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そこそこ楽しめたが、"ディーヴァーらしさ"と"007らしさ"が両立できているかというと微妙。

『007 白紙委任状』(2011/10 文藝春秋) 「007/スカイフォール [DVD]
」
2011(平成23)年・第30回「日本冒険小説協会大賞」(海外部門)受賞作。
ODGの工作員ジェームズ・ボンドは、イギリス政府通信本部が傍受した「...20日金曜日夜の計画を確認。当日の死傷者は数千に上る見込み。イギリスの国益にも打撃が予想される...」との電子メールを発端に、計画の詳細を突き止めてテロを未然に防ぐ使命を帯びてセルビアに向かった。セルビアに現れた問題の男《アイリッシュマン》は用心深く冷静で、ボンドの出現という想定外の事態にも即座に対応し、ボンドの追跡をかわしてセルビアから脱出、イギリス国内に戻っていた。ODGはイギリス国内に管轄権を持たない。つまり、この地球上で唯一、ボンドがODGのエージェントとして活動する権限を持たない場所がイギリスであり、通常ならばミッションと同時に与えられる"白紙委任状"が無効になる地域だった。金曜の夜に、どこでどんなテロ行為が計画されているのか。白紙委任状がない状態で、ボンドは4日後に迫ったテロの危険から数千の命を救うことができるのか―。
イアン・フレミングの版権を管理する《イアン・フレミング・エステート》からのオファーを受けて、2011年にジェフリー・ディーヴァーが発表した"007物"で(原題:Carte Blanche)、上下2段組みで456ページありますが、比較的テンポよく読めました。因みに、本書刊行時のインタビューによれば、ジェフリー・ディーヴァーはこの作品のラストを、2010年11月に来日した際にホテルニューオータニで書き上げ、書き終えた翌日から次作(キャサリン・ダンス・シリーズの第3作)にとりかかったというから、精力的に仕事してるなあ。
一応お決まりではあるものの、次々と危機が迫り来る中、ボンドがそれをどう乗り越えるかという関心から、ジェットコースター感覚とまではいかないものの話の展開に自然に引き込まれ、話の舞台もセルビアからロンドン、ドバイ、南アフリカへとワールドワイドに広がっていくし、ボンドガールに関しても、候補が何人か現れてどれが本命かという点で楽しめました。ただ、読み進んでいくほどに話の本筋自体が深化していくという印象がやや薄く、何となく同じ次元で横滑りしているような感じもしました。
プロットが何度も反転し、ドンデン返しが連続するような作者らしい小説―という点では、終盤は期待したほどでもなかったかな。財団からのオファーのもとに書いているという点では、007のファンも満足させなければならないというというが作者の"使命"でもあったと思うし、"ディーヴァーらしさ"と"007らしさ"が両立できているかというと、微妙なところかもしれません。
"007らしさ"という点では、ボンドが普段どのような職場で仕事をしているのかといった背景に関する記述も多くあって興味深かったし、IT時代に相応しい小道具もふんだんに登場、一方、ボンドのキャラクター造型は、少なくともショーン・コネリーやロジャー・ムーアなどよりは、ピアーズ・ブロズナンやダニエル・クレイグなどのボンド像に近いかも。まあ、ピアーズ・ブロズナンとダニエル・クレイグの二人だって随分違うし、映画におけるボンド像もかなり幅広くなってきていて、固定的には捉えられなくなってきていますが。
ダニエル・クレイグ(Daniel Craig)などは最初見た時は、ジェームズ・ボンドと言うよりもボンドの敵役のスナイパーかなにかのような印象で、最初の出演作「007 カジノ・ロワイヤル」('06年/英・米)がシリーズ第21作でありながら原作の第一作ということもあって(かつて'67年にパロディとして映画化された)、かなり今までのボンド像と違った印象を受けましたが(肉体派? 若気の至りからか結構窮地に陥る)、演じていくうちに独自のボンド像が出来上がっていき、彼自身にとっての第3作「007 スカイウォール」('12年/英・米)あたりになると、もうすっかりそれらしく見えます。
サム・メンデス監督による「007 スカイウォール」はそこそこ楽しめました。特に前半部分は映像と音楽に凝っていたように思われ、それに比
べると後半はドラマ重視性重視だったでしょうか。ジェフリー・ディーヴァーの本書『白紙委任状』におけるボンドの上司"M"は、映画と異なり男性ですが、ジュディ・デンチ(Judi Dench)演じる"M"が「スカイウォール」で殉職することは以前から決まっていたということなのでしょう(因みに秘密兵器開発担当の"Q"も配役が入れ替わった。そして、"ミス・マネーペニー"もナオミ・ハリス演じるイヴに入れ替わり)。「スカイフォール」の製作は、MGMの財政難のために2010年の間は中断されていたとのことです。結局、製作費は前作「慰めの報酬」の2億ドルから1億5千万ドルに抑えられ、それが前半と後半の手間のかけ方の違いに表れているような気がしないでもありませんが、興業的にはかなりの成功を収めたようです(チッケト代のインフレ調整をした上での比較で、シリーズ中、「サンダーボール作戦」「ゴールドフィンガー」に次ぐ興行収入だとか)。
ベレニス・マーロウ(Bérénice Marlohe)演じるボンド・ガー
ルが(ボンドが助け出すと約束していたにも関わらず)早々に犯人に殺害されてしまうとか、犯人の犯行目的が、"M"への復讐という個人的怨念に過ぎないものであるとか、冒頭の派手なアクションや前半の凝ったシークエンスに比べると、後半はボンドの実家に籠って
「ホーム・アローン」風の戦いになってしまい、前半ではディーヴァーの小説の犯人並みにサイバー攻撃をしていた敵役も、ここへきて火薬を使いまくるだけの芸の無い攻撃しかしなくなるとか、もの足りない面は少なからずありますが、ダニエル・クレイグのボンド像そのものは悪くなく、ディーヴァーもインタビューで、自身が映画のプロデューサーだったら、今回の作品のボンド役には誰をキャスティングするかと訊かれて「個人的にはダニエル・クレイグが気に入っている」と言ってます。

マカオ沖に浮かぶ廃墟の島として敵役シルヴァのアジトとなった「デッドシティ」は、長崎港から約17km沖合にある「軍艦島」(正式名称は端島)がモデルですが、軍艦島は上陸に厳しい制約があって実際に軍艦島でロケは行うことはできず、スタッフが何度も訪れて細部まで酷似したセットをスタジオに作り上げたそうです。
「007 スカイフォール」●原題:SKYFALL●制作年:2012年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:サム・メンデス●製作:マイケル・G・ウィルソン/
バーバラ・ブロッコリ●脚本:ジョン・ローガン/ニール・パーヴィス/ロバート・ウェイド●撮影:ロバート・エルスウィット●音楽:トーマス・ニューマン[●原作:イアン・フレミング●時間:143分●出演:ダニエル・クレイグ/ハビエル・バルデム/レイフ・ファインズ/ナオミ・ハリス/ベレニス・マーロウ/アルバート・フィニー/ベン・ウィショー/ジュディ・デンチ/ロリー・キニア●日本公開:2012/12●配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(評価:★★★☆)
【2014年文庫化[文春文庫(上・下)]】




サンディエゴで釣り餌店など複数のささやかなビジネスを営む傍ら、元妻と娘、恋人の間を立ち回り、余暇にはサーフィンを楽しむ62歳のフランク・マシアーノは、かつては"フランキー・マシーン"と呼ばれた凄腕の殺し屋だったが、今はマフィアの世界からすっかり足を洗ったつもりでいた―が、そうした冬のある日、フランクは、今になって彼の命を奪おうとする何者かに罠に嵌められ、それまでの平和な日々に別れを告げることに―。

(●本記事エントリーの2日後(2011/01/29)に日本公開された、ブルース・ウィリス主演で、引退した"殺し屋"ならぬ"CIAの腕利きエージェント"を主人公にした映画「RED レッド」('10年/米)を観た(「RED」は「引退した超危険人物(Retired Extremely Dangerous)」の意味)。あらすじは― 元CIAのトップエージェントで今は年金で静かな引退生活を送っていた主人公が、ある日何者かに襲われ、それは実は自分が過去に関わった秘密任務が原因でCIAから狙われたのだったが、彼はエージェント時代の仲間や元MI6の女スパイも巻き込んで、自ら巨大な陰謀に立ち向かっていく―
というもの。モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレンなど大物俳優が共演で、それでいてブルース・ウィリスが演じる主人公が年金事務所の電話担当の女性と相思相愛になっているなど途中までコメディチックな流れだったが、ラスト近くで主人公のかつての盟友が仲間のために命を投げ出すに至ってすっかり重くなってしまい(あのモーガン・フリーマンがその役を演じているということもあり)、コメディとして観てていいのか、悲劇としてみるべきだったのか分からなくなってしまった。巷の評価は高かったみたいだが(続編「REDリターンズ」('13年)が作られた)、個人的評価は△。『フランキー・マシーンの冬』をしっかり映画化してほしい。)
「RED/レッド」●原題:RED●制作年:2010年●制作国:アメリカ●監督:ロベルト・シュヴェンケ●製作:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ/マーク・ヴァーラディアン●脚本:ジョン・ホーバー/エリック・ホーバー●撮影:フロリアン・バルハウス●音楽:クリストフ・ベック●原作:ウォーレン・エリス カリー・ハムナー●時間:111分●出演:ブルース・ウィリス/モーガン・フリーマン/ジョン・マルコヴィッチ/ヘレン・ミレン/カール・アーバン/メアリー=ルイーズ・パーカー/ブライアン・コックス/ジュリアン・マクマホン/アーネスト・ボーグナイン/リチャード・ドレイファス●日本公開:2011/01●配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(評価:★★★)


2005年に発表されたドン・ウィンズロウの長編で(原題: "The Power of the Dog" )、1999年以降筆が途絶えていたと思いきや6年ぶりのこの大作、まさに満を持してという感じの作品であり、また、あのジェイムズ・エルロイが「ここ30年で最高の犯罪小説だ」と評するだけのことはありました。








1980年に発表されたアメリカの作家ロバート・ラドラム(Robert Ludlum)の作品で、彼の作品ではこの『暗殺者』 (The Bourne Identity)と『狂気のモザイク』 (The Parsifal Mosaic '82年発表)が一押しです(共に日本語訳は新潮文庫)(『暗殺者』は1984(昭和59)年・第3回「日本冒険小説協会大賞」(海外部門)受賞作)。
原題の「ボーン・アイデンティティー」そのままのタイトルで映画化('02年/米)されました(発表から映画化まで22年かあ)。悪い映画ではなかったのですが、物語の細部が端折られてしまったのと、主人公がキャラクター的に少しズレてしまった感じがして、どうなのかなという印象でした。主役のマット・デイモン自体が少し線が細いと言うか優し過ぎるイメージかな(この人、米国の有名俳優の中では数少ないハーバード大学出身者、但し、中退)。さらに"暗殺者"であるカルロス、これが原作ではある種のサイコ的凄みがあるのですが、アクション映画にしてしまうと怖くなくなるのが痛い。
「ボーン・アイデンティティー」●原題:THE BOURNE IDENTITY●制作年:2002年●制作国:アメリカ●監督:ダグ・リーマン●製作総指揮:フランク・マーシャル/ロバート・ラドラム●音楽:ジョン・パウエル●原作:ロバート・ラドラム「暗殺者」(The Bourne Identity)●時間:119分●出演:マット・デイモン/フランカ・ポテンテ/クリス・クーパー/クライヴ・オーウェン/ブライアン・コックス/アドウェール・アキノエ・アグバエ/ダグ・リーマン/ジュリア・スタイルズ●日本公開:2003/01●配給:UPI (評価★★★)








但し、実際映像化されてみるとやや散漫な印象も受けました。森田芳光監督の「
「理由」●制作年:2004年●製作:WOWOW●監督・脚本:大林宣彦●音楽:山下康介/學草太郎●原作:宮部 みゆき●時間:160分(TVドラマ版144分)●出演:岸部一徳/柄本明/古手川祐子/風吹ジュン/久本雅美/立川談志/永六輔/片岡鶴太郎/小林稔侍/高橋かおり/小林聡美/渡
辺えり子/菅井きん/石橋蓮司/南田洋子/赤座美代子/麿赤兒/峰岸徹/宝生舞/松田洋治/根岸季衣/伊藤歩/宮崎あおい/宮崎将/裕木奈江/村田雄浩/山田辰夫/大和田伸也/松田美由紀/ベンガル/左時枝/入江若葉/山本晋也/渡辺裕之/嶋田久作/柳沢慎吾/島崎和歌子/中江有里/加瀬亮/勝野洋/多部未華子●劇場公開:2004/12(TVドラマ版放映 2004/04/29)●配給:アスミック・エース (評価★★★☆)





書店で見たら、文庫の初版本には、登場人物の名前にふりがながなかったような気がしましたが、「林原」は「はやしばら」ではなく、ちゃんと「りんばら」と読ませないと、「MARKS」にならないのではないだろうか。









ニール・ジョーダン監督の「クライング・ゲーム」('92年/英)という元IRA兵士の男を描いた映画を思い出し、スティーヴン・レイ(渋かった!)のイメージが作中の登場人物に重なりました。スティーヴン・レイ演じるIRAのテロリストが、人質のイギリス軍兵士の死に責任を感じながらも、彼の恋人に惹かれていくという話で、ニール・ジョーダンはこの作品でアカデミー賞オリジナル脚本賞を獲っています。
/ジェイ・デイヴィッドソン/ミランダ・リチャードソン/フォレスト・ウィテカー/エイドリアン・ダンバー/ジム・ブロードベント●日本公開:1993/06●配給:日本ヘラルド映画 (評価★★★★) 