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レトロ感、懐かしさを覚える。資料としても第一級。遊園地は家族との記憶と結びつく。

『図説 なつかしの遊園地・動物園 (ふくろうの本)』['22年]『ロスト・モダン・トウキョウ』('12年/集英社新書)
昭和戦前から1970年代までの遊園地・動物園に関する絵葉書、パンフレット、入園切符、地図など紹介し、「あの頃の憧れ」を探ったものです。著者は絵葉書のコレクター・研究家として知られており、膨大な量の絵葉書のコレクションの一部は、先に取り上げた『ロスト・モダン・トウキョウ』('12年/集英社新書)などでも見ることができます。
本書は、第1章が「東京の三大遊園地」、第2章が「東日本の遊園地・動物園」、第3章が「西日本の遊園地・動物園」、第4章が「東京の遊園地・動物園」、そして第5章で「47都道府県の遊園地・動物園事情」となっています(一応、47都道府県を網羅しているのがいい)。
第1章の「東京の三大遊園地」で取り上げられているは、豊島園、浅草花やしき、後楽園遊園地(現:東京ドームシティアトラクションズ)の3つですが、この内、「豊島園」(10p)(後に「としまえん」)は、本書にもあるように、「東京ディズニーランド」という強敵が現れ、レジャーが多様化して多くの遊園地が閉園する中で、昭和・平成の時代を生き残り、2020(令和2)に閉園しています。開園170年
超えの浅草花やしき(1853(嘉永6)年開園)ほどではないですが、ここも1926(大正15)年開園と90年以上の歴史があったのだなあと。本書刊行後、2023年に跡地にハリー・ポッターの屋内型テーマ施設「ワーナーブラザース スタジオツアー東京―メイキング・オブ・ハリー・ポッター」がオープンしましたが、このことは、遊園地からテーマパークへという時代の流れを象徴しているように思います。
個人的に懐かしかったのは、「金沢ヘルスセンター」(47p)でしょうか。小学校低学年の時に金沢に住んでいて、卯辰山にあったヘルスセンターは動物園が併設されていたということもあり、子どもの自分にとって、家族とそこへ行くのがこの無い楽しみでした。本書によれば、1958(昭和33)年オープンで、「金沢サニーランド」に名称変更した後、1993(平成5)年に閉園、動物園部分は「県立いしかわ動物園」として独立、その後、1999(平成11)年に能美(のみ)郡辰口町(現・能美市)に移転したとのこと
です(「いしかわ動物園」HP)。
そう言えば、第5章の「47都道府県の遊園地・動物園事情」で紹介されている、白山市に北陸鉄道が作った遊園地「手取遊園」(122p)も懐かしいです(観覧車に乗ったなあ)。1955(昭和30)年オープンで、1970(昭和45)年まで営業していたとあります(現在、能美市にある「手取フィッシュランド」とは別のもの)。本書では紹介だけで、写真が無いのが残念でした(右写真はネットで見つけたパンフレットの表紙写真。「アースウェイブ」という回転ジャングルジムのジャンボ版のような形の遊戯施設が見える)。
巻頭の年表「日本における遊園地・動物園 主なできごと(1972年まで)」(6p)にも出てくる、「奈良ドリームランド」(82p)(ここも
科学雑誌の表紙になるなどして、子どもの頃に憧れた)が1961(昭和36)年開業、2006年閉園、「横浜ドリームランド」(38p)が1964(昭和39)年開業、2002年閉園。ディズニーランドの日本版を目指していたが(今なら"常識"だが)その名を名乗ることが出来ず「ドリームランド」になったとのことですが、1983(昭和58)年の本家本元の「東京ディズニーランド」の開園以降、こうした遊園地は徐々に閉園に追い込まれていったことが窺えます。
「二子玉川園」(100p)の閉園は1985(昭和60)年だったのかあ(右写真:1985年3月31日二子玉川園最終営業日[フォートラベル])。1909(明治42)年に瀬田4丁目に前身の「玉川遊園地」が開園した歴史ある遊園地だったのだなあ。1982年に当時同じく瀬田4丁目の環八沿いにできたスポーツクラブ「ザ・スポーツコネクション」の会員になったため、閉園まで100回以上「二子玉川園」駅で降りましたが、閉園後も駅名は二子玉川園駅のままだったので、あまり閉園したという意識がありませんでした(「二子玉川園」駅は2000年に「二子玉
川」駅に改称)。「二子東急」という古い映画館が傍にあって、ここで「ブレードランナー」('82年/米)などを観ました(こちらは 1991(平成3)年1月まで営業)。東急ストアがあって、さらに後からできた東急ハンズがあり、休みの日などは賑わっていたように記憶しています(今あの辺りは東急グループの複合施設「二子玉川ライズ」になっている)。
他にも、自分が生まれる前になくなってしまった施設も多く紹介されていますが(「粟津遊園」(48p)などは金沢人にとっては"伝説"だった)、こうした施設がいつ開園し、いつ閉園したかということが、本文中だけでなく、巻末にある「日本の遊園地・動物園リスト」にも記されていて、たいへん親切であり、資料としても第一級です。図版的には、データベース的な最終5章以外に、第3章で一部カラーでないページがあるのが惜しいですが(この中に「宝塚ファンミーランド」(78p)や前述の「奈良ドリームランド」が含まれていたりする)、個人的評価は◎です。
遊園地や動物園の歴史は明治に遡るわけですが(厳密に言えば「浅草花やしき」(14p)のようにそれ以前)、戦後の高度成長期から万博(1970(昭和45)年)あたりまで隆盛を極め、それ以降は大型テーマパークが徐々に台頭してきて、閉園に追いやられていき、人々の記憶にのみ残るものとなっていったのではないでしょうか。だから、「花やしき」がその典型ですが、現存する遊園地を見てもレトロ感というか、懐かしさを感じるのでしょう。


「あらかわ遊園」(112p)などもそう。本書で引用紹介されている、田中小実昌が「頭上のレールを、ペダルこいではしるスクーターみたいなものがおもしろかった」と雑誌「東京人」の特集「都電のゆく町」(1997年)に書いた「スカイサイクル」に、自分も子どもと乗ったのを思い出しました。
著者があとがきでも触れているように、遊園地は家族との記憶と結びつくものであり、それは「親との記憶」と「子との記憶」の両方があると改めて思いました(もちろん親子だけではなく「恋人との記憶」や「友との記憶」もあって然り)。
《読書MEMO》
●目次
第1章 東京の三大遊園地(豊島園;浅草花やしき;後楽園遊園地―東京ドームシティアトラクションズ)
第2章 東日本の遊園地・動物園(札幌市円山動物園・中島公園子供の国;オタモイ遊園地;桐生が丘公園・分福ヘルスセンター ほか)
第3章 西日本の遊園地・動物園(京都市動物園;愛宕山遊園地;京都パラダイス・市岡パラダイス ほか)
第4章 東京の遊園地・動物園(恩賜上野動物園;玉川遊園地・二子玉川園;多摩川園 ほか)
第5章 47都道府県の遊園地・動物園事情
