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時代小説における新境地確立を思わせる一方、何かと既知感が...。
『天狗風―霊験お初捕物控 2』〔'97年〕(カバー画:熊田正男) 『天狗風―霊験お初捕物控〈2〉 (講談社文庫)』〔'01年〕
『震える岩』('93年/新人物往来社)に続く「霊験お初捕物控」の第2弾で、今回は、嫁入り前の娘が次々と神隠しに遭ったかのように失踪する事件の謎を、前作同様、17歳のエスパー少女・お初が追うというもの。
"死んでも消えない"女の怨念(この作家の典型的モチーフの1つ?)が描かれていますが、怖さよりも、「小袋」に妄念が宿ったという設定などに時代ものらしい風情を感じ、ミステリーとしてもそれなりに引き込まれました。
同じ女の怨念を描いても、松本清張作品のようなリアルな湿り気のようなものがあまり感じられないのは、この作家の特質なのか、時代ものという枠組みのためか(『火車』などの現代ものの主人公には清張作品を想起させるものがありましたが)。
ジュブナイル系というか、ヤングアダルト系というか...、セリフを喋る猫の登場には(お初に猫とコミュニケートする能力があるということですが)、「じゃりん子チエ」という漫画の「小鉄」を思い出しました。
作者の時代小説における新境地の確立を思わせる一方で、天狗との最終対決シーンなども含め、スティーブン・キングの小説やRPGゲームの時代ものへの翻案かなと思わせる感じもあり、小説が醸し出す雰囲気に何かと既知感がつきまとったというのが正直なところ。
とは言え、テンポのいい快作であることには違いなく、江戸風情もよく描かれていて、読後感も心温まるものでした。
【2001年文庫化[講談社文庫]】