシリーズのパターン。では一体犯人なのかという思いで観ていましたが、結局最後まで判らなかったなあ。犯人が壊れ過ぎていたというのもあるかも。遂にはバーナビーまで狙われ、「犯人は犯行を愉しんでいる」と、バーナビーもご機嫌斜め(犯人にクスリを飲まされたため気分も優れないわけだが)。
犯人は犯行を問い詰められても悪びれた様子もなく、実は過去に父親も殺していたわけで(バーナビーの異常者のモードに合わせた訊き方が興味深い)、特にブラスバンド狂いの薬局店主を殺害する時の様子は、よくこれを再現映像化したものだと(英国のTVコードは緩い?)。それにしても精神科医であるジェーンは、全く気が付かなかったのか。犯人が判ったと伝えられても、誰が犯人か思い当るフシは無かったみただけれど。
ロープ屋などから大量のロープが盗まれたりした謎は、連続殺人にロープが絡んでいたため、女性院長を守ろうとした患者の一人がそれを隠そうとしてやったわけか。病者特有の偏執的な思い込みはともかく、わざわざ推理をややこしくするような場所に隠さんでくれと言いたくなります。
バーナビーの娘カーリーの久しぶりの登場で(移動図書館は地域奉仕活動の一環?)、トロイは彼女の前でいいところを見せようとする一方、バーナビーと女性院長の親密度にも気になって、結局、「僕も刑事だ」と彼女の前で自らの人間観察力をアピールしつつも、余興でスプーン伴奏の妙技を見せたぐらいで、事件推理にはいいところ無しでした。カーリーとのキスシーンはあったものの、カーリー初の死体発見で、そうした雰囲気もぶっ飛んでしまったし、上司であるバーナビーからは、死体発見現場にカーリーと二人でいたことについて、露骨に不愉快だと言われてしまう始末です。
振り返ってみれば、妹が「ママのこと好き?」とバーナビー聞いたりしたのは、カマをかけてきたわけか。怖いね。面白かったけれど、病院の事務長といい薬局店主といい、その殺害は副次的なもので、動機的にはやや弱いか。どちらかというと、バーナビーの指摘するように愉快犯に近く、その意味でも、犯人は壊れ過ぎていたという印象です。
「バーナビー警部(第25話)/背徳の絆」●原題:MIDSOMER MURDERS:DEATH AND DREAMS●制作年:2003年●制作国:イギリス●本国上映:2003/01/10●監督:ピーター・スミス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ピーター・J・.ハモンド●撮影:ダグ・ハロウズ●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/イズラ・ブレア/スチュアート・バンス/フィリップ・フォックス/ペルディータ・ウィークス●DVD発売:2004/11●発売元:キングレコード(評価:★★★☆)
あんかけの時次郎(藤田まこと)は、喧嘩は弱いがハッタリをきかすのは得意な浪花っ子ヤクザ。非力ゆえにヤクザ連中から干された際に、口八丁・手八丁の小坊主・珍念(白木みのる)と知り合う。当時の殺し屋連中の間では、清水次郎長を斬って日本一になろうという気運が盛んで皆が清水を目指していたため、時次郎らも清水へ向かう。途中ハッタリで殺し屋連中の首領となった時次郎だったが、次第に怖くなって金を持って逃げようとしたのがバレる。運良く追手の殺し屋を斬ることが出来て難を逃れたと思いきや、今度はすっかりカラ自信を回復してしまった時次郎、珍念の止めるのも聞かず、次郎長を斬るため再び徒党を組んで清水へ向かう。ところが清水に来てみると、次郎長一家は食中毒に見舞われていて、次郎長を斬るつもりがその助太刀をするはめに―。
TVコメディ番組「てなもんや三度笠』は、1962(昭和37)年5月から1968(昭和43)年3月までTBS系列で放送され(制作はABC朝日放送)、平均視聴率は関東地区26.6%、関西地区37.5%、最高視聴率は関東地区42.9%、関西地区64.8%('66年2月20日放送)と「西高東低」でしたが、何れにせよスゴイ数字。
TVドラマの方は藤田まこと(1933-2010/享年76)の出世作で、藤田まことが番組のオープニングで、小コントの
後「"俺がこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー!"」というフレーズを発しながら、テレビカメラの前に前田製菓のクラッカーを差し出すCMで、そのクラッカーも人気商品となりました(後に「あたり前田のクラッカー」という商品名になった)。
映画版は、セット撮影だけでなく自然を背景としたロケも行っていて、スケールは大きくなっており、黒澤明の「
たいな箇所がある)。しかしながら、逆に、舞台劇としての軽妙な面白さは削がれている印象も受けます。TVアニメの劇場版作品などにもありがちですが、TVで観ている分には乾いた笑いが楽しめるところを、最後、無理矢理ウエットな気持ちにさせられてしまうというのはシンドイかな(時次郎と珍念の互いを思い合う気持ちのようなものがラストで強調されていている)。全体としては、キレイに纏めすぎてパンチ力不足という感じでしょうか。
但し、当時の関西喜劇人が多く出演しているという点で、ああ、こんな人も出ているのか、という意味での見所は多いです。財津一郎はまだ登場していませんが、平参平、大村崑、芦屋雁之助、芦屋小雁、茶川一郎、トニー谷、堺駿二(堺正章の父)、夢路いとし・喜味こいし等々、それぞれの演技やギャグも賑やかしい限りです。そんな中、花菱アチャコが清水次郎長役を、ノーギャグで時代劇の親分そのままに演じているのが印象的でした。
「てなもんや三度笠」(映画版)●制作年:1963年●監督:内出好吉●脚本:野上龍雄●撮影:羽田辰治●原作:香川登志緒●時間:81分●出演:藤田まこと/白木みのる/平参平/大村崑/大泉滉/芦屋雁之助/芦屋小雁/トニー谷/花菱アチャコ/茶川一郎/若水ヤエ子/夢路いとし/喜味こいし/秋田Aスケ/秋田Bスケ/坂本スミ子/鉄砲光三郎/赤木春恵/香山武彦●公開:1963/06●配給:東映●最初に観た場所:京橋フィルムセンター(05-02-18)(評価:★★★) 





王子スサノオは両親イザナギとイザナミのもとで楽しく暮らしていたが、ある日、母イザナミが亡くなる。泣き疲れて浜辺で寝てしまったスサノオの夢に母が現れ、勾玉を与えスサノオを励ます。スサノオは黄泉の国に母を訪ねていくことを決意して舟を作り、ウサギのアカハナを供に船出する。大海原で怪魚を退治して、海の神ワダツミに感謝され、兄ツクヨミが治める夜の国へと案内される。ツクヨミに黄泉の国への道を尋ねるが教えてもらえず、火の国を訪ね、火の国の荒廃の元凶だった火の神と戦い打ち負かす。移住できる豊かな土地を望む火の国の住民の代表タイタン坊を供に加え、スサノウは姉アマテラスが治める高天原に行く。姉の勧めにより高天原で働き始めたものの、失敗が重なり、アマテラスは岩戸に隠れてしまう。日の神アマテラスが隠れて世界が真っ暗になったため、高天原の住人たちは一計を案じ、アマテラスを岩戸から連れ出すのに成功、騒動の責任を感じて反省するスサノオを見て、アマテラスはスサノオを励まし、出雲の国に送り出す。出雲の国は荒廃し、母イザナミの面影を思わせる少女クシナダ姫が怪物・八叉の大蛇(ヤマタノオロチ)の生贄にされようとしていた―。
神話の天岩戸説話、素盞嗚尊の八岐大蛇退治に材を得た東映動画(現東映アニメーション)の劇場版長編アニメで、東映動画は、「
監督は前作「安寿と厨子王丸」の藪下泰司(「白蛇伝」も、監督名は大川博・東映社長になっているが、実質は藪下が監督)から、当時新人の芹川有吾(1931-2000)に交代しています(この時から正式に"演出"が"監督"になり、名実ともにその役割を全面的に担うようになった)。演出助手(助監督)として「安寿と厨子王丸」の時と同じく高畑勲(1953-2018/82歳没)がついています。
スサノオの声は住田知仁(現・風間杜夫、1949年生まれ)が担当。前作「安寿と厨子王丸」に比べて非常に躍動的で、とりわけ、八叉の大蛇と天早駒(アメノハヤコマ)に跨るスサノオの空中戦シーンは半年かけて作画されたもので、原画1万枚超、300カット、日本アニメーション史上に残る名場面とされています(アメリカでは1964年に"The Little Prince and The Eight-Headed Dragon"の題で公開)。ゴジラ映画の伊福部昭が担当した音楽も相乗効果として効いているように思います。
個人的には、この八叉の大蛇の出てくる場面だけは、かなりはっきり記憶に残っており、これを学校課題の絵日記に書きました(鑑賞日は公開年の7月20日となっており、他の学校の生徒も劇場に来ていたと書いてあるから、学校で課外授業として観に行ったのかも)。ストーリーの根底は母子物なのですが、「おもしろかった」「ハラハラした」「おかしかった」というのが当時の主な感想で、絵の方に力が入って、感想の方はやや手抜きしたのかも(小学校低学年だとこんなものか)?
最初に観て何十年経た今も、映画の中の闇夜で暴れる八叉の大蛇のイメージが残っているということは、(今のアニメの水準からするとさほどでもないのですが)当時としてはそれだけインパクトがあったということなのでしょう。個人的な思い入れもあって、リバイヴァルで観た「白蛇伝」と並んで初期東映アニメの傑作として推したい作品です。
神話では、素
盞嗚尊は、幼少期のマザコン、高天原での凶暴性、八岐大蛇退治での英傑ぶりと多様な側面を持ち、日本で最初に和歌を詠んだとされる文人的側面もあるキャラクターですが、素盞嗚尊って意外と身近なのかも。全国に素盞嗚神社があり、ウチの近所にある素盞雄神社も、素盞雄大神(すさのおおおかみ)を祭神としていますが、但し、明治初期の廃仏毀釈により祭神名をそのように定めたようです(神話研究では八岐大蛇は氾濫しやすい河川に象徴で、素盞嗚尊が治水事業を行って氾濫を治めたことが八岐大蛇退治として象徴化されているとも)。
その最初の作品「狼少年ケン」は、'63年元日に放送開始した虫プロダクションの「鉄腕アトム」が、東映動画内では低かった前評判と裏腹に高い視聴率を獲得するようになると、東映動画としても安穏としておれなくなり、元手塚治虫のアシスタントで若手の俊英アニメーターでもあった月岡貞夫が
ロに活動の場を移しています(2019年度前期のNHK連続テレビ小説で、アニメーターの奥山玲子をモデルとした「なつぞら」(主演:広瀬すず)において「百獣の王サム」(「狼少年ケン」がモデル)
を担当する猿渡竜男(演:新名基浩)のモデルが月岡貞夫(現・宝塚大学教授)とされ
ている。因みに、奥山玲子は「わんぱく王子の大蛇退治」と「狼少年ケン」の制作期間の合間の1963年7月7日に同僚だった小田部羊一と結婚しているが、当時は仕事と労働組合活動に追われる日々で、新婚気分を味わうどころではなかったようだ)。
「わんぱく王子の大蛇(おろち)退治」●制作年:1963年●監督(演出):芹川有吾●製作:大川博●脚本:池田一朗/飯島敬●演出助手:高畑勲/矢吹公郎 ●撮影:石川光明/菅原英明●原画監督:森康二●原画:古沢日出夫/熊川正雄/大塚康生/永沢詢/奥山玲子ほか●音楽:伊福部昭●時間:86分●声の出演:住田知仁(現・風間杜夫)/岡田由起子/久里千春/木下秀雄/篠田節夫/友部光子/山内雅人/木下秀雄/風祭修一/新道乃里子/川久保潔/巌金四郎/八木光生/山内雅人/古賀浩二●公開:1963/03/21●配給:東映(評価:★★★★)

小林亜星


春桜の季節、男(伊武雅刀)は、桜の樹々をトラックの荷台に積み、それらを移植するための場所を探して田舎を旅している。トラックの前に突如、日傘をさした桜模様の着物の女(風吹ジュン)が現れ、どうやら彼女は目が不自由なようだ。自分も桜を追う旅の途中だと話す女に、男は、女人禁制のトラックには乗せられないと一度は断るが、結局は女を乗せてしまう。その女と旅するうち、男はだんだん彼女の妖気に嵌ってゆく―。
鈴木清順(1923年生まれ)が、満開桜を追って小淵沢、河口湖、御殿場などでロケを敢行して撮り上げたという、劇場公開を前提としないOⅤであり、1984 (昭和59)年に「ラフォーレ原宿」で上映された後は、ロードにかからないのは勿論のこと殆ど再上映されることはありませんでしたが、2003年にやっと劇場公開されました(その後、2008年にDVD化)。
それまでの鈴木清順作品と言うと、ウエット感のあるフィルム映像、計算され尽くしたセットという印象があったので、乾いた印象のビデオ映像は、新鮮と言えば新鮮でした(ロケハンの多用は、「
途中、男が女に桜湯を飲ませると、花びらを飲み込んでしまった女の目が見えるようになり(と言っても、実はそれまで盲人のふりをしていたのだが)、男は女に桜の樹の移植を請け負った経緯を話す。男は、桜を驚かしてはいけないと言って、夜は荷台に乗せた棺桶に入って寝る―この監督独特の浪漫的傾向が感じあられますが、シュール過ぎてちょっとついていけない面もあったかな。いきなり女が踊りだしたりして...。
風吹ジュン(1952年生まれ)は'73年に初代ユニチカマスコットガールに選ばれ、'74年に「愛がはじまる時」で歌手デビューすると人気が爆発(ただし、本人は歌を苦手としていたとのこと)、'74年アサヒ飲料「三ツ矢サイダー」のCMなどでもさらに人気上昇し、'75年に女優デビューしていますが、CMタレントして一世風靡した分、ドラマに出ていても女優というよりCMタレントが出ている印象が暫くはありました。'77年「白熱デッドヒート」で映画初出演すると、'79年の「蘇える金狼」で松田優作とフルヌードで激しい濡れ場を演じ、'81年の「
今年('13年)のNHKの大河ドラマ「
「春桜(はるさくら)ジャパネスク」●制作年:1984年●監督:鈴木清順●製作



![Father Brown Series 1 [DVD] [2013].jpg](http://hurec.bz/book-movie/Father%20Brown%20Series%201%20%5BDVD%5D%20%5B2013%5D.jpg)


第1話「神の鉄槌」(The Hammer of God)(Director:Ian Barber)は、『ブラウン神父の童心』所収のものと同じ邦題。ブラウン神父は、ボーハン牧師が新しい時計台をお披露目するパーティーに参加していた。一方、牧師の弟であるノーマンは、招待されていないにもかかわらず、パーティーに現れ、周囲の人に悪態をつくき、更に、シメオン・バーンズとケンカを始める―。
第2話「飛ぶ星」(The Flying Stars)(Director:Ian Barber)も、『ブラウン神父の童心』所収のものと同じ邦題。貴族の令嬢、ルビー・アダムズの誕生日パーティーに招かれたブラウン神父とマッカーシー夫人は、バスに乗り遅れたので、領地を横切って邸宅に向かっていた。しかし、到着すると家政婦のスージーから、誕生日パーティーは中止になったと聞かされる―。
第3話「狂った形」(The Wrong Shape)(Director:Dominic Keavey)も『ブラウン神父の童心』所収のものと同じ邦題。ブラウン神父は、レナード・クィントン主催の詩の朗読会に招待され、屋敷には妻マーサの他に、レナードの愛人と噂されるバイオレット、弁護士のハリスがいた。朗読会が始まり、バイオレットはレナードとの関係を匂わす詩を読み、動揺したマーサは席を立つ―。
第4話「木の中の男」(The Man in the Tree)(Director:Dominic Keavey)は、同名の邦題原作が見当たりません。ある日、絵を描こうとフェリシアが森を歩いていると、頭上からうめき声が聞こえ、見上げると負傷した男が下着姿で木に引っ掛かっていた。その頃、ブラウン神父とマッカーシー夫人は、ドイツからの訪問者フランク神父を駅で出迎えていた―。
第5話「アポロの眼」(The Eye of Apollo)(Director:Matt Carter)は、『ブラウン神父の童心』所収のものと同じ邦題。アポロ教会という信仰集団が現れ、パンフレットを村中に配ったため、ブラウン神父はマッカーシー夫人と集会に参加する。集会では、アポロ教会の創始者ケイロンが、戦争で負傷した際に、太陽を通して神からの啓示を得た話を語り始める―。





バーナビーと同じ署に勤めるピーターは、鐘撞き競技大会優勝を目指している6人チームのリーダーだった。レジー中佐らが苦言を呈する中、チームは練習に励むが、メンバーが次々と何者かに襲われ殺されていく―。
そこで、プロローグにある、昔、牧師が殺害され井戸に投げ捨てられたという話が生きてくるわけですが、5世代前の先祖の死に対する復讐劇だったのかあ。ピーターの鐘撞き大会への執着は異常だったけれど(部署は総務らしいけれど、署内では競馬中継を見ているし、仕事しているのかな?)、5世代前の先祖の復讐というのは、それを上回る異常さであり、この犯人もある意味"壊れている"と言えます。
本国では人気エピソードの上位に入っている作品で、叔父であるレジーの思い遣りを理解できない
甥の焦った行動や(最初は甥に意地悪しているのかと思った)、聞き込みに行った先で女地主(カルメン・デュ・ソートイ、「007 黄金銃を持つ男」('74年)に出演))の強烈なモーションに骨抜きにされてしまうトロイなど(急な呼び出しで慌ててネクタイを置いてきてしまった?)、サイドストーリーも豊かですが、やはり「鐘撞き大会」というのが英国人にとってはノスタルジックなのではないかな。日本の寺でもやっているところがあるけれど、制限時間内に何回撞けるかを競うもので、こんな練習を重ね、高度なテクニックを競う"演奏会"的なものは英国ならではないかと思います(ハンドベルのジャンボ版と言えるか)。
コーストン郊外にある寄宿制男子校デヴィントン学院。この学院に向かう途中の道で、学院のOBで外交官のベリンガムが襲われ行方不明になる。数日後、デヴィントン学院の聖マリー・デー・レースを見物していたバーナビー夫妻の眼前で、1等でゴールに現れた、学院の創設者の孫で生徒会長を務めるダニエルが倒れ死亡する。ダニエルは選ばれた学生しか入会することのできない"プディング・クラブ"のメンバーだったが、どうやらクラブを抜けたがっていたらしい。バーナビーは学院の実態を探り始めるのだが―。
第23話「デヴィントン学院の闇」は、厳しい教育と規範で有名な全寮制の伝統校が事件の舞台。今どき、こんな学校があるのかと。殆ど"ハリー・ポッター"の魔法学校の「裏版」みたいな世界でした。
学院の理事長も怪しいし、その他にも怪しい人物がいる中、プディング・クラブのクラブルームに謎が隠されているとバーナビーに示唆していた学院OBのカルーが、頭を殴られ口にプディングを突っ込まれたうえグラウンド整備用ローラーの下敷きされた惨殺死体で見つかり、ベリンガムも、生徒達が水練中の池の中から死体となってバーッと浮き上がってきます(まるでゾンビみたい)。
主演のジョン・ネトルズ自身が自選ベストテンに"Most Dramatic Episode"として入れている作品ですが、主犯と実行犯が別々なので分かりにくかったね。そこが面白さでもあるのでしょうが、実行犯は1人とみていいのかな(水練指導の体育教師がベリンガムを殺害したということはないよ
ね。やはり、○○○が3人を殺害した?)
「バーナビー警部(第22話)/死を告げる鐘」●原題:MIDSOMER MURDERS:RING OUT YOUR DEAD●制作年:2002年●制作国:イギリス●本国上映:2002/06/23●監督:サラ・ヘリングス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:クリストファー・ラッセル●撮影:スティーヴ・ソーンダーソン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/エイドリアン・スカーボロ/シーマス・ホイッティ/リンゼイ・マーシャル/ヒュー・ボネヴィル/グレアム・クラウデン/カルメン・ドゥ・ソートイ/ジェマ・ジョーンズ●DVD発売:2004/10●発売元:キングレコード(評価:★★★☆)


破産寸前のジェームズ・ハリントンは、自らが所有するセトウェル森を更地にして売却しようとして、森を守ろうとする自治体から訴えられていた。裁判では勝利を収めるが、自治体メンバーと諍いになり、その内の一人サイモン・バートレットと殴り合いになったのを、別裁判に証人として出廷していたバーナビーとトロイが止める。サイモンは、裁判に自治体側として関与している女性弁護士と不倫関係にあった。翌朝、セトウェル森の池で、サイモンの妻スーザンの死体が見つかる。スーザンはかつてジェームズの恋人だった。スーザンの死因は溺死で、夫サイモンの元にスーザンのパソコンから「真実からは逃れられない。死んだ方がまし」というメールが送られていたことから、子供ができないことを悩んでの自殺かと思われた。しかしそのメールが送信された時刻の6時間以上前に、森で遊んでいたジュリーとショーンのフィールディング姉弟は、池ではなく茂みの中で倒れているスーザンを発見し、その傍に一匹のジャックラッセルテリアがいたのを目撃していた―。
森で犬を目撃したフィールディング姉弟が、犬とその飼い主が事件に関わっていると考え、「ちびっこ探偵」ぶりを発揮するのが楽しく、村中のジャックラッセルテリアを調べ上げ、飼い主はサイモンの農場で働くブロクサムであることを突き止めて、学校をサボってバーナビー宅にまで押しかけます(実質的に鋭いのは姉ジュリーの方で、弟ショーンの方はバーナビー宅で能天気にケーキのおかわりを貰っていたりしていたが)。
最初は子供の証言に懐疑的だったバーナビーが、ジュリーのテリアの識別能力を目の当たりにして認識を改めるのが愉快(姉弟の父親は猟犬の訓練士)。更に、ジュリーの、被害者は「眠っているようだった」という証言も、事件解決の糸口に。
でも、自分を庇ったサイモンを襲って瀕死の重傷を負わせたのもこの犯人だとすれば、目的のためには手段を選ばずと言う感じで、ラストで報復により殺されてしまうのはやむを得ない感じでしょうか。「ちびっこ探偵」の活躍は、シャーロック・ホームズの「ベーカー街イレギュラーズ」ならばいざらず、このシリーズでは珍しいですが、「暗~い話」と「微笑ましい話」が隣り合わせ的に併存するという意味では、シリーズの特徴が出ていたように思います(これが、このシリーズの独特かつ定番的な"バランス感覚"?)。
「バーナビー警部(第21話)/セトウェル森の魔」●原題:MIDSOMER MURDERS:A WORM IN THE BUD●制作年:2002年●制作国:イギリス●本国上映:2002/06/23●監督:デヴィッド・タッカー●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:マイケル・ラッセル●撮影:スティーヴ・ソーンダーソン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/ジリアン・バージ/ウェンディ・クレイグ/ジャニー・ディー/イアン・ホッグ/エミリー・ジョイス●DVD発売:2004/10●発売元:キングレコード(評価:★★★☆)
Here are some favorite episodes (or characters or scenes or...):



コーストン郊外の高級住宅地で、株式仲買人の車が炎上する事件が起きる。この地に住む「読者会」メンバーの5人の女性、マージョリー(会の主宰者で未亡人)、ジニー(ちょっと美人でナイスボディ?)、タムジン(仲買人の妻。過去に秘密を持つ)、ラビニア(年老いた夫を介護中。自身は邸の屋根の修理に執心)、サンドラ(医師の妻)らは


今日もマージョリーの家に集っていたが、実は「読書の会」とは表向きの名で、家族に秘密で株式投資をしているサークルだった。投資を始めたのは5人に各事情があったからで、今現在でか
なりの利益を上げており、運用が順調な今のうちに株を売却するか投資を続けるかで意見が分かれていた。会の主宰者マージョリーは仕切り屋で、メンバーからはあまり良く思われていなかった。その彼女が自宅で撲殺死体で発見される。室内が荒らされ銀食器が持ち去られているところから強盗による犯行の疑いもあった。そして彼女の家のどこからも、会で保有している株の証券が見つからなかった―。
高級住宅地にプール清掃員として出入りする男ハリーや、サンドラの夫でセレブ達の秘密に触れる機会の多い医師ルパートなど、何となく怪しい人物はいますが、その後、メンバーのジニーが自宅のプールで殺され(自宅プールって、一晩中灯りをつけているのかあ。贅沢!)、ラビニアも屋根から転落して死亡。そうなると、この事件の犯行動機は、サークルで運用していた資産を独占することしか考えられず、そうなると、サークルの秘密が外部にもれていない限りはサークル内の誰かが犯人であり、そうなるとタムジンとサンドラしか残っていないわけで、ここで犯人が判った感じも。
このシリーズで自分がここまで犯人を絞り込めたのは珍しい方で、実際の展開としても、いつものように最後ぎりぎりまで犯人が判らないようなものではなく、その
少し前に誰が犯人か示唆していました。たまにはこういうのもありかな。この犯人も、第18話「時代遅れの殺意」の犯人と同じく、最初は普通の人に見えていたけれど、実は精神的に壊れていました(こんな女性に言い寄られた老人男性の方も災難)。犯人が捕まってから、自分がどうやって殺したのか一人一人について解説してくれるのも同じ
。分かり易さもあって、個人的には充分楽しめました。
高級住宅地が舞台ということで、風景や建物がキレイな上に、ラストも爽やか。第19話「腐熟の愛情」と同じく、女性が最後に決断をして新たな人生を歩む、という終わり方だけど、鼻持ちならない大金持ちと結婚した後で離婚して、相手の鼻をへし折ってやろうという「腐熟の愛情」の看護婦サリーよりは、こちらのヒロインの方が好感が持てました。
プール清掃人の男は実はいい奴だったね。マッチョで意外と男前だし。以前の仕事は○○○だったのかあ。その道のプロでした。さくさくパソコンを操作し、パスワードの前で立ち往生したところでは、今度はバーナビーが刑事の勘を発揮します。
バーナビーが年金対策で投資したばかりの保険会社が、加入企業のタイかどこかの工場が水害で大損害を被って保険金の高額支払が見込まれ株価が暴落、所持しているコミック誌に高値がつくことが分かったトロイとは対照的に、彼だけが最後にムスッとしているのが可笑しいです。「腐熟の愛情」のラストに比べるとクセの無い、爽やか過ぎる終わり方に対する、ある種"照れ隠し"的味付けでしょうか。こうしたエピソード間のバランス感覚は絶妙。

グッドマンズ・ランド村の郵便配達員デイヴ・カトラーが配達中に喉を掻き切られて殺される。彼は村で"人妻キラー"と呼ばれていて、彼に妻を寝取られた男は数多くいた。バーナビー(ジョン・ネトルズ)は村のかつてダンスホールだった建物内に本部を設置して捜査を開始するが、その後も次々と残虐な犯行が繰り返され、村の男女それぞれに犠牲者が出る―。
子供時代に亡くなった母親に対する愛情と悔恨の念から、気に入った女性に母親像を重ねて一方的に崇拝し、但し、その女性が実際にはさほど清純でも貞淑でもないことが分かると殺害してしまうという―。犯人は見かけ上は普通のパブ従業員か何かだったけれど、後で振り返れば、架空の相手に電話をかけていたりしたわけで、そうしたことも含め、ヒチコックの「サイコ」と重なる部分もありました。
村の女性巡査ジェイに対するトロイ巡査部長(ダニエル・ケーシー)の恋愛感情がサイドストーリーになっていて、最後は予想通りトロイはフラれてしまうのですが、彼女の断りの理由は、「破れた恋愛からまだ立ち直っていないから」とのこと。ジェイとトロイが夜中に元ダンスホールだった場所で踊るのを偶然垣間見て、事件捜査中にトロイを"グッドダンサー"と呼んで冷やかしていたバーナビーですが、彼女の手に渡ることのなかったトロイのプレゼントであるバイロン(ジェイの好きな詩人)の詩集を見て、カトラーの葬儀の際に、赤いバラの花束の無記名の献花にバイロンの詩の一節が添えてあったのを思い出すものの、そのことをトロイには話さないところが部下への気遣いです。![Midsomer Murders - John Nettles:My Top Ten [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/Midsomer%20Murders%20-%20John%20Nettles%EF%BC%9AMy%20Top%20Ten%20%5BDVD%5D.jpg)
因みに、このエピソードは、主演のジョン・ネトルズ自身が選んだ「ベストテン」に、「Best Location」(最高の撮影場所)作品として入っており、それだけに風景にも素晴らしいものがありました(署から遠い場所にあるため、捜査本部を現地に置いたということなのか)。


「バーナビー警部(第18話)/時代遅れの殺意」●原題:MIDSOMER MURDERS:DARK AUTUMN●制作年:2001年●制作国:イギリス●本国上映:2001/09/16●監督:ジェレミー・シルバーストン●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ピーター・J・ハモンド●撮影:グラハム・フレーク●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/ニッキー・ヘンソン/アラン・ハワード/ジリアン・カーニー/セリア・イムリー●DVD発売:2004/09●発売元:キングレコード(評価:★★★★)
プロローグは40年前。2人の男が1人の女性(イザベラ)を巡ってフェンシングで決闘し決着をつける。そして現在のミッドサマー・パーヴァ。小麦畑のミステリーサークルで男の全裸死体が発見される事件が起きる。殺害されたのは前科者のロニーで、死因は感電死と判明、地元のUFO研究家ロイド・カービー(ケネス・コリー)はこれは宇宙人の仕業だと言う。バーナビー(ジョン・ネトルズ)がロイドに参考人として署で話を聴くと、ロイドの友人でサー・クリスチャン・オーバリー(アレック・マッコーエン)という貴族が、彼の釈放を求めてくる。そしてまた、ミステリーサークルで男の全裸死体が発見され、これも被害者は前科者であることが判明する。クリスチャンの妻イザベラ(ウルスラ・ハウェルズ)は不治の病で死期が迫っていた。一方、村に住むサー・ハリー・チャトウィン(ジョン・ウッドヴァイン)の妻ベアトリス(アリソン・フィスク)は、ロイドと幼馴染であり、夫のハリーはロイドを嫌っていた。更にハリーは、自分の娘ルーシー(デイジー・ベイツ)と不仲にある夫スティーブン・ラムジー(パトリック・バラディ)をも嫌っていた。それはスティーブンが、村の看護婦サリー(アマンダ・メアリング)と不倫していたからだが、ハリー自身も、サリーと密会していた。サリーはハリーとスティーブンの両方を手玉に取りつつ、別の愛人と盗品の銀器の売買を図っていた。そのスティーブンが、車の中で感電死して死体となって発見され、更にはロイドも、ミステリーサークルで全裸死体となって発見される―。
トム・バーナビー警部のシリーズの第16話「UFOの殺人」(原題:The Electric Vendetta)の本国放映は2001年9月2日で、シーズン4の第3話になります。主演のジョン・ネトルズ自身の「ベストエピソード10選」の中に"Most Difficult to Film"として入っているのは、"UFO"の登場シーンを指してのことなのでしょうか。車で夜道を運転中にいきなりのスピルバーグ映画「未知との遭遇」みたいな光景が現れ、トロイ巡査部長(ダニエル・ケイシー)の仰天ぶりが可笑しかったです。
このように、これでもか、これでもかと言うくらい複雑に愛憎入り乱れていて、よくここまで込み入った脚本を考えるなあと思わされますが、まあこの辺りが、日本の推理ドラマなどではまず見られない、このシリーズの特徴なのでしょう。UFOという奇抜なモチーフではありますが、シリーズの特色がよく出ていました。
「バーナビー警部(第16話)/UFOの殺人

バーナビー夫妻(ジョン・ネトルズ、ジェーン・ワイマーク)が参列したイースタングランジホテルの所有者カール(エドワード・ジョーズベリー)の葬儀に、ホテルの相続人の一人グレゴリー・
チェンバース(フィリップ・ボー)が現れない。同じく相続人であるグレゴリーの妻スザンナ(サマンサ・ボンド)は、普段通りホテル業務を続け、気に留めようとしていないようだ。ケネス・グッダーズ(ジョナサン・コイ)も相続人の一人で、妻はジュリア(アビゲイル・マッケーン)は情緒不安定気味。スザンナは、ホテルの料理人トリスタン(トム・ウォード)を愛人にしていて、グレゴリーの方も、森の狩猟番マシュー・タイソン(トニー・ヘイガース)の娘アニー(アディ・アレン)と愛人関係にあったらしい。人形劇の主催者で、その役割をグレゴリーに譲っていたエブリン・ポープ(ローズマリー・リーチ)は彼の行方を心配するが、やがて森の中でグレゴリーのものと思われる片手が見つかる―。 
弓矢を駆使したランボー風の殺害方法及び死体隠滅方法から、心理的に追い込んで同士討ちさせるなどの凝った殺害方法まで色々出てきて、食器棚に圧殺されたというのもさることながら、ドクツルタケを食べてしまったイケメン料理人トリスタン(トム・ウォード)の、もう死を待つしかないという状況が一番悲惨だったかな。どちらかと言うと、スザンナが一番悪女という感じなんだけど(夫を枕で窒息死させていたとは)、こちらはあっという間の射殺(一番シンプル)。
因みに、ドクツルタケは欧米では「死の天使」(Destroying Angel) という異名を持ち、それがそのままこのエピソードの原題となっているわけですが、このキノコ、日本でも死亡率の高さから、タマゴテングタケ、シロタマゴテングタケとともに「猛毒キノコ御三家」とされているそうです。
「バーナビー警部(第15話)/人形劇の謎」●原題:MIDSOMER MURDERS:DESTROYING ANGEL●制作年:2000年●制作国:イギリス●本国上映:2001/08/26●監督:デヴィッド・タッカー●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:デヴィッド・ホスキンス●撮影:グラハム・フレーク●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/エドワード・ジョーズベリー/フィリップ・ボー/サマンサ・ボンド/ジョナサン・コイ/アビゲイル・マッケーン/トム・ウォー/ロバート・ラング/ローズマリー・リーチ/マドレーヌ・ウォラル/アディ・アレン/トニー・ヘイガース/ロジャー・フロスト●DVD発売:2004/08●発売元:キングレコード(評価:★★★☆)

ミッドサマー・デヴェレルの村では、インクペン家所有の記念庭園を巡り、庭園を閉鎖してティールームを作ろうとしている所有者のエルスペス・インクペン(べリンダ・ラング)と、庭園は地域親睦の場であるとして反対する多くの村人との間で対立が起きていた。村人の中でも、ジェーン・ベネット(ケイト・デュシェーヌ)は、その庭園が前所有者である彼女の父ジェラルド(フレデリック・トレーブ)が長年かけて作り上げたものだったため、庭を守ろうとして、再開発に強く反対していた。ジェラルドは、インクペン家から庭園を買って5年前まで管理していたが、体調を崩し庭園をインクペン家に売り戻していた。彼の妻は、5年前に忽然と失踪していた。ある日の夕方、再開発について村民集会が開かれたが、話し合いは平行線のまま物別れに終わった。その直後、問題の庭園でエルスペスの娘フィリス(サラ・アレクサンダー)が撲殺されて発見される―。
エルスペスの娘フィリスは、同じインクペン家のフェリシティとは父親違いの娘ヒラリー(ビクトリア・ハミルトン)をいびまくるなど性格悪すぎで、犯人ではなく被害者の方になるだろうと思ったらやっぱり。真犯人はおそらく最も犯人らしくない人かと思ったけれど、誰かという予想は外れました。複数の事件で異なる犯人がいるというのは前作も含めこれまでにもあり、これだけ回を重ねれば、だんだん似たパターンが出てくるのはやむを得ないでしょうか。但し、犯行の時期を違えているので、それなりにリアリティはありました。
結局、相続目当てと言うよりも(それも一部あったかもしれないが)、親子間の愛憎劇だったなあ。その内の1件は、父親を愛して母親を憎むという典型的なエレクトラ・コンプレックスでした。この母親というのが、「3P浮気」をやったりして、かなり問題ありだったのですが、インクペン家の母親も尻軽で、祖母で当主であるナオミ・インクペン(マーガレット・タイザック)が嘆くのも無理ないことでしょうか。
昔埋めた死体を掘り返されたらマズイから...という設定は、「

「バーナビー警部(第14話)/庭園の悲劇」●原題:MIDSOMER MURDERS:GARDEN OF DEATH●制作年:2000年●制作国:イギリス●本国上映:2000/09/10●監督:ピーター・スミス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:クリストファー・ラッセル●撮影:グラハム・フレーク●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケーシー/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/べリンダ・ラング/ケイト・デュシェーヌ/マーガレット・タイザック/フレデリック・トレーブ/デヴィッド・ロス/サラ・アレクサンダー/ビクトリア・ハミルトン●DVD発売:2004/08●発売元:キングレコード(評価:★★★☆)