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テキヤの歴史と独特の慣行の実態を探る。今は多くは地元の零細業者か。


『テキヤはどこからやってくるのか? 露店商いの近現代を辿る (光文社新書)』「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 HDリマスター版 [DVD]
」
2020年1月1日湊川神社

初詣客で賑わう神社や祭りの縁日などで、ソース焼きそばを作ったりリンゴ飴を売ったりして、或は金魚すくいや射的などの露店商いをしている人たちは、一体どこからやったくるのかという疑問は、誰しもが抱いたことがあるのではないでしょうか。
本書はそうした謎に包まれたテキヤの歴史を近世から現代まで探るとともに、東京の下町で「テキヤさん」と呼ばれている伝統的な露店商の、その「親分子分関係」や「なわばり」などの独特の慣行の実態を調査したものです。章立ては―
【第一章】 露店商いの地域性
【第二章】 近世の露店商
【第三章】 近代化と露店 ―― 明治から第二次世界大戦まで
【第四章】 第二次世界大戦後の混乱と露店商 ―― 敗戦後の混乱期
【第五章】 露店商いをめぐる世相解説 ―― 1960年代以降
となっていて、第5章が東京の下町のテキヤを調査し、その「親分子分関係」や「なわばり」などについて述べた、フィールドリサーチにもなっています。
本書によれば、テキヤには北海度・東日本、西日本、沖縄の三地域によって地域的な違いが大きく、関東地方の場合、大まかに言って近世には香具師(ヤシ)、近代になってテキヤ、その後露天商と名称が変化したらしく、香具師と呼ばれていたのは、「龍涎香」などのお香の原料を扱っていたりしたこともあったためのようです。
映画「男はつらいよ」の「寅さん」のイメージがあって、テキヤに対して流れ者的なイメージがありますが、縁日の露店などで出店している露店には、地元の零細事業者(組合員)の露店と遠方から来た人(タビの人)の露店があり、時代や場所にもよりますが、「さきに結論を述べてしまうと、大半は近所からやってくる」のが現況のようです(要するに、地元の零細業者なのだなあ。寅さんみたいに全国中を回っていたら交通費だけでたいへんかも)。
店を出す場所、神社の石段の上か下かなど、どこに店を出すかというのはそのナワバリの親分が仕切ります。ただ、よそ者でも許諾を得れば店が出せて、その際の自己紹介が、寅さんでもお馴染みの口上ですが、映画でやっている口上と実際の口上はかなり違うようです(フィクションでやっている口上と違って形容がほとんどなく、出身地や自分の親分は誰かといった情報を相手に効率的に伝える実務的なもの)。
ヤクザとテキヤの関係は、ある露店商が著者に語ったところによれば、テキヤは「七割商人、三割ヤクザ」であるとのことで、これは、反社会的組織の一員になっている者が三割という意味と、気質として三割は「ならず者」だという気分が込められている、と説明されています。また、「ヤクザは極道だが、テキヤは神農道だ」と言われ、テキヤは古来、農業と薬や医学の神である「神農の神」を奉ってきたとされています(ある種"宗教集団"的でもある)。
なかなか興味深い内容でしたが、やや論文調と言うか、修士論文でも読んでいるような堅さがり、その分(ソース焼きそばがジュージュー焼ける音のような)シズル感にやや欠ける面もあったように思います。ただ、テキヤ集団の棲み分け調査の結果を地図で示しているところは、何となく"野生動物の棲み分け"調査にも似て興味深かったです。
因みに、ある人の調べによると、寅さんが「男はつらいよ」シリーズの中で啖呵売りしているシーンはシリーズ全49作中47作の中にあり、最も多く売っていた商品は、易本・暦本(11回)、続いて、古本(雑誌)(4回)、正月の縁起物、スニーカー、サンダル(各3回)という順になっているとのことです。

この間たまたま観たシリーズ第27作「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」('81年)では、寅さんが瀬戸内海のどこかの島で一人で夏物ワンピース(俗に言うアッパッパ)を売っているシーンと(ここで初めてマドンナと出会う)、東大阪市の石切神社の参道で"バイ"しているシーンがありましたが(ここで偶然マドンナと再会する)、参道に露店を出すときはやはり、地元の親分に対して口上を述べたということになるのでしょうか。ヤクザへの連想を避けるために、そうしたシーンを山田洋次監督は敢えてシリーズでは殆ど取り扱っていない気もします(テキヤの生活が最もよく描かれているのは森崎東監督によるシリーズ第3作「男はつらいよ フーテンの寅」('70年)だと言われている)。
この「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」のマドンナ役は松坂慶子(撮影時28歳)で(寅さんは参道で「水中花」を売っていた)、松坂慶子はこの作品で第5回「日本アカデミー賞」最優秀主演女優賞など多数の賞を受賞しています。個人的には"演技力"より"美貌"がもたらした賞のように思われなくもないですが、この頃の松坂慶子はこの後に「道頓堀川」('82年)、「蒲田行進曲」('82年)に出演するなど、乗りに乗っていた時期ではありました。

「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 [DVD]」

「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」●制作年:1981年●監督:山田洋次●製作:島津清/佐生哲雄●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●時間:104分●出
演:渥美清/松坂慶子/倍賞千恵子/三崎千恵子/太宰久雄/前田吟/下條正巳/吉岡秀隆(シリーズ初登場)/正司照江/正司花江/笑福亭松鶴/関敬六/大村崑/笠智衆/初音礼子/芦屋雁之助●公開:1981/08●配給:松竹(評価:★★★☆)
●寅さんDVDマガジンによる男はつらいよベスト18(2011)
講談社「寅さんDVDマガジン」として編集部とファンが選んだ人気18作品を刊行(ベスト18作品内での順位は不明のため、マガジン刊行順に並べている)。
刊行順 作数 作品名 マドンナ
vol.1 1 男はつらいよ 光本幸子
vol.2 17 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け 太地喜和子
vol.3 15 男はつらいよ 寅次郎相合い傘 浅丘ルリ子
vol.4 9 男はつらいよ 柴又慕情 吉永小百合
vol.5 30 男はつらいよ 花も嵐も寅次郎 田中裕子
vol.6 11 男はつらいよ 寅次郎忘れな草 浅丘ルリ子
vol.7 32 男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎 竹下景子
vol.8 25 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 浅丘ルリ子
vol.9 14 男はつらいよ 寅次郎子守唄 十朱幸代
vol.10 22 男はつらいよ 噂の寅次郎 大原麗子
vol.11 2 続・男はつらいよ 佐藤オリエ
vol.12 5 男はつらいよ 望郷篇 長山藍子
vol.13 7 男はつらいよ 奮闘篇 榊原るみ
vol.14 19 男はつらいよ 寅次郎と殿様 真野響子
vol.15 27 男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 松坂慶子
vol.16 29 男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 いしだあゆみ
vol.17 38 男はつらいよ 知床慕情 竹下景子
vol.18 42 男はつらいよ ぼくの伯父さん 後藤久美子



「事典」とあるように、基本的には資料集的な使い方になるかな。広告デザイナーなどは必携かも。自分の使ったモチーフに自分も知らなかったネガティブな意味があったりすると、後でたいへんなことになったりするかもしれないから(結構、そうしたトラブルはあるような気がする)。


70年代に国連のFAO(国連食糧農業機関)がラマレラの食糧事情を改善しようとノルウェーから捕鯨船を送り込み、その結果、砲台による捕鯨は鯨の捕獲頭数を増やしたものの、鯨肉が供給過剰となったためにFAOは途中で操業をやめ、プロジェクトが終わったら今度はさっぱり鯨が獲れなくなったそうです。
彼らの捕鯨は、鯨油のみを目的とした先進国のかつての捕鯨とは異なり、一頭の鯨の骨から皮まで全てを利用する日本古来の捕鯨に近く、IWC(国際捕鯨委員会)が認めている「生存(のための)捕鯨」であることには違いないですが、同時に、鯨が獲れた際には鯨肉を市場での物々交換で売りさばき、干肉にして保存した分も最終的には市場に流通させていることから、「商業捕鯨」の定義にも当て嵌ってしまうとのこと。

ところで、『続・妖怪画談』には、「塗壁」(ぬりかべ)という妖怪が紹介されていて、これは、水木氏のマンガの比較的主要なキャラクターにもなっていますが(本書のデラックス版とも言える『愛蔵版 妖怪画談』('02年/岩波書店)の表紙にも、鬼太郎ファミリーの後ろにどんと構えている)、その解説に柳田國男の『妖怪談義』を参照しており、柳田國男の
朝日新聞「号外」2015年11月30日

柳田 國男
した(その網元の息子は今、新聞記者になってイラクにいる)。本書もその頃に読んだ本で、民俗学者の柳田國男が、明治末期から昭和初期にかけての自らの妖怪に関する論考(民俗学的エッセイ?)を1冊に纏めたもの。オリジナルは1956年の刊行ですが、博物学者で作家でもある荒俣宏氏は本書を「妖怪学の基本書」と言っています。






Clyde Kluckhohn
米国の人類学者クライド・クラックホーン(1905-1960)の『人間のための鏡("Mirror for Man")』(原著は'49年刊行)の訳本(光延明洋訳/サイマル出版会)とほぼ同時期に新書として刊行された、言語学者・外山滋比古氏らによる同本の抄訳です。原著では自然人類学、文化人類学の双方を扱っているところを、入門書として文化人類学に関する部分を主に抽出して訳したとのことですが、自然人類学についての記述も一部含まれていて、人類学とは何をする学問なのかを、人類と文化、人種、言語、習慣などとの関係を説きながら、幅広い観点から解説しています。
●知能指数200の人は、黒人にも白人にも同じ割合でいる


本書はその写真を収めた新潮文庫の1冊で、ヌバ族の「無文字」文明の生活が、人類学的なフィールドリサーチの視点から文章でも記録されていますが、日本でもこの文庫に先行して、パルコの広告で知られる
リーフェンシュタールはその後も71歳でダイビング・ライセンスを取得し、100歳まで潜り続けて水中写真集を出すなど超人的な活動をしましたが、この人には、かつてヒトラーの援助のもと戦意高揚映画を撮り、また、ベルリン五輪
の記録映画として撮った「オリンピア(民族の祭典/美の祭典)」('38年)も、芸術的水準は高いながらも、結果的にはナチ思想に国民を傾倒させるメッセージとなったという過去があり、結局、ナチ協力者という烙印は亡くなるまで消えなかったように思われます。「オリンピア」で、アメリカの黒人陸上競技選手ジェシー・オーエンス(この五輪で四冠達成)の活躍ぶりを記録したシーンをナチスからカットするように言われ、それを拒んだという逸話もあり、その自伝においても「オリンピア」撮影中に、彼女を好ましく思わないヨーゼフ・ゲッベルス宣伝相によって執拗に妨害されたと記していますが、公式記録にこうした妨害をうかがわせる記録は一切残っていないそうです(戦後、アメリカ軍とフランス軍によって逮捕されたが、非ナチ化裁判においては「ナチス同調者だが、戦争犯罪への責任はない」との無罪判決を得ている)。
本書の中で紹介されているヌバ族の、一夫多妻の婚姻形態や独特の死生観が色濃く滲む葬儀の模様は興味深いものでしたが、そうした彼らの習俗の中でも、男たちがその強さ競うレスリング大会のことが詳細に記されていて、また関連する写真も多く、未開の部族の人々の、生きることを通して鍛えられた"肉体"に対する彼女の舐めつくすような視線を感じました。

本書によれば、「アラジンと魔法のランプ」は、元々は中国の話だそうですが、語源である「ジン」(一種の妖怪)というのが、イスラームが宗教的版図を拡げていく過程で土着信仰を融合する際に生まれたものだというのは興味深いです。土着信仰のネガティブな部分を"怪物"的なものに封じ込めたという説は面白いと思いました(土着の悪神をリストラして「ジン」という概念に一本化したとも言える)。
ディズニーアニメの「アラジン」が登場した際に日本のアニメ「ハクション大魔王」(1969-1970)を想起した人も多かったようですが、個人的にはアメリカのアニメ「大魔王シャザーン」(CBS1967年、NET(現テレビ朝日)1968年)を思い出しました。このシャザーンは「大魔王」と称されていますが、これも本来は精霊とも悪霊とも扱われるジンであり、双子の主人公チャックとナンシーの庇護者として召使い的に活躍するものの、本当は双子よりも上の位にいて、ちょうどリモコンを持った者が善であろうと悪であろうとリモコンの指示通りに動く「鉄人28号」と同じように、魔法の指輪を行使する者に服従する「使い魔」であるとのこと、ただしアニメでは、作中で悪人に指輪が奪われた際も、命令に反し「本当はいけないんですが、まあいいでしょう」とあっさり二人を助けたりしていたようです。