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ためになって、かつ明るく楽しい、時代物の背景となった土地巡り。
『平成お徒歩日記』 ['98年/新潮社] (表紙:松本 哉) 『平成お徒歩日記 (新潮文庫)』 〔'01年〕 (カバー挿画:石丸千里)
著者の初めてのエッセイで、時代小説の舞台となった地を歩いて巡るという雑誌の連載企画を本にまとめたもの([下右]2008年単行本新装版[新潮社])。
赤穂浪士が吉良邸(現在の両国・回向院付近)に討ち入りを果たした後、高輪・泉岳寺まで歩いた道のりを辿ったり(真夏に10キロ踏破!)、いわゆる江戸市中引き回しコースを、自らを"毒婦みゆき"と罪人になぞらえて巡り、鈴ヶ森(現在の南大井)・小塚原(現在の南千住)の各刑場跡を訪れたり、最後の方は「早駕籠」(=タクシー)を使ったりしていますが、歩く歩く...。 各章の冒頭に地図もあり、読むだけでも昔の人もそれだけ歩いたのだなあと実感できます。
小塚原刑場跡
時代考証を交えながらも酔狂なノリで、あくまでも弾けるように明るく(同行のスタッフやカメラマンとのやりとりが滅茶苦茶コミカル)、「ためになる」というより「楽しい」という感じです(もちろん「ためにもなる」)。
流人の足跡を辿って八丈島に行ったり、果てはお伊勢様参りまでしていますが、連載企画の前に池波正太郎の「剣客商売」の『浮沈』の舞台・深川を歩いていて、やはりこの辺りがこの人のルーツになるのだなあと思いました。
【2001年文庫化[新潮文庫]/2008年単行本 新装版[新潮社]】